表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/41

オーガの神殿(Cランク勇者視点)

時間的には前話で暦がみんなのことを考えた瞬間から入っています。

暦がいなくなった直後の話も、本編の方で後々流して行く予定です。


それでは今回はCランク勇者視点どうぞ〜

「はあああ!!」

掛け声と共に放たれた銀槍が対象の胸を抉りとる。

そして生まれた一瞬の隙に、背後から手斧が迫る。

が、朱里は穂先を向けることなく石突で敵の顎を的確に狙い撃つ。それを受けた赤肌の鬼──オーガと一般に言われる体高3m近い魔物が仰け反る。


「あとは任せてくれ!」

優が周囲に密集して生えている木を蹴りつけ、背後から剣を振りかぶる。

オーガの頭上70cmあたりまで優は跳躍し、剣の遠心力で回るようにオーガの頭頂部へ剣を打ち下ろす。

直後、鈍い音が響く。

仰け反っていたことがオーガに幸いし、視界に優の剣閃を捉えることができたのだ。オーガの肉体は筋肉の塊。見えさえすればある程度の攻撃には反応でき、生半可な力では逆に打ち勝つことすらできる。

その点、cランク勇者であり、オーガと正面から打ち合い、互角まで持ち込んだ優の実力は相当ではある。


優とオーガは、その場でピタリと停止した。

優はそのまま押し込もうと力を込め、オーガはただただ睨むように優を見る。

ある意味で二人だけの領域がそこにはある。

だが、戦場で生まれたその空気は、大きな代償へと変貌する。


上を向くオーガの足元から朱里が超速の刺突を喉へと押し込む。

分厚い筋肉の壁を易々と貫通させた朱里は、即座に身を翻し、周囲の警戒を始める。


クレリック王国南部に位置する迷宮、オーガの神殿。

一週間の強化実戦訓練の為に朱里達はそこにいた。当然、勇者全員がランク毎に階層を分けられて戦闘を繰り返している。

「とりあえず、周囲に敵はいないみたい」

警戒レベルを少し下げ、朱里は武器を下ろした。


「それにしても、ここから先、少し注意した方がいいかもしれないね」

「手斧を持ってたオーガがいたからね」

優の考えは朱里も持っていた。朱里達のいる4層まで、オーガは素手でしか攻撃を仕掛けてこなかった。だが、敵が武器を持ち始めた。新しい牙を持ち始めた。

死亡率が上がったのを意識せざるを得なかった。

「一旦桜さんと合流しよう。さっきも言った通り注意して進む為に」

そう優が言った直後、女の甲高い叫び声が二人の鼓膜を揺らした。

何か言葉を発する前に、二人は最高速で駆け始める。


「今の声!」

「桜さんだ!」

それだけを交わして、二人は魔法を構築し始める。

組み上げられたイメージは、火薬。

「「『空中爆破』」」

二人の背後に地球で言う爆竹が出現。同時に爆発する。

生まれた空気の圧力に二人の体が吹き飛ばされ、数百メートルという距離を一瞬で0にする。


「桜!」

華麗に受身を取り、朱里は桜の元へ飛び込んだ。

「さっきの叫び声は!?」

遅れて優も飛んでくる。


「朱里さん、優さん。すいません、オーガに距離を詰められました」

桜の右腕からは血が流れ出ていた。

咄嗟に体を守ったのだろう。

我武者羅に腕を突き出したらたまたま当たりました、といった傷の付き方だった。


「グルルルル」

Cランク勇者3人の前に、青肌のオーガが立ちはだかった。


先手はオーガだった。

何も持たない両手を無造作に振り回し、叩きつける。破壊の嵐を撒き散らしていく。

「朱里さん!桜さん!僕が前を張ります。朱里さんは中衛を!桜さんは少し休んでいてください」

言うや否や優は風のように飛び出していく。

「『風竜巻』!」

駆ける優の剣が風の渦を纏う。

「はあああああ!」

気合いと共に優がオーガの足元を斬りつける。

付けた切り傷に纏う風が刃の様に流れ込み、

「ゴアアアア!!!」

オーガの右足に深々と裂傷が刻まれる。


オーガは一瞬で怒りを爆発させ、優の姿を探そうと苦痛で上を向いていた顔を正面へと向き直す。

「『螺旋』!」

その眼窩を高速回転する朱里の剛槍が刺し貫く。

オーガの顔を貫通した槍はそこで停止するが、槍の高速回転によって生まれた風の刺突は数メートル宙を進んで掻き消える。


「どいて!」

声が届くと同時にそれは朱里の頬を掠めていく。

オーガに刺さったそれは、急激にその形を変え、オーガを灼熱の炎で包み込んだ。


「桜、足でまといかもっていう焦りはわかるけど今のは流石に怖いわ」

オーガへトドメを刺した桜に冗談ではない声音で朱里は注意した。

「ご、ごめんなさい......」


「二人とも、そういうのは後にして、今は先に、奥に?下に?進もう」

「そうだね」

「は、はい」

三人は、二日間の戦闘の疲れを一切感じさせない風貌で森の奥へと歩いて行く。

あ、次回は幸弥達Sランク勇者の視点を投稿しようと思っています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