6-7:人材登用試験と説明会
いよいよ・・・来てしまいましたね・・・花粉・・・
もう山火事でも起きて花粉燃えてくれないかな・・・
6ー7
俺の目の前には厳つい男達が並び、圧迫間が強い。いや、圧迫感というか男臭いというか・・・なんか、そんな感じ。まぁ、ぶっちゃけ長居したくはない環境だね。
さて、これから行うのは騎士の選抜試験である。色んな人材が欲しいので、冒険者ギルドで再募集を掛けてもらった結果、目の前には300名を超える応募者が集まった。チラホラ20にも満たない少年っぽい感じの子もいる。取り敢えず10列に並んでもらっているが、それでも後ろの方まで列が伸びている。
今のところしっかり並べてるね。集団行動が取れない協調性不足の騎士なんか百害あって一利なしだからね。取り敢えず、ここまでは合格。まぁ、なんかイライラしてそうなのが、そこそこ居るけど。
それと最初に俺の『索敵』で犯罪者サーチしたんだけど、殆ど居なかった。でも4人ほどいた。なので、待機していた衛兵に告げて、そいつらには退場願いました。暴れる奴も居たけど、そいつは真っ先におじい様の魔法の餌食になりました。大人しくしてりゃ、怪我せず済んだのに。
で、トラブルはそれだけで終わらなかった。他にも早速新たなトラブルが…
「おい、俺が前だ!チビは後ろに下がれ!」
「イヤだね!俺は今日のために、陽の昇らない内から並んでたんだ!誰が譲るか、毛むくじゃら!」
「何だと、コラァ!?」
まぁ、荒くれも多いかららね。こういうトラブルもある。あーもー。
俺は周囲より高い舞台から降りて、ツカツカと揉め事を起こしている男の近くまで向かう。当然のようにララァナ、ルゥも付いて来る。おじい様は口出ししない。これは事前に決めていた事だ。おじい様には危険だからってめっちゃ反対されたけど。でも、俺がやらないと意味がない。
「そこの揉めている2人、前へ出てきなさい」
因みに、今日の俺は以前装着していた防具を装備している。念のため、ね。一応体は大きくなっていたから、サイズを少し調整してピッタリになっている。ちょっとだけ、成長が嬉しかったりします。
さて、俺の言葉を聞いて、揉めていた2名が前へ出てくる。
1人は30過ぎ?の毛むくじゃらな大男で、1人はまだ高校生くらいな感じの少年だ。今回の募集要項には成人以上って設定したから、15歳以上であれば誰でも受けられるようになっている。その中でも冒険者ギルドの方で少し選定してもらって、それをパスした人員が目の前に居る連中だ。…こんな髭ダルマ通したの?ギルドの騎士の選定基準どうなってるの?まぁ、色んな人材集めてって言ったのは俺だけどさぁ。
「あぁ?なんだ、さらにチビが出てきたな。ここはガキの来る所じゃねえぞ。とっとと失せろ」
俺を見下ろしてきている大男がそんな風な事を口にした。そして、ターゲットは俺のすぐ後ろに控えている、ララァナとルゥに移ったらしい。明らかに嫌そうな顔をしている。
「おいおいおい、何だって蛇と鳥が放し飼いにされてんだ?オメーら亜人が居るだけで獣クセーんだよ。とっとと失せろ」
はい、不合格~。コイツ必要なし。いらない。不快。超不快。
「はぁ…こうまでテンプレな馬鹿が来るとは。人材不足はいよいよ深刻ですね」
「あ?」
「貴方、不合格です。疾く失せなさい」
「はぁ?」
大男の方は明らかに不機嫌な感じを出して凄んでくるが、大して怖いとは感じない。
「聞こえませんでしたか?失せなさい、と言ったんです。貴方は騎士に相応しくありません。あぁ、申し遅れましたね。私、ケイリュオン領主であるリガウス・ドミナンス・ケイリュオンが孫娘、ヒスイ・ドミナンス・ケイリュオンと申します。これでお分かりになりましたか?」
確かに俺はこの領地で大っぴらに顔見せしたことはないけど、おじい様の隣に居る時点で察せられただろうに。いや、見てなかったのか?最初から周囲に喧嘩でも売ってアピールするつもりとかだったのかな?だから弱そうな前に居た少年に狙いを定めていた、とか?うーん、そういう短絡思考はあり得そうな気がする。
俺の名乗りに周囲がザワザワとざわめく。目の前の大男も驚いたようで、若干足が引けている。なんか呆然としている感じ。俺は再び全員の前に移動し、応募者を見渡す。
