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6   初めての友達



「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」



 他の生徒達を蹴り飛ばし全力を尽くして走行する。しまった、本当にしまった。最初は遊び程度に喧嘩を売ったつもりが、結構盛り上がってしまった。そうだ自分たちはレースをしていたんだった。


 ガミガミと頭の中から小僧(カツジ本人)の文句が聞こえるが、今はとりあえず気にしないでおこう。負けるのは嫌いなので。



「おいヘンテコ天使!今は妨害はなしじゃ、とにかく走らなければぁ!!」


「分かってるぜそんなこと!!勝つのは俺だぁぁ!!―――待って、ヘンテコ天使って俺のこと?」



 アキレスは飛びながら自分の顔を指差し問う。だってヘンテコじゃん。そんなに気に食わなかったのかブツブツと何か言っている。



『さぁさぁ、ついに最後の一人!四位の座は誰の者になるのか!!白熱した試合が繰り広げられています!!ゴールは目前、前に現れたのは二人の生徒!!至高の空間を手にするのはどっちだ!!?』


  


 走る、走る、ひたすら走る。無我夢中で走っているとついにゴールが見えてきた。


 ざっと200メートルと言ったところか。この200メートルが凄く長く感じる。カツジ本来の体にだいぶ負荷がかかっているのか、疲労自体は感じないが動きが鈍くなるのを感じる。


 

 一歩一歩に全身の体重をのせ、地面を踏み込む。



 横のアキレスも顔を強張らせていて、羽を大きく広げて低空飛行する。


 残り100メートルちょい。



「秘密兵器投下じゃ!!すまぬが小僧、もうちょい疲れるぞ」



 カツジは両手を忍者走りのように後ろに回す。すると掌からちっっちゃーな火球が現れた。そう、今朝遅刻しそうになった時に使ったあれだ。


 あれほど大きな物ではないが、この距離なら十分過ぎるだろう。



「『閻魔炎魂・炎星もっと小規模バージョン』!」


「何!?」



 ボファッ!!と火玉が炸裂する音がなる。風に乗り前進する。ゴールはすでに目と鼻の先、勝った!第三部、完!!


 カツジは後ろのアキレスを見ながら勝利の笑みを浮かべる。



「ふっふ、1位じゃないのが名残惜しいが、まぁええじゃろ。さーて、優雅に一人部屋かくt




「あ、横ちょっと通るよ」



 ズバビューーン!!!ものすごい速さで何かが通った。何だ今のは。加速されたカツジのスピードを大幅に上回る速さ。ただ者ではない。というか今の声どっかで聞いたことあるような………



「じゃなーーい!!まって!?四位は!!?」



『ゴーール!!最後の一人が今、ゴールしました!」


「いやー、あの人運んでたら少し遅れちゃったけど、まぁいいか。あの状況からここまで巻き返せる私、さすが天才」


「「………………………………………………………………………………………」」



 もう二人は黙って見てるしかなかった。珍しく両方とも不抜けた顔をして目を細めた。


 こんなことある?嘘やん。


 突然の乱入者によりすっごくやる気を削がれてしまったような、腹に穴が間ような、そんな虚無感がしばらくカツジとアキレスを襲った。


 

 数十分後




『新1年生の皆さん、お疲れ様でした。上位4名の方以外は教員の指示に従ってください。それでは皆さん、また来年お会いしましょう』



 いつの間に鬼神はふて寝しており、カツジの意識は元の体に戻っていた。 


 めちゃんこ疲れた。


 蓄積された疲労が一気に解放され、指一本動かすのでさえダルイ。今すぐにでもフカフカお布団に潜り込んで寝たい。それしかカツジの頭の中に無かった。



「―――――カツジ、おいカツジってば。聞いてるのか?」


「え?あぁごめん。なんかよう?」


「いや、大したことじゃあないんだがよ。すっごく楽しかったなって思ってさ。結局カツジには負けちゃったし、一人部屋も取れなかったけど、世界にはいろんな奴がいるって再認識したよ。ワイルドな男になるためにも、まだまだ修行が必要だな」


「そうか、最後の方はあいつにゆだねちまったけど、俺も楽しかったよ。……その、えっと………」


「おん?どうしたそんな目をそらして」


 

 目を右、左を繰り返して泳がせる。今更になってこんなことを言うのは恥ずかしい。何故だ、鬼の里ではもっと気楽にいけたはず。 


 ……いや、ここで断られるのを怖がってどうする。小さなことでも、成長して乗り越える。鬼たるもの、それを忘れてはならない。



「なぁ、アキレス。俺と友達になってくれないか?今更こんなことを言うのは恥ずかしいんだが……」


そう言ってカツジは握手を求める。アキレスはポカンとした顔でしばらく沈黙すると、


 

「―――――当たり前だろ!今日から俺たちは友達だ!!よろしくな、カツジ」


「―――――あぁ、ありがとう!」



 そして二人は固い握手をした。鬼の里を降りて、初めての友達。父ちゃん、まだ数日しか経ってないのに色々あったけど、やっぱ里をでて良かった気がする。


 いつかこの話もみんなに伝えてやらないと、そう胸に今日の記憶を刻んだ。




「はーい、それでは二人はちょっと来てもらいますからねー」


 ガシッと二人は頭のを鷲掴みされる。


「「え?」」


「えって、さっき言ったじゃないですかー、指導が必要だって。あなた達はちょっとやり過ぎました。よって先生から説教のご褒美を与えまーす。良かったですねー」


「ちょっ、ちょちょ待ってください先生!?あれをやったのは俺であって俺じゃないというか、そのあれなんです!!マジで今は疲労と眠気がヤバいから寝させてください!!」


「そうだぜ先生!!それご褒美じゃあねぇぜ。やめて、説教は嫌だぁぁ、何か嫌な予感がする!!」


「あー、あー、聞こえないですねー。ほら行きますよー」



 抵抗する二人をケロッとした顔でずるずると引きずっていくルーメルン先生。そしてその後、二人の姿を見た者はいなかったという………



「「誰か助けてぇぇぇぇ!!!」」




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