19 騎士の左遷 ラスト
ガトゴト、ガトゴト………なんて言うと思ったか!馬鹿め!ガトゴトガトゴト通り越してガッギンゴッドン!だよ!
「うひょー!涼しいぃーッ!」
「おいガウェイン、そろそろ交代だぞ。私も乗りたい」
「えーもうちょっと、もうちょっとだから!」
「既に5回ほど聞いたセリフだ!ええい速く降りろ!」
「こんなスピードの中でそんなことしたら落馬どころの話じゃないって!流石の俺も死んじゃうッ!」
もう隊長が死ぬとか死なないとかどうでもいいけど速い!速すぎる!荷台から顔を出すと風圧で顔がブワァァってなる!
それは乙女………なんて言える歳ではないが、女として絶対にしたくない!
「(゜ロ゜;)===」
そして何故それを楽しんでいるのガレスさん。
隊長が鬼牛はとても速いと言っていたが、予想の2倍近く速かった。眺める景色が1秒もしない間に切り替わってしまう。自分が鉄砲の弾にでもなったみたいだった。
王都を出て1時間。とっくのとうに街は見えなくなり、深い深い森の道を進んでいく。道の整備は荒く、鬼牛の速度も相まってとんでもなく不愉快な振動がお尻に伝わる。
この状況でなんでそんな穏やかな表情で寝てるいられるのトリスタンさん!!
「にしても、任務なんて久しぶりだな………くく」
「?。そうなんですか?」
「当たり前だろう。うちは手がつけれない任務が回ってくる場所だ。そうポンポンとこられては堪らない……が、来なさすぎるのもあれだ」
今回は任務というのもあって、皆重装備だ。
ランスロットさんは黒を基調とした重々しいデザインの鎧に、薄水色の刃のサーベルを携えている。あれがアロンダイト……とかいうやつだろうか。
隊長はランスロットさんとは対照的に、白に近い銀色を基調とした明るい色。深紅色をしたサーベルを携えている。
トリスタンさんは比較的軽装で、胸当てや小手などを装備し、なんかとってもゴツイ弓を背中に背負っている。それでも露出を忘れないスタイルなんで?
ケイさんとガレスさんはというと、ほぼ手ぶら。ケイさんは腰に呪術に使う道具が入った箱をベルトと一緒に巻き付けているが、ガレスさんはマジで手ぶら。
彼女は特殊な生まれだと聞いたが………何者なんだろうか。そもそも、10代前半くらいの彼女が何故太陽突撃隊に所属しているのか。
尋ねたら尋ねたでまたキレられそうだからやめとく。
あ、そうだ。
鬼牛が速すぎて色んな事を忘れていた。そもそも今回の任務は何を、どこで、どうするのかを私は全く知らされていない。
私は新人だから………というなんとなく理屈の通ってない考えで受け入れている。道中で教えるって言ってたけど、一体何なのだ。
「ケイさん。今回の任務、隊長は討伐?って言ってましたが何を倒すんですか」
「くくく………王都から離れた険しい山脈、キリリ山脈にとある白猿が発見されたそうだ。特殊個体。何かしらの影響を受け、突然変異を起こした個体。まさに歪の一文字が相応しい存在。
それの調査、そして討伐………被害者の探検隊の報告によると、一瞬にして拠点にしていた建物が壊滅させられたそうだ。たまたま拠点には誰もいなかったから、人的被害はないらしいがな」
更に言えば、討伐に向かった地域の騎士隊も抵抗する間もなく返り討ちに遭ったとか。
今回はそんな危険な奴の討伐。それなら皆の重装備にも納得がいく。もちろん、私も抜かりないが。
「白猿………白猿と言ったら、魔獣の中でも知恵の回る厄介な相手だと聞きます。けど、なんでそんな特殊個体が?」
「それを今から調べに行くんだろが………くく、白猿か。あの純粋悪の化身が、何処まで俺の闇に対抗出来るか………楽しみだ」
「……………はぁ」
「安心しろ。特殊個体のやつなら切り刻んで三枚下ろしにしてトリスタンが調理して食ってやる。我が腹の中で、胃酸という名の生き地獄で永遠に苦しむがいい………トリスタンの料理は美味いぞ」
腹の中にいる時点で既に死んでるのでは…………
######
王都を出て、計4時間と言ったところか。馬車ではなく、鬼牛で来たので4時間と言ってもかなりの距離を走った。あと一時間も走り続ければ国の5分の1は踏破できそう。
そして何よりお尻が痛い。ポーカーフェイスを気取って何事もないような顔をしているが、今すぐにでもフカフカソファに座りたい。
キリリ山脈。
我がギルガス王国の北西にそびえ立つ、険しい山々。自然豊かで、その高い気候を活かして高原野菜や果物などを栽培している。