「初めまして、ヒスイ・ドミナンス・ケイリュオンと申します。あなた方が仕える主の孫娘です」
俺は名乗ると同時にニッコリ笑っておく。
「隠すことでもないので、ハッキリと申しておきます。現在、ケイリュオン領は確かに人材不足です。ですので、こうして騎士の募集をしております。しかし、弱卒は要りません。騎士道を解さぬ者も要りません。忠誠を捧げられぬ者も要りません。私が戦えと言ったら戦いなさい。私が死ねと言ったら死になさい。分かりましたか?では、納得できない者はこの場を去りなさい」
数瞬ポカンとしている連中が多かったが、我に帰ったのか、今のでそこそこの数が去っていった。俺を睨んで剣に手を掛けようとしたのが数人居たが、おじい様が長杖の石突きを床にゴンッ!っと叩き付け、睨み返すことでスゴスゴと去っていった。
今日の俺の役割は試金石だ。ララァナとルゥもね。俺だって小さくたってこの領地の領主一族になるわけだから、俺のことを侮ったり、従えない奴は要らない。そういった連中を炙り出すための役割である。取り敢えず残ったのは100人強ほど。え、さっきの大男?そのまま突っ立ってたから、おじい様が睨んで追い返しました。
まぁ、取り敢えず俺の役割はここまででいいかな?後は、おじい様に進行役を譲ろう。
俺は一歩下がって、おじい様に進行を任せることにする。
「さて、まずは儂の孫娘の試験を突破した者達におめでとう、と言っておこう。勘付いていた者も居たであろうが、今のは試験の1つじゃ。騎士は弱き者に威張り散らすのではなく、護らねばならぬ。害意を向けるなどもっての外じゃ」
俺の試験を合格という、おじい様の言葉を聞いて安堵する応募者たち。最初のは人格テストみたいなもんだから、本当の試験はこれからだ。
「では、次の試験を告げる――」
そこからは俺と、おじい様で考えた試験になる。持久力、瞬発力、根性を見るテストだ。持久力はおじい様が岩の重りを出して、それを全員着用する。で、それを装着したまま持久走である。『魔鎧』も、スキルも使っていいので、人によっては楽だろう。ただ、一応岩なので、重さは20、30kgくらいありそう。まぁ、騎士だからね。人を担いで走ることもあるだろう。で、走るコースは城壁の周囲を1周。多分、5km位とかありそう。いや、もっとか?ズルは出来ないように、正門以外は閉じて、衛兵の見張りを立たせている。なのでショートカットは不可能である。
瞬発力は普通に短距離走。ただしコレも重りを装着してである。根性はおじい様との耐久鬼ごっこ。ベイジ村の冒険者相手にやってたやつ。最後のは一番ヤバイかもしれない。人死には出ないようにポーション類を渡しているが、平気かな?
で、早速持久走がスタートするらしい。俺は手筈通り、ここまでである。
「じゃあ、おじい様。私はマーサのいる孤児院の職員採用試験と説明会の方に向かいますね」
「うむ。ララァナ、ルゥよ、ヒスイを頼む」
「はい、お任せください、リガウス様」
ルゥも同意という事か、ペコリと頭を下げる。俺は2人を連れ立って、別の試験会場に向かう。移動するのにも非常に時間がかかるな、この城。まぁ、王城ほどではないけど。
そして向かったのは領城の敷地内の一角。領城の外縁部に当たる様な、端にある空きの建物だ。今回の孤児院はそこを利用することにした。ここが孤児院の予定地である。
多目的用の建物だったらしくって、宿泊施設としても一応は使えたり、鍛練場としての役割でも活用できたらしい。そこをこれから色々と手を加えて孤児院にでっち上げる。
建物内には、20~40代の奥様方が居た。孤児院の職員なので、基本的な家事能力や子供を相手にできる人材ということで、既婚者をターゲットに絞った。それと追加で色々とお得情報も蒔いてみた。そうしたら、募集が来るわ来るわ。
この世界は娯楽が少ない。で、結婚した後、多くの女性は家庭に入り、専業主婦となることが殆どである。で、家事は確かに多いんだろうけど、別に1日中必要な訳ではないだろう。そうなると、ぶっちゃけ暇になる奥様方が多いらしい。暇な時間は内職であったり、井戸端会議したり…だったら、その人達に働いてもらったら良くない?って思って、シフト制で募集をかけた。ざっくりとは午前、午後、夕。
