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6-2:新年の王城

キリ良く切らず一気に書いちゃったので、今までで最長になってしまいました・・・


次からはこれの半分くらいに戻します。

6-2



王城の一室で俺たちを出迎えてくれたのは、国王陛下であるアウグスト・フォルネウス・ウル・ユースティナと、王妃である二ミュエ・フォルネウス・ユースティナでした。んで、この二ミュエ王妃様はおじい様と面識があるらしい。


「あら、覚えてらしたんですね。お恥ずかしいですわ」


「スーヴェインには頻繁に足を運んでいたからのぅ」


「えぇ、その節は大変助かりました」


スーヴェインは交易が盛んな領地だ。その理由はこの国で唯一他国と接しているためなわけだけど、問題もある。それは昔から戦争や小競り合いが絶えないってこと。まぁ、文化の違う他国と接してれば、問題の1つや2つあるだろう。一応、グランドル領にも他国へ抜ける裏道があるらしいけど、魔獣の巣とかを抜けないといけないから、あまり一般的ではないってマーサが言ってたな。俺、そっちのルートで他国に連れ出されなくて良かった・・・


それから少しの時間、これからの新年の挨拶の際の段取りを軽く打ち合わせる。俺の出番もあるので、しっかり聞いておきました。まぁ、俺の場合は本当に挨拶するだけらしいけど。俺に喋らせたら、絶対ボロが出るからね。挨拶だけなのはありがたい。


「そろそろお時間はよろしいのですか、陛下?新年の挨拶まで時間がありませんよ?」


「はぁ、もうそんな時間か。本当はこのまま先生と色々と話をしたかったのですが、仕方ないですね。先生、また後日お話しさせていただいても?」


「どちらにせよ、ケイリュオン領のことや移動についても話さねばならぬであろう?その時にまた話せばよい」


おじい様の言葉に、パァって感じで国王陛下の顔が明るくなった。また話をするという約束を取り付けて、国王陛下は満足そうである。で、俺とおじい様、国王陛下は連れ立ってこれから新年の挨拶をするという会場に向かう。王妃様?新年の挨拶に王妃は基本的に出ないんだってさ。いいな~。


さて、そんなこんなで、到着しました。会場に。超大型のホールみたいな場所で、それより数段高い舞台が国王陛下が挨拶する場所らしい。俺とおじい様は舞台袖みたいな場所で待機させられた。国王陛下に呼ばれたら出て行くらしい。


ホールの中は立食のビュッフェみたいな形式で軽食が出されているみたいで、ここまで微かに食事の匂いが漂ってくる。ホールの方は多くの人でごった返していた。うあ、これ全部貴族なのか。ひえ~~。


ザワザワとしていたホール内だけど、国王陛下の登場でシンと静まり返った。いよいよ始まるらしい。


「皆、よくぞ新たな年が始まるというこの佳き日に集まってくれた。今年も無事に我が王国が新年を迎えられた事を言祝ごう」


そこで国王陛下が言葉を切り、ザっと舞台下の貴族たちを睥睨した。


「さて、本来ならばこのまま新年を祝うために盃を傾けたいところだが・・・昨年は実に様々な事が起きた。取り分け、私と父である先王が行ったディアノーグ公爵家を始めとした幾つかの貴族家を取り潰したことは皆の記憶に新しいと思う。かの者達は王国法を破り、幾つもの不正行為を行っていた。横領、脱税、殺人、違法な人身売買。そういった罪状が幾つも出てきた。王家の、王国の、代々の王が、貴族が、築いてきた法を破ることは我ら王国に住まう者達への侮辱に他ならない。かの者らは王国の貴族に相応しくない。故に、幾つかの家を取り潰した。この場にいる者の顔ぶれが変わっているのはそのためである」


ザワザワと貴族たちが囁くのが聞こえる。しかし、国王陛下がスッと手を軽く掲げ、貴族たちを黙らせる。


「・・・風が必要だ。我が王国は代々に渡って繁栄を続けてきた。しかし今となってはもはや過去の栄光だ。親から子へ、子から孫へ。血統による継承。しかし、それ故に昨今は停滞を招き、ディアノーグ公爵家のような淀みが生じた。この国には新たな風が必要なのだ」


再びザワつく貴族たち。しかし、そんな囁きを無視して、国王陛下がこちらへ視線を向けて、手を差し出すような恰好を取った。あーはいはい。登場しろってことですね。おじい様が歩みだし、俺が追従する。舞台に出る直前にマーサが「頑張りなさいませ」と小さく応援してくれた。チラと視線を向ければナディとイリーナも頷いて、エール(?)を送ってくれる。彼女らは舞台に上がれないから、ここからは俺とおじい様だけだ。と、遅れない様にしないと。


おじい様の登場で、会場がどよめく様に貴族たちの声が大きくなる。


(あれは行方不明だと噂の・・・)


(平民出身風情の成り上がり者がなぜ・・・)


(馬鹿な・・・あの者は死んだ筈では?)


