1-3:決めた!ヒモになる!
タイトルの通り・・・か?
1-3
ある日、というか転生した日に森で熊さんと出会った。が、しかし!その熊さんはフレンドリーではなかった。もふもふなタイプのフレンドリーなベアではなく、ごわごわなタイプのジェノサイドなベアだった。勘弁してください。美味しくランチにされてしまうところだった。チビるかと思った。取り敢えずセーフ。
さて、そんなところを助けてくれたのは、くすんだ感じのブロンドヘアの渋いお爺さんでしたとさ。なんというか、THE魔法使いって感じの格好。灰色のローブなんか正にソレって感じ。それに、長杖を装備して、さっきも長杖を振るたびに火が出てたり、熊の頭吹っ飛ばしたりしてたからね。あれが魔法かね?熊の頭を跡形もなく吹っ飛ばしてたけど。こわ・・・
で、そのお爺さんは、「う~ん」とか「うむぅ・・・」とか唸っている。なんか悩んでるんですかね?
「あの~・・・」
「む?なんじゃ、童よ?」
童・・・まぁ、そうですよね。俺って今は4歳の幼女ですからね。くそう。あの女神にまた会うことがあったら、クレーム付けてやる!!
「えっと、危ないところを、ありがとうございました」
「む、お、おぅ。なに、気にするでない」
なんかこのお爺さん、さっきの颯爽と現れて助けてくれた時に比べて、凄いしどろもどろしてるんですけど?あれか?コミュ障ですか?
「あの、つかぬことを伺いますが、ここってどこですか?」
「お前さん、随分しっかりと話すのう。まぁ、よい。それよりもお前さん知らずにこの森へ入ったのか?ここはペップスの森という大森林じゃ。というか、お前さんみたいな童が何故こんな森に居るんじゃ?それも一人で」
あー、どうしよう。こんな事なら、自分の設定考えとくんだった。えぇっと・・・
「あ、えっと、き、気付いたらこの森に居たんです!そ、それで迷ってて・・・」
「で、泣いとったんか?」
「は、え!?」
泣いてるとこ見られてた!?え、いつから!?
「いつから見てました!?」
「お?あー、そこそこ長くかのう?儂もどう声を掛けたもんか迷っとってのう。いつからかと問われれば、朝方の時からか?」
ほぼ最初じゃん!!
ポムの実食い終わって、それでスキル偽装してる時か!?それともその前か!?偽装後と信じたい!
「まぁ、落ち着け。子供は泣いて遊ぶのが仕事じゃ。泣くのは恥ずかしい事ではない。じゃから、気にするな。よいな?」
そう言って頭をぽすぽす撫でてくる。ぐ・・・見た目幼女でも中身はアラサーだから嬉しさやら、ありがたみを感じない!いや、感謝はしてるよ?命助けてもらったんだから。けど、それとこれとは話が別です。
「ふむ・・・取り敢えず、儂の家へ来るか?そのままでは寒かろうし、ここから近隣の村まで行く途中に、儂の家を通るしの」
なんと!村があるらしい!そして、安全地帯まで行けるっぽい!確かに、このままここに居たんじゃ、また熊に襲われるのも怖いし!え、相手を疑え?
確かに、もしかしたらこのお爺さんが、奴隷商的な人間だったりしたらイヤだけど、ここに置き去りにされたら、それこそ生存は絶望的だ!だったら、手を取りますとも!熊に意思疎通なんかできないからね!それどころか、さっき食われかけたからね!!いのちだいじに!!
もしも、悪人の類だったら、『物理補正』オンにして二倍に以上に膨れ上がったステータスの拳を叩きこむ!!・・・Atkが14って強いのかな?す、少なくとも怯ませられると信じよう!
あ、因みに『物理補正』を常にオンにしてないのは、まだオンにした状態で動いたりする検証をしていないから。ほら、こういうのってオンにして動いたら、コントロールできないとかが、怖いじゃん?反動とかも。・・・俺の根底はビビりなんですよ。不確かなものは使いたくないんです。
まぁ、とにかく・・・
「お願いします!」
「うむ、相分かった」
そう言うと、そのお爺さんは茂みの奥から木の板を取り出してきて、その上に腰かけた。
へ?安全地帯に連れてってくれるんじゃないの?なんで座り込んでるんですかね?
