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7-2:とある騎士の一回戦

いつも読んでくださり、ありがとうございます。


また、ブクマ登録、感想等々感謝です!

7ー2


ケイリュオンの騎士になってから3ヶ月?くらいが経った。元々孤児から冒険者になった俺からすれば大出世と言えるだろうな。


その時組んでた冒険者のパーティは解散しちまったけど、やっぱり安定した収入っていうのは魅力的だったというのもある。パーティを組んでいたメンバーには少しばかりの金を渡しておいたので、許してほしい。まぁ、あいつら未だにこの領都に居て、遭遇すると酒をせびってくるけどな。


さて、騎士になってから俺の生活は激変した。少し遠征に行くこともあるけど、基本的には騎士寮で個人部屋が与えられてるし、装備も支給された。でも、冒険者の間から使ってた短剣だけは今も使っている。


それと何より、騎士寮で出る飯は今まで食ってきた中で一番美味い。それまでは海浜亭という、この領都で一番の店で食べたテールラビットの香草焼きというのが、俺の人生で一番の御馳走だと思っていた。でも、それが塗り替えられちまった。


どうせ寮で出る飯なんてマズイ安飯だろう、って思ってたのに、まさかあんなに美味いとは…


どうやら俺達騎士が仕える姫様が色々と気を遣ってくれているらしい。なんでも「美味しい食事は活力の源です!」って言って、メニューを考えてくれてるんだってさ。いい子だよな、あの子。一番最初の試験の時は面食らったけど。


俺よりも遥かに小さいのに、大人顔負けの仕事をして、俺達にまで気を遣ってくれる。


何度か執務室の護衛をしたことがあるんだけど、姫様の仕事振りは異常だった。文官が持ってくる報告や書類をスゴい早さで次々処理して、終わらせていく。大人相手にも物怖じなんかせず、指示を飛ばす。予算?とやらの計算も、じっと紙を数秒見ていると思ったら、「計算できました。こことここ、あとコレ。多分中抜きされてるので、責任者へ問い合わせを。あと…はい。これ中抜きしてるであろう金額です」って、計算機も使わず計算しちまってた。


冒険者ギルドで計算機を何度か見たけど、職員なんかがパチパチ木の玉を弾いて計算しているのより早いんだよ。それを6歳の女の子がやってるんだから、信じられない。俺達の主はすこぶる優秀らしい。


他にも便利な道具を職人に作らせたり、孤児院を作ったり、色々とやっているらしい。そう言えば、この前作ってた『センタクキ』なるものは孤児院の職員や、城の侍女、下働きからはすこぶる好評らしい。洗濯物をバケツみたいな『センタクキ』に放り込んでグルグルとレバーを回すと洗濯物がキレイになるんだとよ。確かに、冬の間の洗濯ってのは手が赤切れて嫌になるからな。



さて、もう1人の主である領主のリガウス様はただただ『怖い』。


まず、騎士の試験の時の最終試験。俺はあの人が乱発してきた魔法弾にかすって、腹の辺りの肉が少し削げた。痛みで反応が遅れて、その後飛来する追加の魔法で吹っ飛ばされた。それでも立ち上がって逃げようとしたところまでは覚えてるんだけど、その後はどうなったか覚えてない。


記憶にあるのは、城の一室で目が覚めたことと、姫様にガミガミと怒られる領主様の姿だった。…正直、ざまぁみろと思った。


腹の傷は姫様が傷跡すら残さず治してくれたみたいで、痛みは無かった。とにかく、試験自体は乗りきったらしく、俺は晴れて騎士になった。


無事に騎士になれたのも束の間。俺たち騎士は全員、領主であるリガウス様に『訓練』の名目で領都外の森へと呼び出された。


「まず、騎士となれたこと、おめでとうと言っておく。よくぞあの厳しい試験を突破した」


ちゃんと厳しいという認識があったのかと、俺の中での領主様の評価が少し上昇した。だが…


「しかし、だ。しかしだ!貴様らが仕える事となる儂の孫娘…ヒスイに手を出すような事があれば…分かっておるな?」


ダメだった。この人は重度のジジバカだった。そこから、10分くらいだろうか?姫様の誉め言葉を聞かされた。一体何の時間だったんだろうな、と今でも思う。


「--と、儂の孫娘のヒスイの護衛を業腹ではあるが、貴様らに任せねばならん。業腹ではあるが」


何で2回言った、ジジイ。あ、領主様。


「貴様らは弱くあってはならん。ヒスイに手を出すことがあってはならん。故に、今から貴様らに特別訓練を施し、『恐怖』を与える」


と、言って始まった。地獄が。


うぐ……お、思い出そうとすると、悪寒と頭痛が…体が思い出すこと自体を拒否している。朧気な記憶にあるのは、暗闇の中灯る火と、飛び交う血と悲鳴と肉片と…うっ、ダメだ。これ以上は危ない。