(いや、なぜ今になって陛下自ら・・・)


おーおー、聞こえる聞こえる。色んな声が。殆どの貴族からは歓迎されてないみたいだね。もうちょい取り繕うとかしても良いんじゃないかな?さて、この後の発表でどうなる事やら。


「さて、5年以上前であったか?我が父が在位していた期間に、平民より初めての上級貴族が誕生した。それがこの者、リガウス・ドミナンス卿である。当時は社交の場などで話題に上がる事も多かったのではないか?いや・・・話題に上げたくもないという狭量な者の方が多かったか?」


国王陛下が貴族たちを睨みつける。少なくない貴族連中がやや苦そうな表情をしているのが目に映った。うーん、狭量。既得権益が侵されると思ってたのかね?それよりも仲良くして力を借りるとかした方が建設的だと思うけど。まぁ、おかげで俺はおじい様と会えたので、結果オーライなんだけどさ。


「ドミナンス卿が陞爵する大きな要因となったケイリュオン領の動乱。以降、ケイリュオンの領主は不在であった。これは領主を任ずるに足る貴族が居なかったからだ。また先代の領主一族に虐げられてきた領民たちからの反感も根強い。下手な貴族を任ずればケイリュオンはいよいよ離反していたであろう」


「平民の反乱など鎮圧してしまえばよいではありませんか!何のための中央騎士団か!陛下は平民を恐れておいでか!?」


誰かがそんな事を口にした。ビール腹の恰幅のいい男だ。それに追従するような呟きや声が聞こえてくる。


「剣を振りかざすのは容易だ。騎士団を差し向け、反乱を起こした平民を粛正することなど容易い。だが、そのあとの事まで考慮しての貴卿の発言か?」


「・・・そ、れは」


「考えが及ばぬか?塩を生産しているのは平民だ。衣服を作り、住居を作り、作物を育てる。それらは全て平民が行っている事だ。貴卿は平民の居なくなったケイリュオンで如何にして塩を作り出す?如何にして生活するつもりだ?」


「・・・」


「私も平民相手に媚びへつらう様なつもりは毛頭ない。しかし、貴族、王族は平民に支えられ生きていることを忘れてはならないのではないか?故に王族は、貴族は、平民に庇護を与えるのだ。・・・今の発言からも、この場にいる貴族の中にケイリュオンの領主を任ずるに足る者が居るとは到底思えぬ。故にここに居るリガウス・ドミナンス卿を辺境伯へと陞爵し、ケイリュオンの領主に任ずる!これに異を唱える者は今申し出よ!!」


国王陛下が最後に声を張り上げて、貴族たちを睨みつける様に睥睨する。う・・・最後の声はなんかビリビリした。声に魔力を乗せるとこんな感じになるって、前におじい様から聞いたことがあったな。もしくは何かのスキルとかなのかな?


貴族たちはシンと静まり返り、先ほどの発言をした貴族の男は目を伏せていた。


国王陛下はおじい様の方に向き直り、おじい様も国王陛下の横まで進む。


「ドミナンス卿。そなたを辺境伯へ陞爵とし、ケイリュオン領主に任ずる」


おじい様が国王陛下の前に跪いて、頭を下げる。


「陛下の御心のままに。我が杖と、王家より与えられしドミナンスの名に懸けて」


「ケイリュオンの地を正しく治め、繁栄させることを期待する」


「御意」


「さぁ、立つがいい、ドミナンス卿」


国王陛下が改めて貴族たちの方を向き、おじい様もそれに並ぶ。


「ここに新たなケイリュオン領主が誕生したことを、第24代国王アウグスト・フォルネウス・ウル・ユースティナの名において宣言する!」


国王陛下の宣言に数瞬シンとしていたが、ポツポツと拍手が鳴り響き、ホール全員が拍手で応えた。さっきのビール腹のやつなんか、明らかに不服そうな顔してるけどね。他にも数名。もうちょい表情を取り繕おうよ。俺が言えた事じゃないかもしれないけど。い、いや、まぁ?最近はマーサとかの教育で表情筋が悲鳴を上げそうになるほど、表情を固定する練習してるけど。


ある程度拍手が続いたところで、国王陛下が手を軽く掲げて制止させる。


「さて、ドミナンス卿のケイリュオン領主就任にあたり、もう一つ皆に知らせておきたい」


国王陛下が俺へと視線を投げかける。はいはい、出番ですね。もうさっきから胃が痛いを通り越して何も感じなくなってきた。最悪失敗しても、こんな幼女のやることだから皆大目に見てくれるでしょ、たぶん。もうそう考えないとやってられんわ!!とにかく、俺は国王陛下の隣まで進み、打ち合わせ通りに最初は待機する。


