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5-8:久々の料理改善

今年は色々あったなぁ・・・

5-8


ララァナとルゥの模擬戦を見て、内心で戦々恐々としている今日この頃。あれから他の騎士たちとも何戦かやっていた。それを見てたけんだけど、まぁステータス差もあるんだろうが、ララァナの方は10レベルくらい上の騎士とやっても勝率が高かった。ルゥの方は流石に技術が足りないのか、あまりレベルが高いとララァナほど勝率は良くなかった。まぁでも同じくらいのレベルくらいだと、ステータス差でゴリ押ししてた。例のライダーキックで。直線で突っ込んでいってるんだけど、スピードが速くて避け辛いらしい。それともし防がれても、それをバネにして再び上空へ逃げて、再アタックを仕掛けるといったヒット&アウェイ戦法で反撃を殆ど貰ってなかった。


で、提供してた分のポーションじゃ足りなくなったっぽいので、追加で提供しつつ治療しておいた。騎士の人たちは軒並み委縮してました。まぁ、護衛相手から気を遣われてたりしたら、メンツとか潰しちゃう、か?でも、ケガとか放置しとくと悪化したりとか怖いし。とりあえず感謝はされてるみたいだったから、大丈夫だろう。ほら、恩のある相手は裏切ったりしないだろうし。え?打算?ありありですとも。


それとマーサにはすっごい渋られたけど、剣を持たせてもらった。『魔鎧』ありでようやく剣先を維持できる程度でした。短剣でもそこそこ重いと思ってたけど、総金属製のロングソードは重すぎました・・・騎士たちも侍女たちも周囲でめっちゃハラハラした感じで見てた。そりゃ持ってるだけでプルプルしてたらそうなるよね。うん、心配かけてスマヌ。


俺の素の筋力に関しては、相変わらず筋トレでは腕立て1回すらできてない貧弱さですからね。うーん、やっぱり前に使ってた装備がしっくりくるなぁ。捕まった時にイルベウスたちに取られちゃってから行方不明なんだよね。日本円に換算しておよそ300万円くらいの高級品。うーん・・・


「お嬢様、気はお済みになりましたか?」


「うーん・・・マーサ、例のえっと、ディアノーグ?公爵家でしたっけ?その屋敷から、子供用の装備が押収されたりはしていませんか?」


「子供用の装備、でございますか?」


「はい。私が誘拐されたときに使ってたものなんですけど、なんか良いものだったらしかったので、取り戻せるなら取り戻せないかな、と」


「お嬢様、ご自分で率先して戦う事だけはなさいませんよう。そうならないために、彼ら護衛が居るのです」


「う・・・わ、分かってます。ただ、どこに行ったのかな、と思っただけです」


でも最低限の自衛能力はやっぱり必要だよ。だから俺も誘拐されたんだし。


「マーサさんの言う通りですよ、ヒ--お嬢様。私たちの実力は見たで--コホン。ご覧いただけたでしょう?確かに、私たちを攫ったイルベウスには単独では敵わないかもしれませんが、私よりも強い騎士がここには大勢居ます」


ララァナから「お嬢様」呼びされるけど、本人はやっぱりまだ完璧には無理みたい。一応ここには騎士が大勢詰めてるからね。対外的な態度とかを意識しないといけないらしい。俺もそういうのは気にしないといけないらしいけど、ほら。今って見た目だけなら5歳の幼女なので。ある程度お目零しされてる。鋭意努力中です。善処しまーす。いや、でもだいぶマシじゃない?一応、丁寧語をデフォルトで口にしてるから、そこまで大きな注意はされたことないし。


「それはそうなんですけど、やっぱり自分自身で身を守る術も必要だと思いますし。それに私っていつも午前中はおじい様と魔法の鍛錬をやっていたので、定期的に魔法を使わないと落ち着かないといいますか・・・」


囚われてた間もちょいちょい使ってたからね。まぁ寒さもあって、やってたのは『魔鎧』とかばっかりだったけどさ。だからこそ、久々に魔法を使った時に若干出力を間違えた。『水』ぶっ放して、自分の魔法でずぶ濡れになり、風邪を引くというね。


