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4   採取クエスト

巴は人と喋るのが苦手なだけであって、心の中では結構ペラペラ喋ります。その事を踏まえて、この話をお読み下さい。



「……………」


「……………」



 カララさんに連れられて、俺達は木々生い茂る山の中へと脚を運んでいた。なんでも、カララさん曰く、


『シニガミソウっていう薬草を知ってるか?なんでも、大抵の病気には効く万能薬らしい。この山は小さいが、シニガミソウがよく生えてるかエリアがあると噂を聞きつけてな。シニガミソウは普通、中々お目に見えないレア物だ。ゲットするっきゃないでしょ』



 と、言われた。

 

 シニガミソウ………随分と物騒な名前だ。病気を死神のごとく打ち消すからこの名前がついたらしい………もっとマシな名前あったでしょ。


 最初暗殺でもするんかこの人と思っちゃったじゃんか。まぁ、カララさんがそんなことするわけないよな…………ないよね?



 そんなこんなで、カララさんと二手に分かれて散策中。カララさんが聞きつけた噂によると、高いところにある、だとか。もっと有意義な情報が欲しいところだが、今は上を目指すしかない。


 道中にそれらしきものがないか確認しながら山を登っていく。



「…………………」


「ん?どした巴」


「…………いや」


「そう」



 き、気まずい。


 話題が無いとここまで気まずいものなのか。巴はさっきから目を合わせてくれないし、何かアクシデントが起こる訳でもないし。


 何を話すべきだろう。ここは定番の天気の話でもするか?



「そ、それより今日は良い天気だな。いい登山日和ーって感じ?」


「…………曇ってるけど」


「…………………」


「…………………」



 し、しまった!!


 くそ、さっきまで晴れてたのに何で急に曇ってるんだ空よ!!天気の話は無しだ。次の手を打とう。


 んー何かないか何かないか。あ、そうだ。



「そういえば、巴は何か部活入ったりしたのか?俺はまだ見学すらしてないんだよねー」


「……………入ってない」


「そ、そう。ならさ、今度俺と一緒に見学でも………」


「どうせ入らない」


「………そ、そすか」


「…………………」


「…………………」



 会話が終了してしまった。

 なんてこったい。助けてドラ○もん。


 相手がアキレスやエルザだったら自然と話題が出てきたり、そのまま発展したりするんだけどな。今の相手は話すのが苦手な巴だ。


 巴は今でこそ結構話すようになったが、初めて話した時なんかメモ用紙使って文章でやりとりしてたからな。というか、今でもたまに文章で会話してくる。


 無口、無言を貫き、受け答えもあっさりしている。


 そんな相手とアキレス達のように気楽に話すのは至難の業だ。だがせっかく一緒に行動しているんだ。会話はある程度はしたい。


 何かないか、何かないかと頭を悩ませながら道中を進んでいくのだった。




#####




 視点は代わり巴視点。



「どうせ入らない」


「そ、そすか」



 カツジがションボリして下をうつむく。会話が終了し、気まずくなった私はカツジとは逆の方向を向いた。


 ………………………………。


 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿。私の馬鹿。せっかくカツジから話しかけてくれたのに、会話すぐ終わっちゃった。なんたる愚行、切腹せよ。腹切り、腹切り!


 思わず懐から小刀を取り出しそうになる。いかんいかん、ここは話題を考える方が先決。


 天気の話はさっきされた。タイムリーな話題もない。こんな時"妹"ならどうするか…………。


 妹は私と違って社交的で、かつ友好的だ。友達も沢山いて、知らない人ともすぐに仲良くなっていた。私と違って可愛いし、胸もあるし、強いし、背高いし、ぶつぶつぶつぶつ……………………



 ヤバい、妹のことを思い出せば思い出すほど鬱になってきた。死のう。


 じゃなくて、話題作りだ話題作り。目的を見失うな。山を登りながら考え事をしてると、心も体も疲れてきた。


 そうだ、ここは休憩もかねて息抜きでもしよう。カツジもきっと疲れてるはずだ。



「か、カツジ。疲れてない……?休憩する?」


「んいや。全然へっちゃらだぜ!」


「あー、で、でも………なんだか顔色悪いよ?」


「そ、そうか?でも全然元気だけどな…………」



 なんてことだ。


 カツジのタフさが裏目に出てしまった。カツジはカツジで体の様子を確かめようと全身を動かしている。


 汗一つ垂らしてないし、顔色なんか悪くないむしろ良好だ。いや、まぁ良いことなんだけどね?違う、違うんだよ。


 くっ、エルザやカンナがいかにお喋り上手なのかが分かった。帰ったらコツでも教えて貰おう。




 虎視眈々と時間だけが過ぎていく。あのまま一言も喋れてない。むしろ無理して喋らなくて良いのではと思うが、せっかく二人きりなんだから色々したい。


 二人きりなんだよ、二人きり。こんな機会は中々訪れない。


学校では大抵アキレスとかモーブレッドがカツジの周りをハエのように飛び回ってるから中々話せないし、けど放課後に自分から話しかけるのはなんだか恥ずかしいし…………。


 どんな話題でもいい。なんなら罵り合いでもいい………嘘、やっぱ嘘です。カツジに悪口を言われたら次の日はショックで動けなさそう。


 会話じゃなくてもいいから、なんかトラブルこい。例えば、突然崖が崩れて落ちた私の手をカツジが掴んでくれるとか。


 魔獣の群れがやってきて、私達の絆パワーで勝利するとか…………いいなそれ。


 よし、魔獣こい魔獣こい魔獣こい魔獣こい魔獣こい魔獣こい魔獣こい……………!!!



