15 騎士の左遷 その1
今回は序盤に登場したルカさんのお話です。
「異動…………ですか」
「うん………異動だ」
私の名前はルカ。ルカ・ユージアル・ポルト。長い名前だが別に貴族とかでもなんでもないただの一般市民だ。女の身でありながら気高く、誇り高い騎士に憧れ昔から鍛錬を積み重ね、17の時に女性の中では最年少で騎士になった。
そっからはぐんぐんと成長して、25歳の若さで今はこの町の騎士署の副署長をやらせて貰っている。
そして今、私はとんでもないピンチに陥っているのだ………。別にただの異動なら文句はない。組織に属してる以上、そういうのは免れないものだ。
この街にも思い入れはあるし、同僚とも仲が良かったが、仕事ならしょうがない。しょうがないにしても…………
「あんまりですよ署長!この異動先完全に左遷じゃないですか!私が何かしました!?教えてください!」
「落ち着くんだルカくん!分かる、君の気持ちはよーく分かる。しかしだな………爆撃熊の一件、署長である私が不在だったためその時の全責任は副署長の君に一任していた。そうだろう?」
「はい」
「町は甚大な被害を受けた………死者は幸いいなかったとしても、建物の被害、負傷者のことを考えると完全に我々の敗北だ。そしてその全責任は………」
「つまり、私が戦犯であると?」
「………………うん」
署長はゆっくりと下をうつむきながら首を縦に振った。
確かに、署長の言うとおりだ。爆撃熊がこの町を襲った事件。しかも、大規模にだ。目的は不明、ただ建物への被害と人民への被害を残し去って行った。
中には、誰かにやられたのか爆撃熊のメンバーと思わしき死体も見受けられたが、そこから何か手がかりが掴めた訳ではない。
その時、署長は不在だったため責任はもちろん副署長の私に乗っかる。私は最善を尽くした………無様に爆撃熊二人にやられたのは置いといて、最善を尽くしたはずだ………はずなんだ。
「しかしルカくん。それだけが理由ではないのだ。詳しくは言えないが、こっちにも色々複雑な、組織的な理由もあって、まぁ偶然たまたま不運が重なったというか…………」
「………………ぐず、ひっぐ、あんまりだぁぁ………ううう」
「あー署長がルカさんとこと泣かしたー」
「酷い!外道!クソ署長!ひげ親父!」
「ご、誤解だ!私はただ……おい待て、最後のは悪口なのか!?」
かくして、私の異動は決まってしまった。
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一週間後………
来てしまった。来てしまったよこん畜生!何故だ、何故だ!こんなことを家族に知られたら、きっと幻滅される………。両親には呆れられ、歳の離れた弟には馬鹿にされるんだ………うわぁぁぁ!!
落ち着け、落ち着け私。騎士たるもの、常に冷静であれ。自分よりも他人を救うことを考えろ!深呼吸深呼吸………。
ところで私は今は王都に来ている。組織の本部があるはずの王都が、何故左遷先なのかって?それは本部の中にある特殊部隊のことだ。
通称、太陽突撃隊。
名前からして嫌な予感しかしない。突撃ってワードが既に嫌だ。
太陽突撃隊については噂程度しか知らないが、その悪評はまぁ酷いらしい。態度口調が悪いのは当たり前、任務は完璧にこなすが、その過程で色々問題を起こしたり事件になったりする………とか。
なんで解雇されないのかと疑問に思うが、実力だけは国の中でも随一で、過程はともかく任務はちゃんとこなすから中々手が出せないとか。
…………………………嫌だぁぁ。めちゃくちゃ行きたくない。
署長や同僚から聞いた話だが、前にも私みたいな普通の騎士が何人も飛ばされたらしい。しかし、全員が辞表を出すか泣きついて異動させて貰ったとか。
………………………嫌だ(クソデカため息)。
心臓がバクバクいってる。久しぶりだ、こんなに緊張したのは。騎士試験を受けた時以来か………。
私は今日地獄に行くのか?あぁ、神よ。私を救いたまえ………。
「そこの素敵なお姉さーん。こんにちは。今暇だったりする?」
「………………………」
「お姉さーん。あれ、聞こえてる?てか見えてる?おーい、ちょっとー」
「……………?」
なんだこのチャラチャラした男は。今時そんなにネックレスをぶら下げてもダサいだけだぞ。あとニット帽被ってるけど、暑くないのか?もう夏だぞ。
…………というか、素敵なお姉さんって、私?
首を傾げて自分に指を指す。
「そうそう君だよー。やっと気付いてくれたね。どう?今からお茶でもいかない?いい店しってるからさー」
なるほど、いわゆるナンパってやつか。田舎育ちだからそんなものには出くわしたことが無かったな。というか、私が素敵なお姉さんなのか?…………ちょっと照れるな。
しかし、私は今そんな暇じゃない。行きたくないが、今から仕事に向かわなくてはならないのだ。
「お誘いありがとう。しかし結構だ。私は今忙しい」
「えーちょっとだけだからさ、お願い!一時間だけ!」
「十分だ。私は急いでいる」
「じゃあ30分!なんなら10分でいいからさー」
「…………………」
「じゃあせめて連絡先教えてよ!いつでも合いに行くからさ!」
「ええい、くどいぞ!行かないっと言ったら行かないんだ!セクハラで逮捕されたいのか!」
私は男を振り払い、先へ進もうとする。だが男は諦めの悪いことに、私の手を握り引き止めた。
思わず心の中で舌打ちをした。この程度のモヤシ男なら自力で振り払えるが、ここは騎士であることを明かして、追い払ってやろうか………?
懐から騎士手帳を取り出そうとして、次の瞬間。
「―――おやめなさい。このレディが困ってるではないか。男として、女性に迷惑をかけるのは見逃せないぞ」
「お、お前は………!」
「………?」
高い身長と、紫のスーツが特徴的な男だった。
鍛え抜かれたたくましい肉体、そして身の振る舞い。一目でただ者ではないことが分かる。
そしてなりより、超イケメンだった。この世の美形という言葉を煮詰めたような整った顔立ち。背後から神々しい光が出ているのかと錯覚する。
まさに白馬の王子様、という言葉が似合う男だった。
しかし私の好みではない!不採用!
「ちっ、イケメンがよぉ…………」
男は舌打ちをし、ふて腐れたようにその場を立ち去った。
ふぅ、なんとか面倒な危機は去ったか。私は安堵に一息ついて、イケメンに頭を下げる。
「すまない、助かった。ありがとう」
「いえいえ、レディが困っているのならば駆けつけるのは男として………いえ騎士として当然のこと。気にしないでくだされ」
「そうか。貴方は素晴らしい精神の持ち主なのだな。私も、見習うとしよう」
「それはそれは。どうですか、お詫びと言ってはなんですが私とお食事にでm
「それではー!」
なんか最後に言いかけてた気がするけど、気にしない気にしない。次の彼を見かけたときはお礼でも渡そう、そう思いながら王都を走り抜けていくの出会った。




