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13  ただの姉妹喧嘩



 まず最初にイブキ先輩に立ち向かうのはこの二人。学園『アナスタス』の入学式のレースに、天使(笑)のごとく会場を盛り上げた期待の新人(どこの界隈かは不明)、アキレス・ガブリエルさんでございます。



「いえーい!ワイルドに賞金ゲットだぜ!トカゲの姉ちゃんには悪いが、この俺様が颯爽と、華麗に、ワイルドに勝たせてもらう!」



 そしてそんな馬鹿アキレスとペアを組むのはこの人。堅物キャラを気取っているが最近ちょっと壊れ始めたぞ。屈強な肉体と四本の腕を持つ多腕族、ゴウキくんでーす。




「勘違いするな。我は力試しに来ただけのこと。賞金なぞに興味などないわ」


「まぁまぁそう言うなってゴウキ。せっかくのイベントなんだ、楽しんでいこうぜ?」


「貴様は何故いつもそう楽観的なのだ………だが、楽しむ、か。まぁ、いいだろう」


「ゴウキならそう言うと思ったぜ!んじゃまぁ、ぶちかますかねー」




 屈伸したり飛んだりしてアップを開始する二人。気合いは十分のようだ。アキレスはまぁいいとして、ゴウキがこんなイベントにでるとは珍しいな。何かあったのかな?



 そしてイブキ先輩はというと満面の笑みで余裕の表情。赤い鉢巻きをしっかりと締め、ポキポキと指を鳴らす。



「ふっふっふ。いやー若いねお二人とも。是非とも私を倒して欲しいね!」


「応!言われなくてもそうするつもりだぜ!早速始めよう、こっちは準備万端だぜ。覚悟しろよトカゲの姉ちゃん!」



 さて、あの二人はどこまであのイブキ先輩に最善を尽くせるか。


 別に二人を馬鹿にしてるわけじゃあない。アキレスはアレでも鬼神の一撃を受けてもピンピンしてるくらいだし、ゴウキも中々の実力者だ。むしろ絶え間ない日々の努力によって前より強くなってる。



 俺も俺でイブキ先輩の実力を完璧に把握してわけじゃない。けど、あの人には何て言うか、得体の知れない力が眠ってるように見える。



 それは彼女が竜人族だからか、それとも彼女特有の何かがあるのか、その実態は不明だ。




「じゃあ、始めまーす。はぁ………よーい、始め」



 ヒビキさんが気だるそうに笛を吹いて、試合が始まった。最初に動いたのはアキレス達の方だ。


 アキレスは早速、切り札である天使族の羽を展開。投げナイフのようにそれを飛ばして牽制を図る。



「面白い攻撃方法だねー」



 因みにこのイベント、武器の利用は禁止だが種族の特性を生かした攻撃はオッケーだそうだ。あと魔術も観客を巻き込まない程度なら使ってもいいらしい。



 その隙にゴウキが背後に回り込み、リーチの長さを上手く利用して鉢巻きに腕を伸ばす。



 しかしイブキ先輩は動きも見向きもしなかった。そこに不動で立ち尽くし、ふふんと鼻を鳴らすと。



「その距離じゃあ、私の拳圏内だよ」



 次の瞬間、バッ!と音を立ててイブキ先輩の姿が消える。そしてゴウキの背後に回り込んで裏拳を叩き込む。



「ぬっ!?」



1秒もしない間にアキレスの目の前まで距離を詰めて、チョップを決め込み、アキレスを地面に埋めた。


 決して比喩表現ではない。文字通りアキレスを土に埋めた。



「ブッッ――――!?」


「はい、終わり」


「「「………………………………………………」」」



 瞬殺だった。


 予想以上、いや予想外と言った方がいいかな。まぁイブキ先輩の事だし反撃はしてくると思ったけど、ここまで容赦なくやるかね。


 ゴウキは何が起こったのか分からずに口が開きっぱなしになっていて、アキレスは土に埋まってよく見えない。



「は、反撃してくるとか………」


「もがもがもが(聞いてない)…………」


「あれ、また私何かやっちゃいました?」




 お、大人げねぇぇ……………





#######






 イブキ先輩が案の定暴走したので、とりあえずイブキ先輩は反撃をせず避けるのみにルール変更。けどそれでもイブキ先輩が強すぎるのでハンデとして、地面をなぞって作った円の内側だけを行動範囲とする。



