22 練習
「と、いう訳だ。俺達はクロウリー!お前に勝負を挑む!」
「ふむ、なるほど。つまり君ぃ達は僕ぅに魔術の対決を挑みに来たと。馬鹿なの?魔術の腕は僕のぉ方が上なんだよ?ちょっと発想を捻ったからってつけあがるのも大概にしろよ凡人どもが。考えてもみなy
「ぐだくだうるさい奴アルねぇ。男なら売られた喧嘩ぐらい買って見せろアル」
「人がまだ話してる最中だろうが!馬鹿馬鹿しい……君たちぃの申し出など受けるわけ無いだろ」
予想通り、申し出は断られてしまった。プイとそっぽを向き完全に相手する事を放棄している。やはり無策過ぎただろうか。カンナとアキレスが抗議する横でカツジは頭を抱える。
「それでも男かこのヘンテコ頭!!」
「ッッ!!?」
カンナの何気ない一言にクロウリーの表情が激変する。鼻息を荒げ低い声で告げる。
「だ・れ・がヘンテコ頭じゃこらぁぁ!?このパーフェクトヘッドスタイルは侮辱したぁか包帯野郎!」
「っへ。何がパーフェクトヘッドスタイルアルか。はっきり言ってダサいアル。それにその服もその喋り方もかっこ悪いアル。だからモテないアルよ。財力のある人間に人は寄ると聞きますが、あなたには人一人近づかないのは何故でしょうーか?正解は自分の胸にでも聞いてみるアル」
ブチ、バチ、ビチィ!とクロウリーの中で何がはち切れる音がする。後一本でも切れたら噴火しそうな勢いだった。
…………まさか煽り耐性はない?
すると、頭の中の鬼神が突然声をかけてきた。
『何やら面白い事になっておるな。小僧、こう言う勝負事を受け付けない奴にはある言葉を放てばいいんじゃ』
「(……ある言葉ってなんだよ)」
『まぁ任せるのじゃ。変わるぞ』
「ちょま
ゴクンッとカツジの首が音を立てて揺れる。ふふんと鼻息をならしながら額に青白い角を生やしたカツジが怒りに我慢するクロウリーの肩に手をおく。
「おいおいクルクル頭。何故儂らの申し出を受けないのじゃ?儂ら真剣なのになぁ~そ・れ・と・も、儂らに負けるのが怖いのかえ?」
「―――――何?」
ブヂィ!と冷静さを保つ最後の一本がはち切れた音がした。
やはりかかった。この手のプライドが高い相手には「負けるのが怖いのか」と言ってやればすぐにプライドが邪魔して突っかかってくるものだ。
「え?図星?その反応は図星なの?ハハ☆いやいやそんな訳ないじゃろ~この街を管理する代々受け継がれてきたブラウス家の次期当主様がただの凡人相手に負けるのが怖いなんてね。ん?黙ってないで何か言ったらどうじゃ?」
そう言ってまるで親しい友人のようにクロウリーの首に手をかける。よく聞くとギシギシと歯ぎしりを立て、あと指先一本でも触れたら爆発しそうだ。
クロウリーの反応をみて察したのか、後ろの二人は便乗して、
「あらやだ聞きましたか奥様。あの、あの(強調)才色兼備で知られるクロウリー坊ちゃまがたかが凡人に負けるのが怖いですってよ」
「ええ聞きましたアルよ奥様。街を管理する方がこんな臆病者だったなんて、この先のサクライの未来が不安ですアル」
「さぁさぁ。どうするのじゃ?クロウリー坊ちゃま☆」
最後に人をイラつかせる音程の囁きでフィニッシュ!
