2-4:暑さ対策
相変わらず微妙な魔法ばかり覚えますw
2-4
魔法士になると決意してから数日。取り敢えず魔法技術は鍛えておかないと、お話にならないだろうということで、今日も今日とて魔法の修行中です。今やっているのは、魔法などの並列行使だ。俺が使える魔法は『そよ風』、『水』、『落とし穴』の3つ。で、『魔鎧』を発動させつつ、3つの魔法全部を発動する。庭の中でやると穴ぼこだらけになって危ないので、庭の外で行う。罠づくりの一環にもなるしね。今のところ獲物がかかったことは無いんだけど。
にしても、相変わらずアヂィ・・・夏用ってことで、この前店員さんにゴリ押しさせられたノースリーブタイプのワンピースを着用してるんだけど、それでも暑い。ヒラヒラした服だから、スース―して以前の春用の服よりは涼しいんだけどさ。
「あっづ・・・ん?あ、なんか閃いた。し--おじい様~、なんか新しい術式閃きました~」
「ん?どれ、見てみよう」
大声で庭にいる畑弄り中の師匠を呼びだす。今回覚えたのは土魔法だ。あ、でもまた微妙なのを覚えたっぽい。
「して、どんな魔法じゃ?」
「・・・土を硬く固める魔法ですね」
「・・・・・・」
び、微妙~~。何で俺の覚える魔法って揃いも揃ってこんな微妙な物ばかりなんですかねぇ!?使い道無くない!?
「あー、ここに土壁を出す故、それに対して今覚えた魔法を使ってみよ」
「はぁい」
ってことで、師匠が地面を隆起させて土壁を出す。材質は地面そのままなので、指がズボッて入るくらい柔らかい。さて、どの程度硬くなるのかね?
「よ、っと。はい、できました」
土壁に手をついて土壁全体に魔法を掛ける。で、軽く手で叩いてみたらコンコンという音がするくらいに硬く固まっていた。お?思っていたよりは硬いな。師匠も長杖でコンコンと叩いている。
「思いの外硬いの。ふむ、試しに魔法を打ち込んでみるか。ヒスイ、離れなさい」
「はい」
ってわけで、師匠が火球を放って、土壁に着弾して小爆発を起こす。炎が引くと、傷一つない土壁が鎮座していた。・・・これ、防御手段としてはそこそこ優秀では?
「なるほど、防御力は中々じゃな。おそらく固めるだけという事に特化しておるが故に効果が高いのかの?ふむ、貫通力のある術式ならばどうかの?」
今度は師匠が火の槍みたいなのを浮かべて発射体制をとる。初めて見る魔法だな。しかもゆっくりとだが回転し始めて、ドリルみたいになってきた。で、そのまま発射されると、今度は流石に土壁を貫通して風穴が空けられていた。
「流石にこれは無理か。ヒスイ、他にも試すぞ。土壁を幾つか出す故、その全てに魔法を掛けよ」
「はい、おじい様」
ってわけで、そこからは色々と検証の時間になった。各属性に対する耐性はどうだとか、純粋な防御力はどうだ、とかだ。結果として分かったのは、どの属性であっても、師匠の『ファイア』や『エクスプロード』といった力が分散しやすい魔法であれば防げるという事。さすがに貫通力の高い魔法は抜かれてしまうといった具合だ。まぁ、それも込められた魔力の差によっては防げたので、防御力に関してはそこそこ信頼できるっぽい。
問題は俺がこういう土壁を作れないっていう点なんだけどさ・・・ま、まぁ?その内覚えられるだろうし、多分。今は使える魔法が増えたことを純粋に喜ぼう。そう、固めるだけとはいえ役には立つんだから。ん?固める・・・あ。
「おじい様!服を一着だけ改造していいですか!?」
「お、おう?ま、まぁ、構わんが」
「ありがとうございます!」
「あ、これ」
俺は家へとダッシュで戻ると、そのまま自室に直行する。で、薄地で一番布が使われて無さそうな服と、適当な下着をチョイスして、裁縫道具を取り出してくる。え、裁縫道具なんてお前いつ手に入れたんだって?
