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4  カツジと爆撃熊


「賊!?爆撃熊!?なんじゃらほい?」


「カツジさん、爆撃熊ですよ爆撃熊!!このあたりじゃ有名の盗賊団です!!老若男女関係なく見境なしに襲う、馬車や運搬車などをよく狙っては資源をかっさらっていく人達です!その特徴は名前にもあるとおり爆撃を匠に操り、体に熊の入れ墨を入れています!」


「お客さん、速く馬車から出て逃げて下さい!」


「とりあえず逃げましょう、カツジさん!!」


「お、おう」



 二人は逆さになった馬車から外に出る。あたりは草木が少ない荒野、逃げるにしてもすぐに見つかってしまう。


 あそこにいるのが爆撃熊だろうか。


 両手に剣を巻きつけ、腰には爆弾が仕込まれている2人ほど熊の入れ墨を入れた男がいた。爆撃熊の一人の男が中腰になりながらこちらに近づいてくる。



「あっれーガキがいんのか、こいつはいいや。ボロ服のガキが一人と、人間の…………いやあれは人間じゃねぇななんの種族だ?」


「見た感じ特徴的なものは見当たらんが、まぁいいだろう」


「結構いい顔してんじゃねぇか。まだガキだが成長すれば結構いい値で売れそうだ。あっちのボロ服のガキは…………まぁいいか。ついでにさらっとこう」


「そうだな、決定よし行こう」



 金髪の男は舌を出し口周りを不気味に舐め回す。金髪の男と眼帯の男は小刻みに足を運びこちらに接近してくる。



「護衛の皆さん、お願いします!!」


「承知」


「護衛!?」



 するとカツジ達の後ろを走っていた馬車から3人の人影が現れた。鎧を纏い剣を携えている。見たところ騎士か何かだろうか。



「ちっ、やっぱいたかー。面倒なんだよね騎士って。変にプライド高くてやんなっちゃう」


「だが、戦うしかない」


「けど、こいつら程度なら俺一人で十分だ☆」


「先程から失礼なことばかり言いやがって。街の騎士の名にかけて、爆撃熊、貴様らを打つ!!」


「行くぞ!」


「おう!」




 三人の騎士が二人の爆撃熊に突撃する。金髪の男はゆらゆらと三人の剣撃を避ける。まるで関節がない軟体動物のような動きで騎士達を翻弄する。



「な、なんだあの動き……これが外の世界……!?」


「駄目よー駄目駄目。そんなあくびがでちまう動きじゃあまるで駄目だね」


「なにをぉぉ!!」



 一人の騎士が大ぶりで剣を振るう。先程よりもより素早くより強力な一撃、これは敵も余裕の表情はだせまい。


 カツジはそう思っていた。しかしカツジの考えはあまりにも浅はかだった。


 男はその一撃を軽々と片手の剣で叩き起こし、もう片方の剣で騎士の横腹を突き刺す。



「カハッ―――――――――」


「お疲れ様、もう死んでいいよ」


「ダンデ!!?」


「貴様ーーー!!」



 二人の騎士が剣を構え突撃する。その前に眼帯の男が立ちはだかり、二人の剣をあっさりと受ける。



「この私を忘れて貰っちゃ困るね」


「さっすがぁかっこいいー」


「この、犯罪者共が!!行くぞ、ケン!」


「おう、ダンデの仇だ!!」


「おやおや」



二人の騎士は眼帯の男に向かって連撃を放つ。息のあったコンビネーション、隙きを逃さず剣は敵を捉える。これなら行ける、誰もが思った。



 しかし、眼帯の男はそんな希望を打ち砕く。あっさりと二人の連携攻撃を受け流し両手の刃を突き刺す。



「……………終わっ、た」



 決してあの三人も弱くはなかった。田舎とはいえクドウ先生の剣術を教えてもらっていたカツジから見ても彼らの攻撃は素晴らしかった。


 だがあの男達、爆撃熊が恐ろしく強いのだ。



「んじゃ君たちの処遇はどうしよっかなー。荷物はぜーんぶ貰うとして………まずはそこのガキ二人を貰おうか」


「すまないレクレス、私があの白髪のレディをお持ち帰りして良いか?」


「あぁお前ロリコンだったな。まぁいいよ、ボロ服のガキはいきが良さそうだ、連れてってそんはないだろ。売れなくても労働力として使えそう」



 二人はこちらに近づいてくる。眼帯の男がエルザの顔を両手で挟み、凝視する。



「あ、……その……殺さ、ないで」


「殺す?そんなことはしないとも。少し私たちのところに来てくれればよいのだよ、麗しきお嬢さん」


「い、いや………」


「抵抗はおすすめしない。君ももう大人だ、それぐらいの判断はつくだろ………ん?」


「うおぉぉぉぉぉりゃぁぁぁ!!」


「ングォ!?」



 カツジが思いっきり男の顔面をぶん殴る。カツジはエルザに切羽詰まった顔で告げる。



「速くおっちゃんたちと逃げろ!サクライまで走るんだ、近くの街でもいい!俺が時間を稼ぐ、俺だって鍛えてるんだ!」


「で、でもカツジさん……!」


「早く行かないと死体が俺だけじゃなくなるぞ!!」


「けど!!」


