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疑問は深まるばかり

 今日は陛下との予定だけだと思っていたのに、急な両親の乱入や、ルフ様やイラリオン様に会うことになってある意味充実しすぎた。

 今日は陛下達がレオ君の様子を見にいらっしゃった後どうなるか予定が読めなかったので、昨日フィガロ様に寄ってもらうことは遠慮していただいたので、レオ君はチョコレートケーキを食べた後は、再びうとうとお眠りした後は、エルランジュの家行って妹を連れて王宮に戻ってきたおじい様とシャールが一緒になって栗を使った十の位までの足し算引き算の先生役をしている。


「おお、今度も正解だ。賢いなあ、レオ君」


 普段それほど長い時間レオ君と密に接する時間を過ごしたことがなかったおじい様は、レオ君のその賢さを知って更に骨抜き。


「えへへっ、おじいしゃん、僕、お指もちゅかって計算できましゅよ。

 ちゅぎの問題出しゅてくだしゃい」


「そうか、そうか。

 よし、では次の問題はできるかな?

 一足す三足す二だ」


「ふおっ、みっちゅの数字をたしゅんでしゅね。しょれは初めてでしゅ」


「ロビン、それはちょっと難しいだろう」


「シャールしゃん、ちょっと黙っててくだしゃい。

 僕は頑張るんでしゅ」


「おお、そうか。済まぬ」


 一緒に過ごす時間が長くなってきて分かったことは、レオ君は結構勝ち気で、誘拐という恐ろしい事件に会ったというのに周囲の大人をあまり恐れないし、失敗を恐れないというか、前向きだ。

 たとえ時間はかかっても頑張って成功を勝ち取ろうとするタイプ。


 その時の集中力は二歳児とは思えないというか、妹が二歳の時を思い出してみたけど全然違うと思う。


 妹の記憶は実家に帰った短い時間でしかないけど、小さな妹と乳母と人形片手に一緒に遊んだり、絵本を読んであげた記憶しかない。

 女の子と男の子という違いなのかしら。

 でも、計算をお遊びとして楽しんだり、魔法を教えてくれとせがまれたり、料理を覚えようとしたりするようなことはなかったと思う……。

 これは種族の違いなのか?

 新しいことにも興味津々だし、あまり臆することがない。

 一応知らない人がいたり、大人達が難しい話ばかりしていると雰囲気を読む気配はあるが、慣れてしまうと自分の要求に正直になってしまうところは種族が違えど小さな子供らしい。


「……えっと、いちたしゅ、しゃんで、よっちゅ。

 よっちゅに、にをたしゅて、……ろくでしゅ!」


 指を一本一本ゆっくり曲げて、両手を使って正解を導き出すレオ君。


「レオ君、すごいな!

 今夜はご褒美にシャール殿に美味しいご馳走を作ってもらわないと」


「へ? ロビンッ?」


「ほうっ、ごほーび!

 僕、かりゃあげ食べたいでしゅ!

 かりゃあげ!

 この前、初めてシャールしゃんがちゅくったかりゃあげ食べましゅた。

 おじいしゃん、かりゃあげしゅきでしゅか?」」


「確かにシャール殿が作った唐揚げは美味しいなあ。

 レオ君は唐揚げが好きか」


「あいっ」


 数日一緒に過ごしただけだが、レオ君はご両親と暮らしている間、かなりシンプルな食生活を送っていたみたいで、サラダや炒め物、あとは簡単な卵料理やスープ、肉や魚の蒸し料理も塩で味付けした程度のもの、茹でた野菜に塩を振る料理くらいしか知らず、揚げ物やケーキなど食べたことがなかったらしい。

 だからこそシャールが作る料理に毎回感動し、一昨日の夜シャールが作った唐揚げを食べて虜になった。


「そうか、でも、この前食べたばかりだしなあ」


「かりゃあげがいいでしゅ!」


「うむ。味を少し変えるか。

 では、厨房に行って作ろう。

 レオには……ちょこっとお手伝いを頼んでもいいか?」


「あいっ、がんばりましゅよー」


 食べたい物を作ってもらえると聞いてワクワクした顔でシャールを見上げるレオ君。


「では行こうか。

 ロビンはジジと話があるのだろう。

 二人で話しているとよい」


 今日おじい様は私達が神殿に行っている間、王宮からエルランジュの屋敷に向かい、王宮に妹を参考人として連れてきたと聞いた。


 そして今、厨房にはシャールとレオ君二人が向かい、私はおじい様と二人差し向かいでお茶を飲みながら両親や妹の件で話をすることにした。


 さて、おじい様の話では、両親は今日の午前中やらかした件のために、しばらく王宮の一室で留置所を出た後は軟禁状態になるらしい。

 妹は参考人として 両親とは違う場所に滞在しているみたいだが、このまま騎士棟で滞在させるが、聴取次第ではエルランジュの屋敷に返す方向だとか。


「しばらくは妹が一人屋敷で過ごすの?」


「いや、一人屋敷で過ごさせるのも不憫と思い、私が滞在するアウスバッハの王都の家に呼ぼうかと思ったが、先ほどエロイーズはそれを拒んだ。

 今までも食事は一人でとっていたし、夜会などで娘夫婦は夜遅くまで家を空けていることが多かったそうだから、一人家で過ごしても今までと変わらないと」


「……そうですか」


「慣れた家の方がいいのかもしれん」


 滅多に会わないが、おじい様にとってエロイーズももう一人の孫である。

 そんなエロイーズの今までの生活を聞いて、おじい様なりに心が痛んでいるのだろう。私も今おじい様から話を聞いて、びっくりした。


 まさかそんな孤独な生活を送っていたとは、夢にも思わなかった。


「ただ、その、エロイーズは、お前がアギールの城に居ると思っているみたいだ。

「お姉さまは、お元気にフィリパ学園に通っていらっしゃいますか?」

 と言い、しかも

「今度のお休みはまたルドヴィク様とフィガロ様と一緒に王都の美味しいケーキのお店に行きましょうとお伝えください」

 と、伝言を頼まれたのだ

 ウソを言っておるのはエマ達か?」


 疑問は解決しないまま、その日の夜は更けていこうとしていた。


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