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16  騎士の左遷  その2



 

 ついにここまで来てしまった。


 道中にトラブルはあったものの、そこからは何事もなく本部に辿り着いた。本部は王城の………隣の隣の隣。王城の中にも騎士達は配属されているが、本部は別の場所にある。



 しかし………でかい。王城まではいかないが、流石は国の騎士組織の本部。前まで配属されてた騎士署がちっぽけにみえるくらいだ。



 今からここに、私は脚を踏み入れるのか………。普通に昇格してここに配属されるのなら、これほど光栄なことはない。しかし、しかしだ!噂に名高い(悪い意味で)太陽突撃隊に入る形でここに来るとは…………。



 いや、落ち着け私。所詮は噂だ。もしかしたら案外いい人達かもしれない。性格に難ありといっても、それは一騎士としての性格だろう。一般的常識人なら、まだ全然大丈夫だ。



 そう思うと行ける気がしてきた。よし、いくぞ、いくぞぉ…………。





「そこの者。さっきからそこをうろちょろしていたが、一体何用だ」


「あ、えと。ギルガス王国サクララ地方ラプラス町の騎士署からやって参りました。ルカ・ユージアル・ポルトと申します。本日から、本部の太陽突撃隊に配属されることとなり、参った次第です」


「騎士手帳みせて…………はい、分かりました。通っていいよ」


「はい、どうも」


「にしても………君、まだ若いのにあのアホ集団に配属されることになるなんて、何やらかしたんだい」


「え、まぁ、はい。本当にお恥ずかしい限りです。すみません…………。あの、太陽突撃隊ってどんな人がいるんですか?」


「そうだな、行ってみないと分からんとしか言いようがない。何しろ、太陽突撃隊は異常者集団だ。たった五人しかいないとはいえ、一人一人にクセがありすぎる。胃もたれするレベルでね。私から言えることは、とりあえず舐められないようにキビっとしておけとしか」


「…………………………」


「では、幸運を祈る」




 あ、ダメだ。やっぱ噂通りかもしれない。


 とりあえず建物の中に入ったが、脚が震え「行きたくねぇぇ!」と囁いている。脚だけじゃない、全身が焦りと緊張と不安に悲鳴をあげている。


 

 なんか変な汗も噴き出してきた。目眩もする。これは気を抜いてたらぶっ倒れるぞ。


 

 心臓の音がうるさい。よく小説で聞くロマンチックのフレーズを全然ロマンチックじゃない場面で使うとは思わなかった。それくらいヤバい。



 短いようで長かった時間が終わり、ついに太陽突撃隊の部署の入り口まで来てしまった。




「すぅー、はぁ、すぅー、はぁ」




 意味もなく深呼吸をひたすら繰り返す。多分5分くらいドアの前で立ち止まって深呼吸してたと思う。だがそろそろ腹を括らなければ。



 ノックをして、ドアノブに触れる。そして、ゆっくりと、ゆっくりと手をひねり、その扉を開いた。



「失礼しま―――――」



「我が名はランスロット!!太陽突撃隊副隊長にして、この世の女性を全て愛する者!我が剣技に右に出る者はいない!」


「ふひ、ふひっひっひ。我が名はケイ!太陽突撃隊にして、この世全てを憎悪する者!死ね、殺せ、憤怒せよ!全てを呪えぇぇぇ!!」


「ヾ(≧∇≦)。(ゝω∂)。(;´Д`)。(*^▽^*)」


「ウチの名はトリスタン!太陽突撃隊にして、このアホどものお目付役として配属された哀れ極まりない者!とりあえずこれやめてええか?」


「そして最後にッ!我が名はガウェイン!太陽突撃隊隊長にして、この世全ての悪を滅ぼし、騎士としての正義を全うする者!太陽のごとき我が情熱、その身に焼き付けるがいい!」