 因みにゴウキとアキレスは「もうあいつと戦いたくない」と言うわけで見る側に徹しましたとさ。




 そんなこんなで次々と挑戦者達は倒れていく。まずゴリ押しじゃあ突破はできないし、頭を使った戦法をした人もいたがイブキ先輩の圧倒的パワーの前には全てが無力。



 かろうじて鉢巻きに触れることに成功した謎の老夫婦タッグがいたが、途中で腰をやってしまいリタイア。もうそっから先はイブキ先輩の独壇場だった。



 挑戦者の大半が何だか血相を変えてイブキ先輩に対する愚痴を吐きながら追いかけ回していたんだけど、あの人どんだけ街の人に恨み買ってるんだ?



「さーて、次は…………8番のタッグ。8番さん達ー」


「…………ヘルさん。私達の番みたいです」


「ッッ!?よよよよーし、頑張るぞー」



 そして遂に本来の目的がやってきた。千代女と巴の番だ。相変わらず千代女はガチガチ、巴は少し緊張気味って感じ。


 本当にどうするつもりなんだあの人は。秘密兵器があるとか言ってたが、どのタイミングで何を使うんだ………?



「カツジ様カツジ様」


「ん?誰って近い!!………マントラさん?」



 何の前触れもなく突然背後に現れたのはガネーシャ先輩の付き人ロボット、マントラさん。片手には液体の入った酒瓶を抱えている。



「はいマントラでス。イブキ様から、これヲ」


「…………酒?何故に?」


「酒ではありませン。それは秘密兵器でス」


「何でマントラさんが秘密兵器のことを?」


「まぁまぁいいから、それをお二人に飲ませて下さイ。細かいことは気にしなーい気にしなーイ」


「………………はい」



 いや気にするわ。イブキ先輩から秘密兵器ってこの酒に似た何かのことか?というか何で無関係なマントラさんがこれを持ってきてんだ?イブキ先輩とガネーシャ先輩は同じ三年生だから顔見知りではあると思うが…………。


 待て、ガネーシャ先輩?


 ……………………嫌な予感がする!!多分これイブキ先輩がガネーシャ先輩に頼み込んで作って貰ったやつでしょ!というかよく見たら裏に『請求書』(ガネーシャより)って書かれた紙が…………。



 ぬぬぬぬ、こんな爆弾にも匹敵する危険物をあの二人に飲ませるのは抵抗がある。しかし、これがイブキ先輩の言う秘密兵器であるのなら使わざるを得ない…………!



 腹を括れ男カツジ!先輩を信じろ!



