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3   サキュバス


『なぁ父ちゃん、サキュバスって何?』


『サキュバス?お前もそういうことに興味の湧く時期か…もう12だもんな』


『それ12関係ある?』


『あるに決まってんだろ、サキュバスだぞ、サキュバス。サキュバスってのはな、雄の精気を糧にして生きてる種族なんだ。特徴としては……尻尾、先端が尖った尻尾が特徴だな。そして……』


『そして?』


『圧倒的エロボディ!!でっぱいからちっぱいまで、ロリ系からお姉さん系まで!なんでもござれだ!いやー王都に行ったときのあのサキュバス店は良かった。久々に疲れが取れたよー。若いもんはいいね!』


『でもサキュバスって本によると滅びた悪魔族の亜種なんでしょ?若く見えても100歳とかいって……』


『カツジ、それは暗黙の了解ってやつだ。そしてこのことは母ちゃんには内緒な』


『………父ちゃん、骨は拾ってやるよ』


『ん?それってどうゆう………母ちゃん、いや違うんだよ。これは決してそんなことではァァァァァァァァァ!!!?』





        ――――――――――――――――――





 そして今、俺の目の前には尻尾がある。先端の尖った尻尾が!!


 エルザは恥ずかしそうに顔を赤らめて尻尾をいじる。たまにチラッとこちらの様子を伺うような素振りをするが、カツジは微動だにせず固まっていた。



(サキュバス……これが?これが噂のエロボディというやつなのだろうか。いや、まてまだ彼女は成長途中と言えよう。つまりだ、将来彼女は凄いサキュバスになるのではないか!?

 顔はすっごく可愛いんだそうになるに決まってる……。それにだ、彼女がまだサキュバスと決まったわけではない。似た尻尾をもつ種族の人なのかもしれない!今ここで確かめることは……)



「……も、もしかしてサキュバスの方だったりする?そうかぁならべっぴんさんな訳だ、ははは」


「…………………」



 エルザは何も答えない。ずっとカツジから目線をそらし尻尾をいじっているだけだった。


 急な展開にカツジの思考はついていけず、フリーズ寸前のところ、ついに彼女の口が開いた。



「―――――はい。私、サキュバスと人間のハーフなんです。でもハーフのせいか、その、なんといいますか、性欲が薄いんです。

 サキュバスは男の人の精気を糧にして生きてます。私はハーフなのでそこまで摂取しなくてもいいんですが、やはりサキュバスの血を継いでる以上自分で精気を取らないといけないんです。で、でも私そういうのが苦手で……いわゆる落ちこぼれって奴です」


「へ、へぇ。大変だね…」



 しんみりしたムードが馬車に漂う。エルザは下を向き、凄く落ち込んでいるように見える。



「でも、その気持ちわかる。俺も鬼の里では落ちこぼれだったし、でも悔しさをバネになんとかやってこれたからさ。エルザさんも思い切っていけばなんとかなるよ!」


「そ、そうですか?ありがとうございます」



その時、カツジにある事を思い浮かべる。



「そうだ!鬼の里に伝わるおまじないをかけてあげるよ!」


「おまじない?」


「そうです、ちょっと失礼」



そう言うとカツジはエルザの額に手をあて目を閉じる



「ええと確か……"光なき者に影は現れず、影あり者には光がいずれ差し込まん、ねばーぎぶあっぷ"………どうです?意味はよく分かんないんだけど、縁起のいい言葉らしくて………エルザさん?」


「―――――――――――うぷ、は、吐きそう……」


「えぇ!?」



 目を開けると彼女は辛そうに下を向き、口を抑えていた。何かやってしまったのだろうか、それとも馬車酔い?


 カツジは慌てふためきながらとりあえず彼女の背中を擦る。



「だ、大丈夫ですか……?」


「は、はい、なんとか。カツジさん………それ有名な"神聖文"じゃないですか。どこも里に伝わるとかじゃないですよ凄く有名ですよ………うぷ」



「え、マジ。騙したなジジイども…………神聖文?」


「知らないんですか……? 神聖文ってその言葉自体が神聖な力を持つ特別な言葉なんですよ……。サキュバスって滅びた悪魔族の亜種なんでそういう神聖な物には弱いんですよ。半分サキュバスだったから良かったけど、普通のサキュバスが聞いたら即吐きますよそれ………」


「なんだそれ!?誰が作ったんですかそんな言葉……」



 カツジは首を傾げ、彼女に質問する。エルザは気分が悪そうな顔でゆっくりと答えた。



「それも知らないんですか?何処の田舎から来たんですかカツジさん……。この神聖文の作者は、人間の身にして人間を超越した存在、"人神イカネ"が作った文ですよ。彼はほぼ神に近い存在なので彼が作った文にすら神聖な力が宿る・・らしいです」


「人間を超越した存在、なんか凄な。カッコイイ響き」


「まぁこの世の四大超越神の一角ですしね」


「四大超越神?」



 カツジが聞き覚えのない言葉に首を傾げると、エルザは少し呆れたような口調で話した。



「……四大超越神は、強さを極めその種族を超越した人達の事を指します。先程言った人神イカネ、魔術を極めその極地に辿り着いた魔神アナスタシオス、最強の種族である龍種を超越した人々を照らす太陽龍、またの名を神龍シャムス、そして鬼族の頂点、強さという強さを体現した存在、鬼神ミオ。

 世界中で有名ですがその詳しい正体は誰にも分からず、種族を超越したなんて言われてますけどどう超越したのかすらも不明という生きる都市伝説みたいな物なんですよ」


「……………………っは!?ね、寝てないよ!?」


「しばきますよ」



 エルザが真顔でそう言った次の瞬間、




 ドカァァアン!!

 


「うおっ!?」


「きゃああ!?」



 爆発音が炸裂し、馬車が文字通り吹っ飛ぶ。四角い馬車がなんども回転し、視界が振れる。すると窓から運転手が慌てた表情をして顔を出す。



「いってて。な、何なんだ!?」


「お客さん!大丈夫ですかい!?」


「大丈夫だけど、今度はなんだよおっちゃん!!安全はどうした!?うおぉう!?」



また爆発音が鳴り、馬車が揺れる。



「お客さん、逃げてください!!"賊"です!それもあの爆撃熊です!!」




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