しかし、農業を営めるのもキリリ山脈のほんのごく一部でしかない。そこ以外は、常に危険と隣り合わせのサバイバル空間だ。
自然豊かで、動植物も非常に多い。しかし、その過酷さ故に観光地には仕えず、土地の開拓も難しい。そしてなにより、この山は魔獣の生息率が高い。
魔獣とは、普通の動物が過酷な環境下の中で強い個体へと進化した姿だ。魔獣は目撃されることが少なく、世界の北側にある魔獣パラダイスと名高いヒマヤナ魔寒山にでも行かなければ、ポンポンと出会えるものじゃない。
「よーし早速魔獣ぶっ殺しに行くぞぉッ!隊長の俺についてこいッ!」
まぁその魔獣を今から倒しに行くんだけどね。
「それで、例の白猿の居場所の算段はついてるんですか?この山の中、一から探すとなると流石に………」
「そこについては大丈夫だッ!我が国の優秀な調査隊が、既に概ねの居場所は特定済み!へーいルックマップ!」
そう言って隊長は巻かれた地図を開く。
キリリ山脈の地形図が大部分を占めていて、隅っこに平原が見える程度だった。現在地から南東に進んだ場所に、赤いペンで丸印がつけてある。
ここに例の白猿が住んでいるのだろう。全く、仕事が速い限りだ。
「とりあえずここを目指す!今日中にはキツそうだから、どこかいい感じの場所で今日は野宿だ!安心しろ、テントや食料、暇つぶし用のキャッチボールの球、夜中に皆で遊べるトランプも持参済みだ存分に安心するがいいッ!」
「修学旅行か。まあええ、早速南東を目指すとするか。鬼牛はどうする?」
「こっから先は道が整備されてないからなぁ、鬼牛の巨体じゃ進むのに邪魔になるし………ケイ!お前ここに残って鬼牛と荷物を護ってろ!もし魔獣にでも襲われたら敵わんからな!」
「鬼牛もそこらの魔獣にやられるタマじゃないが………いいだろう。白猿の生首だけは忘れるなよ、新呪術を作る材料にする…………それと、おいルカ」
「はい?」
私を手招きしたケイさんは、珍しく真面目な顔をして言った。
「これを持っとけ。外敵から身を守る為の札だ。貴様は戦力としては期待してない、もし戦闘になったら自分の身を守ることだけ考えておけ」
私はその札を五枚ほど受け取る。
戦力にならないのは自分でも分かってるけど、ダイレクトに言われると少し傷つくなぁ………
「じゃあそういう事で、出発ッ!」
######
ケイさんと鬼牛を残して南東を目指す。
整備されてない険しい道のりは足腰が壊れるような思いだった。しかし隊長含めた先輩達は顔ぶれ一つ変えずに進んでいく。私も毎日と鍛えてるとは、この格差は酷いんじゃないのだろうか。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。す、すこし休憩を………」
「え!?もっとペースを上げようって!?」
「言ってない言ってない言ってない言ってない言ってない言ってない言ってない言ってない言ってない」
そしてその日の夜はトリスタンさんが作ったカレーを食べた。めちゃくちゃ美味しかった。正直もうこのまま帰りたい。
そしてその後のトランプは結構楽しかった。ガレスさん強すぎ。まるで透視でもしているみたいだった。
そして次の日。
「っしゃー!殴り込みだぁ皆殺しだぁ!!」
「(・∀・)シャー」
「シャー」
「し、シャー?」
「無理しなくてええでルカ。どうやら調査隊の報告によると、この先の洞窟が白猿の縄張りらしいで。危険な動物が多数生息しているとの情報………また足場が不安定な為注意されたし……っと、もう見えてきたやね」
しばらく歩くと、鬼牛の巨体でも容易く入れそうなほど大きな洞窟があった。奥は暗くて何一つ見えない。叫んでも反響して戻ってこないことから、かなりの規模の洞窟だと推測できる。
「んじゃ、行ってみるか。ガレスはウチの傍離れないでな。ウチが灯り持って先導するから、ルカは迷わないように通った道に目印をつける係を。ガウェイン、お前は………」
「しゃあぁ!白猿よ待ってろ、今叩き殺しに行ってやるッ!」
トリスタンさんが話を終える前に隊長が飛び出していってしまった。トリスタンさんここ最近で特大のため息をつく。もうツッコむのすら疲れたのだろうか。
「あいつは隊長としての自覚はあんのか………?いや、ないわ」
「あの、隊長行っちゃいましたけど大丈夫なんですか?」
「大丈夫やろ。しぶとく生き残ることだけはウチらの中で誰よりも信用できる男や。ウチが保証するで」
さすが幼馴染み………隊長を誰よりも信用して………いる?