「あーちょっと巴ー」


「………カツジ。来てたんだ」


「うん、まぁイブキ先輩の手伝いにね。暑いでしょ、始める前にこの水飲んどきなよ。ペアの方もご一緒にどう?」


「じゃあ、いただく」


「い、いただくわ」



 千代女が「何のつもりだ?」と言いたげな目でこちらに視線を向ける。



「(これが先輩の言う秘密兵器だ。我慢しろプロなんだろ)」


「(なんかこれ妙にしょっぱいんだけど。ほんとに大丈夫?)」


「(多分大丈夫じゃない)」


「え」


「行きましょう、ヘルさん」


「え!?あ、はい!」



 とりあえず親指を立てて千代女にエールを送る。逆に親指を下に向けられた気がしたが気のせい気のせい。


 イブキ先輩は今までしなかったストレッチを開始し、本気を出す準備をしている。そうとうやる気が入ってるようだ。頼むぞー…………。




「実に見物ですネ。イブキ様が一体どのような行動に出るのか、しっかりとデータとして回収させていただきまス」


「まだいたんですか。マントラさん」


「ハイ。ガネーシャ様から被検体の様子を記録しろとの命令が」


「被検体……やっぱ怪しい薬か。でも、一体どんな効果が?」


「まぁ、見てれば分かりますヨ。ほら、始まりましたヨ」



 気付いたら早速試合が始まっていた。


 二人共、刀とクナイなどの武器を使った戦い方をするが、このルールでは武器は禁止。千代女は知らんが、巴は魔術が俺よりも下手っぴなので使うことはないだろう。


 アキレスやゴウキとは違い、二人共純粋な人間。種族の特性など無い。


 つまり、あのイブキ先輩に真っ向から身体能力のみで挑まなければいけないのだ。例えるなら素人の子供がプロレスラーに挑むような物、うんヤバいね。



 イブキ先輩がどう動くだが………。



「おおお、速いねー君!」


「甘く見ない事ね。我が国に伝わる秘伝、忍法かげ…………」

(これ影分身って言ったら姉上に絶対バレるわね。………………)

「……………シャドーアバター!」




 千代女が両手で印を結ぶとポンっ!と煙が彼女の体を覆う。なんと、煙の中から千代女が何人も出てきた。すっげー。


 あと影分身って言ったらバレるから名前変えたのは分かるけど適当すぎじゃね?




「び、美少女が二人………美少女が三人………へへへ」


「貰ったわ!」


「甘いわぁ!」


「ちっ!」



 次々と千代女の分身がイブキ先輩に襲いかかる。しかしそんな数の暴力も何のその、華麗に避けてみせるイブキ先輩。何だかバレリーナでも見てる気分だ。



「今よ!あねう……巴さん!」


「しゅわっと!?いつの間に!?」


「とど………け!!」



 巴が手を伸ばす。


 しかしその思いは儚く散る。あと一歩のところで届かず、イブキ先輩がその場から距離を置く。



「あぶね。気付かなかったー」


「ヘルさん!!」


「そりゃあ!!」


「――――おっ」



 その時、彼女には雄大で壮大な青空が見えたことだろう。


 イブキ先輩が一息つくその一瞬を狙った千代女が、硬い地面をスライディングしながらイブキ先輩を転倒させる。

 

 ここまではナイスコンビネーション。顔は見えてなくとも、姉妹の繋がりというのは存在するのか。



「貰った、わ!!」



 と、せっかく感心したのにも関わらずだ。



「うわっ、ちょっ、あわわわわ!!」



 すると大事な場面で千代女がこけた。


 体勢を思いっ切り崩した千代女は勢いに乗って地面とがっつんこ。見た目の格好良さの割には強度が軟弱だったのか、バキンと音を立ててヘルメットが割れる。



 そして、彼女の素顔が露わになる。巴の瞳に彼女の顔が映ってしまった。




「………………………………………」


「………………………………………」




 その時、気まずさがその場を支配した。重い、重い空気。誰も一言も発さず、誰も動かなかった。



 イブキ先輩ィィィ何やってんのー!!思いっ切りタイミングミスってんじゃねぇか!てへっ☆じゃねぇよ!



 あぁヤバいヤバい絆の大勝利どころの騒ぎじゃないよ!修羅場だよ、



「――――そろそろ効果が出ますネ」


「マントラさん?」



 効果って、あの試合が始まる直後に飲ませた液体のことか?見てれば分かるって言ってたが、一体…………。




「姉上……………」


「―――――――ち」


「好きよ!!」


「は?」



 は?


 いや、何でここで突然の愛の告白?しかも抱きつくって、頭がおかしくなったか?いや元からか。



「ウルセェェェ!!!黙れぇぇぇぇ!!!」


「え」


「近寄るな触るな抱きつくな!!私はお前が好きじゃないんだよぉ!千代女!!」


「だったら好きになって貰うだけよ!私の愛を分からせてあげる、拳で!!」


「殴り合いか?殴り合いかいいだろう!貴様のそのおめでたい脳天でも狙ってやろうか?一発でお陀仏にしてやんよぉ!!」




 え、今これ何が起こってんの?


 千代女が突然愛の告白をして、それに巴が鬼の形相でキレて………えぇ!?え!?