「ほれ、こっちへ来い」
「え、は、はい・・・」
仕方ないので、言われるままお爺さんの元へ行くと、脇の下に手を入れられて持ち上げられ、そのまま胡坐をかいたお爺さんの上に乗っけられた。
「え?」
「掴まっとれよ?飛ぶぞ」
「飛ぶぞ--って!?わ!!」
なんと木の板が浮いた!これ何て魔法の絨毯?いや、板か。
「ほれ、掴んどけと言うに。落ちるぞ?」
「は、はい」
落ちるのは嫌なので、お爺さんの腕をガッチリ掴みますとも、ええ。折角助かったのに、転落死とかイヤだからね!ってわけで、しばらくの間空中散歩となりました。
--☆
「ほれ、到着じゃ」
「はい、ありがとうございます」
10分くらい飛んで、お爺さんの家に着いた。見た感じ庭付き木造二階建ての一軒家だった。ふむ、そこそこデカい。いや、俺が小さいのか。幼女だからね、ははは!
「ほれ、取り敢えず入れ」
「あ、はい。おじゃまします」
お爺さんがドアを開けて家の中へ招待してくれる。それに従い家の中へ。ってか、普通に得体のしれない子供を入れちゃっていいんですかね?まぁ、招かれたんだから入りますけど。
家の中は酷く小ザッパリしてた。玄関入ってすぐにリビング?があり、中央にテーブルがあって、壁際に食器棚がある。物がそれくらいしかない。いや、なんかパッと見、扉と階段があるから他の部屋とかにはあるかもしれんけど。
お爺さんが靴を脱いで上がったと思ったら、玄関で手を前に出されて、強制停止させられた。え、なんですか?今更出てけとか言わないよね!?
「あー、ちょっと待て。お前さん、裸足じゃろ?あとで掃除が面倒じゃから、そのまま動くでないぞ?」
そう言われて、動かないでいたら足元を水が急に満たして、俺の足首まで水に浸かった。驚いて、足を上げたけど無害だからそのまま立ってろと言われて大人しくしておく。というか、段差になっているからリビングの中には浸水してないけど、玄関水浸しなのはいいんですかね?
って思ってたら、ドアの隙間から水が全部流れ出て玄関の地面ごと、俺の足もキレイになっていた。しかも、足も乾いてる!濡れてたはずなのに!
え、ナニコレ、便利!
「ふむ、これで良かろう。ついでに玄関の掃除も出来たの。さ、よいぞ。上がるがよい」
「は、はい」
ふおぉぉぉぉ・・・
さっき熊から救出されたときにも見たけど、これが魔法か。一応、俺も『魔法:水』持ってるから、使えるか?