「先ほどから同じ舞台に上がっている、こちらの小さな淑女についてだ。彼女はドミナンス卿の正式な後継である」


舞台役者のように俺のほうを振り向いて、ホールにいる全員の注目を俺に集める。う~あ~・・・いよいよ挨拶かぁ。とっとと終わらせるに限る。でも焦って噛んだら元も子もないので、口調はゆったりと。


「お集りの皆様、ごきげんよう。お初にお目にかかります。ドミナンス家当主、リガウス・ドミナンスが孫娘、ヒスイ・ドミナンスと申します。皆様に、女神と精霊の祝福のあらんことを」


ふぃ~、噛まずに言えた。内心でホッとしていたが、一気にザワツキが大きくなった。俺の立つ場所まで1人1人の声は聞こえないけど、ヒソヒソヒソヒソと嫌な感じである。が、表情は崩さない。これがマーサ達侍女軍団の教育の賜物である。言ってて嫌になるけどね。


「このヒスイ嬢は件のディアノーグ公爵家に囚われていた。元々ディアノーグ公爵家は悪辣であったが、ヒスイ嬢の存在を知らなかったというのも一因であったのだろう。そのため、多くの貴族が集まるこの日に面通しをしておこうと考えた。改めて言っておくが、ヒスイ嬢はケイリュオン領の後継である。故に私の名において、ヒスイ嬢は王家の庇護があると心得よ!」


うあ・・・貴族全員ポカンとしてる。そりゃそうだよね。こんな子供1人に王家の庇護って、どういう事だよって話になる。


だが、静まっていたのもほんの少しの間だけだった。貴族の波の中から3人、やけに身なりのいい貴族が進み出てきて、舞台のすぐ下に膝を付いた。


「ご英断でございます、陛下。辺境伯位を賜りし我らも陛下の決定に賛同し、新たな同胞の誕生を歓迎いたします」


3人の中で一番年嵩と思われる人物がそう言えば、彼らの後ろに居る貴族たちも全員膝を付いて頭を下げた。


それを見下ろして、国王陛下は鷹揚に頷いた。


そこから再び国王陛下からの貴族全員への労いの言葉があって、その場は解散となった。俺もお役御免である。貴族たちは出された軽食に舌鼓を打つそうだが、俺は速攻で先ほど打ち合わせをした部屋へ逆戻りである。おじい様と国王陛下は午後の辺境伯達が揃う会議へと出席するとのことで、途中で別れた。とにもかくにも、大きな問題も起こらず、俺の新年の挨拶は無事に終了した。
















--☆














んで、現在。俺はガッチガチに緊張した状態で席に座っております。何でかって?これから王妃様と昼食会となったからです♪


……マジねぇわ~。ホントつれーわー。超逃げてーわー。


いや、確かに時間的にはお昼時ですよ?でもお相手はこの国のトップのご夫人です。そんでもって、今日の挨拶のためにテーブルマナーだったり、作法だったりは最低限しかやってこなかったので、ちょいちょいどうすりゃ良いのか分かんないです!助けて、マーサ!


チラリと振り返れば、目の合ったマーサに軽く首を横に振られた。諦めんなよぉぉぉ!


いや、マーサもね?最初はいつだかの先王陛下のとき同様にやんわり断ろうとしてくれたよ?でも…


「あら、私は気にしないわ。それに、私には娘が居ないから、丁度いいわ。一度女の子の教育とかしてみたかったのよ、ふふふ」


ってな感じで、王妃様の趣味(?)に付き合わされることに。ひょえぇぇ…


で、始まった昼食会。先王陛下以来だわ、食事の味がしなかったの。こんちくしょー。見た目的には美味しそうな食事なんだけど、すげー損した気分。でも食事がアレだね。ちょっと肉類多めというか。いや、俺も肉料理は好きだからいいんだけどさ。バランスがちょっと…しかも、緊張で味しないし!


