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11  襲来!


 ドガァァァァァァァンッッ!!!!!


 轟音と爆発が街の一角にて起こった。何が、どうやって、何で爆発したのかは周りにいた人間には何一つ理解できなかった。


 強いて理解できたのは、爆発を食らった張本人のみ。



「カツジさぁぁぁん!?!?」


「騒ぐでない、この程度で儂が死ぬか」



 火の中、猛火を振り払い張本人が姿を表す。この程度、と強がっていたものの、体からはところどころに火傷や出血がある。間近で爆発をくらってこれだけで済むのもそれはそれでおかしいのだが。



 眉間にシワを寄せたカツジがぷっと血を吐き出し、



「―――――そこのガキ二人」


「え?何?」


「お主ら、あの口裂け熊人形を貰った子供は知り合いか?」


「ええっと……うん、この街はそこまで大きくないからみんな知り合いだよ」


「カツジさん、べべベア人形がどうしたんですか?」


「爆発の原因はあれじゃ。ぬいぐるみの中に火薬を詰め込んでおる、しかも奥には記号魔術まで使っておるわい。儂が刺激してしまったから魔術が発動して爆発した」



 カツジは燃え焼けた記号魔術が刻み込まれた紙を見せびらかす。

 


「記号魔術!?記号魔術って相当の訓練を受けないと出来ないんですよ!?い、一体どんな人がこんなことを………。というかその人形が爆発する使用ってことは……」


「さよう、他の人形ももれなく爆発するじゃろうな」


「「ぶぶぅぅ!?!?」」




 近くの子供二人が盛大に吹き出す。




「は、はははははは速くみんなに知らせないと!!?」


「街がぁぁぁ!?街そのものがぁぁぁぁ!!」


「落ち着け主ら!!こういう時こそ冷静に、落ち着いて避難を促し、力を込めて元凶をなぶり殺しにするんじゃ!!」


「あなたが落ち着いてください!!二人とも、落ち着いて。君たちは誰でもいいから近くの大人の人にこのことを報告してください。街の騎士さんでもいいから犯人が記号魔術を発動する前に人形を回収するんです!決して一人では行ってはいけません、必ず大人の人と!!」


「わ、わかった!!」



 深く念押しする。

 エルザが子供二人に現状できる適切な指示をだす。


 この爆破犯が何故こんなことをするのかは不明だが、こんなことをする人間にろくな奴はいない。街を、無害の人間を巻き込む爆破犯は駆逐しなければならない。



「カツジさん、私達は街の人たちを避難させましょう!私達もできることを!」


「いや、すまぬがそれはお主に任せる。儂はこれをやった犯人を探す。時間は少ない、できれば迅速になぁ」


「カツジさん!?ちょ、ま



 待ってくれ、そう彼女が言おうとした瞬間、



 ドガァァァァァァァンッッ!!!



 後ろの両サイドの家から、噴煙が撒き散らかされた。



「………遅かったか」




######





「へっ、汚え花火だじぇ」



 街のどこかの屋上。黒髪のロングヘアー、露出多めの服装で黒マントを羽織っている。へその隣に赤い熊の入れ墨を入れた女性。


 屋上の端に体をかがめ火の粉が舞う街を見物していた。キャッキャキャと手を叩き悪魔のような笑みを浮かべる。



「やっぱ凄いと思うなー私は。記号魔術なんて中々できるものじゃないよ、これだけの為にどんだけ練習したと思ってるんだよぉ………流石私!!」


「ミャシャさん。自画自賛してるとこ悪いですが、揃いました」




額に熊の入れ墨を入れた眼鏡が後ろから15人あまりの団員を連れてやってくる。



「ランスさんとレクレスさんはどうします?あの二人も一応本作戦に参加する予定でしたが」


「んー連絡つかないんならいいよ、ほっとけ」



 首をゴキゴキとならし、ちゅーもーくとやる気の無さそうな声でパンパンと手を叩く。



「んじゃまぁ早速本作戦の説明をしちゃうよー。つってもみんな分かってると思うけど、今回はあの"裏切り者"が盗んだ宝を回収。宝の回収はこの私ミャシャ副頭と眼鏡君が行う、他のみんなは騒ぎに便乗して街中で暴れまわること。決して私達を悟らせないように。一番活躍した人はなんと、この私が直々に手料理を振る舞っちゃうよー!!」


「「「「…………………」」」」



 ミャシャ一人だけ盛り上がってる中、他の団員たちはだんまりしている。それどころかやる気を削がれたような顔をし、不満そうな顔もしている。



「あれ?みんなどしたの?」


「副頭、自覚ないんですか?」



 うんうん、と周り団員も無言で頷く。




「えぇ……!?手料理駄目なの………?なら何がいい?」


「「「「なんもなくていいです」」」


「お、おう…………」



 一体何が不満なのか、眉間にシワを寄せ怒鳴る団員たち。部下にここまで言われると少し心が傷つく。ならどんなご褒美ならいいんだ………?添い寝とか?