褒めてんのか褒めてないのか分からないが、まぁトリスタンさんが言うからには大丈夫なんだろう。
私達はトリスタンさんを先導に、ガレスさん、ランスロットさん、私の順で進んでいく。私は等間隔で印を壁に貼り付けていく。地味な作業だが、複雑で暗い洞窟内では帰り道の印は命綱に等しい。
なので剥がれないように、しっかりと印の端から端まで張っていく。
ギルガス王国騎士団特性の超粘着テープは普通のテープでは貼りにくいところでも、ガッチリと固定して離さない!今なら各地騎士庁で購入可!1200銭!
なーんて謎の独り言を心の中で呟いていると、随分奥まで来てたようだ。生物の気配は薄く、辺りを見渡すと不気味に光るコケ植物や鉱石くらいなものだ。
本当にこんなところに白猿がいるのか?
………と、思いきや。
「おっと、遂にお出ましやで。…………けど、主役はまだっぽいけど」
突然、鼻の奥を搔き回すように獣臭がした。思わず鼻をつまんでしまう。トリスタンさんが灯りをかざすと、奥には大量の獣の姿。
これが洞窟に入る前に聞かされた凶暴なやつら………魔獣ではないから、体格はそこそこだが敵意は魔獣に負けていない。牙をカチカチと鳴らし、戦闘形態には既に移行中のようだ。
「ピッグキラーやな。別名、殺人豚。牙の鋭さは、一度獲物を掴んだら死ぬまで離さない。相手がしぶといと、地面や壁に叩きつけたり、仲間を呼んで必要以上に痛めつける危険な動物。以上、図鑑説明」
「え、何それ怖い」
「トリィ。どうするのだ。別に特段気にするような相手ではないが、数が多くて厄介だぞ」
「んーそやね………相手は殺る気満々やから避けては通れないけど………んー、ガレス」
「(・∀・)ハーイ」
「が、ガレスさん!?一人で、危ないですよ!」
ガレスがニコニコしながらピッグキラーの大群へ向かっていく。そしてそれを誰も止めようとしない。むしろ「やってこい!」と親指まで立てている。
一体何が始まると言うんだ………!?
「ルカ。前にガレスはすこし特殊な出自やって言ったやん。それはそれとして、ルカは多目族と魔眼族って聞いたこと、ある?」
「それはまぁ、知識としては………」
多目族とはその名前のとおり、目が複数個ある人達のことだ。そして魔眼族は、魔術とは別の特殊な力が宿る目を保有するこれもまた珍しい人達のことだ。
しかし、魔眼族はその繁殖力の低さ。それに純血を何よりも大切にする文化だったため、他の種族との子供を作らず30年ほど前にいなくなってしまったと聞く。
「それとガレスさんの何が…………」
「まぁ見てな」
とてとてと歩くガレスは、ピッグキラーの大群の真正面で歩みを止めた。すると――――――
「――――我ガ第5ノ魔眼ハ万物万象ヲ石ヘト変エル、即チ石死ノ魔眼ナリ!!」
ガレスさんの右側の額から、じわりともう一つの目が開眼する。その目を見たピッグキラー達は、たちまちピクリとも動かなくなり、徐々に文字通り石へと変貌していった。
さっきまでこの場を埋め尽くしていた殺意は一つたりとも残っておらず、また不気味に光るコケ植物と鉱石が残るのみだった。
「―――――え。………え」
「ガレスはな、密かに生き残った魔眼族と多目族との混血やねん。両親といざこざあって、途中は省くけどなんやかんやでウチで預かることになったんや。分かった?」
「いえ…………全然分かりません」
「┓( ̄∇ ̄;)┏」
とりあえず私は何も見なかったことにした。
######
記憶を消して再スタート。
奥に進めば進むほどに足場が悪くなる。足場が少なかったり、とげとげになってたり、気付いたら崖だったり(ランスロットさんが1回落ちた)、蜘蛛の巣のように岩が張り巡らされている入り組んだ道だったり。
洞窟に入って早二時間。白猿は見つからない。もしかして、巣を変えてしまったのか、それとも今ここにはいないのか。いずれにせよ、白猿を倒さなければ帰れない。
