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3-13:冒険者たちの受難(地獄です)

いつも読んでくださり、ありがとうございます。




3-13


さて、師匠あ、えっとおじい様・・・う、うーん、はっずい。まぁ、いいや。その内慣れるでしょ。取り敢えず例のカミングアウトから数日。


ベイジ村の面々には貴族位どうこうとかはバラさず、実は祖父と孫でしたー、ってことだけバラしました。ギルマスのリットンさんとかユリーさんを始めとした殆どの面々は「あ、やっぱり?」って感じだった。


素直に驚いてくれたのはリナやシーナくらいだった。あとガキ大将のガドとか薬師であるモーガンさんの息子のケインとかも。さて、俺が魔法士である、おじい様の孫であるってバレるとマズイ件が一つある。それは「息子の嫁に」問題である。


が、これに関しては、おじい様の一言で収まった。「秋には王都に移住するつもりじゃ。そろそろ魔法士の職務に戻らねばならん」って言ったら一発。まぁね。もう居なくなるからね。それと、魔法士の職務という事は、つまり『お国の仕事』である。これを妨害するのは、国家反逆罪とか色々と罪に問われるとのことで、引き留めもなかった。怖いなぁ。


しかし!それにも関わらず、これに反応するリナとシーナ。あとユリーさん。


「やぁだあぁぁぁ!!」


って、絶叫がベイジ村に響き渡りました。ユリーさんの。






・・・うん、ユリーさんの。いや、リナとかならまだ分かる。けどまさか、受付嬢やってるユリーさんがあんなに叫ぶとは思わなかった。レベルの上がった筈の俺の動体視力をもってしても反応できない速さで飛び付かれて抱き上げられた。この人、何で受付嬢やってんの?もうあんただけで、魔獣狩ってこいよ。


そして、現在抱きしめられて足がプラーンってなった状態になっています。


「酷いです、リガウスさん!!私の唯一の癒しを奪うなんて!!」


「いや、こればかりは仕方ないんじゃが・・・」


まぁ、国王からの勅命ってか、密命だからね。いやー、改めて考えると国のトップから呼び出される、おじい様マジパネェっすわ~。で、そろそろ解放してほしい。


「ヒスイちゃん、ウチの子にならない!?そしたら、毎日一緒に居られるし、可愛いお洋服も着放題よ!?」


「洋服に興味ないです。それと、おじい様に付いて行くって決めましたから」


「そんな・・・」


ユリーさんは絶望したような顔で俺を降ろす。いやね?この人、何やかんや相変わらず俺の天敵だからさ。冬明けが特に酷かったし。俺の事を抱えながら、離そうとしなかったし。が、少し考えた後おじい様に向き直った。


「リガウスさん、王都への移動って秋なんですよね?」


「む?うむ、その予定じゃな」


あ、因みに例のトラウマ騎士。ヒースさんはこことは別の村に発ったあとで、夏の終わりごろかその辺りに戻って来るとのこと。


一応、おじい様のカバーストーリーとしては、魔法の研鑽のための旅というのは嘘で、生き別れた娘が心配になり姿を晦ませたという事。そして、娘の暮らしを乱さない様にこっそり行動を起こした。そして昔立ち寄った土地の近くであるこの村の近辺の森に住み、捜索を開始した。だが、娘は既に亡くなっていた。しかし忘れ形見である孫娘の情報を得た。俺は母親--つまりはおじい様の娘の死のショックから記憶を失って森を彷徨っていた所を、おじい様に保護された。そして、俺の療養のためここいらで暮らしていたが、おじい様が魔力の強い俺の後ろ盾のために、王都へ戻って国王から話のあった陞爵の話を受けることにした。暑い夏を避けて、秋に移動することを考えて準備していたら、戻ってきたヒースとばったり遭遇した。


まぁ、ちと無理はあるけど、大筋としては時系列的にも不具合はないし、ゴリ押しで行けるんじゃないかなぁって結論に至りました。まぁ、最悪対応するのは、おじい様だし。俺の方には影響ないでしょ。


「分かりました。リットンさん、姉からの保留してあった件、お願いします」


「今からか!?」


「やってください。時期は当然秋までに」


「う、う~む、それは別にいいんだが・・・欠員をどう補うつもりだ?」


「クラッドの街から招集して、そのクラッドの街の補填分を王都のギルドへ要請しましょう。規模的にも人員的にもそれが最適だと思います。異動してくる人員には手当を付ければ嫌という者は居ないでしょう。最悪、クラッドの街とこの村は近いので行き来は出来ますし」