「この前の、お嬢様の魔法を見る限り、一番の身を守る術は魔法を使わない事ではないですか?」


「うぐ・・・」


マーサがひどい事を言う。そんな感じなので、マーサは俺が魔法を使うのにあんまし良い顔をしないんだよね。使うとしてももう少し成長して、魔力制御がマシになったらとのことらしい。うーん、おじい様の監督下なら許してくれるかな?そんなわけで、俺は離宮生活の間、ほとんど魔法を使ってない。


「さ、お嬢様。もう満足でしょう?ここは冷えます。この前のように寝込まれては私の寿命が縮みます。戻りましょう」


「はぁい」


確かにここは少し冷える。一応屋内なんだけど、ほぼ全部石造りだからなのかね?俺はマーサに急かされるようにして、ナディ、イリーナと離宮の本館へと戻される。ララァナとルゥは片付けがあるので、後から来るそうだ。そんな感じで、先王陛下がケイリュオンへ行った初日の時間は過ぎて行った。














--☆














「うーん、やっぱり知ってる味に近付けませんねぇ」


「しかし、お嬢様。およそ全ての組み合わせは試したのではないですか?」


「そうなると、やっぱり他の食材が必要ですか・・・」


俺は白いコックコートに身を包んだ男性と並んで、鍋の前で「うーん」と2人して首を捻る。この人、離宮の料理長であるナットさん。その人と一緒になって、あーでもないこーでもないって話しております。周囲の視線が色々と痛いけどね。マーサは渋い顔してるし、ララァナを始めとした他4名の専属侍女はハラハラしております。他の一般料理人たちはこっちを遠巻きにするだけ。先王陛下がケイリュオンへと視察に行って既に1週間。俺は離宮の厨房にいた。


何で俺がそんな所に居るのかといえば、俺が料理に不満を言ったからです。で、俺に出される料理を改善してもらうため厨房にて奮闘することと相成りました。ついでにララァナやルゥ達、侍女の料理も。もう面倒だから、いっそのこと離宮中の人間の料理事情を改善しようと思い立ったのです。


今までの離宮生活では先王陛下が居た手前、あんまし勝手をすると後が怖かったので、我慢してたけど今は先王陛下が居ない。だから俺がどうしてもと強請れば、マーサも何やかんや折れてくれる。代わりに、もっと淑女教育に身を入れる様にって言われたけどね。ふ、ふふふふ・・・


さて、そんな俺の尊い犠牲もあって、現在厨房に立てているという訳だ。だから、一般料理人が遠巻きに委縮してても関係ない。そもそもお前らが料理の改善を日夜研究してくれてれば俺が出張らなくても済んだんじゃ、このやろー!・・・まぁ、無茶言ってる自覚はあるけどさ。


うん、本題に戻ろう。料理事情の改善ということで、まずメニューから改善しようって事にした。まずパンは硬いし、スープは基本塩味しかないし、肉は塩味付けて、香草と焼いただけ。卵料理とかもゆで卵くらい。そういうメニューがローテーションしてるんですよ。もう我慢ならん!そんなわけで、主食となるパンは天然酵母の作り方を教えたので、それで何とか柔らかくしてもらう。ただ、今は冬で気温が低いからか発酵の進みが遅いっぽい。そういう長い時間が必要なものは今はいいや。今はすぐに改善が出来るものが優先!


それでこれから本格的に寒さが厳しくなるから、温まるメニューを食べたい。だからホワイトシチューを作りたいと思い至りました。で、問題となるのは、俺は前世で市販のルーを使ってでしか作ったことがない。ルーってどうやって作るん?


困った時の『ネットワーク』先生おなしゃす。で、調べてみたら、いつだかのおじい様と食事事情を改善しようとしてコンソメを作った時の経験が役に立ちそうである。必要なブイヨンが、具材をじっくり煮込むって工程があるからね。そんなわけで、とにかく具材を切って鍋に放り込んで煮込む。入念に灰汁取りをして、漉してブイヨン・・・というかコンソメかな?にして、味見してみた。けど、おじい様と作った時同様に、なんか違うんだよなぁ・・・


一応、そのままホワイトシチューにしてみたけど、やっぱり何かが違うって感想を抱いてしまう。何かが足りない、って感じ。うー、くっそ~~・・・日本の食品メーカーの壁は高い・・・


