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1-16:レッツ灰作り

昔、祖父母の庭で割かし頻繁に焚火をしておりました。燃やす予定のものに悪戯で花火を混ぜたら、焚火がカラフルになってキレイになった記憶があります。

・・・知らない内に打ち上げ花火の類が混ざってたらしくって、そのあと大目玉喰らいましたけど。

1-16


「「ヒスイーー!!」」


「ぎゃぶっふ」


トイレットペーパー作りの準備から一夜明けて、ベイジ村に向かう日。昨日の夕食時と今朝の朝食時に師匠には色んな知識を教えておいた。『ネットワーク』というレアなスキルを持っているとバレない様にするためだ。師匠だったらほら、国から認められたって魔法士なんだし、知っててもオカシクないんじゃないかなーって事で、師匠経由で広げてもらうことに。


で、魔法の修行もそこそこに俺と師匠はベイジ村に飛んできた。そしたら、村の入口にいたリナ、シーナに飛びつかれたというわけだ。幸い抱き着かれただけで、押し倒されてない。


「ぷっは!リ、リナ姉、シーナ姉!苦しい!」


「あ、ご、ごめん、ヒスイ」


「ごめんね」


二人は謝りつつ離れて・・・ない。いや、抱擁からは開放されたけど、今度は俺の手を握って離してくれないのだ。


「この前はごめんね・・・私たちがずっとお風呂から出なかったから・・・」


「・・・私も一番年上なのに、二人の事をちゃんと見れてなくてゴメンナサイ」


なるほど、この二人は3日前に逆上せた責任を感じているわけだ。ただ、アレに関しては、精神年齢が一番上の俺が真っ先に注意すべきだったことだ。2人の責任じゃない。


「2人の所為じゃないよ。ほら、私もすぐに気を失ってたし。あ、そうだ。はい、お土産。もうシャンプーないで--」


俺が師匠から貰った麻袋から、シャンプーの小瓶を取り出そうとしたら、ヒスイとシーナからガッと手を抑えられて、小瓶を強制的に収納し直された。で、小声で注意してくれた。


(ちょっとヒスイ。今この村で、シャンプーはダメ!私たちもそうだけど、イエナさんの髪もキレイになったから、村中の女の人で、争奪戦になっちゃう!!)


(そう。だから、これはしまっておいて。特に冒険者の女の人たちの方が危険。武器持ってるし)


・・・こっわ。そして、お二人さん?未だに俺の手を離してくれないのは、俺のことを心配しての行動?それとも、シャンプーを逃がさないための確保のため?前者だと信じていい?


まぁでも、その件に関しては問題ないかな?別にレシピを隠匿するつもりなんかないし。俺は師匠へ振り替える。


「師匠、最初に教えちゃった方が良いと思います。なんかシャンプーを巡って争奪戦とかが起きかねないらしいですよ?」


「・・・はぁ、コレじゃから女とというのは面倒なんじゃ。ヒスイは見習わんように。周りを羨む暇があるなら、解決法を探しなさい」


「はーい。そんな事より、ちゃちゃっと教えに行きましょう。じゃないと、灰が手に入らないです」


「まぁ、そうじゃの。リナ、シーナよ。手の空いている者らを集めてくれぬか?場所は・・・冒険者ギルドの前でいいじゃろ。シャンプーの作り方を教えると言えば、皆・・・特に女衆は集まるじゃろ」


「「!はい!!」」


二人は俺の手を速攻で離して、すっ飛んで行った。欲望に正直なようで結構だけどさ。


と落ち着いていたら、フォージさんが溜息をつきつつこっちへやって来る。


「助かりますよ、リガウスさん。この前、件のシャンプーを手に入れて使用した女性と、手に入れられなかった女性との間で少し諍いが起きまして。自警団の我々で止めたんですが、それでも確執が・・・」


・・・こんな小さな村で諍いとか地獄では?村八分とか起こってない?やめてよ、マジで。


「相分かった。では、くだらない諍いなど終わらせるとしよう」


俺と師匠はこの村の冒険者ギルドへと向かうことにした。










--☆










さて、とりあえずレシピの公開はうまくいった。注意事項もきっちり話した。こういうのって、使えば使うだけキレイになるとか考えるバカ--えーとそう、考えなしが居ると思って、その対策もしておいたのだ。むしろ使い過ぎると、髪が溶ける上に、頭皮が痛くなるぞ、っていう脅しだ。


え、ウソじゃないかって?ウソであっても取り敢えず使い過ぎないでくれたらいいんだから、別に真実である必要はない。それに、あんまやり過ぎると、皮膚がダメージ受けるのは本当なんだし。


これでマクリウの乱獲がされなくなることを祈る。ついでに、接ぎ木も試して欲しいとお願いしておいた。女性陣の目が燃え上がっておりました。このまま改良に取り組んでくれたら万々歳である。


兎にも角にも、そういう説明をしてきました。師匠が。ほら、4歳児がそんなん説明したら怪しまれるじゃん?なんで知ってるんだ?→何かしらのレアスキルでは?の図式が怖いのです。師匠にも注意されたばっかだし。


さて、ようやっと灰の作成に取り掛かれる。さっきまでは女性陣が多かったけど、今度多いのは男性陣だ。農業が関連するからね。そして、説明のため師匠が声を張り上げる。


「皆、よく集まってくれた。さて灰を作る前に、なぜ作るのかの説明をする。そもそも皆が同じ畑で作物を一種類のみではなく、複数種類を1年おきに変えるのはなぜだ?」


うん、昨夜と今朝で分かったんだけど、師匠も連作障害については知ってたんだよね。ちゃんとした言葉にはなってなかったかったみたいだけど。


で、師匠の問いかけに、農夫の一人が手を上げて答える。


「そうしないと、作物が育たないと言い伝えられているからでは?俺の祖父さんもそう言っていた」


「うむ、ではなぜ作物が育たんのかの?分かるものは居るか?」


この追撃には答えられる者はいなかった。まぁ、そりゃね。師匠もカリウムとかリンとか知らなかったし。ただ、肥料の概念はあった。何を畑にあげるべきかは分からなかったらしいけど。