「あー、分かった分かった。じゃあ、そっちの書類の作成は頼んでいいか?向こうのギルマスに話を通さなきゃいかんから、俺は明日か明後日にでも村を発--」


「今日」


「は?」


「今日にでも行ってきてください」


「きょ、今日?いや、一応俺もギルマスだから、護衛とか--」


「ドガルさんのパーティが今日は暇なはずです。経費で護衛依頼を出してきてください。今ならギルドホールに居ると思うので。はい、これ経費用の届け出書類です」


「いや、こんな急な話を受けるとは--」


「行動!!」


「いや、だから--」


「す・ぐ・こ・う・ど・う!!」


「・・・お前、帰ったら覚えてろよ」


すごすごと去っていくリットンさん。なんか哀愁漂う背中が印象的でした。そしてグルンと首が回ってこっちを向いてめっちゃビビった。


「というわけで、私もヒスイちゃんと行くわ」


何となく話の流れ的にそんな予感はしてたけど、マジで?えぇー・・・


「ほら、去年お姉ちゃんがこの村に遊びに来たでしょ?」


「エドナさんですよね?」


あの人から貰ったお下がりの服、全然着てないけどね。多過ぎるし、ヒラヒラしたのとか、ドレスとかばっかだったから、普段着にし辛いんだよね。


「そうそう。あの時、実は視察も兼ねてたって言ってたじゃない?」


「あ、あー?言ってたよう、な?」


「そう言ってたのよ。で、一応私はアレでお給料上がったんだけどね」


へぇ、じゃあユリーさんは視察で高評価を得たのか。でも、姉がやった評価なんだよね?身内贔屓じゃないんかね?エドナさんのイメージが俺の中では天敵その2ってイメージが強すぎて、人となりが微妙に記憶の中で薄いんだよね。


「それで昇進の話もあったんだけど、そっちは保留にしてあったの。本当はその話から1年経つこの夏に蹴ろうと思ってたんだけど、ヒスイちゃんが王都に行くなら好都合だわ」


「ユリーさん、ずるい!!」


ユリーさんがウッキウキで話していたら、リナが噛みついた。シーナもコクコク頷いている。


「ヒスイはこれでいいの!?私たちお別れしちゃうんだよ!?」


「・・・私も、ヒスイが居なくなるのは寂しい」


二人とも涙を溜めて、詰め寄って来る。が、ここは心を鬼にして断るべきところだろう。


「ごめん、二人とも。私も二人と離れるのは寂しいよ。でも、唯一の家族のおじい様が行くから、私も行かなきゃ」


「じゃ、じゃあ、私の家に住めばいいよ!ね?そうすれば--」


「でも、リナ姉の家の負担になっちゃうよ?それに私って体が弱いから、農作業とかもできないし・・・リナ姉もシーナ姉も家の手伝いしてるんでしょ?家のために働けない私が居ても迷惑かけちゃうよ」


「そ、その分は私が働くもん!だ、だから--」


「リナちゃん」


食い下がるリナの肩に手を置いて、ユリーさんが少し下がらせる。


「これ以上は、ヒスイちゃんを困らせちゃうわよ?それにヒスイちゃんをお祖父さんと離れ離れにしちゃうの?」


「ぅ・・・で、でも!」


「それに、生きてる限り、ずっとお別れするわけじゃないわ。いつか大きくなって、成長してヒスイちゃんを驚かせてあげなさい。私も王都に行っちゃうけど、王都でリナちゃんやシーナちゃんがいつ来ても問題ないように準備しておくわ」