ただ、ナットを始めとした料理人衆は十分に美味しいという感想。まぁ、手間暇かかるから、あまりやりたくなさそうだけど。


「うーん、やはり今のままでも十分すぎるくらい美味しいと思うのですが・・・」


「ここで満足しないでください。ホントはもっとこう・・・う~ん、味に深みがあるというか、今のだと何か1つ2つ足りないというか・・・」


「その足りないものというのは、具体的には何でしょうか?」


「うぐ・・・」


別に本職が料理人って訳じゃないから、そんな事聞かれても困る。俺はただ感想を言うだけなら出来るんだけど、専門的にこう何が必要かって問われると答えようがない。う~ん・・・


「えっと、分からないので、幾つか色んな食材を試して美味しくしてください。味の追求は料理人の本懐ですよね?」


「それは、そうなのですが」


「じゃあ、そういうことでホワイトシチューの方はお願いします。それと次の料理なんですが」


「え。ま、まだホワイトシチューすらできてないのに、次、ですか?」


「作り方は覚えましたよね?だったらそれを教えてどんどん伝播していってください」


俺がそう言って、次の食材を手に取ろうとすればナットが何かを言いたげにオロオロしていた。


「何か?」


「あ、その・・・そのようにレシピに何の制限もなく広げていいのですか?」


はて?制限?そんなもの居るかね?ぶっちゃけ、料理やら技術やらはガンガン広げて改良していってほしい。そこに広がるのを阻害する制限は邪魔でしかない。料理で金を稼ぐつもりはないのだ。稼ぐにしても、もっと大きく稼ぎたい。明確なビジョンはまだないけど。でもまぁ、前世知識で何とかなるでしょ。それに一応は曲がりなりにも、貴族に組み込まれるみたいだから金も人も使えるでしょ。といっても上級貴族の中でも下の方の男爵位だから、たかが知れてるとも思う訳だけど。それでも貴族は貴族。手伝ってくれる人くらいは見付けられると思うんだよね。


「構いませんよ。むしろ広げちゃってください。そのまま広がって改良していってくれれば儲けものですね」


「そ、そうですか。では、そのように」


もしかして秘伝のレシピとかにするつもりだった?そんなんにするんじゃなくて広げてよ。まぁ、俺の望みは言ったから多分その通りになるでしょ。次の料理に移る前に、少し調理台を整理して綺麗にした方が良いだろうというマーサの提案の元、一旦調理は中断となった。マーサに頼んで、俺にとっては失敗作ではあるけど、ホワイトシチュー(仮)を少しずつ人数分よそってもらう。料理人たちにも配ってもらって、味の感想や、こうした方が良いという意見を出させるのが目的だ。ついでに、ララァナ、ルゥ、ナディ、イリーナにも試食してもらう。当然、俺とマーサも。


専属侍女である4人は最初の内こそ断ろうとしていたみたいだが、全員鍋に視線がロックオンされてるんだから、バレバレだってば。


「そ、その・・・お嬢様の専属とはいえ、侍女である私たちが、口にするのは・・・」


「味の感想を聞きたいのと、意見などがあれば、それを出してもらいたいから、全員試食してください。ほら、アツアツの内じゃないと、美味しさ半減しちゃうんですから、早く。・・・あーもう!じゃあ、命令です!試食して、感想を言いなさい!これで良いですか!はい、さっさと食べる!」


尚も固辞しようとする専属侍女たちに『命令』という形で半ば強制的に試食させる。マーサも同様である。マーサは俺と目が合って暫くジーっとにらみ合いが続いたが、折れてくれたらしい。ふふふ。さぁ、食べたことない味に目を剥くがいい。俺からしたら、まだまだだけど料理人たちの反応を見るに、十分美味しいと感じるらしいしね。まぁ、俺自身別にマズいと思ってるわけじゃない。十分美味しい部類に入ると思う。ただ、何かが足りないって感じがするだけ。単純に塩味が足りてないとかなら話は早いんだけど、それは違うと料理人ではない俺でも分かる。


「・・・!ほ、っふ!はふっ!」


「あ、熱いから気を付け、て・・・あー、遅かったか」


冷ましもせずに、口に運んだナディが明らかに、熱さでダメージを負っていた。舌を少し火傷したっぽいので、ポーションを飲ませて回復させておいた。他の面々はしっかり適温まで自分で冷まして食べているから、問題ないだろう。全員の反応を見るに、どうやら好評らしい。


