おまけ ロリコンと神様
目を覚ますと、そこは真っ暗な世界だった。
(どこだここは)
前後で記憶があやふやだ。えーと、私の名前はランス。無情卑劣の盗賊団、爆撃熊に所属する一人の紳士。
私は決してロリコンじゃない。ただ幼い娘の顔と体と性格と無邪気な心が好きなだけの紳士だ。
たしか相棒(名目上)のレクレスと宝奪還作戦の前に暇つぶしに馬車を襲ってた。そして謎の怪物が突然現れて―――。
(そうだ、レクレスは殺され私は全速力で逃げた。遠くを目指し走った。・が私は無様にも飛んできた刃物で心臓を一突きされた。確かに死の感触はあった。ここはほんとにどこだ?)
とりあえず状況把握のためにも体を動かそうとする。しかし動かない。
(なん、だ。これは!?よくよく意識したら呼吸がうまく、できない!?体も痙攣して動かないし、クソぉ!!)
体の全筋肉を使って動こうとする。全然動かず、傍からみたらそれは芋虫みたいですこし気持ち悪かった。
何分経過したか分からない。息はできないのに何故か生きている。
激闘のすえ体を起こすことに成功した。それに歓喜しようとして瞬間、
(うおっ!??体が、浮いて)
風船のようにフワッと浮きやがて地面とぶつかる。水の中に入った時の浮遊感に似ている。
また振り出しに戻った。ペタペタとうつ伏せになりながら地面を触ってみる。
(冷たい……とても凸凹している。そしてこれは、石か?石にしては軽すぎる)
産まれたての小鹿のようにヨレヨレになりつつ、四つん這いになって立つ。目をこすりよーーく周りを見る。
(……なんだこの黄色じみた白の大地は。穴という穴、凹凸とい凹凸、クレーターというクレーター。私は異世界にでも来てしまったのか?)
四つん這いで慎重に前へ前へ進んでいく。
誰かいないか叫んでみた。しかし声が出ない。いや、正確にいうと違う。声が出ないというよりかは音がそもそも出ない。
この場合ランスの声帯うんぬんの話ではない。音を伝える空気がないのだ。
だとしても何故窒息死しないのか。はだはだ疑問である。
どのくらいさまよっただろうか。この浮遊感がある空間での移動にも疲れてきたころ、それは突然やってきた。いやランスの方から向かったというべきか。
(うおっ!?冷た!!?)
手探りをしていたら、ピキピキと指が凍っていった。とっさに手を離し後ろへ下がる。
(なんだ今のは?もう一回試してみるか)
そおーっと指を突っ込む。またピキピキと指が凍り始め指を離す。
よく見るとランスの目の前に薄い、ギリギリ目に見えるかどうかぐらいの壁があった。
(明らかに中と外で気温が違う。しかしあり得るのか?一種の魔術結界?だとしたらなんて複雑の結界なんだ?誰が、なんのために?)
顎に手をあてうなだれていると、
「やぁ、目が覚めたかい?」
「うわぁいmd8ぶぅld5p!?!?」
「ぷっははははははは!!変な驚き方!!あははははははは!!」
後ろから暗殺者のごとく現れたそれは転倒し腹を抱えて笑う。
ランスは自分の喉に手をあて、
「こ、声がでる・・!?いつの間に」
「今私が『許可』、したからね。どうだい?ここは。不思議な世界だろ?私も初めてここに来たときはもうそれはそれは胸を踊らせたさ」
「ここに、来た……?まさか、あんた自らここに来たのか!?ここはどこなんだ!?私は何故ここにいる!?ここは地獄か、天国か!?」
「仮にあの世だとしても君が天国行きはないっしょ!まぁ君はまだ見込みがある方だけどね。安心して、ここは地獄でも異世界でもない。君の体には血液も正常に通ってるし心臓も動いてる」
「なら、なおさらここはどこなんだ…?教えてくれ」
「くれくれ言ってる男はモテないよ?まぁついてきな」
その者は振り向きさっきランスが来た場所からは逆方向へすすむ。ランスも立つ上がる。体が軽い。この異空間ではなく、今まで暮らしてきた世界と同じ感覚がする。
数分歩き続けた。その者は立ち止まり、ニヤニヤとリアクションを楽しむ人のようにこちらを振り向く
「これみたらここがどこか分かるかな?君もよく見ていたはずだ」
瞬間、ランスは驚愕した。ありえない。幻覚でも見ているのか?
今、このランスの瞳に映っているもの。美しく、生命に溢れ、森羅万象を司る『青い星』。
「まさ、か。あれは」
「そう、地球だよ。みんな大好きの我が家、いや我が星?だね。だとするとつまりここは?」
「――――――――――月」
「正解ー!!凄いでしょ!!ここに来るのにどんだけ苦労したか……」
「あんたは……いや、あなた様は……いったい」
フッ、と微笑みその者は宇宙に手を掲げ告げる。布切れ一枚を羽織り木の杖を持った、美しいエメラルドグリーンとゴールドが混じった髪の"女性"の名は。
「私の名前は、人神イカネ。人の身にして人を超えた存在、四大超越神の一角。付け足しておくと、私って地上では男性扱いされてるらしいけど全然女だから。よろしくね、ランスくん」