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100/132

100.割り切れないこと

 朝早く、私は学校の方へと向かっていた。

 最近は、いつも早めに学校に行っている。ディゾール様が、朝練をすると言っているからだ。

 シャザームの件を騎士団に任せると決まってからも、私は訓練を受けている。それにより、日に日に魔力が増していることは実感できている。

 ただ、やはり毎日訓練するというのは中々に辛い。特に朝のまったりとした時間がなくなるのは、寂しいものである。


「あれ?」


 学校に向かおうと女子寮から歩いていた私は、遠目にとある人物を見つけた。

 それは、リオーブである。彼は、学校の正門付近に何故か立っているのだ。


「何をしているんだろう?」


 とりあえず、私はリオーブの元に行くことにした。何をしているか気になったのと、単純に知り合いに朝の挨拶をしようと思ったからだ。

 リオーブは、すぐにこちらに気づいた。しかし、特に動こうともしないので、別に近寄っても問題はなさそうだ。


「リオーブ様、おはようございます」

「ああ、おはよう。随分と早いな」

「ええ、ディゾール様との訓練がありますから」

「ああ、そうか……そういえば、そんなことをしているんだったな」


 私の言葉に、リオーブは笑った。しかし、その笑みはどこか寂しそうに見える。

 何か嫌なことでもあったのだろうか。そう思って、私は一つ心当たりがあることに気がついた。


「リオーブ様、もしかしてシャザームのことを気にしているんですか?」

「なんだ、ばれたか」


 リオーブは、自嘲気味な笑みを浮かべていた。どうやら、私の予想は当たっていたようである。


「……あの暗黒の魔女が、まだこの世界に生きていると聞いて、俺は正直はらわたが煮えくり返ったんだ。あいつだけは許せない。心からそう思ったんだ。そんなあいつを騎士団に任せる。そのことに、俺はどうすればいいかわからなくなっているんだ」

「リオーブ様……」


 リオーブは、暗黒の魔女に婚約者を操られ、姉の魂を取られた。大切な人達の人生を滅茶苦茶にされたのである。

 だからこそ、暗黒の魔女を許せなかった。できることなら、自らの手で彼女を滅ぼしたかったのだろう。

 だが、騎士団がことにあたるということは、彼が手を出すことはできなくなったということだ。それが、リオーブは悔しいのだろう。


「もちろん、わかっていはいるんだ。これが正しいことだということは……反対するつもりない。騎士団に任せられるなら、それが一番だと思う」

「でも、割り切れないんですね……」

「ああ、そういうことになるな……」


 恐らく、リオーブは心の中で整理がついていないのだろう。

 自分の怒りとこの国の摂理などといった事柄が、今彼の中では混ざり合っているのだ。

 それは、簡単に割り切れることではない。その悩みは必然で、仕方がないことだろう。

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