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規格外の魔力を持つご令嬢は、恋を楽しんでいる暇がありません。  作者: 秧摩 真羽


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32/88

成敗?

 声がした扉の方へ顔だけ向けた両親が声の主を見て固まった。


 両親の背後には、今日会う予定だったお三方が予定時間より早くいらっしゃったようだ。

 まず中央に、焦げ茶色の髪に濃紺の瞳で、威風堂々としたがっしりとした体躯で強面の国王陛下。

 その右に栗色の髪にハシバミ色の瞳をした妹の婚約者のルドヴィク・フォン・マイエルリンクとよく似た顔立ちの陛下の懐刀として名高い宰相マイエルリンク公爵。

 そして左には陛下よりも一回り大きく、金髪に蒼い瞳をした屈強の戦士のような見た目そのままの方が、陛下の盾と呼ばれるこの国の騎士団と魔導騎士団を束ねる大将軍バルド公爵だ。

 そしてその背後に、念のためなのか護衛の若い近衛騎士が一人、年配の近衛魔導士が一人。


「知らせで駆けつけてみれば、国王陛下の命令の立ち入り禁止命令が出ている場所に入れるあなた方は、ご自分を何様だと思っていらっしゃるんですか?」


 若作りを頑張っているうちの両親より若干年齢が上のはずでも、両親より若く見えるイケオジの代表格の宰相様がハシバミ色の目に鋭利な光を浮かべて両親に詰問するが、そんな視線もどこ吹く風と言わんばかりに、魅惑的な黒い瞳を輝かせて妖艶な笑みを浮かべた母はしれっと悪びれもせず答える。


「ルジアダは私達の娘です」


 しかも、暫く見たことがない母性的な笑顔を私に向けて。

 こ、怖い。

 我が母ながら、この変わり身の早さというか、演技というか、これが腹黒い女というやつか?

 しかも自分達が命令背いているなんてこれっぽっちも思ってないんだろうな、その顔。


「なるほど。都合のいい時だけ親の顔ですか。

 私は息子が通うフィリパ学園の学校行事にほとんど参加しますが、あなた方のどちらともここ数年会ったことも見たこともありませんが、まあいいでしょう。

 誰からルジアダさんがここにいると聞いたのです?」


「……エロイーズですわ。

 王太后様のお茶会に呼ばれる自分は限られた時間しか王宮に滞在できないのに、どうして辺境にいるはずの姉のルジアダが王宮にいるのかと」


「……なるほど。伯爵夫人、それは嘘ではなく?」


「バルト将軍、どうして私が嘘を?」


 どのような場でも優雅かつ強気な口調を崩さない母に将軍は苦笑いを浮かべながらも、次の瞬間片手をあげ、一段と厳しく低い声で指示を出した。


「エルランジュ伯爵夫妻を捕縛せよ。

 エロイーズ嬢も直ちに連行してこい」


「なっ、どういうことですか?」


「まだ分からないのですか?

 あなた方は陛下が入ってはいけないという部屋に強引に入りました」


「ですが、妻の申す通り、親が娘に会いに来て何が悪いというのですか?」


「伯爵は意外と物分かりが悪い方だったのですね。

 今、この国では子供を誘拐したテレジアの話は世間に知れ渡っている。

 そして、その子供が王宮で保護されていることも知られている。

 だが、その子が誰と一緒にどの場所にいるかまでは知られていない。

 しかも今、ルジアダ・フォン・エルランジュという学生は学園長の課外授業という扱いなんですが、王宮に居るとは知られていない。

 あなた方は、我々と違って詳細を「知らない」立場でありながら、ここに「娘がいる」と言って強引にここに入り込んできた以上、事件の詳細を知る誰かとつながっていると思われても仕方ありません」


「畏れながら、宰相殿。

 私は部屋で何かあってはいけないと背後で控えておりましたが、エルランジュ伯爵は「陛下と謁見する際には親を呼ばないとは何事か」とルジアダ様を責め、伯爵夫人は先ほど「女の子のくせにこんな危険な事件に巻き込まれるとははしたない」とおっしゃいました。

 その口ぶりからして、世間ではルジアダ様達が関わっていることは知られていないはずなのに、何かご存じのご様子かと」


「なるほど。久しぶりに会う娘にかける言葉がそれですか。

 ヴェスパ山の儀式を無事終わらせたことを知って、喜びのあまりやってきたという話だったのなら、まだ許せたものの。

 今の証言から余計にあなた方を放っておくことができなくなりました。

 この王宮でテレジアと戦ったのは、伯爵夫人、あなたのお父上アウスバッハ辺境伯が率いた一団とフィリパ学園の学園長となっています。あなたの娘さんが関わっていることは、本当に限られた人間しか知りませんし、知っている人間は、守秘義務を課されています。

 あと、うちの次男の婚約者であるエロイーズさんが王宮内の極秘情報を知っているとするならば、彼女が誰から聞いたか問わねばなりません。

 教えた誰かを探さねばなりませんからね。

 今回の件、場合によってはエルランジュ伯爵が望んでいらっしゃったうちの次男との婚約も解消も検討いたしましょう」


 口調は丁寧でもハシバミ色の瞳で人が殺せそうです。背後から立ち上がるオーラであたり一面が氷原になりそうです、、、怖いー。

 ルーとそっくりな王子様系イケメンパパの宰相様の威圧感が半端ない。

 さすが一国の宰相というだけあります!


 烈火のごとく怒る派手な怖さとはまた一味違います。

 こんな宰相様、いや、ルーのお父様、今まで見たことないよー。

 授業参観で見かけるときのにこやか穏やか爽やか超イケメンパパとは顔が全然違う!