「あら、そんな風にしたらダメよ?これは……こう。こうするのよ?」


「こう、ですか?」


「そう、上手よ」


少し間違いがあると、王妃様直々に席を立って、後ろから俺の手を覆うようにして正しい動作を教えてくれる。音を立てないだとか、スープの掬い方だとか色々。王妃様はすげーニコニコしてるんだけど、やられてるコッチは緊張でガチガチである。フォークやナイフなどの食器を取り落とさない事を褒めて欲しい。で、微妙に立つ位置を変えて、俺の視界に入ってくるマーサからの視線が怖い…あ、でも王妃様の手はすごい柔らかかったです。


「ふふふ、楽しかったわ。ヒスイ、王城の料理はいかがだったかしら?」


味しなかったです、貴女の所為で。なんて言えるはずもないので、無難に返しておく。当然、表情を崩さずに。


「大変美味しかったです」


「そう。なら、良かったわ。では食後にお茶をいただきましょう」


「はい」


再び味のしないお茶会ですね、分かります。うあぁぁ、挨拶とかの所作だけで良かった筈なのにぃ…


そしてそのまま強制的にお茶会に突入した。話題は多岐に渡った。王城での出来事であったり、俺やおじい様の私生活についてだったり、身の上話 (カバーストーリー)だったり。何と言うか、話題が途切れないというか。油断すると、俺の情報をスッポリ持っていかれそうな雰囲気すらある。王妃様の話術コエー。


「そういえば、先王陛下からお伺いしたわ。亜人を専属侍女として雇っているそうね?」


ピタリと俺の動きが一瞬止まる。あ、危な。手に持ったカップ落とすところだった。


「えぇ、当主であるおじい様と、先王陛下より許可をいただいております」


「ああ、勘違いしないで?亜人を蔑視してる訳じゃないの。確かに中央である王都では亜人蔑視の風潮は強い。でも私は元々スーヴェインの出なのよ。だから、亜人が大半を占める国とも交流があったわ。彼らが全員危険視されるような種族じゃないっていうのも知ってるわ」


それを聞いてホッとする。良かった…一応さっきの俺の発言は辺境伯と先王からの許可得てるぞー、お前より目上の人間や後見人からの許可だぞー、って若干の威嚇というか、警告(?)も入ってたんだけど、ちゃんと通じたみたい。俺もこのくらいであれば、出来るようになりましたよ。マーサ達から、もう2ヶ月くらい教育受けてるんだし。


「貴女に仕えるという亜人がどういった人物なのか気になっただけ。深い思惑はないわ。だから紹介してくれないかしら?」


「分かりました」


俺はマーサに目配せして呼んでもらうことにした。実際に呼びに行ったのはマーサからの指示を受けたイリーナだけどね。マーサは見張りですね、はい。


「お呼びに預かり、参上いたしました。お初にお目にかかります、王妃殿下。人の身ではない私達がお目汚しすることを何卒ご容赦ください」


部屋に入ってくるなり、ララァナとルゥは平伏でもするくらい低く頭を下げた。…ララァナにこんなこと言わせたくなかったんだけどな。お目汚しとかさ。


「お目汚しだなんて思ってないわ。本当よ?さぁ、顔を上げてちょうだい」


王妃様の言葉に、ララァナとルゥが顔を上げる。そして、2人の顔を見て、俺の顔を見て、微笑んだ。え、何?何かあるの?


「貴女はラミアでこっちの子はハーピーなのね?ふふ、可愛らしい顔立ちじゃない。ねぇ、私に仕える気はないかしら?」


「…え」








俺の口からそんな風な間の抜けた声が漏れた。そ、れは……


え、っと、王妃様は2人を気に入ったってこと?でなきゃ、そんなこと言わないよな。でも、こんな亜人蔑視の中心地に2人を鞍替えさせるのはナイ。絶対ナイ。断固としてNOである。


う…でも、相手は王妃様な訳で…えぇっと、不敬罪とか……



あー、もう!そうなったら、おじい様ごめん!助けて!そして、俺の見た目は幼女!子供!


そんな相手にムキになったら、あの王妃様は王家の品位を貶めてるとか言い触らして国民の反感煽ってスーヴェインの実家に抗議してクーデター起こしてくれる!もう、どうにでもなれ、こんちくしょー!


俺だって考えなしかよ、って思うよ!?でもさっきララァナとルゥと目が合っちゃったんだもんよ!思いっきり不安そうな目してたからさ!そんなん動くしかないでしょ!これでも元は男なんだから、女の子守る事くらいするとも!


俺はカタリと音を敢えて立てて椅子から降りる。マーサには後で怒られる気がするけど、しょうがない。


全員の視線が集まる中、王妃様の前まで進みララァナとルゥの前に立つ。そしてサッと膝を付いて、真っ直ぐ王妃様を見上げる。う…首キッツイなぁ。


「王妃殿下、突然の無礼をお許しください。しかし聞いていただき言が御座います」


「いいでしょう。聞きましょう」


「はい、感謝いたします」


さぁ、腹を括れ。一歩間違えれば、この場に居る全員の首が飛ぶぞ。


「王妃殿下、先ほど中央では亜人蔑視の風潮が強いと仰っておりましたね?」


「えぇ、そうです」


「では、2人を召し上げれば、王妃殿下のお立場が悪くなるのではありませんか?」


取り敢えずは、こっちは貴女の立場を慮っての発言ですよーっていうアピールである。叛意はないですーって意思表示だ。


「一時はそうでしょう。社交の場では噂話で持ちきりになるでしょうね」


「それは、王家の名を貶める一因になってしまうのではないかと思うのです」


「…それはそうでしょうね」


「王家は先だってのディアノーグ公爵家の一件で、強権を見せることで、王家に力ありと示しました。しかし、王妃である貴女様がここで無闇に社交界の噂になれば、国王陛下、先王陛下の行動が水泡に帰すのではありませんか?」


