38 人間なんて、そんなもの
それはほんの数時間前だった。
みすぼらしい格好をした学園『アナスタス』に所属(一応)する学生アイトは親愛なる姉御のため、情報収集に勤しんでいた。
ちなみにアイト、シオン、リュウトは1年生のセトの子分だが彼ら三人は全員3年生である。実は年上。だが彼らはセトに忠誠を誓うことに何の抵抗もない。むしろ押しつけている。
セトがこの街に来る前はそれはもう手のつかない悪ガキ三人組だったが、彼女が彼らと接触したことで変わった。何があったかの詳細は省くが彼らはセトについて行こうと、その時誓った。
類は友を呼ぶなのか。馬鹿には馬鹿が集まり、不良には不良が集まる。もちろん、いい意味でだ。
――さて本題に戻ろう。
アイトは裏でちょっとした情報網を所有している。人気パン屋さんの極秘メニューから、寮の管理人のお姉さんのパンツの色に至るまで古今東西この街の情報を占めている。
そこで彼はある情報を掴んだ。
『目白鮫』と呼ばれる組合の怪しい動きについてだ。『目白鮫』とはこの街にひっそりと拠点を構える組合。街でその存在を知る人間は少なく、さらに彼らは民間人に紛れて生活している為誰が『目白鮫』の人間なのかの把握は難しい。
しかも拠点は豪勢な屋敷ではなく質素などこにでもありそうな家だと聞く。数多くの人間がすむサクライでたった一つの家を特定するのは至難の業だ。
『目白鮫』に関してはアイトでもほとんど情報が無く、知っているのは多くの違法取引を行っている…………という噂だけ。
そう、噂だけなのである。確証はない。実在はしている。しかし手がかりは無い。そんな『目白鮫』の一体何を掴んだというと………。
「そこら辺のチンピラに何かしらの物を売りつけていたという噂を聞き、現在調査中。間抜けな奴もいたもんだぜ。あんな大声でべらべら喋るかっつーの」
知り合いのチンピラがそんな事を言っていた。もちろん、噂の噂だが調べてみる価値はある。
それと異薬と何の関連性があるのか?
アイトはこう推測する。
「あの目がデメキンみてぇにでかくなっかおっさん。よく見るとこの辺だと有名で良くない噂を聞く人だった………。民間騎士がどれだけ押しかけても巧みな話術で押し返してきた。だが裏を返せば民間騎士にバレたくないやましいことがあるということ。ぜってぇ麻薬とかやってるって……………ん?麻薬?」
元々は糸目のおっさんだったはずだ。しかしあの時見かけたときは様子が変だった。頭部と目が肥大化し、同じ直立二足歩行をする生き物なのかというぐらい脚がふらふらだった。
あー、あー、と意味を持たない言葉を発し、知能のない獣みたいにそこら辺をウロウロしていた。
重要なのはこのポイント。
なんとなく、雰囲気が異獣と同じだったのだ。セトの調査曰く、異薬は体の細胞という細胞を破壊し突然変異を誘発する。
異獣とあのおっさんの共通点。生物としておかしい形をとっている。
仮に、異薬というのはあくまで異獣をつくる用途ではなくあのおっさんみたいに人間に使うようだったとしたら?
