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始まりの『交わり』

三人称視点の作品は初めてなので、

ところどころ文章がおかしいかもしれませんが、許してください。


それと、プロローグと一話目が繋がってる状態です。

急に展開が変わる箇所があります。大きく空白を設けたのわかると思いますが、読みにくくなってしまったかもしれません。

許してください。

「ハイレルト様。紅茶をお持ちしました」


翡翠色の輝く髪を肩の高さで切り揃えた侍女が盆に紅茶を入れたポットとカップを乗せてハイレルトと呼ばれた男の横に立つ。彼女の視線もハイレルトと呼ばれた男の碧眼も二人の正面に描かれた高精度のカラー映像に結び付けられている。


「ありがとう。メルヘイス。でも、今は少し待ってくれ。今から、始まる」


そう言ったハイレルトの視線は映像を凝視して止まない。映像は、少年が白衣の男の部屋へ模造紙を抱きながら入った所だった。ハイレルトが手元にある矢印を上向きに操作し、音量を上げる。無意識の行動だ。




『お父さん、夏休みの自由研究にお父さんがこの前捕まえてきた蛇のこと書いてもいい?』


少年の声に応えて男の声が少年の質問を受け入れる。


『いいけど、お父さんもまだよくわかってないからな。よし、暦、一緒に研究しよう』


椅子から立ちあがった『お父さん』は机に置いてあるガラスケースから黄色い体色に赤い斑点のついたやけに大人しい蛇を出した。全長50センチメートル程度のその蛇は、地球上で新たに発見された新種とされていた。しかし、この蛇に関してはそれ以上のことを誰も知らなかった。そこで『お父さん』が調べると手を上げたのだ。




『大丈夫?』


『大丈夫大丈夫、こいつは今まで人を噛んだことがないんだ。お父さんが毎日指をケースの中に入れているのにな。』


ガハハと『お父さん』は豪快に笑う。それにつられたかのように隣室から女が出てくる。


『あらあら、お父さんと一緒に勉強するの?頑張ってね、暦』


『うん!』




少年がそう言って振り返った時、『お父さん』の頭はなかった。ゆっくりと『お父さん』だったものが崩れ落ちていく様を少年は眺めていることしかできなかった。


『お父さん』が肉塊へと変わった直後、少年の背後でまた重量のあるものが床に叩き落とされる。少年が振り返った先に見えたのはこれまた頭のない女の死体。


何が起こっているのかわからないまま、少年は叫びを上げ、廊下へ走り出す。本能の赴くままに駆け回り、逃げ場のないトイレに少年は駆け込んだ。しかし、部屋にいた時と変わらず近ずいてくる死の気配に少年は奇声を発し、トイレットペーパーを両手に持ち、滅茶苦茶に投げ飛ばす。




シュルっという何かが巻き付くような音と首に触れる冷たい感覚に少年の閉じられていた眼が強引の開かれる。そして、目の前で舌を伸ばす黄色い蛇に狂乱する。


眼を閉じ、我武者羅に腕を振るい、暴れ回る。


しかし、蛇は攻撃の一切合切を躱し、少年の喉へ優・し・く・毒牙を差し込んだ。












「成功だ......。メルヘイス、成功したぞ!」


ハイレルトが立ち上がり、ガッツポーズを取る。成功を喜ぶ瞳の奥に、深い安堵があることを見据えつつ、メルヘイスはそうですね、と適当に相槌を打つ。


「あの少年は確か6歳だったな。あと10年程度しか期間はないのか。よし、メルヘイス、紅茶の片付けなど我が後でやっておこう!お前には迎合の支度をしておいてもらう」


そう言ってハイレルトは紅茶を飲み干し、お盆にそれを乗せ、その場から立ち去った。




「いつまで経っても、強引な所は変わりませんね。」


優しく口角を上げて、メルヘイスは椅子に座り、操作機を手に取る。


「さて、どういった歓迎をしましょうか」


メルヘイスの目の前で海に囲まれた六大陸の地図が浮かびあがった。





「おいおい佐々木〜お前また消しゴム落としたぞ〜」

どこか嘲りを孕んだ声が夕陽の差す教室に響く。


「佐々木、ほら拾ってやったんだから飯くらい奢れよ」

明らかな虐めとわかる状況なのに、誰も助けない。


「う、うん......」

佐々木 良 それが今虐めを受けている男子生徒の名前だ。


「お前らー席つけー。帰りのHR始めるぞー」

先生が来た。だが、だからといって何か変わるわけじゃない。

先生が来ても虐めをしていた生徒は立ち続け、良を虐めている。暴力行為にすら今はなっている。

でも、誰も言わない。先生も、やめさせない。


「おら、なんとか言ったらどうだ?」

良の顔が夕陽に照らされ、赤みが増す。

みんなの顔に悲痛な表情と、どこか興奮したような表情が浮かぶ。

「────」

「おい、暦。お前今なんて言った?」

暦の発した小さすぎる声を、暴力を奮っていた男子の一人が聞き取った。

「何も言って無い」

暦は浅く視線を逸らし、窓を見る。

「おい、こっちを──」

こっちを見ろ。その言葉は、あるものによってかき消された。


「なんだ?それ」

全員の視線が暦の足元──白く光を放つファンタジー世界の魔法陣のようなものに向いている。


暦の足元が強く光る。よく見れば、他のみんなの足元も強く光っている。


「なんだこれ!?」

全員、動揺が隠せない。今までこんなことは無かったのだから。そんな中で一人だけ、暦だけこれから起こることに胸を熱くしていた。

(異世界転移......!!)


