表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/88

まさかの婚約解消?

「うるさいわ!

 料理以外なら大丈夫よ。

 多分……」


 そう、おじい様の城なら専属の召使がいるけど、今、警備上の問題もあってここには連れてくることができないのだが、掃除は魔法でできるし、洗濯物なども、出しておけば警備の騎士さんか魔導士さんが、洗濯場へもっていってくれるので問題ない。

 レオ君は着替えることもちょっと手伝えば自分でできるし、トイレも失敗することもないし、お風呂も歯磨きも問題ないいい子だし、夜にお茶が飲みたいときに自分でやらなくちゃいけないとかそれ以外は特に不自由はない。


「ごめんごめん。はい、これがその服」


 渡された大きな袋の中には、子供用の厚手のカーディガンやズボンにコートにポンチョ。後、子供用の新品の下着や靴下が入っていて大いに助かりそうだ。


「ありがとう。シャールの子供のころの服はちょっと大きかったのよ。さすがフィガロ様のお母様ね。気が利くわ」


 フィガロ様の義理のお母様は、社交は好まないが宮中の宮廷祭祀を司る侯爵様の御仕事の兼ね合いで学校を卒業し神官養成所で学ぶ見習いの神官のお世話をしていらっしゃるので、我が家の両親とは違って細やかな気配りの出来る世話焼きな方なのだ。

 袋の中を覗いていると、臭いを消す手洗いの儀式に満足したレオ君がとてとてと走ってシャールの側に戻ってきた。

 そして戻ってきたレオ君をシャールが抱き上げ、その袋の中身が見える位置に移動した。


「こんにゃくしゃさん、ありがちょー」


「どういたしまして」


 レオ君に「こんにゃく」と呼ばれても気にせず、袋を覗き込むレオ君に笑顔で対応するフィガロ様。

 私の横から袋の中を覗き込んでいたレオ君が青色の子供用のダッフルコートを見つけて輝かせ、その表情にフィガロ様が笑顔で頷く。


「あー、お出かけのコート」


「サイズが合わなかったらまた言って。君たちが動けないなら僕が街に買いに行ってもいいし。

 ところで、今日はルジアダもシャールも時間ある?」


「ええ。レオ君も一緒だけどどうしたの?」


「うん、それはいいんだけど、ちょっと前もって話したいことがあって」


「どうしたの改まって」


 袋はいったん脇にどけ、センターテーブルを挟んで四方にソファが設えてある中、シャールがレオ君を抱っこしたままこの中で一番大きい三人掛けのソファに座り、若干沈んだ表情のフィガロ様と私は二人掛けのソファに座って話を聞くことにした。


「実は、僕、……魔力の少なさを理由にジルレ侯爵家の次期当主から外されるかもしれない。

 それを見越して、ルジアダ。君と僕の婚約を解消したいと内内で君のご両親から話があったんだ」

 

 ん?

 今何をおっしゃったのかしら?

 キミトボクトノコンヤクヲカイショウシタイトナイナイデキミノゴリョウシンカラ……。

 今のは新手の子供向けの基本の魔法詠唱?


「えっと、ごめんなさい。今、頭が言葉を理解できなかった」


 わざとすっとぼけたわけじゃありません。

 聞き返す私にフィガロ様は深いため息と同時に再度以下の重要な点だけを繰り返した。


「だからね、君と僕の婚約を解消したいって君のご両親から話があったんだ」


「婚約を解消?」

 

 意味が分からない。


 私とフィガロ様の婚約はもう十年以上前からだし、娘が伯爵より上の、しかも精霊が守る古くから続くジルレ侯爵家の嫁に行けると昔喜んでいたのは誰や?

 まさか、王太后様と懇意になってるし、妹の婚約者が、代々突き抜けるほどてっぺんに君臨するマイエルリンク公爵の次男でも、国王陛下側の家だから、私を王太后様の派閥の家に嫁入りさせたいとか思い出したんじゃないだろうな。

 でも、まず伯爵の我が家が格上のジルレ家との長年の婚約を解消したいなんて、別にフィガロ様の素行や健康に問題もないし、私に特に瑕疵もないはず(?)なのに、勝手に打診できるんですか?

 驚愕のあまりレオ君の頭越しにシャールと顔を会わせてしまう。


「何度も聞くけど、婚約解消をうちの親が?

 伯爵の我が家が侯爵のフィガロ様の家に申し出たの?」


「うん」


「そんなバカなことがあるか。

 フィガロ、おぬしは魔力は少なくとも精霊の祝福を受けた子ではないか。

 次期当主から外されるだと?

 ううむ、我が心配しておったのとは予想外の展開だ。

 我はおぬしが見目の良いどこぞのご令嬢にうつつを抜かして婚約解消を持ってくる可能性の方が大きいと思っておったのに」


「……シャール、それ僕が相当酷い奴じゃない?」


 じろりと冷ややかな目でシャールを睨みつけるフィガロ様。

 温厚なフィガロ様がこんな冷たい目線を放つなんて滅多にないが、当のシャールは鼻で嗤っている。


「そなたの周りに女が群がってる話題は、フィリパにいる姦しい奴らが教えてくれるが?」 


「……それは前から何度も言ってるけど、学校で女の子達に囲まれたことがないと言えば嘘になるけど、僕は学校の友達としか見ていないよ。

 それに次期当主とか家が決めた婚約者関係なく、僕はジジが好きだし、彼女と結婚したいとずっと思ってるけど」


「え?」


読んでいただいてありがとうございます。

評価やブックマーク、お気に入り登録大変ありがとうございます!

本当に感謝しております。

気に入っていただけましたら、評価・ブックマーク・応援等よろしくお願いします!

また、お恥ずかしながら、誤字脱字がありましたら、報告よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