とんだ勘違いをしていたかもしれない。アイトはその考えに至った瞬間、ゾワリと背筋に寒気が走った。
「情報によるとここら辺のはず………ん?」
声が聞こえた。片方の男はスーツを纏った品のある男性。もう片方の男はアロハシャツを纏い顔に傷のある強面の男だった。
アイトは聞き耳を立てながらそっと隠れる。
「これが例の物や。これがあればお前さんの復讐など樹液に夢中なカブトムシを捕まえる位に簡単にできるはずや」
「これが……これが俺に力を与えてくれる……!!見てろよ、今すぐにでも殺しに行ってやるからな!!」
「落ち着くんや。まだ商売は成立しておらへん。金や金。もちろん、あるんやろうな?」
「分かってるよ……へへ、まさかあの幻の『目白鮫』から声がかかるとは思ってなかったぜ。俺にも運が回ってきたってもんよ……」
「『ハザードギブン089』の使用は十分に気を配るんや。こいつは取り入れた人間に驚異的な力をもたらすが、量を間違えれば細胞という細胞が破壊され生き物なのか分からねぇ物体になっちまうで。責任はとらねぇが」
「は!?」
「「!?」」
急いで口を両手で塞ぐ。
何という失態。このアイトが驚きのあまりに声を出してしまうなど一生の不覚。姉御に合わせる顔がない。
だがそれは今は置いといて、マズイ。ガチでしくじった。
全力で身を丸め隠れようとするが時既に遅し。険しさと焦りを浮かべた表情で二人がこちらに近づいてくる。
迂闊に動いたらまずやられる。かといってこのままでもやられる。
「そこに誰かいるのは分かっとるで!大人しく正体を現しな!大人しく現れたからって見逃す訳じゃねぇがな……………さっさと出てこんかい!!」
「―――――」
「しゃあない、なら実力行使や」
そう言って懐からナイフを取り出した。ギラリと光る凶器が着々とアイトに近づいてくる。刃物は流石にマズイ。ここは一か八か………
「………なんや、本当に出てきおった。しかも、青臭いガキやないか」
「な、なぁ。どうするんだ?もしかして………やっちゃう?」
「もしかしてもなんも………やるしかないやろ。ここでこのガキを逃し我々の犯行がバレたら親父に殺される」
アイトは息を飲み込んだ。詰みだ。背後には壁、前方には武器を持った男。…………だがここはいつもアイト達がいる例の路地裏。
つまり、アイトのテリトリーだ。
「逃げるしか………ない!!」
「こら、待てや!!」
ここは自分達の領域。ショートカットの道や抜け道などいくらでも知っている。アイトはこの真実を伝える為に全力で走り出した。
「待っててくれ、姉御!!」
じわりと、だ。
紅い液体が自分の腹から噴き出しているのが分かった。
ああ、こりゃ駄目だ。
「はぁ、はぁ、ったく手こずらせやがって。だが大人を甘くみたな、せめて二人で来るんだったな」
流れる汗を拭い息を荒げながら『目白鮫』の男はいう。
目の色が死んでいく。溶けていく。ジワジワと地味な速度で、しかし確実に死へと近づいていることが分かる。
そして薬を受け取った男は殺害現場をみて肝と頭が冷えたのか、冷静に考えてみる。
(薬とはいっても、具体的にどんな力なんだろう?…………ここに死にかけのガキがいるじゃろ?そう、人体実験だ!)
袋から砂利のような粉をひとつまみし、アイトの口の中へ詰め水で流し込む。抵抗する様子は見せなかった。既にアイトの意識は遠く向こうへ。
最後に何を思ったか。何を考えたか。それは守りたいと願う一人の少女だった。
「あねご……………」
######
時は現在まで遡る。
セトは誰よりも早く駆けだした。道行く老人をはね除け、夜遊びする少年とぶつかり、転んでしまっても走った。
「アイト!!」
病室のドアを乱暴に開ける。
そこには瞳を閉じ生きてるのか分からないくらい小さな息をするアイトがベッドに横たわっていた。
セトは近くにいた医者の胸ぐらを掴んで、
「アイトのやつは無事なんだろうな!こいつの傷は治るんだろうなァ!!?」