・・・これは村長の奥さんであるイエナさんから譲り受けたものです。彼女曰く、「ヒスイちゃんは賢いから今のうちからお裁縫覚えて、花嫁修業を早めに始めておきましょう」ってな具合にして手に入れた、負の遺産です。師匠には「お嫁になんか行きたくないです!師匠とずっと一緒に居ます!!」って言って保護を求めました。これでもかってくらい甘えました。周囲の目は「あらあら、まぁまぁ」って感じで生暖かかったけど、俺にとっては死活問題なんですよ。
まぁ習わずとも、最低限のやり方は知っている。よし、取り敢えず作ろう。ノースリーブシャツみたいなのを一枚取り出してきて、それを下から半分くらいをバッサリ切る。よし次は下だ。お馴染みドロワーズみたいな半ズボン丈の下着を、太ももくらいまでの丈になるまで切る。それが終わったら上の方は切った部分を内側に折って、紐を通す用の通り道を作る。その中に紐を通して、めくり上がったりしないよう調節できるようにだ。下は裁断面からほつれない様にまつり縫いで固定する。
意外とすぐにできたな。俺が作ったもの、それはズバリ水着である。上はへそ出しルックみたいになってて、下はホットパンツみたいな感じだ。
・・・待って、引かないで。ついに女装趣味に目覚めたとか、思わないで!!これにはちゃんと意味があるんです!
というのも、俺は前世で子供の頃と、大人になってから一回ずつ着衣水泳をやったことあるんだけど、あれって衣服が水を吸って重くなって、泳ぎにくいったらないんだよ。で、現在俺はとてつもなく筋力が貧弱です。多分、普通の服で泳いだら溺死する。溺れる。死ぬ。なので、最低限の布面積にしとかないと、命の危険があるんだ。
はい、これから俺は泳ぎます。どこで?もちろんプールで。どこにあるのかって?なければ作ればいいじゃん。まぁ、取り敢えずたった今作ったオリジナル水着を着て外に行くと、師匠に絶対なんか言われる。取り敢えず先にプールの作成をしよう。今の服のまま外へ行って、畑の所に居る師匠の下へ。
「おじい様!ちょっと大きめの溜め池?っぽいのを作りたいんですけど、どの辺なら作っていいですか?あ、できれば家の側とかがいいんですけど」
「ならばそうじゃな・・・どうせ何時でも塞ぐことはできるしの。あの辺ならば良いぞ」
「分かりました!」
許可を得た場所は家の玄関から5mほど離れた場所だ。早速土魔法の『落とし穴』で掘る。壁は垂直にせず斜めにして上りやすくする。垂直にすると登れなくなる可能性もあるし、俺が使えるのは穴を掘るだけの魔法だからね。プールから容易に出られるようにって工夫である。あと念のため横壁にも小さな窪みを掘って梯子代わりに。一度で掘れる穴の大きさはそこまで大きくはないから、何回か使って10m×10m×1mくらいの穴を作る。所々に『水』の術式を刻んでおいて、と。
それと浅いのはしょうがないんだ。これ以上深くすると俺が沈むし、何かあった時に登れなくなりかねない。はい、おそらく俺の今の身長は1mすらないです。多分80cmくらい?んー、巻き尺か定規が欲しい。なんか教会?には基準となる長さを刻んだ定規みたいなのがあるらしいんだけどさ。なんでも、色んな基準になりそうな概念は太古の昔に女神様が与えてくださった、とのこと。・・・まぁ、深くは考えないでおく。便利だし。
で、先ほど覚えたばかりの土を固める魔法を使う。あー、名前どうしよう?『固定』でいっか。はい、決定。『固定』で穴の内壁を固める。これで水を溜めても土が流出しない。さて、水をためよう。このままだと俺の労力が半端ないから、遠隔術式の要領で、刻んでおいた『水』の術式に魔力を込めて一通り込めたら一斉に発動する。そこそこ速い速度で水が溜まっていく。で、5分ほどでそこそこの水位まで水がたまった。多分今だったら俺の肩くらいまでの高さかな?