「ご」「に」「ん」「(・д・)」「って」



「「「「「太陽突撃たi



「失礼しました」




 全力でドアを閉めた。


 ……………………………………………………………………………。


 思考がフリーズした。まるで、鶏肉と人参が天界でラップをしながら、焼き肉をしてレッツパーリィしてるくらい意味が分からん。


 きっと場所を間違えたんだ。そうだそうに違いない。太陽突撃隊って言ってたけど多分違うな、うん。ちょっとここの人に場所を尋ねてみよう。



『ほらぁ!やっぱ言うたやん!』


「?」



 ドアの先から、怒鳴り散らかす声が聞こえた。ドアに耳を当てなくても余裕で聞き取れる程の声量だ。



『いや!しかし!我ら太陽突撃隊の伝統行事をしないわけにはいかぬぞ!トリィ!』


『何が伝統行事や!あんなのただただ小っ恥ずかしいだけやないか!せっかく待ちに待った新人が来たってのに、これじゃヤバい奴らだと思われるやないか!』


『ふひっ。安心しろぉトリィ………もうすでに手遅れだ』


『安心できる要素が見つからへんのやけど!』


『落ち着くのだ、トリィ。貴様も騎士の端くれならば、もう少し気品のある慌て方をな………すぅー、はぁ』


『気品のある慌て方ってなんやランスロット。優雅にお茶飲んでんじゃないよ』


『( ^-^)。ヽ(゜Д゜)ノ。(≧∇≦)b』


『黙れぇ!』





 何だか、話についていけない。いや、そもそもついて行きたくはない。認めたくはない、決して認めたくはないがあれが私が今から入る、太陽突撃隊なのだろう。



 ……………とりあえず、話の内容を聞く限り常識人っぽい人は一人いたから中に入ってみるか。



「あのー、し、失礼します」


「はっ!仕切り直し!我が名は」


「やんなくてぇわ!もう!………とりあえずお前ら、一列に並んで、自己紹介するよ」


「「「はーい」」」


「(・∀・)」




 何だかお母さんみたいだ。お母さんポジの女の人が全員を一列に並べさせる。揃った太陽突撃隊の皆さんは、荒くれ者集団とは思えないほどキビキビして、騎士としての威厳を感じる。




「えっと、さっきは驚かせてすまんな。改めて、コホン。ようこそ!ウチら太陽突撃隊へ!」


「あ、トリィそれ俺が言いたかったセリフ!」


「うるさい。自己紹介がまだやったね、ウチの名前はトリスタン。この隊のお目付役ってところやな。よろしく!」



 お母さんポジの女性の名前はトリスタンさん、か。


 褐色の肌が特徴で、白い髪を後頭部にお団子にして結んでいる。女性だが、その体つきを見るに相当鍛錬している。しかし、それでもなお大人の女性というか、色気を感じさせる肉体はちょっと憧れちゃうかも。


 けど、少し露出面が多いような………お腹冷えないのかな。



「んで、この猫背で気持ち悪いのがケイや」


「誰が気持ち悪いだ……ひっひ、俺の名はケイ………お前、復讐したい相手はいるか?今なら良い値で呪具を貸してやるぞ……ひっひ」



 いや、結構です。


 この暗い(物理的にも)オーラを放っている人がケイさんか。三日三晩徹夜してるかのようなくまのある目、もじゃもじゃした髪型が特徴的だ。


 灰色のマントを羽織って全身を隠しているが、その実態やいかに………。にしても怖いよこの人。



「んで、こっちがガレス」


「(・∀・)」


「あの………一つ質問いいですか?」


「あー分かっとる分かっとる。言いたいことは分かっとるわ。こいつの見た目やろ?」


「Σ(・ω・ノ)ノ」



 ガレス………と呼ばれた少女は騎士というには余りにも幼い見た目をしていた。10代前半って感じで、私の胸くらいまでの背丈しかない。


 ながーい桃色の髪が特徴で、常に笑みを絶やさない。それだけならまだ笑顔が素敵な少女なのだが……



「こいつは中々特殊な生まれで、ここで預かってるって感じの子や。けど、実力は折り紙付きやで。油断してると髪の毛を引っ張られるから気をつけーや」



 特殊な生まれ………恐らく、人に容易には言えない複雑な事情があるのだろう。あまり問い詰める物ではないな。しかし、それとは違い少し気になることが。




「ヾ(・ω・`)」


「その、何て言ってるんですか?それ」


「あー、これ?これはこいつ特有の喋り方や。まぁ………色々あってな」


「あ、す、すみません。………配慮に欠けてました。すまない、ガレスちゃん」


「別に喋れないんじゃなくて喋らないだけだしややこしい言い方すんじゃねぇトリィ。あとてめぇ新入り年下だからってタメ口聞いてんじゃねぇぞ、あ?ちゃんとガレスさんガレス様ガレス先輩どれかで話せやはっ倒すぞ」