ガッッ!!とクロウリーは掌をカツジの顔面に向け、ゼロ距離でサッカーボールほどの大きさの火球を発射する。
それを予知、あるいは期待していたかのように体を傾け避ける。飛んでいった火球は空中で花火のように炸裂した。クロウリーは眼鏡を乱暴に外して吼える。
「――――いいだろうぅグズ共!!君たちとの勝負を受けようじゃあないか。君たちが勝ったらなんでも言うことを聞こう。だがな、もし君たちが負けたら、
獣のような鋭い眼光でかつ低い声で、はっきりと言った。
「この街に居場所はないと思えよ………!!!勝負は一週間後、君たち3人と僕ぅ一人の魔術パフォーマンス勝負だ。学校のグラウンドを借りて行い、グラウンドに来た人達の投票の数で勝負する。大勢の人間の目の前で大恥をかかぬよう精々練習でもしとぉくんだな。意味はないと思うがねぇ」
「そっちも3人にはしないのかえ?これでは不公平な気がするが」
「凡人がぁ足を引っ張るなら僕一人でやる。グズ共の手なんか借りない」
そうして勝負は決まった。はたして勝つのは孤高の天才か、凡人の集まりか。
残り開始まであと一週間。
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次の日、三人はとある場所に集まった。どこかと言うと神桜樹が植えられてるだだっ広いやや丘気味の野原。カツジはここが結構お気に入りなのである。
街の全体を見渡せるし何より居心地がいい。この神聖なる木が持つエネルギーがカツジを優しく包み込むよう感じがしてならない。
今日も革ジャンサングラスのアキレスは野原にあぐらをかいて、
「よしっ!早速あいつをワイルドに打ち負かすための練習を始める!まずは…………まず……」
「おい、まさかノープランなのか?」
「え、いやパフォーマンス勝負って勢いで言っちゃたからそんな考えて無かった」
「ばっきゃろう!!そんなんで勝てるわけ無いだろ!」
何せ相手は魔術の天才様。天使族であるアキレスをも押しのけるほどの腕だ、戦闘以外にもその手のセンスはあるだろう。
クロウリーに対しこちらは。
魔術だけは得意の天使族 魔術のセンスは一ミリも無い鬼 どんなポテンシャルを持ってるのか不明な包帯吸血鬼
「……なぁカツジ、お前今すっごく失礼なこと考えてるだろ」
「別に………」
「目をそらす目を。まぁ言いだしっぺは俺だ、責任は取る。とりあえず魔術について俺達が出来る事をまとめてみよう。カツジ、何かないか?」
「言っとくが俺は『爆』しか撃てねぇぞ」
あの後、ベリアル先生にコツを教えて貰い自主練をしてみても結局出るのは『爆』のみ。それに『爆』は他の魔術と比べて魔力の消費が激しい。大きいのを一発撃ったらそれでおしまい、地面にうつ伏せになるだけだ。
アキレスは難しそうな顔をして質問をカンナに移す。
「そうか……。カンナはどんな魔術が得意だ?ていうかそもそも魔術についての知識はあるか?」
「ふっふっふ。実はワタシ、唯一無二恐らくあのヘンテコ頭も使えないであろう秘術を持っているね」
カンナはニタリと(包帯で見えないが)笑い自信満々で胸を張る。
「何!?一体どんなのだ!?」
そう言うと、カンナは持参してきたバックを開きごそごそと漁りだす。そういえば何のために持ってきたのだろうかと思ったが、何か秘密兵器でもあるのだろうか。
「てってれー、疑似魂付加札~」
「「………疑似魂付加札?」」
カンナが取り出したのはなんの変哲のない御札だった。御札にはオレンジ色のインクで謎の記号が描かれてある。
魔術に詳しいアキレスはまじまじと御札を見つめる。が、頭の上にはてなマークを浮かべ首を傾げた。
「……記号魔術にしちゃあ記号としての組み立てがなってない。マジでなんなん?」
「これは吸血鬼族に伝わる秘術ネ。名前通り、自身の魔力を指先に載せて特殊な型で記号を描くと疑似の『魂』を作る事が出来るネ」
「な、なんだがよく分かんねぇけどすげぇな。けど、それをどうやって使うんだ?勝負内容は魔術を利用したパフォーマンスだぞ?」
「黙って見てるネ。ここに、一つの鏡があります。これにこの御札を張ると………………」
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「す、すげぇ……。こんかのが世の中にあったなんてな。派手さとワイルドさに欠けるが、俺の特異な『光』魔術を組み合わせれば凄いのが出来そうだな!」
「そうアルそうアル!三人集まればなんとやらネ。そこで、ワタシアイデアを一つ考えてきました。ゴニョニョゴニョニョ………」
カンナのアイデアを聞きなるほど、とカツジは呟いた。シンプルだが大勢の目を引き、かつ『利用』として判断してもらえるだろう。カンナの秘術とアキレスの『光』魔術、そして鏡。
これらが無ければ思いつきすらしない荒技だ。しかし問題点が二つ。カツジは指を二本立てて、
「問題は何を作るかだ。大勢の人に見られるのだからメジャーな物、かつ人気なものの方が良いに決まってる。あるじゃん、風船いじくって動物作るやつ。あのイメージ」
「うーん…………。そうだ、ワイルドさの化身キネイエはどうだ!魔神が作ったキメラ魔獣なんて最高にクールでワイルドだr
「「却下」」
「……お、おう」
即刻却下宣言をされたアキレスは少ししょんぼりした。何を作るかで頭を悩ませていると、カンナはふと学園『アナスタス』の校舎を見つめた。
何を思いついたようにポンと掌を叩き立ち上がる。
「あれネ。あれなら誰だも知ってるしあの学校でやるに相応しいアル!作るのは……………」
「やっぱカンナお前最高だぜ!よしっ!早速それの練習に移ろう!!俺とカンナは練習してるからカツジはそこで『爆』の練習をしといてくれ。他の披露技も考えてるんだ、お前のその『爆』の才能が必要だ」
カツジは分かったと縦に頷く。アキレスは拳を突き出すと二人も拳を突き出しす。
「あの高い鼻をへし折ってやろうぜ。よっしゃあチーム『ワイルド・エンジェル』、結成だ!」
「おいまてその名前はダサい!」
「そうアル。せめて『へっぽこ二人アンド才色兼備パーフェクトカンナ様』チームにするネ」
「よーしお前ら表出ろ練習の前にまずは体をほぐさなきゃなぁ!!?」
へっぽこ三人の練習が始まった。