夕と言っても、夕方から来て夕食作ってもらって、風呂に入れて寝かし付けるまで。夕シフトの人は暗い中歩かせるのは危険なので、希望者は泊まり込みOKにする。その際の寝床の提供は勿論する。
それと、基本的に子供は連れて来てOK。産休、育休も認めます。雇い止めしませんよー、って内容のことを募集用紙に書いてもらった。字が読めない人も多かっただろうから、用紙を張る冒険者ギルドでも説明しておいた。領民が集まりやすい広場にも張っておいた。
あと、家事を放り出す訳にはいかないだろうから、洗濯物を持ち込んで一緒に洗濯を済ませてもいい。一部食材の余りだったりは持ち帰りOKにした。当然、孤児達の食事優先だけど、どうしても端材とかは出ちゃう訳だしね。
他にもあるんだけど、募集用紙に書ききれなかったので、今日は採用試験兼説明会ということである。
「姫様、お待ちしておりました。リガウス様の方は上手く進んでおりましたか?」
「えぇ、最初の私の試験で半分以上減りましたが、その後は問題ありませんでした。今はおじい様が進行しているので大丈夫でしょう」
「それはよう御座いました。では、姫様。次はこちらの皆に」
「はい、分かっております、マーサ」
全体を見渡せるような台に上がり、改めて周囲を見渡す。ざっくり、50人弱くらいかな?『索敵』で調べてみても、犯罪者は居ない。うーん、なんか応募してきたっていう報告の人数より少ない。まぁ、でもこれだけ居れば十分かな?
「お初にお目にかかります、皆様。領主であるリガウス・ドミナンス・ケイリュオンが孫娘、ヒスイ・ドミナンス・ケイリュオンと申します。本日はようこそおいでくださいました」
大勢の前用のゆったりした所作で挨拶をする。ヒソヒソと囁き声が聞こえるが、内容までは聞こえない。というか、こういう主婦層の評価は色々と怖いので聞きたくない。何かが聞こえても知らんぷりをする。これが最強だと思います。
「では、最初に説明会を始めてしまいましょう。本日集まっていただいたのは――」
そこから色々と説明をして、子連れでもOKというのと、産休、育休を認めるという所でザワつきが多かった。やっぱり、この世界では画期的なシステムなんだろう。通常であれば、妊娠、育児となると、解雇されるらしいからね。もしまた働くとなると毎回再就職先を探すところからスタートらしい。運よく前の職場で働ければいいが、全員が再就職できるわけではないらしい。
でもウチの孤児院はそんな勿体ないことはしない。せっかく孤児院運営のスキルを学んで身に付けてもらうんだから、むしろ逃がさん。基本的には去る者は追わずのスタンスだけど、給金払って学んでもらうんだから、退職する際は出来るところ迄粘るつもりだ。まぁ、前世の法律に触れない程度に。
「--と、今考えているのはこんなところでしょうか。あぁ、それと給金の話でしたね」
一斉に周囲の目がギラリと光る。
さて、ここで少しおさらいである。まずこの世界の貨幣について。貨幣は次の通りの価値になる。
ゴルド:略はG
小銅貨:1G
大銅貨:10G
小銀貨:100G
大銀貨:1000G
小金貨:10000G
大金貨:100000G
およそ、1G=10円くらい。
で、次に時間。この世界、一応一日は24時間らしい。教会なんかには時計があるらしく、教会で一定の時間毎に鐘が鳴らされる。6時に1回、9時に2回…ってな感じで、3時間おきに鳴る。鳴らされるのは18時まで。なので、1日の最後に鳴らされるのは5回。なので、「5の鐘」や、「終わりの鐘」と言われている。一番最初のは「1の鐘」や「始まりの鐘」と言う。
あまり教育の行き届いていない場合は色々なモノをシンプルにしないといけない。多くの平民は時計の読み方とか分かんないって話だしね。硬貨が細かく分けられているのもそういう理由っぽい。桁数が多い計算だと、かなり苦行らしいからね。
「まず、朝のシフトは2の鐘から3の鐘まで。午後のシフトは3の鐘から4の鐘。夕のシフトは4の鐘から5の鐘までです。各シフト毎に出す給金は小銀貨1枚です。それと残業する場合にも給金は支払います。その場合の時間はあとで説明しますね」
……異論は認める!小銀貨1枚は100Gです。つまり約1000円。で、鐘一つ毎なので、3時間。つまり大体、時給330円です。はい、前世の最低賃金下回りますね。ブラック企業、ありがとうございます!