促されて、今度こそお宅にお邪魔する。お爺さんは「座ってろ」と言って、キッチン?に入っていった。とりあえず椅子に、座る--ぐ、くそ。椅子が高い。ぬぅ、とよじ登るようにして何とか椅子の上に上がれた。
ぜぇぜぇ・・・
おのれ、この幼い体が憎い・・・
というか、この状態で座ると目線が丁度テーブルにぶち当たって、顔が出ない・・・
おのれ、この幼い体が憎い・・・
大事な事なので、二回言いました。ちくしょー。
「すまぬな、子供が来ることなど皆無ゆえ、好みそうな菓子などは--あー・・・そうか。その椅子では高いか。あー、アレはどこにあったかのう」
今度は扉の向こうへ消えて行ってしまった。少ししてからクッションを2つ持ってきて椅子の上に置いてくれた。まぁ、それでも高いけど。辛うじて肩から上は、テーブルの上に出るようになったからヨシ。
ちなみに、さっきお爺さんがキッチンから持ってきてくれたのは、白湯でした。お茶かと期待したけど、違った。いや、別に要求しないよ?命の恩人にそこまでしてもらうのは気が引けるし。
「さて。何から話すか。まずは、儂の名から言うておこう。儂はリガウス・ドミナンス。まぁ、見ての通り爺で魔法使いじゃ。一応、お前さんの名を聞いても良いか?」
「あ、俺は・・・あ」
そこで、ハタと気付く。そういえば、名前も変わったんだった。そう考えると、少しブルーになる気がするけど、まーしょうがない。割り切れ、俺。
まぁ、名付け親の祖父さんには悪い気が・・・・・・そういや、祖父さん。俺の死因効いて大爆笑してたって言ってたな。前言撤回、くたばれクソジジイ。あの無駄に元気な祖父さんだから、100歳までは生きるだろうけどな。ちくしょう。
「えと、ヒスイ、です」
うーん、違和感。まぁ、しょうがない。
「ヒスイ、の。ではヒスイよ、親はどうした?」
「えっと、居ません。気付いたら一人でした」
うん、ウソは言ってない。この世界には親は居ない。それにマジで気付いたら一人だったからね。
「ふ、む。いないか」
・・・・・・
え、これ俺のリアクション待ち?お爺さんもとい、リガウスさんが急に黙りこくってしまった。えっと、なんか話題。・・・話題?なんかある?えーーーーーと?
「あ、そういえば、村ってここからどの位ですか?」
「む?ベイジ村のことか?」
「べいじむら?そこがここから一番近い村ですか?」
「そうじゃ。大体、儂の風魔法で20分くらいかの?」
えっと、リガウスさんの風魔法って多分あの木の板で飛ぶ奴だよな?あの速度地味に速かったんだよな。少なくとも、俺が今の短い脚で全力疾走するよりは遥かに。
「あの、そのベイジ村?に連れて行ってもらうことは出来ませんか?」
図々しい?そんな事は百も承知だよ!けど、リガウスさんの風魔法で20分の距離でしょ?ってことは割かし遠い。それを、この幼い体で辿り着けと?普通に死ねる!
もしまた熊が出てきたら、多分今度こそランチもしくはディナーになる。頂かれてしまう、肉的に。そんな未来はノーサンキューです。
「村にか?しかしお前さん、親がおらんのだろう?どうやって暮らすつもりじゃ?」
「えっと・・・孤児院、とか?」
「そんなもん小さい村にはありゃせんわい」
なんと。あーいや、そうだよな。この時代って14、5世紀とかか。ってことは福祉とか生活保護とか、概念自体がありゃしない可能性あるわ。やっべ。そして、そんな時代にもしも孤児院があったとしても環境劣悪なのでは?
・・・ちょっと頭の中を整理する。今の俺は4歳児。雇ってくれるような所なんか存在しないだろう。そんな俺が衣食住を確保するには?少なくとも食は?
・・・無理では?
よし、プラン変更!リガウスさんとこのヒモになる!せめて、そう。10歳くらいまで出来れば、お願いしたい!それまでに、何とか村とコネクションを作って・・・
「まぁ、なんじゃ。お前さん、行くところ無いんじゃろ?」
「う」
改めて言葉にされると・・・今の俺は家なき子ですか。ぎぶみー児童相談所。
「お前さん、儂の弟子にならんか?」
「へ?」
い、今なんと!?
「実はの。さっきお前さんが森で泣いとった間に、勝手ながら鑑定しての。お前さんには魔法の才がある。すでに3系統の魔法を使えるのならば、この先儂を超えるやもしれん。儂自身、誰かしらには儂の魔法技術を伝承するつもりだったしの」
な、なんと!これは、渡りに船!向こうからお誘いが来た!もちろん、逃がす手はない!!
「ぜひ、お願いします!師匠!」
俺は魔法使いの弟子になりました。
・・・この選択のせいで、後にどんな苦労をするのかも知らずに。
静電気除去シートってあるじゃないですか?
それを貫通して静電気が起こったんですよね。もういっそのこと、ゴム手袋付けて生活した方がいいのでは?と思う今日この頃。誰か、静電気対策下さい・・・