「マントラさん!説明を、説明をプリーズギブミー!!」


「あの二人に飲ませたのはガネーシャ様特性の特殊な薬でス。飲んでから少し経つと、感情が急激に膨らみ、内に秘めたる思いを爆発させまス。あと副作用で一時的に馬鹿になりまス」


「えぇ…………じゃあなんだ、つまりイブキ先輩の秘密兵器ってのは………」


「ハイ。『感情を爆発させて互いに本音で語り合えばどうにかなるだろう作戦』でス」


「あのクソトカゲェェェェェ!!!」


「呼んだかい後輩くん!!」


「クソトカゲの自覚あんのかよ!なんだあれは!なんだあれはぁぁぁ!!!」


「待ってくれたまえよ後輩くん。違うんだ、誤算なんだ。私の頭の中ではこんなビジョンが浮かんでいたんだ。まず二人が私を姉妹パワーで突破するだろ?そんでもって最後に正体を明かしたところで薬の効果が働いて………」



『そんな、あなたが千代女だったなんて………』


『今までごめんなさい姉上。姉上の気持ちも考えずに行動して………けど私は姉上が好きなの。この気持ちは止められないの!姉上ともっと仲良くしたいの。だから………』


『私も………今まで素直になれなくてごめん。私もあなたのこと大好きよ。だって、私とあなたは姉妹。これからは姉妹仲良く暮らしましょう?』


『ええ!姉上!』



「そして二人は強く抱きしめ合う!姉妹の絆がここに誕生する………という展開が私の頭の中ではあったの!」


「それが今ぶち壊されて殺し合いに発展してるんですけど」


「だからごめんって言ってるじゃーん!!」



 ちっ!今はイブキ先輩を責めたってどうしようもない。あの二人を止めないと…………。



「愛してるわ姉上!好き好き好き好き!!」


「潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す」



 あかんこれ止めに入ったら俺が殺されるわ。


 千代女は目をハートにしながら拳に愛を乗せて殴ってるし、巴は殺意の波動に目覚めて殴り返している。


 俺見たくないよ、美少女と美少女が頭おかしくなりながら殴り合いしてる光景とか。カオス過ぎんだろ。



「何で分かってくれないの姉上!私はこんなにも姉上のことを愛しているというのに!」


「今更になって愛してるだの言うなぁ!!だったらもっと前から私のこと愛せやぁ!!」


「好きだったわよ!凛々しくて可愛くて可憐でクールで、不器用だけど努力家で、おっちょこちょいで真面目な姉上を尊敬してたし敬愛してたわ!けどそれを言い出す勇気がなかったの!」


「なら、私だってできれば仲良くしたかったかさ!!でも過ぎた時間と形成されてしまった関係は早々覆らない!本当はこんな理由で、あなたの方が優れてるからっていう嫉妬の気持ちであなたを突き放すのはいけないって思ってた!けどそれを認められるほど私の心は強くなかった!」


「いいえ、姉上は悪くないわ!悪いのは私なの。姉上は頑張ったわ精一杯頑張ったわ。悪いのはその努力を踏み潰す私と姉上の努力を見るふりすらしないジジイ共よ!」


「いーや、私が悪い!私が悪いったら悪いの!!」


「違うわ私よ!!」


「「あぁん!?やんのかごらぁ!!」」



 副作用で一時的に馬鹿になるというのはあながち間違ってないっぽい。二人ともいつもより会話の知能指数が下がってる気がする。


 というか後半完全にヤンキーやんけ。ヤンキーのレベル超えてる殺し合いしてるけど。




「大体なんだそのでけぇ体は!身長も乳も尻もなんでそんなデカいんじゃオラァ!!」


「ちゃんと食べてちゃんと動いてちゃんと寝てるからですー!逆になんで同い年なのにそんなちんちくりんな体型なのよ姉上は!そんなんで男を堕とせると思ってんの!!?」


「言ったなこの野郎、誰がちんちくりんだって!?」


「姉上よ姉上!このちんちくりんがぁ!」


「土に埋められるか空高く他界他界(高い高い)させられるか選べ!すぐに楽にしてやる!」


「やれるもんならやってみなさいよ!」


 

 途中から関係ない話になってね?


