参加したほうがいいですか?
あの魔法陣をこの場所で使われたらどうなるの?
こうなったら、今はシャールや学園長はいないけど、私も学園長と訓練した成果を見せつけるため、この戦いに加わった方がいいですか?
色々考えている間にも、蛇は尻尾で人ごと辺りをなぎ倒し、二つの口から炎や雷の攻撃魔法を絶え間なく繰り出す。
そして陛下達の精神破壊の闇魔法の攻撃を受けてもまったく動じていないし、風魔法の巨大な真空の刃をいくつも受けても鱗に瑕一つついていない。
魔導士達が蛇の繰り出す雷や炎の魔法を無効化することに専念しているが、蛇の魔力が強いのか表情が強張っている。
相手が使う雷と炎の魔法に対し水魔法を使って辺りを水浸しにしたら、感電の恐れがあるし、竜巻のような風魔法を使えば蛇が使う炎がこの部屋の調度品に燃え移って広がってしまう。
大地の魔法を使うとなると、状況によって王宮の建物の天井自体が落ちてきてしまうのか……。
陛下達は周囲の人を巻き込まないよう考えながら戦っているから、強力な魔法が使えないんだろう。
しかも闇の魔法は魔力消費が激しいので、陛下達が先ほど精神攻撃はさほど効果がないと判断したのか闇魔法を使うのをやめ、魔導士達が結界を張る中、蛇が使う同じ炎と雷の呪文の打ち合いになっていった。
でも、おそらく魔族?魔獣? いや怪獣か?その蛇の方が魔力は多いだろう。これではいずれ人間側の魔力が尽きてしまう。
しかも今、蛇は騎士達が纏う鎧を狙って雷攻撃を仕掛け、運悪く感電した兵達はバタバタと倒れている。しかも倒れて動けなくなったところをまた一気に丸呑み。
しかも消化時間は数秒と来たもんだ。
まさに化け物。
蛇は蛇でも精霊のイラリオン様とは大きさも見た目も全然違う。
忌まわしい大蛇の怪獣だ。
「くっそ、こんな蛇すら止められんとは」
「陛下っ、勝たねばなりません。
でないと、学園長のしごきがっ」
おじい様が激を飛ばすが、陛下達を鼓舞するどころか若干げんなりさせたように思えるが大丈夫だろうか?
「辺境伯、恐ろしいことを何度も言うなっ!」
たしかにあの学園長のしごきを考えると、早く討ち取りたい気持ちは分かる。
けれど、今の目の前の相手が人間とは比べ物にならないのだ。まだ人間のテレジアの方がましだったかもしれない。
まあ、学園長も人間じゃないのだけれど。
あの蛇の二つの口から放たれる威力は弱いが鎧を感電させる派手な電撃が厄介だ。
しかも、動けなくなったら丸呑みの恐怖が待っている。
だが、ここで気持ちが負けたら相手の思う壺だ。
雷の魔法が得意で、相手が鎧を感電させるために攻撃してくるなら、あいつが使う雷をなんとかして……。
おじい様はタイミングを見て逃げろと言ったけど、逃げてもあいつがレオ君を追って来たら、結局は戦わなくちゃだめよね。
学園長を呼びに行ったシャールがまだ戻ってこないのが気にかかるけど、あのレオ君のヒーロー殿堂入りお二方なら、もう暫くしたら絶対に来るはずだ。
あの二人が来たら、きっととどめを刺してくれるだろう。
その間にあの蛇を弱体化させておきたい……。
魔法でそのままぶつかっても持久戦になりそうだし、今回は素手なんて絶対無理だし、何かいい方法……。
辺りをぐるっと見渡すと、調度品で目ぼしいものが見つかった。
学園や背の高い城の塔に雷が落ちないように設置してある避雷針の応用を一か八かでかましてみるか。
あの方法なら相手の魔法を使うんだから、こっちの魔力消費はほとんどないし。
「ジジしゃん?」
私の動きで何か察したのか、レオ君がわくわくした表情で私を見上げてくる。
「シーっ。レオ君、私の後ろに隠れてて」
「あいっ!」
いい返事をしたレオ君を確認し、今の蛇の様子を確認する。
幸い蛇はおじい様たちに意識が向き、周囲の人たちも陛下をはじめ他の邪魔にならないように広間の端の方に集まっている。
丁度近くに飾ってあった鉄の甲冑が持っている大きな鉄の槍を風の魔法で浮かせて外す。
「ジジしゃん?」
「シー、レオ君。ちょっと待ってて」
「あいっ、シー」
口の前に人差し指でしーっと動作するレオ君をしり目に、相手が次の雷魔法を仕掛けるまで待った。
世の中の定石なのか、そうやって相手にやってほしいことを期待すると、なかなか思っていたような行動を相手がとってくれない。
「ジジしゃん?」
私がやりたいことを分かっていないレオ君が、そろそろしびれを切らしてしまいそうだ。
ちまちました攻撃の応酬が続き、蛇がなかなか大きな雷魔法を使わない。
だが、私の忍耐よりも、王太后様が指し示した扉に進めない蛇がしびれを切らす方が先だった。
「おのれ、邪魔くさい。こうなったら城ごと破壊してやる」
二つの顔が上に向き大きく口を開け、ビリビリと二つの蛇の口に雷が光った。
「今だ!」
今まで待機とばかりに風で浮かせていた槍にうっすら雷と水の魔法を纏わせ、雷の魔法を吐き出す口の片方に最大出力のスピードで撃ち込んだ。
双頭の蛇の口から天井に放たれた雷の一閃はヘアピンカーブのごとく角度を変え、投げつけた槍の雷に呼び集められるかの如く一瞬で槍の先端に落ち、目を開けていられないかのような巨大な雷光が大広間一面を覆い、光の速度に遅れて、落雷時特有のバリバリバリッ、ズドーンッという腹の底に響く重低音が轟き、蛇は雷の網に全身包まれた。
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