「落ち着いて下さい!!傷の方は急所が外れていたためなんとかなりました。しかし………」
「しかし、なんだよ」
「原因不明の症状が彼を蝕んでいます。手や脚が膨れ上がり、体中の器官の細胞が滅茶苦茶になっています。最適な処置はしましたが、これはもう………」
セトは医者から手を放し、アイトのそばへ駆け寄る。布団をめくり彼の体をまるで宝石を鑑定する鑑定士のように隅々まで観察する。
―――セトは思わず息を呑んだ。
「異薬だ………症状がほぼ同じだ。でもなぜだ!一体誰に………何があったんだ……」
怒りよりも先に悲しみと疑問が頭を埋め尽くす。ギシギシと歯ぎしりを立て、頭を抱え思考停止間近まで到達する。
セトはその不気味に変化した手を優しく握って、
「オレだ、セトだアイト。一言でもいい、何か言ってくれ。じゃなかったら、オレは……オレは頭がどうにかなりそうなんだ」
先程から連続的にだ。
家族とも言える存在の尊厳を踏み潰され、自分で彼らを殺さなければならなくて、信じてみようとしたやつに自分の正義を否定されて。
これ以上自分に不幸が降り注ぐなら、意識が現実と切り離されてそのまま異空間にでも放り投げられそうだ。
誰にも見せたことのない涙を溢しながら少女は切実に願う。
「何でもいいんだ………言ってくれ。誰にやられたんだ……?」
「――――め」
「…………アイト?」
「――――めじろざめ」
ストンと彼の腕が落ちた。
同時に、彼女の中にある『何か』がぷつりと切れた。
「っ!?心拍数がどんどん下がっていく……マズイ!」
医者がモニターに映る心拍計数を見て慌てふためく。
そんな中、セトはゆらりの立ち上がって病室の扉を開ける。
そんな彼女の背中を見つめるシオンとリュウトはぼそりと呟いた。
「姉御………どこへ?」
「決まってるだろ」
どこまでも冷たく、そしてどこまでも怒りで煮えたぎりマグマを彷彿とさせるような熱い声で、
「元凶を、灰ひとつ残さず潰してくる」
######
「ぶべらっ!?」
「お主ら全員そう言うよな。複数パターンが用意されてる方が得点高いぞ?」
「て、てめぇ………何者だ。この俺にこんなことして、頭が黙ってないぞ」
「その口塞ぎに行くんだよ。今から」
脚を振り上げ、死なない程度に踵を頭に直撃させた。
『目白鮫』の男は白目を向いて気絶し頭の上にひよこがピヨピヨと言いながら回っている。
さてと、と流れ作業をするように慣れた手つきで男の身包みを剥いでいく。
「はいはい…………なるほど………ほーん」
まじまじと彼の私物を観察し有益になる情報を探していく。
「それにしても、随分時間がかかってしまったな。拷問するにしても無駄に義理硬いから口は開かねぇし。ちょっとした情報しか残していかない。臭いを辿ればすぐに見つかるが、それでも低確率じゃ」
基本的には一般人に紛れていて区別のつかない『目白鮫』だが、カツジ―――否、鬼神ミオならば例外だ。
何千年という長い年月を生きた(5000年は眠っていたが)鬼神ミオはありとあらゆる人物に会ってきた。善人悪人外道聖人、悪魔の女王様からドッペルゲンガーまでだ。
そんなミオの人生経験から、悪人の臭いがする人間はすぐに鼻につく。
そんなこんなで色んな奴を捜し回っては情報集めをしていたわけだが…………
「うっし、そろそろいい感じじゃな」
達成感を含んだ吐息を吐く。
今まで得た情報をまとめてみよう。
『目白鮫』は爆撃熊の人間と『ハザードギブン089』と呼ばれる、生物に作用する麻薬の取引を行った。それをまるでより遠い場所まで種を運ぼうとする植物のように、『目白鮫』から小規模の団体へ、団体から犯罪者やチンピラへ…………
まるでインターネットで拡散される炎上のように広がっていった。お陰で黒い臭いがするやつでも微妙なやつだったり『目白鮫』とは関係ない奴だったりとたらい回しをされたものだ。
だがその作業も2日以内で大半を終わらせてしまうのも、神たる所以か。
