8 入部(強制)
病み上がりだと言うのにとてつもなく疲れた。
酷い目にあった。この学校の連中は頭のおかしいやつしかいないのか?
エルザとアキレスを保健室に運んだ後も、部活動見学をしに色々回ったが、どこもかしこも変な奴ばかり。もちろんまともな部活もあったが大半が変な人達が集まって色々やってた。
さすが世界中から人が来る学園『アナスタス』、各国の変人しかいねぇ。
オカルト部と言う名の悪魔崇拝組織、人を実験台としか見てないサイコパスと謎ロボット、他にも人に女装を強要してくる奴らだったり、特訓と言い馬に縄で縛り付け校庭を走り回る奴ら、超次元サッカーしてる奴ら、etc.……………
部活には絶対に入らねぇ。命が何個あっても足りなさそうだ。もう帰ろう…………
「ねえ、そこの目が完全に疲れ切ってる君」
「………………………」
「君だよ、そこのアホ面まぬけアンポンタン」
「誰がアホ面だこの野郎!ただの悪口じゃねぇか!…………で、誰です?疲れたんで帰りたいんですけど」
「人助けに興味はないかい?」
「はい?……………もしかして、これですか?」
目の前に置かれた看板に目を向ける。そこには『お助け部』という文字が書かれていた。
お助け部………お助け”部”、ねぇ…………。
「いや、普通にお断りですけど」
「えぇ!?なんでさ!?君主人公体質っぽいけど」
「いや、どこが」
「じゃ、じゃあ私を助けてくれ!このままだと部員が足りなくて廃部しそうなんだよ………私の収入源がなくなってしまうんだよ!」
「収入源て………金取るんですか?」
「当たり前じゃん。無償でやる人助けなんかこの世に存在しないのさ。だから頼むよぉ!ほら、そこら辺で拾った綺麗な石やるからさぁ!」
「いりません。いりませんってば服引っ張らないで下さい!」
何なんだこの人は………。
しがみついてきた手を振りほどこうとする。そこで、あることに気付いた。
「………うえ!?なに、これ」
「ん?あぁこの腕のこと?」
彼女は巫女服の袖をまくり自慢するように見せつけた。
彼女の腕は、白い竜の鱗のような物で覆われていたのだ。そう、まるで龍の腕のようだ。
よく見ると太い尻尾も生えてるし、彼女の頬も少し割れている。
「実は脚もこうなってまーす」
「あ、いや、すみません……別にそんなつもりで言ったわけじゃないんですけど。うえとか言ってすいません」
「えーどうしよっかなー許してあげようかなー。私に対する無礼を許して欲しかったら我が部に入り、私に貢ぎ、私のお世話をするのだ」
「じゃあ結構です」
「嘘嘘嘘!!まって頼む後輩くん!マジでこのままだと廃部しそうなんだよ。私の家貧乏だからさぁ雀の涙程度の収入でも馬鹿にならないんだよ!」
痛い痛い痛い痛い痛い!力つっよ!