「いいから!!」


「…………ごめんなさい、カツジさん!!」



 そう言うとエルザと馬車のおっちゃん達は馬車を立て直し、走り出した。しかしレクレスはそれを逃さない。



「逃がすと、おーもーうーかー!?」


「させねぇ!!」


「おう、これは驚いた。君ガキの癖に根性あるね?その武器、珍しい……」


「お、これ知ってんのか?鬼の里だけかと思ったんだがな」



 カツジが攻撃を防いだ武器は鬼の里に古くから伝わる武器。

護身用として母から渡された武器、刀。



 異国の地から伝わったとされるその武器は使い手によっては凄まじい切れ味を誇る。


 カツジは刀を両手で構え刃を向ける。



「一番お宝かもねその武器、せいぜい刃こぼれしないように足掻いてよ」


「うおりゃゃぁ!!」



 刀を大ぶりの軌道で振るう。



「ふんっ!!おりゃ!はぁあ!!」


「ヘェ、いいね悪くない動きだ。下手したらさっきの騎士達よりも筋がいいよ。でーもー」


「ぐはッ!?」


「やっぱガキだね」




 刀を振るうカツジの横腹にレクレスの蹴りが、槍のように突き刺さる。ノーバウンドで5、6メートルほどふっとばされ枯れ木に背中を打ち付ける。


 レクレスが横腹を抱えるカツジの上に乗る。



「殺意が足りないよ殺意が。お兄さんが冥土の土産に教えてやろっか?戦いに必要なのは技術や経験もそうだけど、一番必要なのはね、"殺意"なんだよね。君にはそれが足りないんだなこれが」


「殺意、か……殺意ねぇ」


「あん?」


「オラァ!!」


「お?」


 片手の刀をレクレスの顔面に向かって突き刺す。しかしレクレスは不意打ちを予測していた様に首を傾け避ける。



「ざーんねん。でもガキにしてほ良くやったほうだよ、褒めてあげる。本心だよ?」




 そう言うと刀を刃ごと掴みカツジの刀を強奪する。ニタニタと嗤いながら、奪った刀をカツジの横っ腹に地面ごと突き刺した。



「い、ガァァァァァァァァァァァァァ!?!?」


「お、いいリアクションするね。けど少しうるさいなー、音量下げてくんね?」


「それぐらいにしとけレクレス。子供が死にゆく様はあまり見たくない」


「やっと起きたか、遅えんだよ」


「ロマンチックな雰囲気を邪魔された。萎えたもうお家帰る」


「あれをロマンチックって言い張るお前やっぱ凄えよ。褒めてねぇぞ?」


「分かってる。そこのボロ服のガキはどうする」


「んー別にいてもいなくてもいいかな。ここに干しておくか、そっちの方が面白そうだし」


「そうか、なら早く物資を漁るぞ」




そう言うと二人は去っていく。


 意識が遠のいていく。血が全身から引いていくのが本能で感じる。外に来て、色んな事を学ぶ予定だったのに、なんて様だ。皆に、鬼の里に顔向け出来ない。



このまま自分は死ぬのだろうか?里に戻れないまま、外の世界を一生知らぬまま。



 嫌だ、死にたくない。そう願いながら御守りである首元の数珠繋ぎを握る。



 死にたくない、もっと生きていたい。だがカツジにはそんなことを叫ぶ力はとうに残っていなかった。



 意識が―――――暗闇に、―――――落ち――――て―――――




#####




「おお!見ろよランス!初っ端から宝石があるぜ!!これは期待できそうだ……!」


「本物かどうかは分からんけどな」


「そういうこと言うなよ…ロマンチストならもっと興奮しろよ」


「宝石より女子が欲しかった……」


「分かった分かったよ。お頭に頼んで美人でも連れてきてやるから」


「え、マジ?やった」


「ふふんのふーん、おっ?これはなんd」



 ドカァァアン!!


 レクレスが呟いた直後、背後で謎の爆発が起こった。二人はとっさに構える。仕掛けた爆弾がまだ残っていたのだろうか?いや、確実に数の分だけ爆破させたはずだ。



 ならこの爆発はなんだ?



 爆発の炎の中なら何かが歩いてくる。近づいてくるたびに猛烈な気配が襲ってくる。



「こ、子供?」


「まさかさっきのガキか!?そんなはずは………」



「――――祝福せよ、祝福せよ、歓喜せよ、歓喜せよ。全身全霊をかけて儂を讃え、讃えよ。鬼神は今ここに顕現した。長きに渡った眠りは今終わりの鐘を鳴らした」


「な、何者だてめぇー!?」


「――――あ?ちょうどいいところに人間が。そこの人間、今何年でここはどこじゃ?」


「はあ?何言ってんだてめぇ!?なんで生きてやがる!?おまけに"角"を生やして、まさか鬼族か!?」



 その少年は先程とは違い、角を一本額に生やしていた。少年は首を傾げる。



「少し違うかの。儂は鬼なんかじゃない。鬼を超越した"鬼神"じゃ。間違えるな小僧」



 そう言って少年は自らを"鬼神"と名乗った。



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