表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/88

傷ついた魔族の子

今日から一話ずつの更新になります。

よろしくお願いいたします。

 シャールがこちらに来いというそぶりをしたので近づくと、錯乱状態が落ち着いた子供が宙に浮いた状態でこちらを見た。


「まずは神殿で痛いのを治してもらいましょうか。

 折られた角は私ではどうしていいかわからないから」


「だあれ?」


「こんにちは。私はルジアダ。この風の精霊のシャールと一緒にあなたを助けに来たのよ」


 助けに来たと言う言葉を聞いた途端、安心したのかまだろくに長い時間歩けないような小さな男の子は涙を服の袖で拭いて、にっこり笑った。


「こんにちは。たしゅけてくれるの? ありがちょう。

 僕レオ。二しゃい。

 シャールしゃんと、るじーあじゃ?りゅじ?」


 シャールという存在の効果で少し気を許し始めたのか、レオと名乗った魔族の子供は涙をひっ込めてこちらを見た。

 服は人と変わらない秋の時期らしい厚手の青いシャツに同じく青い毛糸のマフラー、そして茶色のズボンに茶色の靴で、若干服に木の葉がくっついていたり汚れがあるものの、血が出ていそうなところはない。


「ジジと呼んで。さあ、その、角以外、痛いところ、怪我はない?」


「うん。ジジしゃん、ありがちょ。

 他のお怪我は別の精霊のおじしゃんにおーきゅーしょ、おうきゅうしょう?」


「応急処置?」


「しょう、しょれで治してもらったの」


「他の精霊?」


「ジジ、話は後だ。角が折られたということはこの子の魔力がうまく循環できなくなっているかもしれぬ。角がある魔族にとって角は重要なものだからな」


「分かったわ。まずは神官様に報告して対処してもらうわ」


 二歳の子供だと、人間を始めどの種族でも転移魔法など使ったら死んでしまう。

 転移魔法は魔力消費が多いので生まれてから三歳になるまでは特殊な魔法で保護する場合を除き使ってはならないという暗黙のルールがある。


「え? 猫しゃんが虎しゃん……、シャールしゃん大きい」


「だから猫ではなく虎だと言ったであろう。

 我は他の姿にもなることができるぞ。また今度見せてやろう。

 さあ、今から飛ぶからな。怖かったら目を閉じてるんだぞ。

 その間、痛みは我慢できるな?」


「あい、僕がんばりゅ!」


「よし。ではジジ、レオ、行くぞ」


「ええ」


「あい」


 涙をひっこめたレオ君を抱きあげ、大きくなったシャールの背にまたがって飛ぶ。


「ふおっ! 虎しゃん……じゃないシャールしゃん、しゅごい」


「そうか。だが、暴れるなよ」


「あいっ」


 意外に度胸があるレオ君は空飛ぶシャールの背に乗って飛ぶことが楽しいのか、涙をひっこめた後は怖がりもせず、たまに折れた角の跡が痛いのか顔を顰めるけれど、じっと私の腕を掴んだままシャールの背に乗っている。


 神殿に着くまでにレオ君に聞かれないようにこっそりシャールが教えてくれたが、魔族の角は魔力の保存場所で、体内の循環を促し、無理やり折られて放っておくと、魔力が体内でうまく回らず、魔力の暴発を起こし、辺りを草木も生えぬ荒野にしてしまうような爆発を起こして死に至るらしい。


「それはめっちゃまずいやん」


「うむ。今は自我があるから大丈夫であろうが、急ぐのだ」


読んでいただいてありがとうございます。

気に入っていただけましたら、ブックマークと応援よろしくお願いします。

また、お恥ずかしながら、誤字脱字ありましたら、報告よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