 次の瞬間、ゴサゴソと近くの茂みが揺れた。何者かの気配がする。期待に胸を膨らませ、背中の刀に手を伸ばした。


 来た。私の祈りが届いた。これでカツジとイチャイチャ勝利ルートへと行ける。その為の犠牲となれ、魔獣…………



「な、何だ!?」


「姿を現せ、魔獣…………」



 茂みの中からかき分けるように現れたのは、白い毛が全身を包んでいて、角の生えた二足歩行の魔獣。


 私は鞘から刀身を引き抜き、敵の首元を狙って突っ込んだ。


 死ねぇ!!



「巴!!違う、それは魔獣じゃない!!」



 カツジの迫真の叫び声に、私は首元スレスレで刃を止めた。……………え?違うの?



「ちょちょちょちょ!!違いますって!やめて殺さないで怪しい者じゃないですからぁ!!」


「……………人?」




#######




「…………すみません」


「いえいえ、こんな森の中でこんな見た目してたら間違えるのも無理ないですって。慣れてますから」


「慣れてるのか…………」



 はっはっはと、何事もなかったように気さくに話すのは魔獣………ではなく、白い毛皮を纏った獣人族のヤガーさんだ。彼も私達と同じで噂を聞きつけてシニガミソウを探しにきた人の一人らしい。


 魔獣が来ることを期待してたからか、ヤガーさんの見た目も相まって危うく斬りかかるところだった。カツジが止めてくれなかったら今頃…………



「すみませんすみませんすみませんすみませんスミマセンスミマセンスミマセン………………………」


「そんな気を落とさなくても大丈夫だよお嬢さん。ほら、ここで見つけた木の実でも食べるかい?」


「………………(こくり)」



 軽く頭を下げて木の実を受け取る。…………美味しい。



「それはウポポの実と言ってね、食べると心が落ち着くと言われているんだ。糖分が豊富で、他にもアミノ酸やカルシウム、ビタミンなどの栄養素が多く含まれてるんだ。まぁ、小っちゃいから腹は膨れないけどね」



 それを聞くと、心なしか罪悪感にまみれていた心が少し落ち着いた気がする。登山で疲れていたから、ちょうど良い。



「いえ…………ありがとうございます」


「詳しいんですね」


「一応、植物学者をやらせていただいてるからね。シニガミソウも、研究サンプルとして持ち帰ろうと思ってここに来たんだよ。シニガミソウは貴重だからね、多くあって困ることはないのさ」


「ほへー………植物学者。そうだ、俺達もシニガミソウを探しに来たんですけど、どこかありそうな場所って知ってますか?」


「それはもちろん!…………なんだけど、それが難しくてね。シニガミソウは土地の高い気候に生えるんだけど、最近腰を痛めてしまって。

 ここまで来るのも一苦労の中年には頂上付近まで行くのはキツいかなって思い、諦めて下山してたところを君たちとばったり出会ったわけさ」



 はっはっは、大丈夫だよと言いたそうに笑うヤガーさん。


 なるほど。つまりヤガーさんは下山途中だった訳だ。ここまで登ってきて、もったいない。


 木の実も貰ったお礼だ。どうにかして彼を一緒に頂上まで連れて行ってあげたい。侍は一度受けた情を忘れない、どんな恩でも必ず返すのだ。


 私は懐からメモ用紙を………メモ用紙を…………メモ………ない。なくした……!?馬鹿な。


 まさか、ヤガーさんに斬りかかった時に変な動きしたから…………。くっ、口頭で伝えるしかないか。自信を持て、私。和国にいたときよりも、コミュニケーション能力は上がってるはず。


 いける。よし。


 数秒間の葛藤の末、私はゆっくりと口を開いた。



「あ、あの」


「?。どうしたんだい?どこか気になることでも?」


「いや、ちが、えと…………い、一緒に、行きませんか、上」


「上?上がどうかしたのかい?」


「上と言うか………」



 無理無理無理。マズイ。助けてカツジ。


 緊急救助要請をアイコンタクトでカツジに起こる。現状を理解したカツジは、「あー」と納得したような声を上げ、



「ヤガーさんヤガーさん。巴は一緒に頂上まで行きませんかって言いたいんだと思います」


「それは嬉しいお誘いだけど………こんな中年と一緒に行っても楽しくないし、腰が痛んでるからお荷物になるだけだよ?」


「私が、背負い、ます」  


「いやいやいや。いくらなんでも君みたいな女の子に背負って貰うのは…………え、マジ?」


「……………(こくり)」

 

「そ、そうか。なら、お願いしようかな」



 ヤガーさんはにっこりと笑う。


 普通の人なら断るだろうが、ヤガーさんは私がこのアホみたいにデカイ刀を軽く振り回したところを目撃してるからか、結構あっさり承諾してくれた。

 


 ヤガーさんの荷物を前に、ヤガーさんを背負って、いざゆかん(刀はカツジが持っている)



「………………おも………なんでもないです」


「無理しなくていいんだよ!?」 


(大丈夫かなー…………)

 



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