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5-10:先王の思惑

いつも読んでくださりありがとうございます。

5-10


「確かに貴族共の不平不満は起こるであろう。しかし王家及び、ケイリュオンを除く3領の領主一族はケイリュオンの領主が定まる事を望んでおる。東西南北の各領地の均衡が取れなければ、他国が漬け込む弱みとなるからな。取り分け、東領は死活問題なのだ。それにこの国自体が上手く回らんのだ」


おじい様と先王陛下が話していたという内容を聞いて、不安になっている今日この頃。ただ、先王陛下にも考えはあるっぽいので、その言葉に頷いておく。言われてみれば確かにと、納得する部分は多々ある。なるほど、他国の存在もあるから早めに内側の問題は片しておきたいって事か。それとこの国が回らないというのは、塩が上手く行き届いてないって事か?つまるところ生産地がゴタゴタしてるから、それを何とかするのが目下の至上命題って訳だ。


「北、東、南の3領の貴族は各領主に任せる。中央の貴族に関しては儂と息子が責任をもって抑え込むとしよう。幸い目の上のたん瘤であったディアノーグ公爵家を王家の名のもとに先日取り潰しているので、貴族は王家の権威は未だ健在だと重々承知できているであろうしな」


貴族の不平不満は権威で抑え込むという訳か。あとの歪みが怖いけどね。でも、権威で黙らせられるなら、それが一番早いか。


「他にも打てる手は打つ。というより、リガウスが領主となることで、自動的に打てる手がある。そちらに関してはリガウスの領主としての統治を見つつ、長い目で見ていくつもりだ」


ふむ?なんか言葉を濁された感じがするけど、取り敢えず今はいいか。それより気になることがある。


「そもそも、おじい様って領主として統治とかって出来るんですか?」


「最低限であれば、な」


おじい様の話によると、叙爵された際に最低限の貴族教育を受けたんだってさ。その時、辺境伯を始めとした爵位の力関係やら、仕事やらを学んだらしい。


ふむ、俺もなんか手伝わされそうな気がするけど、辺境伯家の令嬢なら金と権力をバックに色々とできるかも?さっき思いついた家電の再現を研究できるかもしれない。・・・意外と願ったり叶ったりなのでは?上手くやればQOL上昇を一気に進められそう。というか、それを手伝いって事にして仕事にしちゃえば良くない?名案過ぎるのでは?ふふふふふ・・・


「ヒスイ、何を笑っとるんじゃ?」


おっと、またまた顔に出ていたらしい。


「いえ、ちょっといい事を思いついたので。おじい様、今度相談するので、協力してくださいね」


「・・・内容次第じゃな。お前さんの『お願い』は、注意せねば過労死しそうじゃしな」


「うぐ」


酷いことを言われた。誰かを過労死させたことなんかないのに。今のところだけどさ。


さて、そんなこんな話していたら、外はとっぷり暗くなって、部屋の外で待っていたっぽいマーサから中断するようにという申し出があった。どうやら俺の寝る時間らしい。・・・いや、まぁ確かに割かし早めに最近は寝てるし、そういう生活サイクルだけどさ。体は子供ですけども。


先王陛下とおじい様はまだ色々と話すことがあるという事で、そのまま少し話すらしい。俺は2人に挨拶をして、自室に引っ込むことにした。途中、マーサに抱かれて移動している間に眠気が急にきて、いつの間にか意識を失っていた。思ってたよりも疲れてたのかな?














--☆















「では、先王陛下、おじい様。お休みなさいませ」


「うむ」


「・・・あぁ」


ヒスイが退室し、室内にはマティアスと近衛騎士だけになる。改めてマティアスと視線を交わし、深々と息を吐く。


「どうした、リガウス?さすがのお前も気が抜けたか?」


「ふん、そこまで耄碌してはおらん。・・・儂の居ぬ間に、ヒスイに貴族の教育などしおって」


「遅かれ早かれ必要になっていたであろう?幸いにして今のところ、報告にあった通りの性格のままの筈だが?」


マティアスの言葉に、久方ぶりに会う孫娘の姿を改めて思い出す。確かに少し小生意気な所は変わっておらんし、迂闊な部分も治っておらん。約半年もの間探し続けたというのに、随分アッサリと受け入れているのも、ヒスイらしいと言える。言いたいことも話したいことも多くあるが、本人が既に眠る時間であれば仕方があるまい。どうやら既に専属の侍女が複数人ついては居るようではあるしな。亜人が居るのには少し驚いたが。どういう縁で亜人を従えるに至ったのか。今度詳しく聞いておくべきか。


