表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。  作者: 木山楽斗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/132

31.迷宮から抜けるには

「本来なら、迷宮はもっと複雑にするべきだ。できれば、しばらくは迷宮に入ったと認識しないようなものの方が望ましい。もっとも、今回は時間がなかったんだろうね」

「まあ、ドルキンスが校舎裏に出てから、戻る間に作ったと考えると、時間はなかったように思えるわね」

「ああ、だから、特に複雑な仕掛けはないんだろうね。普通に閉じ込めなかったのは、恐らく分析に時間がかかるからだ。実際に、僕はこの迷宮を解明するのにそれなりの時間を要してしまった。もしかしたら、これは相手の思うつぼだったのかもしれない」


 キャロムは、少し悔しそうにそう言いながら廊下の端の方に移動した。丁度、空間が繋がっている境目の前に立ち、ゆっくりと構える。


「……これは」

「キャロム? どうかしたの?」

「驚いたな……まさか、これ程の魔力とは」


 キャロムは、驚いていた。それは、この迷宮を作り出した魔力に対する驚きのようだ。

 どうやら、ここには彼が想定していたよりも膨大な魔力が込められているらしい。私にはよくわからないが、キャロムが驚く程なのだから、それは相当なものなのだろう。


「……アルフィアさんの見解を聞いた時から、疑問には思っていたんだけど……あの令嬢達に、これ程の魔法が使えたかどうかは、少し怪しい所だね。この迷宮には、膨大な魔力が使われている」

「そんなに魔力が込められているの?」

「ああ……迷宮魔法というのは、時間経過でも抜け出せるんだけど、この迷宮は少なくとも五日間は持つだろうね」

「五日間……」


 キャロムの言葉は、驚くべきものだった。五日間閉じ込めておける迷宮。それは、なんとも恐ろしいものである。

 食料どころか水すらないこの空間に、五日間も閉じ込められれば、まず命はない。そんな迷宮を、あの令嬢達が作り出すかといわれると、それは確かに疑問が浮かんでくることだ。

 技術的な面もあるが、心情的な面もある。いくら彼女達に敵意があったとしても、ここまでやるのだろうか。


「複雑にしなかったのは、長く閉じ込めるためだったのか? 万が一、すぐに突破されるとしても時間が稼げるように迷宮にしたと考えるべきか……いや、そんなことは今はどうでもいいことだ。犯人捜しは後と言ったのは、僕自身じゃないか」


 色々と考えていたキャロムだったが、彼はその思考を断ち切った。自分で言っているように、犯人については後で考えることにしたのだろう。


「キャロム、あなたにはこの迷宮を抜け出す手段が、もう見えているの?」

「手段は単純だ。僕は今から、この迷宮を破壊する」

「破壊? それは、どうやって?」

「空間を引き裂く魔法を使う。それで、この迷宮に大きな亀裂を開けるんだ。多少の穴なら塞がるけど、大きな穴を開けると空間は崩壊させられる。すると、中にいる僕達は外に放出されるという訳さ」


 キャロムは、体に魔力を集中させていた。私にもわかる程に莫大な魔力が、彼の体を包み込む。


「キャロム君、それは本当に大丈夫なのか? なんというか、ここが壊れたら、俺達も引き裂かれそうな気がするんだが……」

「今、僕達は箱の中にいるようなものだと考えてくれ。その箱を内側から壊したとしても、外に出るだけだ」

「な、なるほど……よくわからないが、そういうことなんだな」


 キャロムの右手に、魔力が集中していく。その魔力は、刃の形に変化する。彼は、言葉の通り、空間を引き裂くつもりのようだ。

 彼は、少し苦しそうにしている。恐らく、かなりの魔力を使っているのだろう。

 そこまでしなければ、この迷宮は破壊できないようだ。彼程の人間が、そこまで魔力を使わなければいけないとなると、この迷宮は本当に一筋縄ではいかないものなのだろう。


「二人とも、その場を動かないでくれ。空間の境目に立っていると、空間を引き裂く際に、一緒に引き裂かれることがある」

「そ、そんなことがあるのか?」

「ああ、空間を引き裂くと繋がりが切れる。そこに肉体があれば、当然それも切れるのさ……もしかしたら、既存の空間の方にも影響があるかもしれないけど、まあ、今回の場合は大丈夫だろう。仮に大丈夫ではなかったとしても、待っていることはできないしね」


 キャロムは、腰を低くして魔力の刃を構えた。そして、そのまま、一気にそれを振るう。


「やあああああああああああ!」

「なっ……」

「おおっ……」


 キャロムの雄叫びとともに、私達は大きな衝撃を受けた。恐らく、これは空間が引き裂かれることによる煽りなのだろう。

 その直後、大きな光に私の視界は塞がれる。直前に見えたのは、何かが破けたようなそんな光景だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