表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

127/132

127.蘇りの真実

『……どうやら、失敗してしまったようね』

「うぐっ……」


 そこで、突然オルディネスが苦しみ始めた。胸を押さえながら、地に膝をついてしまったのだ。

 そんな彼の後ろにいるゴーレムも突如動いた。オルディネスの体をその手に掴み、彼をその胸部付近に近づける。


『オルディネスを完全に復活させられたと思ったけど、魔力が足りなかったみたいね。あなた、もう少し眠っていてちょうだい』

「ぐあああああああ!」


 ネルメアのそんな言葉とともに、オルディネスはゴーレムの胸元に吸い込まれていった。苦しそうな叫びをあげながら、彼は消えてしまったのである。

 あまりのことに、私達は唖然としていた。なんだか、訳がわからない。ネルメアは、一体何をしているのだろうか。


「……ネルメア、あなたはわかっていないんですか?」

『あら? 何をかしら?』

「彼は戦いを望んでいません。復活すら望んでいない。それなのに、どうして……」

『それは彼ではないわ。私の知っている彼は、闘争心に溢れる人だった。さっきのは、失敗作に過ぎないわ』


 メルティナの言う通り、オルディネスは戦いも復活もを望んでいなかった。それをしていたネルメアを諫めた程である。

 だが、そんな彼は暗黒の魔女にとっては失敗作でしかないらしい。彼女の望んでいるオルディネスは、復活を望み、私達を排除しようとするような人物なのだろう。


「……なんて愚かな」

『愚か? この私が?』

「まさか、本当にわかっていないのですか? 先程のあなたの夫が、どういう存在だったかを……」

『……何を言っているの?』


 メルティナは、驚愕していた。彼女が何をそんなに驚いているか、私達にはわからない。

 どうやら、メルティナは私達やネルメア自身もわかっていないことを掴んだようだ。それは、彼女があのように表情を変える程に衝撃的なことであるらしい。


「ゴーレムの中にあるあなたの夫の魂を、よく分析してみてください」

『そんなことはするまでもないことよ。あの人の魂は、何度も見てきた』

「……それなら、目をそらしているのですね?」

『あなたは、さっきから何を言っているの?』

「いいでしょう……それなら、見せてあげます」

『……え?』


 メルティナのそんな言葉の直後に、私の頭の中には映像のようなものが流れ込んできた。

 それは、先程の場面だ。オルディネスが見えているため、それは間違いない。

 どうやら、彼女はこの場にいる者達全員にその映像を送っているようだ。自分が見たものを、私達にも理解させようとしているのだろう。


『これは……』


 その映像を見て、私は理解した。メルティナが、何に驚いていたかを。

 オルディネスの体には、魂が入っている。それは、彼の魂だ。

 しかし、その魂は大半を別のもので補っている。その補っているものとは、ネルメアの魔力だったのだ。

 つまり、先程のオルディネスは、ネルメアが自らの魔力によって作り出した虚像だったのである。彼女は、そんな自分が作り出した虚像の夫から、自分の行いを否定されていたのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