プロローグ
白亜の大理石で建てられた神殿の奥は静謐に満ちている。
神殿のドーム状の尖塔の真下には黒のビロードの布上に横たわる緑色の玉石がはめ込まれた美しい剣が、天窓の陽光を反射してキラリと輝く。
そして今、剣の周囲を取り囲むように描かれている魔法陣に魔力を流し込めば、剣は白く光り輝き、天窓まで光の柱を打ち立てた後、再び元の色を取り戻す。
このレジネール王国建国時から伝わるという神器バアルの剣の周囲の魔法陣に魔力を流し込み、剣が光の柱を立てて元に戻ったら儀式は成功だ。
年数の経過で魔力が綻びた魔法陣のつなぎ目に魔力を継ぎ足す修復作業は魔力の消費は激しいが、論理さえわかれば簡単だ。
流した魔力を止めると、魔法陣に流れていた魔力の光が淡く静かに消えて行った。
「天と地の安寧を願い、これにて儀式を終了いたします」
荘厳な神殿の静謐を打ち破るかのように、終了の言葉を告げると、静かに背後から拍手の音が響いた。
「素晴らしい!
まさか午前中で儀式を終わらせるとは、さすが幼いころから魔力量の多さで話題になったご令嬢なだけありますね。
レジネール王国建国の英雄の一人魔女フィリパ様の名を戴くフィリパ学園の代表者として、あなたは、私が知る三十年の間、六人の代表者の中で誰よりも早く、魔力の輝きも素晴らしく力に満ちたものです。
今日はこの霊峰ヴェスパ山を守る精霊も、この神殿を建立したフィリパ様も喜んでいらっしゃるでしょう。
ルジアダ・フォン・エルランジュ嬢、これはこの度あなたがこの神殿でフィリパ学園の学生代表として使命を修了された修了証と記念のメダルです」
「ありがとうございます」
金髪に白いものが混じってはいるが、青い瞳は若々しく背筋がしっかり伸びた老神官トーマス様からは終了証を、茶色の髪に茶色の瞳をした柔和な表情の神官見習いの青年サミュエル様からはメダルを授与された。
渡された修了証には「ルジアダ・フォン・エルランジュ 十七歳」と私の名前と年齢、今日の日付が記載されていた。
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