1-17:シャンプーショック
補足:ヒスイちゃんは時折、自分が幼女であることを失念しています。(今さらか・・・)
1-17
灰作りの翌日。今日は雨なので、修行後は家の中でまったりしている。暇である。
さて、灰作りの方なんだけど、焼いた植物を鎮火したら、土をかけて寝かせないといけないらしい。取り敢えず3日くらい寝かせるらしいから、明後日取りに行くことに。あ、埋めた場所には簡易の屋根を作ってもらって、雨が降っても過度に濡れない様にしてもらってます。
まぁそれは良いんだけど、それなりに暇になるよな。ここらで、師匠から色々と許可を取りたいところ。せめてナイフを使うくらいは・・・
「ダメに決まっておろう。そもそも、お前さんの手はまだまだ小さいじゃろ?ナイフなぞ扱えんじゃろうに」
「えーと、じゃあ私用の小さいナイフとか作れないですか?」
「・・・せめて、あと1年待ちなさい。今よりも体が大きくなれば、許可も出そう」
ぬぅ・・・!分かっちゃいたけど、ダメだった。
「なんじゃ、今度は料理にでも手を出すのか?」
「んー、それもいいですけど。先にパンとかを美味しくしたいですね。今のパンだと硬いから、顎が痛くなるんです」
そうなのだ。ベイジ村含めて、師匠の家にあるバケットみたいなパン。外の皮部分がバリバリなのは、まあいいよ?ただ、その中までバリバリ一歩手前位硬いのはどうなのよ?煎餅でも食べてる気分になるんだよね。そして、口の中の水分をめっちゃ持っていかれる。
あ、因みに師匠宅では、パンもちゃんと自家製です。師匠がパン生地作って焼いてます。本当に何でもできるな、この師匠。
「ふむ?じゃが、パンは硬いものじゃろう?」
「それを柔らかくしたいんです!」
このままじゃ顎が異常発達してしまう。ア〇トニオ何某になんかなりたくないです。元気ですかー!?元気だけあっても、何でもは出来ないと思います!
「はぁ・・・また何か作るのか?」
「はい。今度は天然酵母を作りたいです」
「てんね--なんじゃ?」
「天然酵母です。昨日言ってた、微生物の一種です」
「うーむ、未だに信じられんのう。そんな目に見えん生物が存在するとは・・・」
一昨日、一通り説明したんだけど師匠には未だに信じられない話らしい。まぁ、目に見えれば信じられるだろうけど、その目に見ることが出来ないのが微生物だからなぁ。顕微鏡でもあれば、すぐ分かるんだけど・・・
作れるかな?でもレンズどうするよ?窓があのボコボコとか透明度が低いってレベルだよ?硝子技術にはあんまり期待できないかなぁ・・・
まぁ、居るって仮定して話を進めよう。
「本当ですって。と言う事なので、師匠。密閉できるようなビンを下さい」
「ビン、のう。悪いがもうないぞ?」
「え!?」
「お前さんがシャンプーの小分けに全部使ってしまったじゃろ?」
Oh...せやったね。いや、雑菌の混入とかイヤだからさ、開閉回数を減らすために結構小分けにしたんだよね。んーー、密閉できればそれでいいから、ビンじゃなくてもいっか。
「じゃあ、師匠。本当に小さい甕みたいなのって作れます?それと密閉できる用のフタも。あ、密閉できればフタでなくてもいいんですけど」
「・・・ふむ。であれば土魔法で直接塞ぐかの」
「あ、でも1日に2、3回振った後に、中の空気を入れ替えないといけないんです。土魔法でその時だけ穴をあけて、その後また塞ぐってできますか?」
「出来んことは無いが・・・因みに、それはどの程度繰り返すんじゃ?」
「えっと確か3日くらい?」
「・・・やめておかぬか?」
「ふ、振るのは私がやりますから!!穴だけお願いします!!お願いです、師匠!このまま硬いパンを口にしてたら、師匠だってその内顎が砕けますよ!?」
「砕けんわい。それに『魔鎧』で強化すればよかろう」
「私は顎の強化とか、まだやったことがありません!」
「まぁ、注意せねば舌を噛み切ってしまうが」
「危な過ぎませんか!?私は嫌ですよ!?」
食事の度に何でそんな危険を冒さないといけないんですかねえ!?