「ミャシャさーん!!大変です!!ターゲットの家が………」



 ブツブツ言いながらご褒美を考えていると、周りを見渡してた団員が急ぎ足で向かってくる。



「何何、あの裏切り者の家がなんだって……?何かあったのかい?」


「とりあえず見てください!!」



 どれどれ、と部下の望遠鏡を受け取りターゲットの家を覗く。そこには真っ赤に燃え、黒い煙をあげている民家があった。



「………ナンデモエテルノ」



#####




「遅かったか…。まずいな、犯人探しどころではない」


「どどっどうしましょう!?街中に煙が……!?」


「落ち着け。わかった、儂は住民の救出を急ぐ。お主はそのまま避難を促せ。犯人探しは後じゃ」


「わ、分かりました。カツジさん、無茶しないでください!!」



 適当に手を振って返事をして、飛び上がる。屋根を伝って街の空を飛び回りとりあえず燃えてる民家を目指す。


 後ろ両サイドの右側、屋根をぶち破って突入する。

家は爆破で一部損傷し、火がすでに家中に広がっていた。



「おい、誰かいないのか!?返事をするんじゃ!!」



 その時、ぐしゃぐしゃになった家具がガタゴトと揺れる。すかさず駆けつけ家具をどかし、生存者を助け出す、



「おいお主、大丈夫か?怪我は?」


「…………あ、す、すまねぇ。急にどこからか爆発が起こって、吹っ飛ばされた。いづ!?木の破片が・・」


「―――――少し痛むが、我慢しろ中年」


「ッッッ!?!?」



 中年の腹に刺さっていた木の破片を少し乱暴に抜き取る。真っ赤なドス黒い血が吹き出す。吹き出した血がカツジの頬をかかるが今はそんなことを気にしてる場合ではない。


 傷口に手をやり、



「ハッ!!」


「うぐ、あがぁぁ!!………はぁ、はぁ」


「傷口を焼いた。これで出血と細菌感染は免れた、今からお主を担いでここからでる」


「ま、待ってくれ。まだ下に女房と子供が………」


「なに?………分かった、すぐ戻る。動くんじゃないぞ」




 拳をを床に振り下ろし、床をぶち抜く。幸い、下の方はまだ炎がそこまで広がっていなかった。


 あの中年の女房と子供がどこかにいないかと辺りを見渡す。すると廊下の端っこから光がうっすらと下から漏れ出しているのが見えた。


 あそこに人がいる。


 光の元に駆け寄りドアを開く。



「おい、大丈夫か!!助けに来たぞ!!」



 部屋の中に子供が一人とそれを抱えて守る中年の女性が一人。



「あなたは…………?」


「儂は……、まぁこの危機を救いに来た神様とでも思っとけばええ。出入口にはそこまで火は広がっておらぬ、速くここを脱出するのじゃ、夫が上で待っている。儂が連れて行くからお主らは速くそこから出ろ!!」


「夫が……!?分かりました。ほら、速く行くよ!!」



 女性が子供を抱きかかえ部屋から去っていく。さて、速く儂もあの中年を連れて行かねば。



 来た道を戻り上へ飛び上がる。中年は意識を失い、倒れていたが息はあるようだ。



 よっこらせ、と中年の首根っこを掴み舞い上がろうとした瞬間、



 ぐじぇり、と鈍く不愉快極まりない音がカツジの腹からなる。目線を下にやると、長い刃物がカツジの腹を突き破っていた。



 このような刃物に見に覚えがある。今日の昼間、5000年ぶりに目覚めたところに居合わせたあの二人の男が手に巻きつけていたものと同じに見える。


 それに、この鼻をつまみたくなるほどの悪臭が何よりの確証を与える。



「今から脱出ー、ってしようと思ったようだけど少し遅かったね僕。別に殺さなくても良かったんだけど、ごめんね少し衝動的さ。騒がれるのも嫌だし、何より目に入ったやつの腹に一発入れるのが癖になっちゃってさ。ごめ、むぐっ!?!?」


「ベラベラうるさいのぉ虫けら。そうかそうか、お前たちかゲス共」


「むぐ、むがむ!!うごぉぉぉ―――――。――――――――」




 男の顔を掌で覆い、文字通りりんごを潰すように――――。


 ペッと唾を吐き捨て、低い濁った、怒りの籠もった声で、


「―――――――――全く、こんなにも不快な目覚めは初めてじゃ」


 愚痴をこぼすように言った。










「待って待ってなんで燃えてんの!?てめぇぇアブって子には爆薬抜きの人形渡せっていったじゃあねぇかよ!!どういうことだこりゃあ!!」


「ふ、副頭落ち着いて!!息が、く、苦し」


「えぇい、とりあえず今は消火せなあかん!!私と眼鏡君は消火に向かう!他のみんなは予定通りに暴れてこい!!」



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