仕方なかったんや!人件費、資材費などなどを含めた運営費とか予算を色々加味すると、これでも精一杯なんだよ!それでも、この世界における一部の職場より給金は良かったりもするし、福利厚生も他より遥かに条件が良いんだよ!勘弁して!・・・この世界に労基が無くって良かった。
と、そこでちょっと年若い感じの若奥様って風体の人が恐る恐るといった感じで手を挙げた。
「質問があり--質問の許可を頂け?ます…でしょうか」
「どうぞ。許します」
この辺が貴族の面倒な所だよね。普通は貴族相手に平民は直答しちゃいけないんだってさ。ただ、そんな仕来たりに従ってたら、人材が集まらないので、今回はポイ捨てである。
「あ、ありがとうございます。そ、その姫様の思惑が見えてこない、のです。こんなに私達に有利な条件で、一体何を考えているつもり?あ、なのでしょうか…」
・・・この条件で、有利な条件と言えてしまうあたり、この領地のヤバさが分かる。うーん、やっぱり価値観が違うからなぁ。っと、とにかく今は質問についてか。
「考え、ですか?」
ふーむ?警戒されとる?大それた考えなんか無いんだけどね。普通に将来の領地のための人材育成という自分のためですが。…まぁ?あとは俺も最低限の良心というか、そういうのが無い訳じゃないですし?可哀想だなー、と思ったら無理のない範囲で手を差し伸べるくらいはしますとも。近くに居る人が生きるのにすら苦しんでいたら、気になりますし?
「そうですね。まず最初に私の生い立ちを話しておきましょうか。私は両親の記憶がありません。森で彷徨って居たところを、情報を頼りにおじい様が探し出して下さいました。そこから平民の中で育ちましたから、元々貴族としての意識は薄いのです」
急に打ち合わせと違うこと言い出したからか、マーサからの視線が痛い。ちょっとは見逃して…
「なので、警戒をしなくて大丈夫です。よっぽどの事でない限り、不敬罪などにはしません。それと、そういう生い立ちなので、当てもなく1人で居る不安も、寂しさも分かるつもりです。そういった孤児を救いたいだけなのですよ。勿論、育った孤児には領地のために働いてもらうという条件はありますが。それもずっとではありません。ちゃんと孤児院で育った分を返済してもらえれば自由です。その後は他所の領地で働いても良いですし、引き続きこの領地で働いて貰っても構いません。考えとしてはそんなところでしょうか」
ま、出来る限りウチで登用しますけどね。ウチで育てたんだから、できれば逃がさん。
「…分かりました。ありがとうございます」
そこから少し緊張が解けたのか、色々な質問が来て、それを1つずつ解答していく。
で、話を聞く限り、どうやら警戒して今日来なかった人達も居るらしい。なので、今日の説明会を聞いた限りでは、希望者がもっと殺到するかもしれないらしい。うーん、孤児の人数にもよりけりだけど、決めてた人数よりもうちょい雇ってもいいかも?
あと奥様方からの提案で、早朝と夜シフトを組んではどうかと言われた。小さい子は起きた時や寝る前などで、グズる事があるから、監督する人が居る方が良いのではないかという考えかららしい。へぇ…
寝る前後でグズる子供とか居るんだ。そのまま起きるか、寝りゃいいのに。ということなので、始まりの鐘から2の鐘までのシフトと夜中の泊まり込みシフトが増えた。
あとはここから家までの距離だったり、家庭事情によって誰がどのシフトに入るかなどを決めればいいだけだ。と言っても、孤児の数が分からないので、一旦今日は家の近い人を10人だけ雇うことにした。この10人には孤児達が入ってくるまでの間、この建物を掃除、整理、準備してもらう役割だ。
この10人を決めるのがまた大変だったが、取り敢えず割愛する。…女の争いは怖いものだとよく分かったよ、うん。
とにかく、今日雇わなかった人達に関しても2次募集を掛けるから、話を広げてほしいと言っておいた。
さて、次はどうやって孤児を集めるか…
「姫様!文官の採用試験が始まります!お急ぎください!」
あーはいはい。
自分のせいとはいえ、過労死しない程度に頑張ろう。…平気かな、これ?
いつも誤字脱字報告等ありがとうございます!
花粉の季節が始まると、目薬が精神安定剤化する花粉弱者です・・・
この前、うっかり忘れて薬局に駆け込みました。