誰も見てない場所でドヤ顔をしてみる。
……………………………………。
でだ。『ハザードギブン089』……服用した人間の細胞を活性化させ普通ではあり得ない力をもたらす。しかし人間以外の生物が服用してしまった場合、人間とは違って脳の構造が違う動物はすぐに細胞がやられてしまい異型の化け物と化す………とカツジは予想する。
『ハザードギブン089』をここまで拡散したんだ。今まで一般人に悟られなかっただけ幸いだった。
異獣についてだが、恐らく服用した人間が溢したり、不安になった人間が動物達を試験体として使ったのだろう。
最近たびたび聞く不気味な不審者の類いは全てこの薬を使った人間だろう。効果が強力故、最初は耐えられても最後には異型と化してしまう。
「ったく、人間ってのは何でこう愚かなのかのぉ」
これを生み出した人間は外道以外の何物でもないし、拡散したとなると害悪であるというのは火を見るより明らかだ。
これまでのことはあくまでカツジの推測に過ぎないが、反吐が出る。さっさと滅ぼさなくてはならない。世界を正すのは、親切や信仰ではなく破壊、暴力の方が多いのだ。
それが鬼神ミオの存在意義であり、使命である。
「まずは根元を断ち切るよりも先に茎を切り落とさなければな。爆撃熊のみを倒しても、『目白鮫』が持っている薬も全て排除しなくては終わらない。途中で爆撃熊の邪魔が入るじゃろうが、儂の敵じゃあない。奴らの場所の目途はついている。後始末はクロウリーに任せて、あとはさっさと乗り込むだけじゃが………あん?」
######
少女はただがむしゃらに走った。
居場所も分からぬ敵に怒りをぶつけ、歯を食いしばって、拳を握り締めながら。
しかし少女は無意味であることを知っている。なら何故意味も無く彷徨うのか?
何かしていないと自我が壊れそうだった。
何もできない自分を認めたくなかった。だから目に見えない自身の中にいる怪物から逃げるように走った。
何もせずに仲間の死を指をくわえて待つより、意味はなくても何かをしていた方が精神的によっぽど楽だ。人間は辛いとき、楽な方へゆらゆら流されていくのは至極当然のことであろう。
「ッッ!!!」
当てもなく疾走する。
だが彼女が走ったところで、どうせ結果は変わらない。子分が元に戻るわけではないし、街を脅かしている敵が倒れる訳じゃない。
セトにはなんの力も無い。自分を保つ精神も、仲間を守る力も、信念を貫き通す力も、無い。無力に打ち破れてその場で崩れ落ちるだけだ。
指を一つ一つ折って自分にないものを数える。残っているのは鏡に映る情けない自分の姿と弱さのみだった。
「オレは、ただ―――」
ただ、普通の子みたいに友達と何気ない会話をしてみたり、仲間とやんちゃしてみたり、遊んだりしたかっただけだ。だから家を飛び出した。大貴族の家にいては決して実現しないことを夢見た。
「その代償がこれだって言うのかよ………ついてねェな」
夢物語はどこまで行ったって夢物語だ。
もし神がいるのならば、きっと仕事をサボってるに違いない。だって神様ならば人々を平等に幸せにするはずだ。自分だけがこんな目に遭うなんておかしいじゃないか。
「………………………………」
分かってる。自分の考えが正しくないってことぐらい分かってる。冷静に考えればセトより酷い目に遭ってる人間など星の数ほどいるし、むしろセトは幸せな方だ。
「………………」
本当に自分で自分が嫌になる。
これ以上現実のことは考えたくなかった。イヤイヤ期の赤子のように頭を振って、セトは一人で壁に頭を打ち付ける。壁が脆かったのか彼女の頭が強かったのか壁は砕け破片が額に突き刺さる。
血が目まで垂れてきて片目の視界が紅く染まる。
痛みはなかった。特に何も感じなかった。
「…………不思議なもんだな。さっきまで怒りと劣等感に包まれていたはずなのに、それも度が過ぎると一周回って冷静になるのか。あいつらに教えてやんねェとな………」