「…それもそうかもしれないわね。しかし、私はその子達を気に入ってしまったの。それでも欲しいと私が言えば、貴女はどうするのが適切かしら?王家に仇なす者として名を連ねるつもり?」


「…必要とあらば」


「あら」


目を瞬かせるようにして、王妃様は驚いたような表情をしつつも、次の瞬間にはクスクスと小さく笑っていた。なんかさっきから掌の上で転がされてるような気がしてならないな。これだから為政者は!


「恐れながら私は、未だにこの国の成り立ちも、在り方も学んでいる最中の身です。しかし、陛下に仕える臣民であることは理解しております。故に陛下の、王国の損益に繋がる原因があれば、たとえ身分違いだと謗りを受けようと、諌めいたします」


「…」


「そして、陛下、王国のためではなく、何より私はこの2人の主です。2人の身を守る義務があります」


「それはおかしいわ。彼女たちは侍女であり護衛でしょう?それは逆ではなくて?」


「…そうかもしれません。しかし、私は主であると同時に、2人の友人なのです。寒空の下、身を寄せ合った友人なのです。…臣民としてお諌めする、主として守る。それらは建前です。友人として私は2人を守りたいのです。たとえ何が相手であっても」


「…」


王妃様が黙ってしまった。うーああぁぁぁ、言っちゃった。言っちゃったよぉぉ…マズイマズイマズイ。これ、不敬罪一直線ルートじゃないの!?えーとえーと、取り敢えず、おじい様ごめん!あなたの出世街道は一日にして終わりそうです!でも、悪気はなかったんですぅ!お願い、助けてえぇぇ!


「ぷっ…」


「?」


「あははははは!」


「!?」


王妃が急に笑い出した。え、なに?どういう事!?やっぱり試されてたってこと!?生存ルートはまだあるって信じていいですか!?


「はははははは…はー、こんなに笑ったのは久しぶりね」


「…ニミュエ様、幼子相手にお戯れが過ぎるのではございませぬか」


王妃に話しかけたのは声の感じからして女性の騎士だ。フルフェイスの兜被ってるから分からないんだよね。


「ふふ、もう警戒しなくて大丈夫よ。取り敢えず、席に着きましょう?ほら、皆も元の配置に戻りなさい。武器はもう必要ないわ」


「へ?」


武器?どういう事だろうな、と思っていたら、扉を守っていた騎士や王妃様の傍に控えていた騎士が腰の剣に手を当てていたのに今さら気付いた。え、俺切り捨てられる寸前とかだったってこと?え、こわ。


と、思っていたら、後ろでカチリという音がした。振り返ってみれば、ララァナが服の中に何かを戻したみたいだ。位置的にいつも短剣を忍ばせている所だね。よく見るとルゥもか。


…君らね。もしかして、この国のトップ勢相手に武器抜いてたの?俺が交渉で納めようとしてたのに?いやまぁ、あんま上手くいってなかったけど。


とにかく、王妃様の言葉にしたがって先程までと同様に席に着く。


「まず、謝罪を。貴女たちを試したこと、お詫びするわ」


「い、いえ、私も余計なことというか、妙なことを口走ったと言いますか…」


「そうね。一応貴女は、辺境伯家唯一の長女なのだから言動には気を付けた方がいいわね」


ぐぅの音も出ないので押し黙る。これからの成長に乞うご期待ということで、許してほしい。


「あの、それで試したというのは?」


「そうね、話しておかないといけないわね。私が今日ここへ来た目的は、貴女を見定めるためでもあったのよ」


「見定める、ですか?」


「えぇ、そうよ。貴女の祖父であるドミナンス卿は私も昔から知っているわ。先王陛下の懐刀であり、先王陛下が行ってきた政策の影の立役者。それだけ活躍していたのだから、社交界では噂の的。と言っても、彼の活躍に殿方たちは嫉妬して話題にすらしていなかったようですけどね。イヤですね、男の癖にみみっちぃというか、器が小さいというか」


