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5  緊急脱出!



 鋭い視線が、この体を穿つような敵意が、数えるのも面倒くさいくらいの無数の銃口が今、俺達に向けられている。



「アキレスッ!!大丈夫か!?」


「かほっ…………傷は浅い……が、きつ、そう………がく」



 アキレスは少量の血を吐き出し、スッと目を閉じる。幸い息はしているようで、心臓の鼓動も聞こえる。急いで止血し、治療しなくては。


 だが…………




「――――っ」




 まさに、絶体絶命、万事休す、まさに詰み、ジ・エンド。



 先程の不意打ちによりアキレスは負傷。出血は少ないが、動ける状態ではない。エルザやマーマンは戦力外。俺一人でこの人数を相手にすることはできない。



「………………まじか………」


「貴様らは完全に包囲されている。大人しく降伏し、そこの人魚をこちらに差し出せ。そうすれば、命だけは見逃してやろう。しかし――――」



 その亀はライフルのメタルボディをキュッ、キュッと撫でながら、



「―――痛みだけは味わってもらうがな。さぁどうする」


「――――っ」


「数分だけ時間をやる。頑張って正解を導き出すと良い、子供でも分かるサービス問題のな」



 ふんっ、と小馬鹿にするように鼻を鳴らす亀。



 この場合、俺達に選択肢などない。


 大人しく殺されるのは論外、乙姫を見限り差し出すのはもっと論外だ。命欲しさに一度助けたやつを見限るなんて、人のやることじゃない。


 責任は最期までとるべきだろう、ならば俺達のやることはたった一つ―――、


 ――生きて乙姫をもとの場所に返してやる。そのために今こんなところで死ぬわけにはいかない。




(だが、どうするどうするどうするどうする………!?下手に動けば皆まとめて蜂の巣になることは確定だ。一瞬の隙を作ったとして、そこからどうする!?)



 奴らはダイヤモンド張りの硬さを有している。並大抵の攻撃じゃ傷一つつかないし、あいつらのよく分からん機械で返り討ちに遭うのは明白。


 何より数が数だ。こんなの、子犬が完全武装ロボットに体当たりを仕掛けるようなものだ。無謀すぎる。



「ちょっとお前ら、集合」


「何ですかカツジさん、何かいい案でも思いつきましたか!?」


「いや、ない。だから、皆の案を聞きたい。何か気付いたことでもいい。何かあるか?」


「何か気付いたこと……ですか。……少々疑問なのですが、あの人達はどうやってここまで来たのでしょう」


「ん?そりゃあ、………そりゃあ………は、走って来たんだろ」


「走ってこれる距離なら、カツジさん達がドンパチやってる間に来ていたはずです。それに、さっきの人は『D班の分隊長からの連絡を受けてな』と言いました。

 彼らはあの分隊長さんの連絡を受けて初めてここまで来たのだと推測します。ですが、それだと速すぎます。彼らは動きは鈍いようですし、走ってきたなどとは考えられません」


「………それで、何が言いたいんだ?」


「あ、つまりこういうことでござるか?奴らは少なくとも足で駆けつけられるほどの距離にはいなかった。だが連絡を受けてからここまで来るのに、あまりにも速すぎる。なら、ここまですぐに駆けつけられるような移動手段があったのではないか、と」



 エルザがうんうんと首を縦に振る。


 俺はなるほど、と相槌を打った。


 奴らには何かしらの移動手段があって、恐らくそれはここいらにあるのだろう。奴らが装備している防具にジェットエンジンでも詰まれている、とか、身体能力を上げる危ない薬を使ってる、などの線は薄いと思う。

 それだったらさっき撃退した亀達も持っていたはずだ。だがそれを使わなかった。



 つまり何が言いたいかと言うと、それを奪い取ってずらかろうというわけだ。



「だが、それがどこにあるか…………だよな。近くにはあると思うんだけと………」


「んー、んー……………」


「どした、乙姫?」


「ちょっと心当たりあるかも」


「マジ!?」


「うん、マジマジ。あの亀公達が使ってる装備、あれ全部魚人島(うち)のだと思うのよ。勝手に変なパスワードとか変えてたけど、あれは紛れもなく魚人島製の兵器だわ。

 だから多分、その移動手段とやらも魚人島製の物よ。魚人島製で高速移動ができるものと言ったら………ここらの地形を考えると………」



 乙姫はぐるりと、一面を見渡す。 


 周りは亀を除くと、河川敷、川、森、小さな崖などなど。そして乙姫はある一点に目線を向けた。


 ここに来ることになった要因。美しく、サファイアのように澄んだ水色をした自然界における風に次いでの運び屋。


 ――――そう、川だ。




「ちょっとあんた。余がなんとかするから、今から余の指示に従いなさい。耳を拝借………ごにょごにょごにょごにょ」


「?。………………え」


「手段は問わないからやりなさい!女王命令よ。これが成功しなかったら皆まとめてお陀仏なんだから!」




 ………まぁ、成功するかしないかはさておき、ここでやらなければ生きては帰れない。時間はもう無い、だったらこの作戦全てを賭ける。



「時間だ。さぁ、答えを聞こうか」



 亀達が一斉に銃口をこちらに向けた。彼らの指が優しく、ゆっくりと引き金を撫でる。リーダー格の亀がたった一言、―――殺れと。合図を送るだけで蜂の巣を作る工程が既に完成した。