とにかく、俺たちは徹底的に訓練された。俺たち西方騎士団の騎士がまず何より先に学んだのは、絶対に領主様に逆らわないというのと、姫様には傷一つ負わせず、不可侵の存在であるという刷り込みだった。


うん、とにかく、領主様は『怖い』。絶対に逆らえない。




西方騎士団に入団してからは、領都周辺の哨戒をしたり、治安維持、魔獣の討伐などの任務が主だが、合間で字や計算の練習をさせられた。それが出来ないとこの先困ると時折姫様直々に教えにくる事もあった。姫様が来ると、イリーナという専属侍女も来るので楽しみだったりする。…当然、領主様も大抵は一緒にやってくる。ちくしょう。


その甲斐あってか、今ではしっかりと読み書きは出来るようになった。それと上達の要因は他にもある。一応、他の騎士より字を覚えるのが早かったから、報告書だったり『ギジロク』?とかいうのを作らされたりした。そんな仕事がよく回ってくるので、読み書きはあっという間に上達した。計算は自信ないが…


とにかく騎士団に入ってから、体も頭も鍛えられ続けてきた。以前は苦戦していたフォレストオークにも、難なく勝てる。自分がどれだけ強くなったのか試してみたいと思うようになった頃、姫様から通達があった。この領都がキャメロットという名を冠すること。そして…


騎士団長を決める、と。



どうやらセドリックさんへの負担を減らすためでもあるらしいけど、騎士団長というのは少し憧れる。けど、俺には厳しいだろう。


俺より強いのはゴロゴロ居るからな。だが、騎士団長の下に『12騎士』というのを置くらしい。こっちならば、俺にもチャンスがあるかもしれない。


…待てよ?騎士団長は今日決めるって言ってたけど、『12騎士』の方は、今日って言ってたか?


うーん、あの頭の回る姫様のことだから、何かあったりするんだろうか?…ありそうな気がする。ただ、そうだとしても打てる手はほぼ無いか。とにかく、今は戦うしかないな。俺は装具類の点検を終わらせ、冒険者時代の短剣も忘れず装備していく。今日は短槍をメインにするか。


冒険者の頃と違い、柄の部分も金属なので重いが、今なら扱える。


3の鐘までに再集合だったので、俺は広場へ急ぐ。広場には既にチラホラと他の騎士が集まっており、俺は早い方だったらしい。


観覧席と思しき場所には、領主様と姫様、そのお付きが居る。…よし、ちょっとはいいとこ見せれるよう頑張るか。そして、対戦表が張り出された。どうやら、勝ち上がりらしい。


俺は自分の名前を探して、最初の対戦相手を知ることになる。…マジかよ。俺の初戦の相手はヴォルフの旦那だった。この騎士団の中でも上位の実力に位置する人だ。ツイてねぇ…しかも、一番最初の試合かよ。尚更ツイてねぇ。


そして、今気付いた。会場の周囲には孤児達が見物に来ているのと、孤児院の職員達や、侍女たちまで来ていた。俺は胃がキリキリと痛むような感覚がしてきた。


「父ちゃーん、頑張れー!」


「応!」


俺の対戦相手である、ヴォルフの旦那が息子に応援されて、拳を掲げていた。よく見ると、奥さんも息子さんの側にいた。


何だろうな?なんと言うか、こう…惨めというか、なんとも言えない気持ちが沸々と沸いてきた。


「皆さーん、頑張ってー!」


侍女たちの声援に混じって、イリーナの声も聞こえる。…まぁ、できる限りは頑張るか。


俺は石舞台へと上がり、騎士の礼を取る。武器を立て、お辞儀をするのだ。これはセドリックさんに教わった。そして、短槍を構え、腰を落とす。


「初戦はエル、お前か」


「応。ちっとは手加減してくれよ、ヴォルフの旦那」


「妻子が見てる前で、初戦敗退など出来んだろう?悪いが全力でいくぞ」


ちっ、だろうな!ヴォルフの旦那は、盾を左手に持ち、剣を右手に構える。格上と戦う時特有の、肌がピリつく感覚が走る。ヴォルフの旦那の戦い方は盾で受けて、すかさず剣で反撃するスタイルだ。自分から攻めるときは盾を前面に構えて突撃してくる。俺より体格がいいヴォルフの旦那が突っ込んでくるのは恐怖だ。


ヴォルフの旦那の戦い方は基本的にコレだけ。至ってシンプルな正道の剣と盾による戦い方。本人は不器用だからこれしか出来ん、って言ってたが、それをひたすら鍛えてきたのだから、質が悪い。


審判であろう兵士が石舞台に上がり、手を前に翳す。そして――


「始めっ!」


「っ、いきなりかよっ」


ヴォルフの旦那は盾を前面に構えて、一気に距離を詰めてきた。そのままぶつかれば、体格差で押されて、場外にされる。俺も前に踏み出し、槍でせめて勢いを殺す。


次の瞬間、ガン!と金属がぶつかり合い、鍔迫り合いの状態になる。


「ぐっ、重っ…!」


「そらっ!」


「うおっ!?」


盾を振り抜かれ、上体が反りそうになるのを必死に耐える。不安定な姿勢になれば、確実にそこへ盾で突っ込まれて弾き飛ばされる!


