18 騎士の左遷 その4
私が太陽突撃隊に所属してから二週間が経った。最初は不安と謎の恐怖が私の全身を支配していたが、ちゃんと接してみるとみんないい人だ。
「なぁルカッ!聞いてくれ!凄い発明をしてしまったかもしれない!!」
「はい。何ですか?」
「こうやって人差し指と中指を立てて、少し間を広げるんだ。そして口元に近づけて………すぅぅぅぅぅぅーーはぁぁぁぁぁ。名付けて、エアタバコ遊び!超楽しいッ!!」
「………………………」
隊長はこんな感じ。
隊長は凄く馬鹿だが、疲れた時や分からないところがあったら優しく指導してくれるのでありがたい。まぁ、疲れの半分は隊長のせいなんだが。
「おはよう、レディ」
「おはようございます、ランスロットさん。今お茶お入れしますね」
「ありがとう、レディ。そうだ、今日一緒に見回りでも行かない?もちろん、二人きりで、ね」
「いいえ。どうせまた女の子をナンパしたり私を何かしらの建物に連れ込もうとするだけですよね」
「恥ずかしがることはない。分かっている、私のこの蓋をしても湯水のごとく溢れ出る男の魅力に照れているのだな?私は紳士だ、手取足取りレディを………」
「トリスタンさん呼びますよ」
「ふふ、ごめんなさい」
ランスロットさんは暇さえあればセクハラ発言等をしてくるので疲れる。そして毎度のことトリスタンに叱られる。隊長とランスロットさんとトリスタンさんは幼馴染みだと聞く。
二人の扱いはあの人が一番慣れているのだろう。こうやってトリスタンの名前を出せばすぐにやめてくれる。
彼女が近くにいないときはもう少し積極的(悪い意味で)になるが、そこは自己防衛。
「くくくくか、はっはっはっは!!遂に完成したぞ!我が怨念が募りし最高傑作!」
「また何か物騒な物を作ってるんですか、ケイさん………。前の夜中にひとりでにリンボーダンスを踊る呪いのわら人形みたいな迷惑なのはやめてくださいよ?あれのせいでここ一体パニックになったんですから」
「くくくく。聞くがいいルカ。これはな、相手を自在操り傀儡にすることが出来る。しかも、意識を奪うのではなくむしろそのまま。意識があるのに身動きが出来ないまま、思うように痛めつけ陵辱し愛する物をその手で手にかける事が出来るのだ。少し髪の毛を貸せ」
「え、普通にいやで、痛!?まだ話の途中なんですけど!!」
「そして、貴様の髪の毛をこうやって人形の首に絞殺の容量で巻き付けると………それ」
「うわ、足が勝手に!?」
「こんなことやあんなことも………ふふふ」
「ちょ、これは恥ずかしいですからやめてください!いたたたた!?分かりました凄いのは分かりましたからぁ!」
「ただいまー、今日も街は平和です………ハッ!?ケイとルカが何やら高度なやらしいプレイを………ランスロットー!!聞いて聞いてッ!」
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」
ケイさんの謎の実験に付き合わされては体の節々が痛む日々を送っている。トリスタンさんは無視していいと言ってたが、ケイさんが強引なのが悪い。
「ヽ(゜Д゜)ノ」
「……………えっと」
「ヽ(`Д´#)ノ」
「何を怒っているのですか?ガレスさん………?」
「ヾ(≧∇≦)。ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ」
「今度は嬉しそうに走り始めた………!?あ、そこせっかく作った資料があるんで気をつけ、あぁぁぁぁ!!!」
「f(^_^)へてへぺろ」
「………………………むぅ」
その日の夜は泣きながら資料を作り直した。ガレスさんは何を考えているのか、何を言いたいのか全く分からない。怒りだしたと思ったらしい笑顔になったり、今度は絶望した顔で床に突っ伏したり。
私以外のメンバーは何言っているのか分かるらしいが、私も長く一緒にいたら分かるようになるのかの………?
