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ショートショート7月~

1000円の命、1000年の恩

作者: たかさば

昔々のことじゃったー。

とある駄菓子屋に、猫が一匹、おったーそーなー。


その猫はーいたく美人でー、ある時、子猫をー生んだーそーじゃー。

六匹、生まれたー、そーじゃー。


「わあー!何これ、子猫?」

「子猫もらった人に1000円分のお菓子くれるんだって!!」


駄菓子屋の爺さんと婆さんはー、子猫の処分に困ってーおったー。

そこでー、毎日50円持って駄菓子を買いに来るーワルガキどもをー焚きつけたのじゃー。


「俺もらう!!」

「俺も!!」


六匹いた子猫はーあっという間にいなくなったのじゃー。


一時間後ー、ワルガキどもが泣きながら駄菓子屋にやってきたのじゃー。


「ごめんなさい、お金返すので、猫も返します。」


横にはー鬼のような顔をしたお母さんがいたのじゃー。

三匹ー返ってきたのじゃー。


次の日ーワルガキどもがまたやって来てー猫をもらっていったのじゃー。


三匹の猫はー神社の裏で育てられるはずだったのじゃー。

ワルガキども三人組はー神社の裏で親に内緒で猫を育てようとしたのじゃー。


けれど、猫は、まだ赤ちゃんだったのじゃー。

ミルクしか飲めない猫に、ワルガキどもは無理やりパンを食わせてみたものの、食わんかったのじゃー。


それを見ておった女子がいたのじゃー。

女子は本をよく読んでおったから、ワルガキどもの間違いに気が付いたのじゃー。


女子はー猫にミルクをやるためにー嫌いな牛乳を口に含んで持って来てーハンカチに含ませて飲ませてーおったわ。

ワルガキどもが遊んだ猫の世話をー一生懸命やっておったわー。


女子の家はー生き物嫌いなババアがおってー家には連れて行けなんだ。

猫はーどんどんー弱ってーいったのじゃ。


「うわ!!キモ!!しんでるじゃん!!」


三日後にーワルガキどもが神社の裏に行くとー赤ちゃん猫はー死んでおったのじゃ。

女子はー神社の軒下にー穴を掘ってー猫をうめたのじゃ。


ワルガキどもはー1000円でー赤ちゃん猫の命を消したのじゃー。


一匹ー1000円でー、始末をしたのじゃ。


駄菓子屋はー一匹1000円でー子猫を処分できたのじゃー。


さあて、誰が悪いと、おもーう?




「悪いと思う人は、全員処分したくせに…。」


―処分?いやいや、みんな寿命を迎えただけじゃ。


「あの後結構すぐに駄菓子屋の爺さん死んだし、婆さんもぼちぼち早く死んだよねえ。」


―75まで生きたんじゃ、まあまあ長生きじゃろ。


「ワルガキどもは20まで生きてないよ?事故死が二人に、水難行方不明が一人。」


―無免許で自爆したんじゃから仕方ないわいな。

―入ってはならん川に入って流されてしもうてはのー。


「まあ、確かにやんちゃだったけどさあ…。」


―わしを迎えに来た子猫どもにー事の顛末を聞いたときはーおどろいたのじゃー。

―ねえねえかーちゃん、お礼したい子がいるのーと、三匹が訴えてきてのう。


「そんなのいいっていってんのにさあ…。」


―猫の恩返しをー無碍にしてはならん!!

―わしはー子猫の願いを叶えるべくしてーここにおるのじゃ!!


「そんな事言って!!ただあたしの秋刀魚食べたいだけなんじゃないの!!!」


―もぐもぐ、いや、そんなことはないのじゃー!

―このさんまはうまいのじゃー!!


―1000円で処分された猫の気持ちを思ってなー、1000年はこの世にいようと思うのじゃー!

―なので、お前の子孫を、守ってやるのじゃー!


「もういいからさあ、子猫たちのところに行ってあげなよ。」


―わしの子等はもう成仏して別のもんになったでなー、いまさら行ってもあえんのじゃー。

―という事でー、わしは明日はさばの塩焼きが食いたいのじゃー!


「やっぱり自分の私利私欲目的じゃん!!」


―そんなーことはーあんまりーないのじゃーにゃははー!!


「あっ!!逃げたなー!!もー!!!」




私は、かつて猫だった者。

今は、猫ではなく、人でも、ない。


人の世にふわりと現れる、狭間の住人。


怒りで、猫であることを捨て、理から外れ。

闇の感情に飲まれるところを、女子に救われ。


子供のことは、仕方のないことであったけれど。

自分の身を変えるほどの怒りの感情に飲まれてしまった私を救った女子。


この女子には、恩がある。


恩を返すたび、それ以上に愛情をもらい。

恩を返すたび、それ以上に経験をもらい。

恩を返すたび、それ以上に知恵をもらい。


恩を返すたび、自分が磨かれてゆく。


いつまで経っても、返しきれない。

返しきる展望がまるで見えない。


感謝の気持ちを伝えきれないもどかしさと。

感謝の気持ちを伝えることのできる幸せと。


噛み締めながら、今日も私は。



もぐ、もぐ、もぐ。


―秋刀魚の後で食らう悪しきモノはまずいのー。


―さあて、と。



私は。


女子の影に紛れて、悪いモノを処分する。

女子の影から、この世を窺う。


女子に悪しきモノを寄せ付けぬため、私の目は光る。


女子に悪しきモノを放つ失礼な奴らには、容赦しない。

女子に悪しきモノを放った無礼者に、悪しきモノを力をこめて返す毎日。




返す、毎日なので、ね。



見つけたよ?




お前、私の女子に、何を送りつけたんだ?

お前、しっかり返させてもらうよ?



私は、お前には、容赦はしない。




さあ。



受け取れ。




お前の、送ったものだ。





受け取って。





長生き、するが、いい。


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― 新着の感想 ―
[良い点] なかなか深いお話。悪い人はいませんよってね? [気になる点] 猫から見たらニンゲンはただの一生物ですからね。ニンゲンひいきをしなければ、ただの因果応報という。 [一言] あ、感想送りつけま…
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