何とか素早く足捌きで横に躍り出ようとするが、そこを剣が伸びてきた!


「っぶね!」


「ち、避けるかよ」


キィンと咄嗟に槍の柄で剣戟を受けて、直撃を避ける。そのまま、トントンと数歩後退して槍を構え直す。やっぱり、向こうも強くなってるよな、そりゃ。


「休ません!」


「まったか、よ!」


先ほどと同じ構図で、受け、捌いて、かわす。それが2度。ヴォルフの旦那の攻撃はコレだけだから、今のところ何とか受けられてるけど、さっきから盾と剣の連撃で、手に衝撃が走って、握りが僅かに緩み始めてる。そして、再び突っ込んでくる。


「しつこい、なぁ、おい!」


このままではジリジリ削られるだけだ。俺は今度は逆に、槍を盾に突き立てるようにして、俺から突っ込む。


「づあっ!?」


俺の突きは盾を確かに捉えたが、盾の角度をズラされて受け流される。そして、ツンのめるようにして崩れかけた所に剣が振り下ろされそうになる。だが、右足に渾身の力を籠めて踏ん張り、右手、右腕、右肩と、槍を持っている右腕全体に力を入れて、腰を捻り強引に槍を振り抜く!


「ょ…っんでんだよおっ!」


「くっ」


あ、くそ!剣で受けやがった!俺の渾身の槍の凪払いによる一撃は防がれた。この試合で初めてヴォルフの旦那に一撃入れたのに、すかさず逃げて体勢を立て直される。


「っつ」


「ふぅ、今のは少し焦った。いい一撃だな。さぁ、続きだ」


くっそ、右腕で無茶な動きと、力の動かし方をしたからか、ブルブルと震えている。取り敢えず槍をまだ握ること自体は出来ているが、構えるのがやっとって所だな。あと、腰も少しヤバい気がする。無理な捻り方したかもしれん。


俺は両手で槍を持つ基本的な構えを解く。右手で槍を握り、左手は腰の後ろの短剣を握りしめる。短剣を振り抜くのは、直前まで待つ。何か隠し持ってるのはバレバレだろうが、ヴォルフの旦那に短剣の間合いは読ませない。


槍を何とか水平にまで持ってきて、両足に力を込める。ほぼ同時に俺たちは動き出し、盾と槍が触れるというところで、俺は槍を手離す。槍は囮だ。でも、無視はできねえだろ!


槍は速攻で弾かれるが、その隙に俺は盾を避けて懐に潜り込もうとする。だが、目の前には剣が迫る。俺は短剣で剣を受ける。が、さすがに無茶だった。手に走る衝撃で短剣を取り落とすが、ほんの数瞬は稼げた!さらに一歩踏み込んで、ヴォルフの旦那に肉薄する。


ここまで来れば、武器の間合いもへったくれもない!そのまま飛び込むようにして、頭突きをかます。


「おっらぁ!」


「っ!」


ヴォルフの旦那も読んでいたのか、旦那も頭突きを繰り出して来やがった。互いの頭がゴン!とぶつかり、鈍い音を立てる。


ぐ、ぉ…石頭が…


戦い方もお堅けりゃ、頭も堅いの、かよ…


グワングワンと揺れる景色の中、俺はそのまま仰向けに倒れた。


「そこまで!勝者、ヴォルフ!」


その瞬間、会場からワーっと歓声が聞こえてきた。ボヤける視界の中で、ヴォルフの旦那は剣を高く掲げていた。


くっそ…やっぱ、悔しいな……


騎士団長を決める試合、俺の戦績は初戦敗退だった。








お焼香のあげ方をよく忘れます・・・


なんかフワッとしてるんですよね、記憶が。なので前の人に習う感じで基本やってたんですが、この前とあるマンガの葬式の話を読んでて、「あれ?これ、全員間違えてたんじゃね?」と気付きました。同調圧力って怖いですねぇ。


今はちゃんと覚えました。次のお葬式からは大丈夫なはず・・・

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― 新着の感想 ―
[一言] >一応、他の騎士より字を覚えるのが早かったから、報告書だったり『ギジロク』?とかいうのを作らされたりした  こりゃあ……コイツはもう少ししたら、騎士団の事務か兵站か。  それか副団長で団長…
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