ふぅ、と嘆息しつつ王妃はやれやれといった様子で男性貴族を扱き下ろす。容赦ないな、この王妃様は。まぁ、男のジェラシーはみっともないというか、醜く写りがちだよね。でも、男だって嫉妬の1つ2つすると思うよ?元男の俺が言うんだから、間違いない。え、俺?あんまり嫉妬とかはなかったかなぁ。元カノがアイドルグループの追っ掛けやってたけど、まぁ趣味の範囲かなって容認してたし。別れた理由も嫉妬とかっていうより、空中分解というかなんというか・・・



話が逸れた。えーと、そう。俺のことを見定めるって話だ。


「とにかく、ドミナンス卿が上級貴族入りするのではないかと、女性貴族の間では噂になっておりました。勿論、殿方達の耳に入れば面倒なことになるでしょうから、女性貴族の間だけで。しかし、ドミナンス卿は出奔してしまい、約5年間行方不明でした。それが今回、再び我々の前に姿を現したんですもの。話題にならない筈がありません。それが後継を連れ帰ったとなれば尚更のこと」


王妃の目がギラリといった感じ光る。


「私はこの国の王妃です。先ほど貴女が言ったように陛下の、ひいては王国の損益に繋がる様な事は避けねばなりません。ケイリュオンは王国を支える4柱の内が1柱。その後継である貴女のことは見定めなければならなかったのです」


「私は疑われていた、ということですか?」


「えぇ、そうです。ドミナンス卿の人となりは知っています。しかし、貴女はそうではない。それに何もかも都合が良すぎるというのは疑いたくなるものではなくて?」


…ごめんなさい。都合が良ければ「わーい、楽ちーん」って喜んじゃうタイプの人間です。た、多少は疑うよ?でも多分流されるというか、深く疑わないと思う。沈黙しても仕方ないので、「そうですね」と同意しておく。


「それより、都合が良すぎるというのは、どういう事でしょうか?」


「ケイリュオンは領主不在となって5、6年ほど。それを補填するために、いつまでも西に割いている時間も人員もないということです。そもそもケイリュオンの領主になり得る貴族は、少なくとも今の王都には居ないでしょう。そこへドミナンス卿が後継者である貴女と共に現れた。元々後継者が居ないという理由で上級貴族への陞爵を固辞してきたドミナンス卿が。都合が良すぎるでしょう?何かあるのではないか、と。例えば貴女は本当にドミナンス卿の孫娘なのか、とか」


はいはーい、異世界の者です、魂は。何なら性別も違いますが。まぁ言っても信じてもらえないだろうけど。ってか、この王妃様鋭いね。怖い怖い。


「王妃殿下、私にはおじい様に拾っていただくより前の記憶が御座いません。両親のことも記憶にないのです。恐らく、私の両親が死んだショックから、記憶にフタをしたのだろうと言われました。なので、王妃殿下がお疑いになるのも無理はないのかもしれません」


そう、俺とおじい様が作ったカバーストーリーは所々穴がある。取り分け、おじい様に拾われるより前の記憶がないというのが、結構致命的だったりする。今回みたいに俺自身の出自を疑われたりするからだ。


「しかし、私はおじい様と出会えたこの国が好きです。あの森で、村で過ごした日々は私の宝物です。姉のように私を大事にしてくれた友人ができました。こんな私に仕えてくれる侍女も居ます。大事な人たちがこの国でできたのです。だから私はこの国を裏切りたくありません。言葉だけで信じることは難しいと思います。だから、スキルでも魔法でも、疑いが晴れるのなら何でもお受けいたします。どうか信じてはいただけませんか?」


…もし、嘘を見破る系のスキルとかあったら滅茶苦茶ヤバイけどね。そ、その時はその時ということで。未来の俺、頼んだ。


「…はぁ、そんな風に言われてしまっては、ねぇ?取り敢えずご安心なさい。もう完璧にというわけではありませんが、疑ってはいません。仮にもし虚偽であったり、もしくは他国と何がしかの繋がりがあるなどすれば、逆に利用しますから」


ニッコリ笑ってそうは言うが、この王妃様多分マジだ。マジでやる気だ。コエー…


「それと、何でも受けるというのは止めなさいな。そういう事を受けたという事実がある事を汚点とする貴族も居るのですから。さ、お茶会に戻りましょう」


うぅ、やっぱり為政者って怖い。関わり合いたくないなぁ。


取り敢えず、切り替えよう。とにかく普通…普通(?)のお茶会に戻りました。でも、再び王妃様による教育が始まってしまった。うおぉぉぉ、これ以上俺を苛めないでくれー…


お茶会でも相変わらず俺は色々なことを指摘され、矯正された。そのたび、マーサから少し厳しめの視線が飛んでくる。うぅ、ゴメンって。今度から教育はちゃんと真面目に受けるから。そんな目で見ないでくれ。針の筵に座った気分で居心地が悪い。はぁ…