リナがポロポロと大粒の涙を流しながら俯く。それを慰める様にシーナが抱き寄せる。一方のシーナは泣きそうにはなっているが、何かを決意したような感じだ。


「ヒスイ、引っ越すのは秋なんだよね?」


「え、うん」


「ユリーさんの移動も秋なんですよね?」


「え、えぇ、そのつもり」


「じゃあ、ユリーさん。私に字を教えてください」


「え?それは構わないけど。字なんか習ってどうするの?」


「ヒスイに手紙を書く。私たちを忘れないように」


「私、二人の事は絶対忘れないよ?」


「私がそうしたいの」


「わ、私も!私もシーナと書く!」


二人の好意がむず痒い。は、はずい・・・

嫌なわけじゃないんだよ?嫌な訳なんじゃないんだけど、改めて言葉にされると、こう・・・ねぇ?内臓がザワザワするみたいな感じ。


とにかく、ユリーさんが秋までにリナとシーナに読み書きを教えることになった。そういや、こんな田舎じゃ識字率なんか知れたもんか。










--☆









さて、そんなこんなで引っ越し準備が始まった。といっても、俺自身は大してやることが殆どない。せいぜい衣類をまとめるくらい。ただ、エドナさんから貰った分とかが多過ぎて、それらは置いていくことに。旅装は森を探索するとき用の装備なんだけど、基本的には人の目に触れない様にマントでスッポリ覆うらしい。あ、それと真っ先に目に付くヴェールと一体になってるサークレットはフードを被って隠すことになった。あと今ある自宅はいわゆる別荘扱いで残しておくらしい。


一方の師匠はやる事がそこそこあるっぽい。畑に関しては夏と秋に収穫できるものだけ収穫して、片付けるんだってさ。あと最後に夏の終わりの狩りには参加して、かなり多めに狩るらしい。それと、おじい様が居なくなった後のこの村の防衛機能を高めておくために、木柵や壁の設置。他にも抜けた穴を埋めるために、冒険者協会への対応。あと手っ取り早く、今ベイジ村に居る冒険者連中を鍛えるって言ってた。


因みに、その鍛え方だけど、かなりスパルタでした。俺との鬼ごっこは、かなり手加減してたんだね。


ってなわけで、今日は訓練中の冒険者の様子を見に来たのと、差し入れを持ってきた。冒険者の訓練だが、最初は俺と同じ鬼ごっこだった。・・・それのすっげー激しいバージョン。魔法も織り交ぜたガチの鬼と化したおじい様が追っ掛けんの。ちょーコエー。四属性の弾丸を乱打される冒険者がひたすら必死の形相で逃げてんの。ドッカンドッカン爆発する中、逃げる冒険者はさすがに気の毒でした。


「ぎゃー、あ、悪魔ーー!!」「死ぬ死ぬ死ぬうぅぅぅ!!」「クソっタレエェェ!!」ってな感じで阿鼻叫喚でした。それを狩りついでにってことで、魔獣の居る森でやってやんの。まぁ、そうすると魔獣が音とかを聞きつけてやってくるやってくる。で、追われつつ魔獣を撃退しながら、ひたすら逃げる。少し経つと、コツをつかんだのか、どの魔獣も蹴っ飛ばして、おじい様の魔法で処理するようにシフトしてったけどね。どうやら簡易パワーレベリングでもあったらしい。2週間も経つ頃には以前よりもステータスも上がって、全員に『見切り』と『魔法耐性』のスキルが生えてた。ただ、余りにも気の毒だったので、差し入れを持ってく位の事はするように決めました。あとポーションによる治療。いや、毎回ケガさせてんのがウチのおじい様だし、流石に、ね?


そして、冒険者たちが強くなり始めたので、ちょっと前から段階を引き上げたみたい。今度は引き上げられたステータスに振り回されない様に、おじい様との模擬戦。ベイジ村のすぐ傍の森を切り開いて作った簡易広場みたいな場所でやってるっぽい。模擬戦中は邪魔されない様にってのと、逃げられない様に岩壁で覆われてて中が見えないんだよね。「ぎゃーー!!」「いあーー!」「うぐぼあぁぁ!」「ひ、ひぃぃぃ!!」などなど、中から悲鳴が聞こえてるので、今日も今日とてスパルタらしい。


で、前述の通り、そんな所に俺はバスケットを持参してやってきた。バスケットの中身は差し入れである。差し入れの内容は、以前好評だったなんちゃってホットドッグ。あとサンドイッチ、ポムの実他カットフルーツ。あとレモンっぽい果物であるレーネンをスライスにしたやつの蜂蜜漬け。ハチミツはクラッドの街にて購入。甘味は高いらしくって、ちょっと値は張ったけどね。えっと200mLくらいのビンに入ってるやつで、4000G。マジで高かった。


流石にそのまま使うのは勿体ないから、少し水で薄めたけどね。元々レーネンって酸っぱさだけじゃなくて、甘みもちょっとあるから、薄めるくらいでいいと思ったんだよ。それを氷入りの水に数枚入れて、スポドリ代わりに飲んで貰おうって思ってる。氷も水も自前で用意できるって、便利でいいね。あ、この辺の準備はユリーさんの部屋でやらせてもらった。蜂蜜漬けだけは1週間前くらいから漬け込んであるけどね。もちろん、今回は食中毒なんか起こさない様に滅菌したビン使ったり、色々と工夫はしております。