よし、準備は出来た。俺は再び自室に戻って速攻で着替えてタオルも持って外へ。バン!と扉を開ければ、たまたま師匠の目に入ったぽくて、目を剝いて驚いていたようだが、今はそんなのは無視だ無視。俺はプールで泳いで涼を取りたいんだ!持っていたタオルを、適当に柵に引っ掛けてからダッシュ。
ザッバーン!
と勢いよく飛び込んで、そのままスイーとけのびをして、プカプカと浮いてみる。うん、久々に泳いでみたけど、体は感覚を覚えていたみたいだ。はあぁ゛~~快適~~。
「ヒスイ、無事か!?」
プカプカ浮いてたら師匠が血相を変えて走ってきた。
「無事でーす。快適ですよー」
「はぁ、今すぐ出てきなさい」
「えー、折角作ったので、もう少し泳いでいたいです」
「お前さん、泳げたのか?」
「そうみたいですー」
「・・・色々と言いたいことがある。あと少ししたら出てきなさい」
「はーい」
よし許可が出た。ってなわけで、しばらく泳ぐことに。平泳ぎにクロールに背泳ぎと、一通り泳いでみる。あー、涼しい~~。
--☆
「さて、ヒスイ。弁明を聞こうかの」
「・・・えっと、何を弁明したらいいですか?」
今俺は自作プールから上がって、タオルに包まってウッドチェアに座っている。この前、足元に甕を作ってもらった場所だ。
「まずはその恰好じゃ。なんじゃその恰好は?」
「えっと、自作の水着ですね」
「みずぎ?何じゃ、それは?」
もしかして、海水浴とかの概念もないのかな?だから水着自体存在しない可能性があるな。
「普通の服で泳ぐと、水を吸ってすっごい重くなりますよね?」
「そうじゃな」
「特に力のない私だと、泳げずに沈むと思ったので布面積を減らして重くならない様にしたんです」
「・・・理にはかなっておるが、人前でその恰好にならない様に。これは絶対じゃ」
「はい。でも家で泳ぐときはいいですか?」
「・・・よかろう。ただし泳ぐときだけじゃぞ」
「もちろんです」
別に露出癖があるわけじゃ無いからね。まぁ元男の感覚としては、上半身裸でも違和感ないんだけど、師匠がさらに口うるさくなりそうだったから、この形にしたんだし。
「よろしい。では次に、なぜ泳ごうなどと思った?」
「え?暑かったからですけど」
師匠は頭を抱えて唸っている。
「外で全裸になるよりいいと思います」
「当たり前じゃ!」
「でも、暑いままだと倒れちゃいますし・・・」
「気持ちはわかるが」
あ、このままだとプール禁止にされそう。
「お願いですから、プールを禁止にしないでください!」
「ぷーる?あの溜め池か?」
「そうです!あれだったら、庭の中で安全ですし、川まで行く必要もないです!だからこれからも使わせてください!!」
「う、うーむ・・・」
「お願いします!」
「しかし、のぅ」
「許可してくれないなら、一人で川まで行って水着で泳いできますからね!!」
「・・・どういう脅し方じゃ、まったく。はぁ、分かった分かった。しかし使用するのは午後で、儂が庭にいる間だけじゃ。良いな?」
ぐ・・・一日中は無理か。でも禁止にされるよりは、まあマシだ。
「分かりました。あ、そうだ。おじい様、毎日水の入れ替えをしたいので、プール使い終わったら水を操って排水ってできますか?」
「・・・埋めるか」
「やめてくださいー!!!」
俺の必死のお願いの甲斐あって、埋められるという事態だけは避けられました。翌日の畑の水まきに使うように提案しました。ついでに、風とかで飛んでくる落ち葉とかを吹っ飛ばして下さいってお願いしときました。代償として、俺の頬が千切れるかと思ったけどね・・・
唐突な水着回?でした。
さっさと春が来て欲しい・・・ただし花粉。オメーダメだ!!