「ふふ、ヒスイは飲み込みが早いわね」


「…ありがとうございます」


「それにしても、予想はしていたけれど今年の領主会議は長いわね」


頬に手を当てて困ったような表情で王妃様が嘆息する。ホント長いね。昼食、お茶会、尋問(?)、再びお茶会と来て、既に日が傾きかけている。沈むまではまだまだ時間はあるだろうけど、それにしたって長い。途中トイレとかで中座したりもしたけど、ぶっ続けでこれはキツイ。


「長いのは、おじい様がケイリュオンの領主になるからでしょうか?」


「えぇ、そうでしょうね。打ち合わせておくことが多くあるのでしょう」


うーむ、パッパと決めること決めて迎えに来てほしい。若干の気まずさを隠すようにカップに口をつける。うん、もう今日だけでこのお茶何度飲んだか。以外と美味しいんだけどね、このハーブティー。さすがは王城で供される品である。何のハーブ使ってるんだろう?


「あら、ヒスイはこのお茶を気に入ってくれたのかしら?」


「はい、大変美味しいと思います」


「そう。では、今お代わりを持ってこさせましょう」


王妃様付の侍女がサッと寄ってきて、王妃様からの指示を受けて、部屋の外で待機しているであろう他の侍女へ伝言をしたようだ。それからも色々と話して、今度はおじい様の弟子だからか「魔法の鍛錬もやっているでしょう?」と聞かれ、その内容を色々と話してみた。『魔鎧』を習得しようとしてぶっ倒れたり、『魔力線』の練習で肩を脱臼したり、雪の中鬼ごっこをして抑え込まれて翌日は風邪を引いたり。


王妃様は大丈夫だったっぽいけど、視界の端のマーサは口が少しヒクついていた。あ、あれ?話しちゃいけなかった?えっと、気を付けよう。


暫くすると、扉を開けてワゴンに乗った新しいティーポットや菓子類などが運び込まれてくる。








…えー、突然ですが問題が発生しました。うわー、マジでかー。マジかよー・・・もうこれ以上のイベントとか勘弁なんですけど。


いやね?部屋の中にワゴンが入ってきた途端、頭の中で久しく聞いてなかった警報ブザーみたいな音が鳴り響いたんですよ。これは俺のスキル『危機察知』によるものだ。つまり、あのワゴンが危険ってこと?えっと…こ、こういう場合どうすりゃいいの!?


えーと、取り敢えず危険なんだから、遠ざけるか排除しないと…危険な目に合うのはもうコリゴリだし。


「待ってください。そのワゴン、少しその場で止まっていただいて良いでしょうか?」


俺の急な発言にワゴンを押していた侍女さんがピタリと止まった。さっき、王妃様の指示を聞いていた侍女だ。


「侍女の方、ワゴンから離れていただいてよろしいですか?…そう、そのまま扉の前まで」


うん、侍女さんが離れたけど、侍女さんの方には反応していない。じゃあ、やっぱりこのワゴンに何かあるんだ。ワゴンは一般的な4脚のもので、最上段にティーポットであったり菓子類など。中断、下段にカップだったりスプーンだったり、引き出しのようなものが設置されている造りだ。人ではなく、完璧に物体だ。これが布でも被せられてたら、その中に暗殺者でも居るのかなって疑ったけど、そうじゃないっぽい。じゃあ、一体何に反応してるんだ?


俺は王妃様に断ってワゴンに近付こうとして、マーサに引き留められた。


「お嬢様、いかがなさいましたか?」


マーサの目が「勝手なことするな」って言ってる。逆らうと後が怖いので、理由を話してみる。


「私のスキルが反応してるんです。このワゴンに」


俺の言葉に室内がザワりとどよめき、俺はマーサに後方へ下げられた。王妃様も同様だ。で、女騎士の1人がワゴンに乗っている1つ1つを検分していく。


そして、女騎士がティーポットに触れて動かしたら、その動きに頭の中の警報が反応した。


「騎士の方、それです。そのティーポットに私のスキルが反応しています」


「承知いたしました。感謝いたします、ヒスイ嬢。皆、警戒せよ」


「ジゼル、その中身は…」


「はい、王妃殿下。しかしここで確認するのは危険かと。外にて確認いたします」


「2名ほどジゼルに伴をなさい。ヒスイ、貴女の方からも確認のためと証人のために侍女を貸してくれるかしら?」


勝手に判断していいのだろうか?取り敢えず、分からないことは聞いてみるべきだろう。俺を抱き抱えているマーサに視線をやると、マーサは俺をナディに受け渡した。


「お嬢様、私が参りましょう。ナディ、お嬢様をお願い致します」


「はい、マーサさん」


ジゼルと呼ばれた女騎士と他2名に付いて、マーサは部屋の外へと歩いていった。


「ヒスイ、貴女のスキルはどうかしら?まだ反応していて?」


「いいえ、消えました」


「では席に戻りましょう」


それから待つこと10分ほど。マーサ達が戻ってきた。ジゼルが王妃様に耳打ちをしたと思ったら、王妃様は少し考え込んでから、他の騎士を呼び寄せるのと城内に居る人間を外に出さず、その場に留まらせるよう指示した。ただし、領主会議だけは邪魔しないように、と。