太陽突撃隊とは、仕事の押しつけ場でもあり一度任務を受ければ遂行するまで帰って来れない。そんな悪魔族も真っ青なブラック職場なのだ。
あ、そう言えば隊長は何処いったんだろう。道中に隊長らしき人物が壁をぶっ壊したり地面をぶっ壊したりあと色々ぶっ壊したりした痕があったが、既に隊長は最奥まで行っているのだろうか。
それとも、すれ違いになってしまっただろうか。隊長の安否が心配になる。
「お、やっと着いたで。ここが白猿の巣っぽいな」
「やっとですか………まだ戦ってないのにヘトヘトです………」
長かった洞窟の最奥地。そこには原住民のような、我々の文明レベルには程遠いが、明らかに意図して作られた物々がズラリと並んであった。
藁で作ったベッド。動物の骨で作った武器。粘土で作ったゴミ捨て場。木々で作られた物を作るのに必要な道具一式。
材料こそ均一性がなかったが、そこにはとても魔獣が作ったとは思えない品々があった。
どうやら特殊個体の白猿は相当頭が回って手先が器用なようだ。
「藁でベッドを作るとは………魔獣のくせに贅沢なやつだ。なんか気に食わんのでぶっ壊していい?」
「ちょっと待てやランスロット。これは非常に興味があるで。こんなサンプルは初めてや。特にこのベッドとか、他のと比べると妙に手が込んである。ここは保存しておいて、帰って上に報告しよう。何か面白いデータが手には入るかもしれへん」
「ふむ………トリィが言うなら仕方がなi
「オリャーヽ(゜Д゜)ノ」
「あ」
「あ」
あ。
衝動を抑えられなかったガレスさんが、恐らく白猿が手を込んで作ったであろうゴージャス藁ベッドを燃やした。
ボーボーである。とても今から消火しても間に合わない。そしてガレスさんは舌を出して、
「f(^_^)へてへぺろ」
「ガーレースー!!」
「いたたたたたたたたた!!!トリィそれはなし卍固めをなし骨が骨がぁぁぁぁ!!だってやるなって言われたらやりたくなるのが人の運命じゃん!」
「あ、喋った。ガレス三は卍固めされると喋る、と。メモメモ」
「………………む。トリィ、ガレス、ルカ。何者かの気配がする。これは…………」
「え?まさか………」
ズシン、ズシンと重い音が鳴り響く。
一歩一歩が地面の岩を砕かんばかりに力強く、放つ威圧は鬼さえ逃げ出す。白い毛並みに覆われて、蠢く巨大こそ山の主。
武器を片手に現れて、息を吹き出し、また息を吸う。
「―――――――――ッッッ!!!!」
家主の白猿が、顔を真っ赤っかにして帰ってきた。
########
うん、まぁ、そりゃあね。丹精込めて作ったベッドが、自分が留守の時に勝手に家に押し入ってきた奴らに燃やされるとか溜まったもんじゃないしね。
顔真っ赤にしすぎて白猿じゃなくて赤猿になりそうなんですけど。
ついでに多数のピッグキラーや3匹ほどの魔獣を引き連れてやって来た。統率をとっているのかこいつは?だとしたら、思ったより厄介な気がする………。
「げっ。凄いタイミングでお出ましやね。けどまぁええ、探す手前が省けたってもんや。ランスロット!お前は周りの雑魚を頼むで!」
「了解した」
「ルカはガレスと荷物の護衛を!ガレスは凄いけど魔眼以外の戦闘力はないからな!」
「了解です!」
私は荷物とガレスさんを担ぎトリスタンさん達から距離をとる。
シリアスな場面だが、内心ちょっとワクワクしている。今まで分からなかった彼女らの実力が間近で見れるのだ。一体彼女らはどんな風に戦ってきたのか、見物させて貰うとしよう。
「我が闇夜から生まれし聖剣よ。全てを滅する牙となり、その権威を示すがいい!いくぞ、アロンダイト!!」
ランスロットさんが謎の詠唱を唱えると、彼の持つ剣がうっすらと光りだした。その光景はまるで暗い空にぽつんと光る月光のよう。