「はぁ、分かったわい。しかしヒスイよ、儂は小さい甕を作るのと、穴をあけて塞ぐのみしか協力せんからな?」
「それでいいです、ありがとうございます、師匠!」
「やれやれじゃな」
ふふふ、さぁトイレットペーパーと並行して天然酵母作りを始めよう。目指すは、柔らかくて美味しいパンである!!
--☆
さて、灰を回収する当日。ベイジ村にやってきて、埋めていた灰を掘り出す。掘り出すのは農夫の方々にやってもらう。当の俺は師匠に寄っかかって、見学である。始めは手伝おうとしたんだけど、この前同様に大人たちに寄ってたかって止められました。なんでだろうね?
掘り起こしてみれば、ちょいちょい炭が混じっているが、その下に灰が確かにできていた。それを掻き出してもらってもらって、村に必要な分と、俺に必要な分の分け前をもらう。これで、トイレットペーパー作りに着手できる!
と、内心小躍りしていたら、師匠が冒険者ギルドに用があるとかで、俺はリナとシーナと遊んで来いと放り出されてしまった。まぁ、いいけどさ。で、やって来たのはこの村で子供の遊び場になっている空き地である。
「何で空き地?」
という疑問にはシーナが答えてくれた。え、リナ?なんか離れて空き地の花とかを摘んでるよ。あ、隠語じゃなくてそのまんまの意味ね。
「この前、リガウスさんがシャンプーの作り方を教えてくれたでしょ?その時、ハーブの組み合わせとかで、いい匂いになるって言ったじゃない?そのために、リナはああやって花を摘んでるの」
「へぇ~」
「大人なら、森に入ってハーブを取ってくれるけど、私たちはまだダメだって。だから、ここでってこと」
・・・早速空前のシャンプーショックが起きているらしい。この分なら、誰かしらが改良をしてくれるかな。そうすれば、特産品とかになるんじゃ?あ、でも、他の場所にもマクリウがあれば作れるか。それに作り方は他にもあるし。うんうん、このまま改良し続けてくれれば万々歳だ。
「シーナ姉はやんないの?」
「んー、私はあの匂いも嫌いじゃないから、このままでもいいかな?母さんが色々試してくれてるし。それより今は、ヒスイを独り占めしたい」
で、後ろから抱き着かれる。ガッチリとホールドされて離す気がなさそうである。ってことで、離れたところで採集を続けるリナを眺めつつ、日向ぼっこだ。後ろから、ずっと髪を弄られてるけど、気にしない気にしない。
「ヒスイは髪を伸ばさないの?」
元男の感覚としては今でも十分長いんだけどね。今の俺の髪は転生した初期から少し伸びて、肩よりちょい下まで毛先が伸びた。前髪も伸びてきたから、正直邪魔くさい。バッサリいっちゃうかな・・・
ってか、そろそろ転生して1月くらい経つのか。月日が経つのは早い。
「長くても邪魔じゃない?」
「えー、伸ばそうよー。ヒスイ絶対似合うよ?」
「けど、その分シャンプーいっぱい使っちゃうよ?」
「そしたらその分作ればいいじゃない。ね?伸ばそう?」
って話してる間もずっと俺の髪を弄っては、三つ編みっぽくしたり、どっかからか取り出した紐で、結ばれたりしている。
「んーー・・・長いと大変そうだし・・・」
「そしたら、結んだり色々してオシャレが出来るよ?」
「それが大変だと思うんだけど」
「でも、大人の女の人は髪を伸ばすのが普通なんだし、今から練習ってことでさ」
なんと。そんな普通は初めて知った。言われてみれば、今まで会った女性は軒並み髪が長かった。短くてもギリギリ今の俺くらいの髪の長さだった。・・・女って大変なんだな。
「ほら、邪魔になったらウチで切ってあげる。だから、一回伸ばしてみて?リナも私の母さんに切ってもらってるんだよ?」
「そうなんだ。じゃあ、その内切ってもらお」
うん、あんま変な髪型だとちょっと、ねぇ?さすがの俺だって外見に多少は気を遣うよ。
「伸ばしてからね?」
「・・・はい」
これ以上断ると、怖い目に遭いそうなので、諦めました。人生妥協も大事。
最近、朝と夜の寒暖差が・・・
皆様もお気を付けください。