 殴り、殴られ、蹴り、蹴られ、頭でどつきどつかれて、罵り合って、褒め合って、突然意気投合したと思えば、また殺し合いが始まった。  



 そんな時間が永遠と続いた。





########






 一体どれほどの時間が経過しただろうか。


 日はとっくに沈んで、参加者の皆さんはいつの間にか帰ってしまっていた。残っているのは俺達と、彼女らの戦いを見守ってくれてる優しい(?)人達。


 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」



 二人とも体力の限界だった。これ以上は命に関わる。腕は動かなり、頭からは血を垂れ流して、喉はとっくのとうに潰れていた。



 二人の喧嘩を止められるものは誰もいなかった。否、今思うと、いなかったのではない、しなかったのだ。


 彼女らだけの世界に、誰が介入できようか。いわばこれは巴、千代女姉妹の長年の複雑な関係に決着をつける儀式。これを止める権利は誰にもないのだ。



 

「はぁ、はぁ、私、何して、たんだ?」


「ぜぇ、ぜぇ、わから、ないわ」


「…………けど何だか、とっても、すっ、きり、した」


「…………………姉上」




 震える脚に鞭を打ち、最後の力を振り絞って一人の妹は姉の体を優しくも力強く抱きしめる。巴には抵抗する力も体力も残っていなかった。



「…………私、実は泳げないのよ」


「え?」


「ニンジンだって食べれないし、近所の友達とくだらない低レベルな喧嘩だってするし、しょっちゅう転んだりするの」


「……………」

  

「姉上はずっと私のことを何でもできる万物の天才って思ってたかもしれない。まぁ間違ってはないけどね。けど、私にだってできないことはあるの。姉上と同じよ。決して対等になれないわけじゃない」


「…………千代女」



 人は生まれながらにして不平等だ。生まれ持った才、生まれ持った容姿、富、家族、地域、環境。それらの差を埋めることは難しい。


 しかし、難しいだけなのだ。決して不可能じゃない。何故なら同じ人間なのだから。そこの個々の差はあれど、頑張って足掻いて藻掻いてしがみついて惨めに地に伏せようとも、そこには必ず辿り着ける。


 それこそ、人間と神の差でもない限り。


 才能を言い訳にして努力を忘れ、嫉妬の念をただ送り続けるだけの馬鹿野郎どもの言う事なんて世迷い言だ。




「劣等感を抱かないで、嫉妬の心に飲まれないで。姉上には、姉上にしかできない事があるの。天才にだって、神様にだってできないことがあるのだわ。それを誇りに持って。そしてそれを、私は誇りに思うわ。最高の姉上を持つ妹としてね」


「………」  


「だから、もうこんな喧嘩やめましょう?そして帰りにスイーツでも食べにいってフカフカ布団で丸くなりましょうよ!」




 巴の瞳に千代女が映る。逆もまた然り。


 互いに見つめ合う二人。今、巴の心の中で俺達には計り知れない感情が渦巻いていることだろう。幼子が無造作にペンキで塗りたくったキャンバスみたいにゴチャゴチャになっていることだろう。


 長年、実の妹に嫉妬の感情を向け続けた自分が許せない。けど、自分の努力をひっきりなしに打ち砕いて進んでいく妹が許せない。



 彼女は乗り越えなければならない。自身に、自身の過去を否定して、打ち砕いてでも。


 そして一筋の涙を流しながら、



「ごめ"ん………ぐす、ごめん、な、さい………ひぐ……ごめんなさい!」



 

 涙を流しながら抱き合った二人の姉妹は、そこに永遠の絆を誓ったのであった。





「結果オーライ!」


「本当に、結果は良かったっすね」





望月千代女


巴の双子の妹。自身が天才であることを自覚していて、そこに大いなる誇りを持っている。巴と同じ年齢とは思えないほど体が発達しており、大人の女性とタメを張れるほどのナイスバディの持ち主。


特技は走ること。好きな物は姉上とシュークリーム。


「姉上への愛ならば、誰にも負ける気がしないわね!」


そして重度のシスコンである。


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