「分からんようじゃの。理由は簡単じゃ。作物ごとに必要とする栄養が異なり、一つの作物だけでは畑の栄養が偏る。基本的に必要な栄養素は3つじゃ。窒素、リン、カリウムという。取り敢えずリンとカリウムに関しては、灰で補える。じゃが、やり過ぎには注意じゃ。与える量についても教える故、覚えて欲しい」


「えっと、それは分かったのですが、もう一種類の・・・ちっそ?なるものは、灰では補えないってことですよね?それは、どの様にして補えますか?」


「それに関しては、家畜の糞を利用するのじゃ。今も糞は一か所に集めて土に埋めているであろう?それを利用するのじゃ。糞を地中に埋め、土や藁、枯れ葉と混ぜることで土の中にいる・・・あー待て。中にいる・・・」


あれ、師匠?多分微生物って言おうとしたんですよね?あ、忘れたな、これは。若干チラチラと俺の方を見てきてるからね。こんな時、俺がこの世界の字でも書ければカンペでも出すんだけど、生憎と俺はこの世界の字が書けない。


はぁ、仕方ない。言い出しっぺは俺なんだし、サポートするとしますかね。クイクイと師匠のローブを引っ張れば、師匠は腰を下げて耳を傾けてくれる。


(師匠、微生物、です)


(うむ、すまぬ。助かった)


「すまん、ド忘れしておった。土の中にいる微生物という目に見えん生物が時間をかけて肥料に変えてくれる。すぐにはできんが、できたものは作物に活力を与える。もちろん今まで通り、1年ごとに育てる作物は変えねばならんが」


イマイチ訳が分からんって顔をしている人も居るが、しっかりと頷いて理解してくれてそうな人も居るから大丈夫だろう。


ってことで、レッツ灰作りである。男衆が50cmくらいの穴を掘って、そこに村の周囲で集めた枯れ木とか落ち葉とかをジャンジャカ入れていく。で、師匠が発火。なんか低温でじっくり焼くのがイイらしいんだけど、師匠も意図して炎の温度を操ったことがないって言うから、適当にやってもらうことにした。失敗したら、また試せばいいだけだしね。


「あ、師匠。火柱立てるくらい強力なのとかはダメですよ?燃やすんですからね?吹き飛ばすんじゃないんですからね?欲しいのは消し炭じゃなくて、灰ですからね?」


「分かっておるわ」


ってことで、師匠に着火してもらい、火力が足りないなーって思ったら、追い『ファイア』をお願いして、火力を追加。金属製の火かき棒で時々中身の植物を弄って全体が燃えるようにする。師匠に火かき棒を作り出してもらって、そのまま俺がやろうとしたんだけど、師匠を含めて周囲の大人に全力で止められた。なので、今はギリアムさんという農夫のおじちゃんに、やってもらってます。


ジッと炎を見て、進行状況を確認するんだけど、飽きた。だから、火かき棒で弄って暇潰ししたかったけど、俺は師匠より前に出たらダメと、複数の大人から監視されてしまっている。ぬぅ、別に火に飛び込んだりするわけじゃないから、コレはやり過ぎでは?やることがなさ過ぎて、師匠に寄っかかっていると眠ってしまいそうになる。


と、暇をしてたらどっかで見たことのある顔が・・・えっと・・・あぁ、そっか。


「モーガンさん、ですか?」


「おぉ、確かヒスイちゃん、だったか。村に来てるって聞いて来たんだけど、元気そうで良かったよ」


「はい、この前は薬を下さって、ありがとうございました。おかげで風邪も治りました」


「「「・・・・・・」」」


はて。周囲の大人たちが固まった。何かやらかしたような感じではなかったと思うんですが?


「儂の弟子じゃからな。ただの子供を弟子にはせん」


「・・・なるほど、噂には聞いてましたが、利発な子ですね。養子か、ウチのバカ息子の嫁にでも欲しいくらいですよ」


うげ、それは勘弁!だから、誰かの嫁になんか行かないってば!それとこう言ってはアレだけど、農村の嫁とかマジで勘弁。時代背景が14、5世紀だよ?亭主関白の風潮が強そうだし、仕事もキツそうだから、その未来だけはマジでない。


ってわけで、師匠の後ろに隠れてやり過ごす。師匠、守ってください!かわいい弟子のピンチです!!


「どちらも無理じゃろ。儂が認めた男になら考えんでもないが、少なくともヒスイに釣り合うような男が居るとは思えん。それと、儂の弟子じゃ。養子になどくれてやるものか」


よし!いいぞ、師匠!もっと言ってやってください!


「ははは、リガウスさんは随分と弟子が大事なようですな。ヒスイちゃんも隠れてしまいましたし、退散するとしましょう」


「うむ。じゃが、この前の礼は言っておこう。ヒスイの風邪の件は助かった」


「いえいえ、薬師の役割ですから。では、これで」


モーガンさんは軽く会釈をして去っていった。はー・・・一瞬ホントに焦った。


ただ、この時師匠が表情を歪めていたのを、俺は見逃さなかった。


子供に火を扱わせたらアカン。ということで、ヒスイちゃんは強制待機でした。

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