「その通りじゃが、急にあのような態度でいれば、別人のように映るわい。・・・マーサらにも苦労を掛けた、か」


「後で労ってやればよい。マーサ本人はヒスイだけでなく侍女の教育も含め、嬉々としてやっていたぞ?」


「ならばよい」


何せ儂が出奔して5年強。儂の家なぞ、とうに消えていると思っておったからな。マティアスと再会した際にまだ残っているという話を聞いて驚いたくらいじゃ。貴族共から潰そうとする圧力などがあった筈じゃが、それでも維持し続けた。王家の援助があったとはいえ、並大抵の苦労ではなかったであろう。


「どれ、ここから先の話は、チェスでも指しながらせぬか?ヒスイから聞いたぞ?冬の間中チェスに興じていたとな」


「・・・まったく、余計な事ばかり口にしおって。が、よかろう。しかし良いのか?儂はそこそこ強いぞ?」


儂がニヤリと笑いつつそう口にすれば、マティアスの奴は笑いをかみ殺すようにして、「くくっ」とくぐもった様な声を出した。どういう事かと聞けば、ヒスイも同じような事を宣ったらしい。


「まったく、これはどちらが似たのだ?ヒスイがリガウスに似たのか、それともリガウスがヒスイの影響を受けたのか」


「・・・前者であろう」


「見てくれは全く似ておらんがな」


「放っておけ」


実際に血縁という意味では、異なるからな。精々が髪色が少し似ている程度か。が、その髪色にしても、儂のは金というよりはくすんだ髪色じゃが、ヒスイのものは綺麗な太陽の様な輝く色合いじゃ。


「それにしても、このチェスといい、食事といい、ヒスイはその年齢の通りという感じがせんな。どの様にしてこの様な知識や考えを思いつくのか。いや、何処で知ったのか、と言うべきか?」


「・・・さてのぅ。ヒスイは同年代と遊ぶより、一人で遊ぶことが多かった。それ故の思い付きなどであろう。まぁ、どちらにせよ天才であることには変わらん。魔法に関しても、この先体が成長し魔力制御の向上、魔法体系の知識、技術を学べば儂すら越えるであろう」


「はっはっは、あの苛烈なまでに魔獣を狩っておった魔法士の言葉とは思えんな。やはり、ヒスイの影響を多大に受けているではないか」


「はぁ、今さら否定はせん。・・・『友』としてのお前の前でのみ口にするが、儂はあの子が可愛くてしょうがない。あの子を見付け、既にあと少しで2年ほどになる。年を追うごと、日を追うごとにそれは増していく。あの子の成長のみが、今の儂にとっての最大の楽しみになってしまった」


儂が内心を吐露すれば、マティアスは今度こそ気味の悪い物でも見るような目で儂の事を見てきおった。


「・・・重症だな」


「それも否定はせん」


「はぁ、その状態でケイリュオンに蔓延っていた犯罪組織共は八つ当たり半分で潰されたのだから、少し同情するな」


「ふん、見せしめにはなったじゃろう」


「それは過分にな。故に、今のケイリュオンはお前しか受け入れんだろう。先ほどヒスイの居る手前黙っていたが、お前も少しは勉強しておけよ?」


「言われずとも分かっておる。どちらにせよ、陞爵までの期間はドミナンス家に戻る。そこで雑務を熟しつつ、学ぶとするわい」


儂の答えに取り敢えずは満足したのか、再びマティアスの手は駒を動かし始める。


「話を蒸し返すようじゃが、儂を辺境伯になぞ上げてお前の息子への批判は大丈夫なのか?」


「必要な事だろう。アウグストも既にこの国の王。これが最初の試練となるであろうな。しかし、この国に今必要なのは改革だ。古臭い貴族では、緩やかに国が腐り落ちるだけ。邪魔なディアノーグ公爵家は潰したが、叩けば埃の出る貴族など、まだ大量にいる」


「それを何とかするためには儂を利用することも辞さんと?」


「まぁ、そうだな」


「・・・お前はいざとなれば、儂を切り捨てられよう。しかしアウグストめはそこまでの覚悟を持ち得ているのか?」


「だから、そこが試練なのだ。どちらにせよ、この程度を超えてもらわねば、この国はいよいよ終わりだ。・・・取り敢えず、リガウスが爵位や称号の放棄などを言い出さなかっただけ状況は良いと言える」


「ふん、そのせいで余計な物をヒスイには背負わせるがな」


「・・・なるべく本人の望みに沿うようにはする。だから、そう睨むな」


「精々そうであることを願っておこう。・・・ほれ、チェックじゃ」


「ぬぅ!?」


いい歳をしたジジイ2人の夜はこうして更けていった。





まぁ、先王も為政者という事ですね。基本は善人なんで、ひどくはならない。(はず)

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