あいつら、そうあいつらだ。
セトは目をつぶって三人の姿を思い浮かべる。
小太りの癖に妙に動けて、駄菓子の当たりを的確にあてる謎特技をもっていて、不良を目指しているが抜け目が多く甘いリュウト。
セトよりも小っちゃくて、けど度胸だけは一人前でよくセトへのセクハラ行為を諦めずに続けたシオン。
そして、いつも調子に乗ってて馬鹿でアホだけど誰よりも優しくて誰よりも強い心を持っているアイト。
こんな情けないセトの姿を見れば、三人は揃って笑うだろう。
リュウトは腹を抱えて、シオンは写真に収めて、アイトは他の不良にこのことを教えに行くだろう。
そして最後にはセトの手を握ってくれる。「大丈夫」と言って背中を押してくれるんだ。
いつもみたいにアホ面をして「姉御!」って呼んでくれるんだ。そんなあいつらと一緒にいたい。
「………………はぁ。そうだな、そうだよな。アイトがよく言ってたことが、今よーく分かったぜ。支えたいから支える、守りたいから守る。人間の関係なんてそんなもんだ」
ならばセトもそうしよう。理由なんかどうでもいい。なくたっていい。どれだけ敵が強大でも、自分が弱くても、何もしない言い訳にはならない。
自分にできることをやる。そして4人でまた馬鹿やって笑える日々が来れれば、それでいいんだ。
姉御には、姉御にしかできないことがある。
セトは目についた血を拭う。なんか液体の量が多かったのはきっと気のせいだ。
「―――そこにいるんだろ。早く出てこいよ」
「おっと、気づかれてるとは。貴様も見捨てたものではないようじゃな」
「御託はいい。知ってるんだろ、『目白鮫』のアジトの場所を」
「根拠は?」
カツジは片目をつむりからかうように言った。
「んなもんねェ。けど、オ前がオレの前に現れたってことは何か言いたいことがあったからじゃないのか」
「カカカ!!悪くない解答じゃ80点をやろう。その通り、儂は『目白鮫』の居所は掴んだ。して、お主はどうする?儂を脅迫してでも情報を吐かせるか?」
「いいや」
セトは軽く息を吐いた。
そして、長い長い沈黙を経て頭を下げた。
カツジは予想外のことに眉をひそめる。今までの彼女の性格から考えて人に頭を下げるなんて考えられない。ましてやセトを傷つけたカツジに対してなら尚更だ。
「オレと一緒に戦って欲しい」
「……………ほぉ。教えろ、ではなく戦って欲しい、か」
「勘違いするな。オレが間違っていた、とは思ってねェ。オ前のやり方には納得してねェし納得することなんて無いと思う。………けど、今はそんなことで口喧嘩してる時間は無いはずだ。オ前がなんでこの件に関わってるのかは知らねェ、が目的は一致している。だから協力だ」
「――――」
「あの腐った奴らをぶっ飛ばす。薬は一片も残さず焼き消す!アイトを助ける!これでみんなハッピーエンドだ!」
「本当にいいのか、その先は修羅の道じゃぞ。犠牲無くして物事は進まない。そう前に教えたはずじゃ。そのアイトとやらが救えないかもしれぬし、お主が死ぬかもしれない」
「そんなのやってみなきゃ分かんねェよ。決めつけんなオ前は神様かなんかか?」
「そうじゃが?」
数秒沈黙が生まれる。何気ない一言に緊張感が緩んでしまったセトは自身の頬を叩いて仕切り直す。
「オレ達二人ならきっとできる。もう一度オ前を信じさせろ」
セトは臆することなく言い放った。そんな彼女の瞳の奥を見つめる。そこには前にはなかった「覚悟」と「強さ」があった。
自分が弱くても関係ない、相手が強くても関係ない。プライドなんてティッシュに丸めて鼻くそと一緒に捨てちまえ。
大切な人と一緒にいたいから。笑っていたいから。
ただそれだけで戦える。人間なんてそんなものだ。
「装備を整えろ。40秒で支度しな」
「……………アァ」
決戦が始まる。守りたいものを守る為に少女は走る。その先にハッピーエンドがあることを信じて。