引き離そうとしてもびくともしない。しかも鱗で指の皮が擦り剥けてさらに痛い。
「分かりました分かりましたよ!けどもうちょっと考えさせて下さい!体験入部的な」
そう言うと彼女の顔がぱぁっと明るくなる。
「やったぜ!へへへこれで仕事押しつけてサボれる………」
「おい」
「冗談冗談ー、二割くらい。そういえば自己紹介がまだだったね。私の名前はイブキ。神桜樹の祀る神社のすんばらしい巫女さんさ!よろしく、後輩くん」
「カツジです。不服ですがよろしくお願いします」
俺とイブキ先輩は軽く握手を交わした。
お助け部に教室などない。言い忘れてたがここは学校の中庭であり、そこに適当なイスとテーブル、看板が置いてあるだけのホームレス部室だったのだ。
とりあえず余ってるイスに座る。
「そういえば質問なんすけど、イブキ先輩の種族ってなんすか?獣人族………でも爬虫類の獣人族なんて聞いたこと無いけど。てかそれはもはや獣ではない気が………」
「ああ、私?私は竜人族だよ」
「竜人族?」
「そう、竜人族。龍族っているじゃん、たっかい山にすんでるおじいさん達。私の祖先はね、その龍族と人間の混血だって言われてるんだよ。
なんでも、神桜樹と深い関わりのある龍が人間と子どもを作り、その子孫達を巫女として神桜樹を祀ろうとしたんだと」
「へぇー………初めて聞いた」
「そりぁ竜人族は私と妹と弟、あと世界の何処かにいる遠い親戚達くらいだもん。知らなくて当然、むしろ詳しかったら怖いわ」
龍と人間の混血、竜人か…………。なんだかカッコイイな。
やはり世界に出てみる物だな。未知の体験と知識がどんどん現れる。他の里の皆もこうして色々学んだんだろうなー。
「そいや、もう一個質問なんすけど、俺以外にも声をかけなかったんすか?勧誘」
「んー私って結構この街では許さないことに悪評が多くてさー。単純に相手にされなかった」
なんとなく知ってた。
「あと、君から美少女の残り香がしたことかな」
「はい?」
「何だか最近嗅いだことのある美少女スメルなんだよなー。誰だったかなー」
「………………………………………」
この人と関わるのやっぱやめようかな。悪評が広まってる理由がなんとなく分かった気がする。
「人来ませんねー」
「基本的に誰も来ないよ。一日に一人来れば良いほうさ。悩んでそう困ってそうなやつがいたら絶対逃がすなよ。全力で引き止めて金をふんだくってやる。くくく」
「顔、顔!…………と、誰か来たっぽいですよ」
「え、うそ!マジで!!」
サッ、サッと中庭の草の上を歩く音がする。
ステンドグラスに差し込む夕日に当たりながら姿を現したのは、
「あ、巴じゃん」
「……………カツジ?」
「おぉ!!中々の美少女きちゃー!!」
次の瞬間、イブキ先輩が高らかに叫んだ。テーブルから身を乗り出す程の興奮ぶりである。
「え、何この人」
「それはだな、かくかくしかじかごぱーせんとおふなんだ」
「いや、分かんない」
「もしかしてこのツインテちゃんと知り合いなのかい後輩くん!?」
「そりぁ、同じクラスですし」
「何故それを先に言わない!お助け部鉄の掟、美少女を見つけたら私に即報告を忘れたか!!」
「いやさっき合ったばかりですよね!?てかそんな鉄の掟守るか!」
「カツジ……何これ。お助け部?」
「金はとるけど何でも解決してくれるよーって部活らしい」
「何故カツジが………」
「俺が知りたい」
「そんなことはどうでもいいんだよ!さぁ今日第一号のお客さんこと美少女ちゃん!何か困ってることはないかい?悩みとか、問題だとかさ!」
「……………………あの、え」
ヤバい、巴が初対面の人との接触で混乱してる。ここはフォローを………
「……………一つ、なくはないです。お金ならあるので解決してくれませんか?」
「うんうん。聞かせておくんなまし」
あれ、結構喋れてる?声は小さいけど、ちゃんと面と向かって話している。
…………少々巴を見くびってたようだ。彼女も彼女なりに成長してるんだな。
「最近、何だかいつも視線を感じて………視線がある方に振り向くと消えちゃうんだけど」
「それって、ストーカーじゃんか!?大丈夫なのか!?」
「うん、大丈夫…………。けど捕まえようとしても凄い逃げ足で、しかも追跡に必要な証拠すら残さないから、凄く困ってる。お金ならあるので、その、できれば、なんとかして欲しい………です」
「了解した!じゃあ5000銭ね」
「高!?」
「けどけど美少女割引で300銭となります」
「安!?」
イブキ先輩のノリについて行けない巴だったが、とりあえず財布から取り出した300銭をイブキ先輩に渡した。
「じゃあお金を貰ったからにはとことんやらせていただきますよ!早速行動開始だ!ゆくぞ後輩くん!!美少女ちゃんのストーカーをするのは私だ!」
「趣旨変わってるってかさせねぇから!」