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そしてある日のこと。
淡々と書類仕事をこなしているその時だった。扉がバンッ!!と壊れる勢いで、というか壊して隊長が声を大にして叫んだ。
「任務の時間だッ!!!諸君、今すぐに準備をッ!」
「…………任務、ですか?」
「なんやこんな忙しい時に………あと扉壊すな。これで何回目やねん」
トリスタンさんが面倒くさそうに息を吐く。昼寝をしていたケイさんは起き上がった後に二度寝を開始し、ガレスさんは無視して難解パズルを続け、ランスロットさんは優雅にお茶を飲んでいる。
やる気ゼロかあんたら。
「ふはははは!どうしたみんなやる気ないぞぉ!」
「えと、隊長。任務というのは………」
「ルカは初めてだったないいだろう!前にも言ったとおり我々が行う特殊任務はその名の通り特殊な任務だ。普通の騎士じゃ危険過ぎて手がつけられん。そしてその仕事の押し付けが今来たというわけだ!ふはははは!」
「何でお前はテンション高いねん………。わぁたわぁた、任務ね任務。ほらお前らも支度せえ」
「(;゜д゜)」
「くくく……今の俺に、外の太陽は眩しすぎる……故に、布団という深淵に身を潜め……いたたたた」
「私はこのお茶を飲み干すという重大で危険な任務があるのだ……すまないが、私のことは放っておいて残りのみんなでいくといい………いたたたた」
「ほらアホどもさっさとやる気だせぇ。新入りのルカの前でアピール出来るチャンスやぞ?今ならニート騎士イメージを払拭できる。まだ、間に合う」
いや、ケイさんとランスロットさんに関しては多分もう間に合わないと思う。
「ふっ。我がアロンダイトが正義の衝動に震えているな………。ちょっとトイレ行って来る」
「くくくく。我が執念の権能、しかと味わうがいい……ききき。ちょっとトイレ行って来る」
どうやら二人ともやる気を出したようだ。何て単純なんだあの人達。
「というか、今すぐに何ですか?」
「あぁ、今すぐに討伐して欲しいと言われた。今回は飛び切り危険だぞお………俺ワクワクすっぞ!」
「どこの戦闘民族ですか隊長………。というか、討伐?魔獣絡みか何かでですか?」
「正解だよルカくん!30ガウェインポイントを差し上げよう!」
「溜まったら何かあるんですか?」
「俺の肩叩きをする権利を与えよう!」
「結構です返却します。………それで、その魔獣とは一体なのんなのですか?」
「それは行く途中で話す。では一時間後に西門前に集合!!解散!!」
と、言うわけであっという間に一時間後。西門に来たが、こんなすぐに出動するなんて一体全体どんな任務なんだ。
「で、なんで呼び出した本人が来てないんですかね」
「気にするなやルカ。いつものことや、酷いときとか二時間待たされたんやで。まだ10分も経ってないんやし、気長に行こうや」
「いや、それは気長すぎでは………」
「……………む、どうやら今回は速かったようだな。あれを見ろ」
ランスロットさんが広い道路の奥を指さす。
どし、どし、どし、どどどどど!!
非常に重たい足音が地面越しに伝わってきた。明らかに馬車とかではない。って、おおおおおお!?
「はっはー!皆の者、待たせたな!俺が来たッ!見よ、この巨大な鬼牛を!」
「鬼牛………!?」
そこには、馬の代わりに馬より二回り位大きい牛が荷台を引いていた。大きな角はS字に曲がっており、その赤い毛皮はとても力強い印象を与える。
そして、何より、でけぇ。
ガレスさん4、5人程度の高さ。体長も非常に大きい。まさに鬼の牛と言ったところか。「どうだ、俺の姿は!」と言わんばかりに鬼牛は鼻息を吐く。
「今回は急ぎの用だからな、これで行くことにした!こいつは凄いぞー、馬なんかとは比べものにならない!これに乗ったら最後、もう馬車には戻れないねッ!」
「鬼牛………凄い大きいですね。びっくりしました」
「そうだろうそうだろう!俺のこいつの背中の上に乗るから後はみんな荷台なッ!」
隊長の一言に、耳をピクリと動かしたのが二人。
「聞き捨てならんな、ガウェイン。君は隊長、即ち我らが部隊の要なんだ。もし事故でもあったりしたら危険だ、だから私が上に乗ろう貴様は荷台だ」
「くくくくき、戯れ言を。そこに乗るのはこの俺だ。鬼牛は人に懐くとて魔獣。魔獣は特に闇を抱える者に興味が湧くらしい。ならば、こいつを完璧に支配するのに適任な俺しかおるまい」
「何だと貴様らッ!隊長の命令が聞けないのか!ここは俺が乗るのー!だってカッコいいじゃん!ここ特等席だから、隊長専用席だから!」
「ええいこざかしい!いいからどけ」
「どくのは貴様だランスロット!」
そして三人は私達を放っぽいてくだらない喧嘩を勃発させた。別に誰が乗っても同じだろうに………男は何故こういうくだらないことに拘るのだろうか。
鬼牛は「速くしてくれ」と言わんばかりにため息染みた鼻息を吐いた。
君も苦労人に来るか?