「・・・いいわね、コレ。ラミアである私って寒さに弱いから、こういう料理は有難いわ」


ララァナは味わいつつ、じっくり分析でもするように食べていた。小声でブツブツと呟きながら。気に入ったのか、真っ先に皿が空になっていた。他にも寒さに弱い亜人とかには人気が出るかも。物珍しい料理だろうから、冬の寒い間なら貴族にも広がるかな?こうなると、シチュー繋がりでビーフシチューの方も食べたくなってくる。次の料理はビーフシチューにするかな?さっきホワイトシチューに使ってたブイヨンは余りがあるし。


と、真っ先に皿を空っぽにしたララァナが鍋の方をジーっと見てる。あぁ、そんなに気に入ったのね。すすす、とララァナの傍まで言って耳打ちする。


「ララァナ、おかわりしても良いですよ?余らせちゃうのは勿体ないから、食べちゃって」


「・・・い、いいの?」


「うん、どうぞ」


ララァナは喜び勇んで、おかわりしに行きました。あー、はいはい。他の侍女さん達もいいですよ。行ってきて。彼女らは一遍に鍋の方へ向かっていった。マーサだけ残ったけど、マーサは良いのかな?


「私はもう多く食べられない歳ですからね。一杯で十分すぎるほどです」


「そうですか?なら、いいんですけど」


まぁ、俺の方も胃が小さいのか、既に満腹だったりする。専属侍女たちは何やかんや成長期の年齢だから、よく食べるのかね?他の料理人たちにも、おかわりの許可を出したら、鍋の中身はあっという間にスッカラカンになった。好評の様で何よりです。因みにその後、ビーフシチューでも同様の事が起こりました。今もビーフシチューの鍋に人が群がっております。


でも、俺からすると、やっぱり何か1つ2つ物足りなさを感じちゃうんだよなぁ。そこら辺は要改善だな。料理長のナットは、「この味でもダメなのか・・・」って落ち込んでたけど。ごめんね、要求水準が高くて。でもナットを始めとした料理人たちが、改良を引き受けてくれたので料理の質は多少なりとも上がるでしょ。ブイヨンとかコンソメ、出汁の活用方法は教えたんだし。


いっそのこと、練習がてら暫くはホワイトシチューやビーフシチューが連続でも問題ない。最近寒いしね。それにパンも硬いから、浸して食べれるシチューは有難いんだよね。


あとはなぁ・・・トマトがあればミネストローネとかトマトソースパスタとかボロネーゼとか色々と作れるのに!いや、今は冬だからトマトは旬じゃないか。あぁ、それと俺の荷物の中に、ニンニクとショウガの種株が入ってたんだけど、無事かなぁ・・・


ユリーさんが持ってたりしないかなって思って、手紙で聞いてみたことはあるんだけど、俺の荷物はおじい様が持ってるんじゃないかって話だった。んー、最悪どこかの行商人とかが持ってないか確認してもらう?ユリーさんとエドナさんの実家が商家だって話だから、ユリーさんへの手紙経由で頼んでみようかな?ニンニクやショウガじゃなくても、珍しい作物があれば取り寄せてもらうよう頼んでみるかな?取り敢えず、ユリーさんに手紙を書こう。


「マーサ、手紙を書きたいので部屋に戻ります」


「えぇ、承知いたしました。相手は例のユリーという女性ですか?」


「はい。食材の事で頼みたいこ--」


その時、バァン!と厨房の扉が勢いよく開かれた。






今年の更新はコレで最後の予定になります。

(気が向けば、やるかもしれないけど、うーん・・・)


さて、ここで簡単ながらご挨拶をば。


今年からこの作品の投稿を開始させていただき、読者の方々には大変お世話になりました。

稚拙な文にも関わらず、応援していただいた方々には大変感謝しております。

また、どういった評価であれ、評価していただき大変感謝しております。


皆さまも良い新年を迎えられますよう、簡単ではございますがご挨拶申し上げます。



ではでは!よいお年を!!


来年もよろしくお願いいたします!!!

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[気になる点] >そのままホワイトシチューにしてみたけど、やっぱり何かが違うって感想を抱いてしまう。何かが足りない、って感じ。うー、くっそ~~・・・日本の食品メーカーの壁は高い  ネットワークのスキ…
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