と、岩壁の傍にはガッゾさんという老齢の冒険者が居た。このガッゾさん、ベテラン冒険者だけあって、クソ強い。


ガッゾ(54歳)

Lv:106

種族:人間

性別:男

状態:正常

HP:1312

MP:209

Atk:1211

Def:1004

Int:95

Mnd:601


スキル:

『不動』-『30秒間DefとMndをLv×20の数値を加算するが発動中は動けない。一日一回のみ発動可能』

『決死の一撃』-『HPを1だけ残して、1秒間払ったHP、MP分の数値をAtkに上乗せする』

『見切り』-『攻撃を避ける際の行動に上昇補正』

『魔力変換』-『MPをHPに上限を超えて変換する』

『魔法耐性』-『Lvの数値分Mndに加算する』

『斧術』

『槍術』


メインウェポンは巨大な斧なんだけど、器用に使いこなして、盾役を務めることが多いらしい。一応槍も使えるって話だけど、最近は使ってないんだって。と、ガッゾさんがこっちに気付いて手を振ってきた。


「おぉ、ヒスイよ、そのバスケットは差し入れか?」


「はい、ガッゾさん。そろそろお昼ですから。一旦休憩した方がいいでしょうし」


「うむ、そうだな。ではリガウス殿に呼びかけてやってくれぬか?孫娘の言葉ならすぐに訓練を止めるであろうしな」


「はい。・・・おーじーいーさーまー!!昼食持ってきましたーーー!!訓練中断してくださーーい!!」


出来る限りの大声で叫んで、訓練を中断してもらう。すると中の爆音が消えて、「「「わーー!!」」」って歓喜の声が聞こえた。


すぐに岩壁が消えて、中からはボロボロになった冒険者が出てきた。というか何名か焦げてない?まったく・・・


「ガッゾさん、持っててください」


「うむ」


怪我が激しい冒険者に近寄って、『止血』の魔法を使う。この訓練が始まってから、初めてこの魔法が役に立ちました。ポーションの類は確かに即効性があるんだけど、傷が塞がるまでは血は流れ続けるし、別に血までは再生されないみたいだから、最初にこの『止血』を掛けた方が、ポーションによる治癒効果が高くなる。


そんな感じで冒険者連中を治療していって、粗方終わったら昼食である。といっても、俺は言わば先遣隊。ちゃんとしたものはユリーさんが持ってきてくれる。


「はーい、じゃあ一人一つずつですからねー。ユリーさんが後からしっかりした昼食を持ってきてくれますから」


俺とガッゾさんの前に列ができる。基本荒くれの冒険者も、ベテランのガッゾさんが相手では大人しくって、しっかり列を守ってくれる。で、およそ配り終えて、冒険者たちはガツガツとあっという間に平らげてしまった。あと、ちゃんと水分も取らせる。レーネンの蜂蜜漬けが特に甘味に飢えた女性冒険者に大人気でした。そこそこの量作って、水に薄めさせて塩もちょこっと入れて、スポドリみたいに水増しして飲ませたのに、もう完売である。配り終えた俺は冒険者たちの輪から少し離れた、おじい様の所へ。


「おじい様も食べてます?」


「ん?あぁ、真っ先に食ったわい。それにしても、このレーネンを蜂蜜に漬けたものを使った水は美味いの。最初はこんな高級品が、と思ったがこれなら納得じゃな」


「動き回って汗を大量にかくと、体の中の塩分とか他のミネラル--えっと栄養素が抜けますからね。それと甘い物ってすぐにエネルギーに変わりますから。疲れたときにはいいんですよ」


「ふーむ、なるほどのぅ」


暫く話していたら、ユリーさんが色々と持ってきてくれた。俺もご相伴に預かりつつ、ユリーさんに連れられて、ギルドに戻される。俺が去るのと同時に午後の訓練が始まる。冒険者たちの捨てられた犬みたいな目が印象的でした。・・・なんか、ウチのおじい様がマジごめん。耐えてくれ、冒険者諸君・・・









11月はやりたいゲームが多いので、困る。


有給の申請理由何にしよう・・・「月へ行って世界を救うため」とかでいいかな。


それまでに多めに投稿するつもりです。

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