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13   忘れ物



 とある日。花曇りの天気が目立つ今日この頃。カツジは誰もいなくなった教室の掃除をしていた。


「ったく、日直の仕事とはめんどくさいなぁ。机の下も掃除するから一回一回ずらさなきゃいけないし。黒板も消さなあかんし。くそ、中々消えない。あの先生筆圧濃いんだよ」


「まぁまぁ。これも生活の一環だよ。こういう一人一人の働きが社会を作ってくんだ」


「………モブのくせになんか良いこと言うね」


「モブのくせに………?僕だってたまにはそういうこと言うよ………」



 モブことモーブレッドは机を元の位置に戻しながら言う。この日ほカツジと隣の席のモーブレッドが日直。なので放課後も居残りで教室の掃除である。


 入学から一週間近く経った。少しずつだがこの生活にも慣れてきた気がする。


 だが授業は全く分からん。算術にかんしてはプラス、マイナス、かけるに割るだけじゃなくなんか文字まで入ってきた。方程式?何それ?


 なんとかマーマンの教えでやってこれてるが、テストと言う腕試しがあるらしくそれにビクビクと怯える日々だ。



 濃い筆圧の黒板を消し終わり、カツジもモーブレッドの方を手伝おうとした時、あるものが目に留まった。



「…………なんだこれ」



 ある席の机のから長方形のザラザラした石の板が置いてあった。忘れ物だろうか?



「なぁモブ。ここの席って誰だっけ」


「ん?そこ?えーとたしかー、巴さん?だったかな。多分彼女の席だけど、何それ忘れ物?」


「うん。そうっぽいんだけど、なんだろこれ。大事なものだったら困るだろうし後で届けておくわ」



#####



 とは言ったものの、彼女の居場所が分からない以上誰かに聞くしかない。というわけで掃除が終わったあと教室をでて事情聴取だ。


 とりあえず学校周辺を知り合いがいないから歩いてみる。



「お、エルザ発見!!」


「うわ、何ですか!?……………ってカツジさんじゃないですか。どうしました?」


「実は今巴さんを探してて。見てない?」


「巴さん…………巴さんですか。えーと、えーと、あ!確か学校の中庭で見かけたような気がします!!」


「オーケー中庭ね。んじゃあ、ありがと」



 そう言ってカツジは去って行く。



「というか、なんでカツジさんは巴さんを?」






 中庭到着。学校の中心のある空いたスペースにベンチや花や色んな種類の草木が生える憩いの場。教室4つ分位の広さの中庭を見渡してみる。


 しかし彼女はいない。どこかですれ違っただろうか。



「お、カツジじゃねぇか。またワイルドに何かしてんのか?」


「あ、アキレス」


「おうよ。最もワイルドの男アキレス様だぜ」



 サングラスをカチャと上げてキメ顔をする円形のベンチに座った少年の名はアキレス。アキレスはそっと立ち上がりカツジに寄る。



「何してんだこんなところで」


「いや、今巴さんを探してるとこなんだけど。見かけてない?」


「巴……巴………。あぁあの無口な女か。確か校門辺りの広場をウロウロしてた気ぃすんな。なんかよく分からない長い物を背負っててが何なんだろうな」


「校門辺りをか。ありがと!」



礼を言いながらすぐさま去って行った。



「で、なんであいつを探してんだ?」






 校門の広場に到着。特に何もない平面で両サイドにグラウンドと続く道がある。その両サイドの道の花壇には今のところ何も咲いてない。木は何本かあるが。



 そして彼女の姿は見当たらない。



 時間はまだあるからいいができるだけ早く終わらせたい。またもすれ違いになったのだろうか。それとももうすでに女子寮に戻った可能性も。



「む?我が盟友。こんなところで何をしている」


「あ、ゴウキ」



すると校門の目の前を通り過ぎたランニング中のゴウキとすれ違った。相変わらずトレーニングに励んでいて何よりだ。



「今巴さん探してんだけど、見てない?」


「巴?…………あぁあやつか。知らぬ。…………そうだ、確かここから西に進んだところにある公園でやつのような人物を見かけた」


「なるほど。ありがと!」



 ズバビューンと急ぎ足で走り去って行った。ゴウキは汗ふきタオルで汗を拭いながら、



「しかしなぜ彼女を?」





 そして五分ほど走って件の公園に到着。そしてカツジは膝をついて叫んだ。



「いねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」



 やはりここにもいなかった。クソぉ!と思わず口からこぼれる。ただ忘れ物を届けてやろうと思っただけなのにここまでたらい回しにされるとは。



 はぁ、と重いため息を吐く。そもそも彼女は何をしに、どこへ向かっているのだ。中庭、校門の広場、そして公園。



 この三つの共通点を探してみよう。中庭、広場、公園。この三つには植物があった。無口で無表情で何を考えてるか分からない彼女だが、一応女の子だし花でも愛でにきたのか?