 この場合、普通なら降伏する他ないだろう。普通の人間ならだ――――。



 だが、俺はアキレスを担ぎ上げながら、反抗の意志を宿した瞳でリーダー格の亀をじっと見つめる。



「お生憎様、それは出来ねぇな。こっちはダチがやられてんだ。大人しく降伏するわけないだろ」


「そうか、残念だ。我々とて、関係のない一般人を殺したくはなかったのだが。最期に言い残すことはあるか?」


「ないね。むしろそれはこっちのセリフだ。今からここが、お前らの墓場になるんだからな!!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「何を……………む?」




 殺れ――――そう合図を送るべく、片手を挙げようとした寸前だった。彼らの装備の内の一つである計数装置がおかしな反応を見せたことに、眉をひそめる。



「隊長!計測機の反応が異常値を突破!奴から、とてつもない量の魔力が溢れています!ぐっ、うわぁ!?」


「計測機が壊れた………!?クソ、奴が何かする前に撃て!!」



 怯みながらも、ガチャガチャと音を立てて銃口を俺に向ける。その引き金が引かれ、無防備な俺の体は無数の鉛玉に貫かれ―――――



「な、何ィィィィィィ!!?」


「秘儀、エルザ式銃弾ガード!です!お、重い………」




 ―――ることはなかった。エルザがそこらでのびていた亀を細腕で持ち上げ、ダイヤモンド並の強度を誇る甲羅で銃弾を弾き返した。



 同時進行で俺は魔力を放出し続ける。思った以上に体への負担が大きい。全身の力がストローで吸われるように抜けていく。


 だが、時は満ちた。



 俺は天高く両手を突き上げ、叫ぶ。



「『閻魔炎天・炎柱』!!」


「ふ、伏せろぉぉぉぉ!!」




 瞬間、莫大なエネルギーが一点に集中し炸裂。巨大な火柱が立ち、周辺の地形は亀達を巻き込んでボロボロに崩れ落ち―――――、



「―――る訳ないじゃん。よし、今だ逃げろぉぉぉ!!全速全進だ!」



 亀達がはったりに怯えて身動きが取れなくなった隙に、アキレスを担ぎ上げその場から全速力で離れる。


 目指すは川。振り返らずただ真正面にある道だけを進む。



「………………へ?何も起こらない。………まさか、はったりか!!?」


「隊長!奴らが逃げました!しかもあの方向はあれが………」


「くそ、まさか気付かれたか!?ええい構わん、乙姫ごと撃ち殺せ!!」



 ドガガガガガガガガ!!!


 アサルトライフルが大合唱を奏で、観客(俺達に)感動という名の鉛玉を届けにくる。



「おおい!急げ乙姫!早く早く!」


「今やってるわよせかさないで!これで………よし!!」



 乙姫が川に向かって手をかざすと、すぅーっと何処からともなく水に浮く謎の機械が俺達の視界に姿を現した。


 形はカプセルのように丸みを帯びていて、大きさは馬車一台分くらいと言ったところか。黄色とオレンジ色を基調とした目立つ色。無駄に尖ったものは無くシンプルイズザベスト、それを体現したかのような見た目だった。



「え、何これすっげぇ!?どうなってんのこれ!?」


「説明は後よ!早く乗り込みなさい!」


「お、おう!」


「とりゃ!」


「ござる!」



 銃弾の雨をくぐり抜け、機械の中に入る。 

 


(ドアが勝手に開いた………!?)



 中もシンプルで、操縦席と奴らが置いたであろう物資類があるだけだった。



「ちょっと、何モタモタしてんのよ!早く逃げるわよ!」


「で、でも使い方分かんねぇよ!?お前なんか知ってるだろ。代わりに操作するから教えてくれよ!!」


「は?余が知るわけないじゃない馬鹿なの?」


「何で知らないんだよ!自分の国で生産してるもんだろぉ!?馬鹿はお前じゃい!」


「自分で泳いだ方が速いから使ったことないのよ!とりあえずアクセル踏みなさいアクセル。それで前進するはずよ!」


「アクセル………これか」



 明らかに踏んでくださいと言わんばかりに床から突き出した細い板を発見。席に座り、言われたとおりにグイッ!と踏んでみる。



 そして、ブゥォン!と煙を吐き俺達を乗せた船は川を下って行った。





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