ランスロットさんが、ゴッ!!と力強く踏み込む。軽く音速を超え、魔獣たちをあっという間に蹴散らしていく。瞬きすれば5つの首が、もう1回すれば20の首がそこら中に散らばっていく。
比喩表現なしで目で追えない。
…………あっでも今わざと速度落としてこっちに向かって煌びやかスマイルを送ったのは見えたかも。
「我がアロンダイトは暗闇から生まれし聖剣。日の光が当たらぬこの場所で、私に勝てると思うなど笑止!このスピードを捉えられる者など、素敵なレディしかおらぬて!」
誰も聞いてない解説ありがとうございます。あと最後は余計です。
「ランスロットのやつ、新入りがいるからって張り切っちゃって。まぁええで、こっちも負けられへんなぁ!」
「きぃづぎぃ………」
「言っとくが、ウチの弓は普通の代物とは前提が違うんや。弓としての格の違いも、ウチの弓兵としての腕もなぁ」
そう言って、腰に携えた矢を三本ほど引き抜く。よく見ると矢先が普通の鉄ではない。黒いテカリが特徴的で、ずっしりとした重さが視覚情報として伝わってくる。
玄にセットし、引いて、パァンッ!!
「ギギッギィィ!!」
漆黒に染まった矢は、空を切り裂き白猿へと一直線。しかし白猿は怒り浸透しつつも、冷静に手に持った武器で矢を受け流す。
「おっと、無駄やで」
「ぎっ………?」
トリスタンさんはイタズラが成功した子供のようにニタリと笑う。
白猿に受け流された矢はそのまま落ちるかと、思いきや!地に落ちる寸前に、くるっと重力の向きが変わったかのように上へ。
「ギギッギィィ!?!?」
ズドンッ!と大砲でも当たったような爆音が炸裂する。その威力は絶大。想像を遙かに上回り、白猿の片腕を吹っ飛ばし、片目を潰した。
「えっ!?何あれ!?つっよ!?」
「( ^-^)」
「この矢は特殊な金属でできていてな、ウチの魔力を込めるとこいつは操ることができるんや。こいつに狙われたら最後、こいつを破壊するか撃ち抜かれるかのどっちかやで」
す、すごい。カッコイイ!
何が凄いって威力だよ威力。普通の弓矢であんな音鳴らないでしょ。もはや大砲だよ。
と、私が興奮していると、ガレスさんが私の頬を引っ張る。何事だ、と次の瞬間。後ろから何者かの気配があった。
「ッッ!!」
すぐさま剣を鞘から引き抜いて、背後へ振りかざす。ガギンッ!と鋼同士がぶつかり合う音がした。凶悪な爪、鉄のような頑丈さ、そしてこの体格。
トリスタンさんが相手どっている白猿とはまた別の個体の白猿だ。
「ぐ、ぬぬぬぬぬ」
「レディ!」
「ルカ!大丈夫か!?」
油断していた。二人の戦いぶりに釘付けになっていて、私本来の役割を忘れてしまっていた。不覚だ。
白猿は不気味に笑いながら、更に爪で押し倒す。特殊個体よりかは体格は一回り小さめだが、私の身長を優に超え巨体をもつ白猿の方が圧倒的に有利。
しかし、だからと言って諦める私ではない。
背中に背負った予備用のショートソードを引き抜き、白猿の腹に突き刺す。白猿が怯んだ隙に、その腹を蹴り倒す。
危なかった。やられるところだった………
「………だが、まだ浅いか」
「キッキキ」
この程度じゃ俺は死なねぇぞ、とばかりに剣を引き抜いて捨てる白猿。そして私に休む暇も与えずに突撃してきた。
「ギヒィ!!」
「ぐっ………!?」
勢いの乗った突進に、捌きにれずに吹っ飛ばされる。そのまま白猿は私に接近、爪を立てて襲い掛かる。
「ルカ!くそ、邪魔やお前!さっさとやられろや!しぶといとやつ!」
「キキッキ…………」
「レディ!くそ、間に合うか………!?」
トリスタンさんが助けに入ろうとするも、片腕を吹っ飛ばされて何処にそんな体力が残っているのか、白猿に妨害。ランスロットさんも高速でこちらに向かうが、それよりも先に白猿の攻撃の方が早い。
万事休す。もう駄目―――――――
「はっはー!ふん、しょっ!!」