 いや、だとしてもこんなに移動することはない。中庭だけで十分だ。



 次に考えられるのは、人が集まるというか点だろうか。しかし、彼女は何か長い物を背負っていたという。そんな物を人が集まる場所で使ったりするのか?



「んー、これは違いそう」


次は…………広い点、だろうか。中庭はそこまでだがこの公園と広場はそこそこのスペースがある。長い物を背負っていた………広い場所………。



「長い物を使える程のスペースが欲しい?」



 この仮説は結構有力なのかもしれない。が、難点がある。



「けど、どうやって探そう…………?」


 カツジはカクンと横に首を傾げる。カツジはこの街に来てまだ一週間しか経ってない。街のどこに何があるかなんて知らない。



 頭を悩ませていると、鬼神が話しかけてきた。



『儂の故郷にはこんな言葉がある。灯台下暗しっていうな」


「ん?それってどうゆう意味だ?」


『捜し物は実はすぐ近くの足下にある、ということじゃ。つまり、もう一回学校付近を調べなおしたらどうじゃ?以外とすぐそこにいるかもしれんぞ?』


「なるほど…………。中々いい格言だな。ところでお前の故郷ってどんな場所なん?一万年くらい前の土地の情報と分からんけど」


『あん?儂の故郷?強いて言うなら、極東。東の東にある国じゃな』


「ふーん。ねぇ、その故郷の話聞かせてくれよ。その格言以外にも何かあるのか?」


『それはまたの機会な。儂は寝る』



こいついつも寝てばかりだな。鬼神のいう格言を信じて来た道を戻っていく。




#####




学校で広い場所と言えば…………。



「グラウンドだぁ!!」



 校門の広場の両サイドにある道を抜けた先、学園『アナスタス』の広大なるグラウンドに来た。



 野球やサッカーなどの複数のスポーツを同時に行える程の広さがあり、それに加え運動場だったり木々が生えそろった小さな休憩所だったりとなんでもござれだった。



 早速巴を探すべく探索を始める。先日は先輩たちがここで色々活動していたが都合のいいことに今日は誰もいない。人がいないので探しやすい。


 数分間彷徨ってると、ぶん!ぶん!と力強く空気を裂く音が聞こえた。



 その音が聞こえる方向に向かってみる。そこにお目当ての人物はいた。



「やっと見つけた。おーい巴さーん!」



 彼女はすみっこにいた。


 和装の上着を脱ぎ、胸にさらしを巻いただけの無防備な姿で馬鹿でかい刀で素振りを永遠と繰り返していた。



 全長は彼女の身長も超えてるだろうか。刀身だけでもカツジと同じくらい長さがある。刀は見た目に反してかなり重い。しかもあの刀は通常のよりも大きい。そんな重いものをブンブンと振るう彼女は結構凄いことをしているのでは。



「巴さーん。………あれ?」


「―――――」



 彼女は真横にいるカツジにも気にせず刀を振っていた。気づいても無視してるだけなのか、それとも気づかないほど集中しているのか。


 もう少し大きな声で話しかけてみる。



「おーい!巴さーん!!」


「ッッ!?!?」



 さすがに意識がこちらに向いたのか、凄い驚いた顔でこちらを振り向く。カタカタと小動物のように震えだし馬鹿でかい刀を地面に突き刺してそこに身を潜めた。



「………それで隠れてるつもり?」


「ッッ!?……………」


「あ、えとこれ。多分巴さんのだと思うんだけど」


「あ――――」



 スッとザラザラした石の板を渡す。彼女は安心したような素振りで受け取る。ホッと息を吐き一安心しとようだが、



「あ」


「?」


「…………(プイッ)」


「おい、なんで目そらした」


「………………………」


「ところで、何してたの?それ刀でしょ。俺の地元にもあるんだよそれ。格好も地元と似たような格好だし、もしかして繋がりとかあったりする?」


「……………………………………」



 さっきから目をそらし無言の姿勢を貫いている。質問しているのにずっとそんな態度をとられるとこちらもピキッとなるものがある。


 カツジは軽く息を吐き、少し強めの口調で言った。



「なぁ、なんで目をさらすんだよ。質問しているのに黙ってるんじゃ失礼ってもんじゃあないのか?せめてなんか言ってくれよ」


「え、いや…………………」



彼女は少し戸惑ったようだが、初めて会話的な声を出した。



「そ、そそそその、えと、す、すまん!べっべべ別にそんなつもりじゃ…………ないん、だが……………そ、えと」



「――――――」




 耳を真っ赤にし小動物のように縮こまりながら言った。




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