 

 うちの両親はやっとその冷気を浴びて自分たちがやらかしたことの重大さを理解してきたみたいで「どうしましょう」と母が呟いた。

 いや、今更「どうしましょう」じゃないし。

 こんな冷気浴びてまだ謝らないの?

 しかも父は呆然と突っ立ったままで、反省したのかどうかもわからない。


「エルランジュ伯爵夫妻は今日我々がここに来ることもご存じのような口ぶり。これは留置所で色々教えてもらわねばなりません。

 彼らを連行してください。

 誰からこの話を聞いたのか取り調べがうまい者に調べさせるように。あと、誰も近づけさせるな」


「そ、そんな!

 留置所に行くようなことはしていませんわ!

 それにエロイーズも王太后様に会いに来るときに誰かの話を聞いたに決まっています。

 ルジアダ、あなたも何か言いなさい!」


 いや、お母様。

 そんなときにこっちにいきなりヘルプを求められても。


 しかも、お母様の反論で、宰相様のお怒りモードが大全開!


「そこで何故ルジアダさんに助けを求めるのか理解できませんっ」


 うおっ!

 お部屋を破壊しちゃうんじゃないかと思えるほど、宰相様の怒りのオーラがぶわりと広がった。

 うちの両親、留置所じゃなくてこのまま一生牢屋生活じゃないか?


 そんな永久凍土になった部屋で助け船を出してくれるかの如く「怖いー」とレオ君が小さな声でシャールの胸に顔をぐりぐりと埋めだした。



 陛下や将軍がいち早くレオ君のしぐさに反応し、泣きだしはしないかとがたいがでかい強面二人がシャールの許に駆け寄って「しっし」と両親達に向かって手を振り「宰相。さっさと二人を連れて行かせろ」と陛下が怒りの形相でのたまったかと思えば、レオ君の頭に向かって相好を崩して「怖くないでしゅよー」とか「大丈夫でしゅよー」とか一所懸命あやそうとするものだから、凍土は一気に氷解。

 しかも、宰相様まで、やっちまったという表情を浮かべ、両親を無視してさっさと陛下の側に寄っていき、頭を下げる始末。


「陛下、申し訳ありません。

 つい話が話が長くなってしまいました。

 レオ君、私はレオ君に怒ったわけではないですからね」


 なんてシャールの腕の中の赤い帽子頭に語りだすものだから、抱っこしているシャールも、相手が相手な上に、周囲の目もあるものだからどうしていいのかわからないようで青銀の目に困惑の色を浮かべている。 


 しかも見ていた第三者の騎士さんや魔導士さんたちは、あまりの状況の変化に呆然。

 その中で私達に両親が来たことを伝えに来てくれた若い魔導士さんが辛うじて「宰相殿……」と声を掛け、指示を仰ぎ、両親は可哀そうだが連行されることとなった。

 部屋の隅に控えていた騎士と魔導士が両親にさっと捕縛魔法をかけ、そのまま連れて行こうとする。

 

 だが、宰相様の怒りの冷たいオーラが消えて元に戻ったのか、悪あがきするかのように、父が連行しようとする騎士に反抗した。


「捕縛などせずとも、私達は命に従って取り調べに向かいます。

 陛下、これでは囚人扱いではないですか!

 たかが部屋に入ったくらいで、これはいったいどういうことですか」


「ふむ。「これはいったい?」とまだ言うか?

 それは余のセリフだ。

 国王の余も舐められたものだな。王たる余が禁止したことを破っても罰は与えられぬと思ったのか?

 それだけでも十分だと思うが。

 さっさと連れていけ。あと、五月蠅い口は尋問の時まで開く必要はなかろう」


 陛下がぱちりと指を鳴らし、沈黙の魔法が両親にかかって静かになった。


 声が出なくなって唖然とした両親の隙を見て騎士と魔導士が両親を連行し、颯爽と部屋から出ていった。

 そして部屋には両親が残していった香水の嫌な残り香だけが漂っていた。


「ほえー、声が出なくなりゅ?」


 恐怖から逃れようと顔を埋めていたシャールの胸から、魔法見たさの好奇心で顔をあげた

レオ君が王様の魔法を見て目を輝かせた。


「そうだ。あれは人を黙らせるときに使う術だぞ」


「ふーん。おーしゃまもしゅごいでしゅ」


 シャールの腕の中から見上げるレオ君のキラキラした賞賛のレオ君の視線と誉め言葉に強面を崩した陛下。


「そうだろう。

 ん?」


 だったが、すぐにレオ君が顔をしかめたのを見て慌てふためいた。


「レオ、顔を顰めてどうした?」


「くしゃいのー。

 このお部屋、まだくしゃいー」


 鼻をつまんで臭いアピールする幼児にふうむと腕を組んだ陛下。


「確かに……。

 うむ。レオの言う通りだな。消臭の魔法を使うにしても、まずは換気したほうがいいな。

 窓と扉を全開にして話す内容でもないし、……余の執務室に行くか?

 おお、そうだ。レオ、お菓子は好きか?」


「しゅきー」


 いきなりお菓子の話をされたレオ君の顔が鼻をつまみながらも輝く。


「うむ。では余の部屋に菓子を用意させよう」


「ありがちょー」


 幼児のはじけそうな笑顔に比例するかのように、さっき怒りの形相最高潮だった宰相様も、もともと陛下以上に強面の将軍様も輝き「うんうん」と相好を崩したのだった。

読んでいただいてありがとうございます。

評価やブックマーク、お気に入り登録大変ありがとうございます!

本当に感謝しております。

気に入っていただけましたら、評価・ブックマーク・応援等よろしくお願いします!

また、お恥ずかしながら、誤字脱字がありましたら、報告よろしくお願いいたします。

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