まぁ多分、毒でも入ってたんだろうね。それも俺の『危機察知』が反応するレベルのヤバい毒が。今回のはかなり五月蝿かったからね。


で、当然俺もここで待機となります。ただ、それから少ししたら、扉が勢いよく開け放たれた。


「ヒスイ、無事か!?」


「ドミナンス卿、落ち着いてください!王妃殿下の御前です!」


「儂の孫娘もおるわ!止めるでない!!」


なんか、おじい様が左右両方から騎士に押さえられているけど、意にも介さずズンズンと俺の元まで進んできてしまった。というか、領主会議は邪魔しないようにって王妃様が言ってたのに…もしかして丁度終わったのかな?


「おじい様、領主会議はもうよろしいのですか?」


「それより、毒物が発見されたと聞いたぞ!?大事ないか!?」


おじい様は無遠慮に、俺の顔を両手で触って動かしつつ、全身のチェックでもするように見てきた。俺はおじい様の手をそっと下げさせる。むぇ・・・


「おじい様、私は無事ですから。毒にやられてはいませんから。『危機察知』のスキルで発見したんですよ。飲む前だったので大丈夫です」


「…そうか」


よほど心配だったのか、おじい様は大きく息を吐いて安堵しているようだった。


その後、国王陛下もやって来て、てんやわんやだった。あと、国王陛下が初対面の時とはイメージが大きく外れるほど怒っておりました。何でも「僕の妻を害そうとするとは…」って感じで、目が怖かったです。


因みに王妃様は俺の隣で「ふふ、ああして私のために怒ってくれるから、呆れることは多々あるけど、嫌いになれないのよね」って言ってました。ノロケですか?ノロケですね?まぁ、国王夫妻の夫婦仲が良いようで、国民としては安心ですがね。


え、おじい様?国王陛下と一緒に下手人血祭りに上げるって息巻いてますよ。うん、王城で流血沙汰とかシャレにならんだろうからヤメテね?それから、俺と王妃様で暴走しかけている2人を宥めすかし、騎士達に調査を任せることにした。


あ、それと2人を宥めた後に、王妃様から「殿方の扱いもその内覚えなさいね?でないと、こういう時に困るわよ?」と言われました。覚えたくねー。元男として知りたくなかった事まで知っちゃいそうで、なんかヤダ。とにもかくにも、最後はドタバタしたけど、俺の王城での新年はこうして終わった。マジ、疲れた。












--☆












「どうだったかな、ヒスイ嬢は?」


「えぇ、良い子でしたよ。まだ幼いのにあれだけ受け答えができるんですもの。それに、毒に自ら気付けるのは大きなメリットですし。それと報告にあった様々な知識…良くも悪くも普通ではありませんね」


「ははは、構わないさ。僕は先生抜きにしても、あの子が気に入ったよ」


「あら、奇遇ですね。私もです」


「何にせよ、これからだ」


「えぇ。ところで、下手人は見つかりましたの?」


「あぁ、何の事はない。昼間に騒いでいた愚かな貴族だったよ」


「はぁ…ヒスイを害せば、ケイリュオンが手に入るとでも思っていたのかしら」


「本人は少なくともそう思っていたみたいだったよ。まぁ、公爵家を潰したんだ。今さらそれ以下の爵位しか持たず、国を食い荒らすだけの害虫は要らないさ。明日にでも退場してもらう。今更容赦はしない」


「そうね。ヒスイは貴族社会には疎そうな所があるから、そこは此方で対応しつつ、情報を集めさせる癖は付けさせるよう、彼女の侍女に命じておきましょう」


「あぁ、そうだね」






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ここ数日で、久々に家の中でGが数匹出てきました・・・

以前暮らしてた田舎の方の家では蜘蛛が住み着いていて、多分食べてくれていたからか1匹も見なかったんですが、やっぱり都市部だと多いんですかね?バルサン焚くか・・・



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[一言] >ここ数日で、久々に家の中でGが数匹出てきました・・・ >以前暮らしてた田舎の方の家では蜘蛛が住み着いていて、多分食べてくれていたからか  蜘蛛ですかね?  なんかムカデもGを食べてくれる…
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