「はい?」


「(・д・)」


「い、今喋りませんでした?」


「はは!まぁ気にすんなや」



 気になるわ!というかこの子滅茶苦茶口悪くなかった!?滅茶苦茶早口だったし、何なんだよ………。



「んで、次がランスロット」


「紹介にあずかりました、レディ。私、ランスロットと申します。この太陽突撃隊の副隊長をやらせていただいております」


「あ、はい。よろしくお願いしま…………ん?貴方は……」



 見覚えのある顔だった。超イケメン、高身長、そしてこの声………忘れもしない、強烈な印象を残した今朝あった男と合致する。



「これはこれは。今朝のレディではないか。何という偶然、何という運命!まさにロマンチックな展開でありましょうぞ」


「あの時は助けていただき、誠に感謝いたします。ランスロットさん。このお礼はいつか………」


「お礼など、必要ありませんよ。さぁ、ここにきて分からないことがあれば何なりと私にお話しください。なんなら今、一日中ホテルで語り明かそうではないか」


「え、いや、その………」


「恥ずかしがる必要はありません。私に身をゆだねて、私に全てを託して、身も心も貴方が体験したことのない境地へと誘いましょう。これは恋のキューピットが我々に与えし赤い糸………さぁ、手を。どうやら、私は貴方に熱心なようだ」


「え、え、えぇ!?」



 そう言ってひざまずき、私の手の甲を手に取る。恐らくそこら辺の女なら一撃で堕ちそうなスマイルを浮かべ、魅惑の声色で私に告げた。



「どうか私の愛を受け止めてほしい。マイ、シンデレr

 

「何しとんじゃ己はぁぁぁ!!!」


「ぶっ!!」



 と、手の甲にキスをしようした瞬間、トリスタンさんがランスロットさんを顔面に蹴りを食らわせて吹っ飛ばした。



「何回言えば懲りるんやランスロット!偶然出会ったとか言ってたけど、どうせまたマンチポップやろ!この子が今日来るって分かっててやったんやろ!この女たらし!」


「ふっ。さすがはトリィ。私の考えなどお見通しという訳か………さすがは私の妻」


「死に晒せナンパ野郎。あと誰が妻や」


「ふっ。私は全ての女性を受け入れる、例え相手が幼女だろうと老婆だろうと私の前では等しく愛の対象………即ち、世界を救う正義の愛。分かるか?」


「分からん」



 ……………………一つ、分かったことがある。このランスロットはダメだ。出来るだけ近づかないでおこう。





「はっはー!そして最後はこの俺ッ!隊長こと、んーーー!ガウェインであーる!!」


「貴方が隊長…………」



 暑苦しさ満載のこの少年?青年?判定に微妙な顔つきの男の名はガウェイン。炎のごとき真っ赤な髪の毛で形も炎みたいに逆立っている。


 さっきからキビ!キビ!ってポーズをとりながら話をしているが、何か意味はあるのだろうか………。




「歓迎するぞッ!で、君の名前はッ!?」


「あ、そうだった。こほん。………私はルカ・ユージアル・ポルトと申します!サクララ地方のラプラス町から来ました!まだまだ未熟ですが、皆さんに追いつけるように精進します!よろしくお願いします!」


「素晴らしい敬礼だッ!しかしもう少し声は大きい方がいいな、ルカッ!」


「あんたは大きすぎるねん。………ま、こんなメンバーだけどよろしく頼むよ。ルカ」


「よ、よろしくお願いします!」


「よしッ!ルカ、早速だがパトロールに行くぞッ!ついてこい!!」



 隊長にガシッと手を掴まれ、されるがままに連れて行かれる。ちょっといきなり過ぎて状況が掴めないです。



「ちょ、ガウェイン!書類仕事はどうすんのや!」


「トリィ!任せたッ!」


「ふざけんなやぁ!」


 





トリスタン


褐色の肌と関西弁(?)で話すのが特徴の女性騎士。ガウェインとランスロットとは幼馴染みの関係であり、彼らの暴走を止める為に配属されたなんとも不遇な女性である。


ガレス


全く喋らず、ジェスチャーなどで意思疎通をする謎の少女。喋らないだけで、別に喋れなくはない。本人曰く、「喋るのはエネルギーの無駄」と語る。



ケイ


猫背で近づき難いオーラを放つフードの男。騎士とは思えないほど、何かに怒り何かを恨み何かを呪っている。直接戦闘は得意ではないが、特殊は呪術を使ったりする。




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