――と、思った。白猿の爪が私の喉を引き裂く間際、眼を焼き尽くさんばかりの輝かしい、そして太陽のごとく赤々とした熱線が白猿の体を灰も残さず蒸発させた。
熱線が出てきた方向から、煙の中からずしずしと歩いてくる人影が一つ。
「おっ、着いた着いたー!ガレスー、トリィー、ランスロットー、ルカー!無事ー?」
「隊長………?」
「お、無事の用だな!ナイスタイミング!!俺ッ!」
「あれ隊長の仕業ですか!?いやまぁ助かりましたけど………隊長って魔術なんか使えたんですか?」
「んいや。俺は魔術とかからっきしだし。魔力だけは無駄に多いらしいけどねぇ!」
「え、じゃ今のは…………」
「おぉ!これが例の白猿か!大きいけど弱そうだなー!トリィこんなのに手こずってんの?太陽突撃隊の名が泣くよ?」
「別に手こずって変わ!やろうと思えば頭をぶち抜くことだってできたけど、ほら、ガレスの教育に悪いかなと思って………」
「嘘つけぇ!ガレスとか前虫の死体弄くってたぞ!そんなのでショックを受けるほどの道徳心なんてないでしょ!」
「(^з^)-☆」
いや、そこ肯定しなくて良い方が………。というか隊長は今まで何処行ってたんだ。お陰でピンチだったんですけど。
え?それはお前の実力不足だって?まぁそうだけど。
「なんかもう面倒いし、ちゃちゃっと終わらせますか!―――――ガラティーン、太陽の化身から生まれし聖剣よ!その炎を持ってして、全ての悪を焼き尽くすがいい!我こそは、全てを断罪し、救う者なり!塵も残さず、業火へ堕ちろ!!太陽突撃斬!!」
この暗い暗い洞窟に、一つの太陽が顕現した。その光は全てを照らし、焼き尽くし、血の一滴も残さずに蒸発させる。その聖剣の一振りは、世界を震えさせ、そして――――私の中の世界を変えた。
「一件落着!!」
########
「…………くくく、やっと帰ってきたか。待ちくたびれたぞ。その様子だと、上手くいったようだな」
無事に洞窟を出た後、そのまんまケイさんのところまで戻ってきた。やりきった顔で………一人だけだけど。
「上手くいったのはこいつだけやで……。このいいところだけを持っていくハイエナのような顔つき。そういうことや」
「はーはっはっは!いいんだよ、いいとこ取りは隊長の特権なんだよ!!にしても、今回はガレスには助けられたな!」
「σ(^_^)」
「ん?どういうことです?」
「ガレスはな、『念思の魔眼』ってのがあって、そいつを使うと遠く離れた相手でも会話ができるし視界も共有できちゃう優れ眼なのだ!!」
「へぇ…………なんかもう皆さん規格外過ぎて、訳分かんないです」
「だろう、だろう!?俺達は凄いだろう!!」
「はい。スッゴく。――――私もいつか、皆さんのようになれるでしょうか?」
私はごくごく一般的な人間だ。ガレスさんのように特殊な力などあるわけでもなく、隊長たちのように人間離れしてるわけもない。
しかし私は、理想に向かわなくてはならない。私に憧れてくれたあの少年の期待を裏切らないためにも、私の夢を叶える為にも。
――――そして隊長は、屈託のない笑顔で言った。
「もちろんだ!!我が太陽突撃隊に属すのならば、いつかはなるようになるさ!なんなら今から稽古をつけてやる!よぉし隊長の俺に続けぇ!!」
「――――はい!!」
私は、改めてこの日思い知った。太陽突撃隊でやっていく過酷さを。
けど今度は、あの日と違って、尊敬と期待という意味を乗せて――――
ガレスの魔眼について。
ガレスは右頬に一つ、左に一つ。普通の目の位置に加えて、額に四つ、計八つの目を保有しています。さらに一つ一つに魔眼の能力が備わっていて、石死の魔眼は第五(左頬)、念思の魔眼は第三(額の一番右)の目を使っています。
また魔眼は魔術とはまた違う、特殊な異能らしいです。詳しいことは何も考えてません()