「皆さん!?」

目の前を覆っていた光の消失と共に消えた40人の生徒。

その出来事に担任教師は呆然と突っ立っていることしかできなかった。





「ん......?」

「教室じゃ、ない?」


暦達は大理石で造られた教会の中に突然現れた。

周囲には白いローブを着た人が数名。

その中の一人の男が、暦達に向かって話しかけた。


「勇者召喚に応じていただきありがとうございます」

その男は恭しく頭を垂れた。

暦たちが来た世界で最敬礼に値する礼だ。


「は?勇者召喚?」

虐めをしていた張本人──須藤 幸弥(すどう こうや)が少し威圧的に話しかける。だが、周囲の突然の変化に対応できたのは幸弥一人。

「え?どゆこと?」

「お?異世界転移ってやつ!?」

「何、ここ!」

周りは軽い混乱状態にある。


「はい。何故勇者召喚が行われ、何故貴方様方が呼ばれたのか、それは今からクレリック王がご説明します」

幸弥の言い方に微塵も態度を変えない男に、幸弥は少し不機嫌になる。

一瞬の空気の静止が、

「勇者殿であるな?」

突然背後の扉から現れた低く、勇ましい声によって消え失せる。

背後の扉から20代後半位の威圧感のある男が入ってきた。


「......お前は?」

不機嫌なまま、幸弥がはなしかける。

「俺はこの国...クレリック王国の王アル・クレリックだ」

威圧感のある男......アル・クレリック王はそのまま生徒たちの間を歩いていき、眼前にあった豪華な椅子に座る。


「お前が王?」

目の前の大男が発する息を飲む様な威圧感に一切気圧されず、幸弥は猟奇的な目でアル・クレリックと名乗った男を見る。

周囲で起こっていた軽い騒ぎも、今はなくなっている。

「そうだ。だがそんなことはどうだっていい。早速だが、勇者殿。お主らにはステータスを確認してもらう」

そう言ってアルが水晶出す。


「これに触れてくれ。鑑定の水晶。なに、ただ能力を数値で表すだけだ。数値毎にS,A,B,C,D,Eのランクで区切る」


「すいません、ここはどこなのですか?僕達は何故ここにいるのですか?何故勇者などと僕達は呼ばれているのですか?」

一人の生徒が大半の生徒が持っている疑問を口に出す。


が、アルはそれを無視し、強引に話を進める。

「さあ、誰からでもいいぞ」


「こうでいいか?」

幸弥が先陣をきる。

水晶が光り、その上に青い壁の様なものが浮かび上がる。


「総能力値平均約8000かAランクだな。だが、技能にいいものが揃っているか......Sだ」

アルの隣にいた書記官が記録する。


「じゃあ次は俺な」

虐めっ子の一人、宮川 守(みやかわ まもる)が出ていく。


「総能力値平均約8000。技能は普通。Aだな」

「Aかよ......」

守は不満そうだがしぶしぶと下がっていく。


そのあともそれは続いていく。

「総能力値平均約2000、技能も無しE」

「総能力値平均約6000。技能そこそこ有能だなB」


そして、最後、暦の番になる。

暦の表情は今までの能面の様な表情と少し違った。

未来に夢を馳せるそんな目だった。

(異世界と言えばステータス。ステータスと言えばチート。

俺の、夢にまで見た展開が、起きる)

暦の手が水晶に触れ、青いプレートが浮かぶ。

「総能力値平均約5000。技能は、ほう珍しい技能だなCで妥協しよう」


アルが言った瞬間、暦の目が死んだ。

(は?)


「よし、では今言ったランクを覚えているな?各ランク毎に固まってくれ」

アルがそう指示を出す。

Sランク4人。Aランク8人。Bランク10人。Cランク8人。Dランク9人。Eランク1人。それぞれの勇者が固まり、6組のグループが出来上がる。


「SとAで12人か。今までで最高じゃないか?」

アルが書記官に訊ねるが書記官はそれを否定する。

「いえ、過去最高はSランク9人、Aランク6人でした。まあ、その分Eランクも11人と多かったのですが」


「そうか。まあいい。勇者殿、今日からそのグループ同士で行動、生活してもらう。」

アルのその言葉に一人だけ反発する者がいた。

「待ってください!僕だけ一人なのですが!」

一人だけEという最低ランクになった良だ。


「ふむ......一人は不満か?」

困ったように眉間にシワを寄せ、アルは良を見つめる。

「ふ、不満です」

その視線を良は正面から受け止める。

アルがニヤリと嗤い、指を鳴らす。

「そうか。確かに一人の生活と言うのは辛い。俺にも一人で死にものぐるいに生きた経験があるからわかる。今から勇者殿を解散させるが、お主は少し残っていてくれ」

「わかりました」

自分の提案が受け入れられたことに安堵したのか良が大きく息を付く。

「おいおい、佐々木〜、俺らといられないのがそんなに嫌かよ〜?」

S、Aランク組からいつもの見下した声が聞こえる。


「では、勇者殿を部屋に案内してくれ。」

アルが指を鳴らす。暦達の後ろの扉が開き、メイドが5人入ってくる。そのメイド達は各グループの前に立ち、「ご案内させていただきます」と一礼した後にSランク勇者から部屋を連れ出していく。


勇者が全員出た後、白いフクロウが天井から落ち、アルの肩に飛び乗った。

「佐々木と言ったか?では、お前と同じEランクの勇者が居るところへ案内しよう」

「どういうことですか?今の口振りは、僕以外にもEランクの勇者がいるというように取れるのですが......」


「これは、俺の説明不足だったな。何も勇者(・・)だけがランクで区別されている訳では無いのだ。他にもEランクと分類される者はおる。」

「なるほど」


白い石でできた回廊をいくつも潜り、目の前に出てきた厳重に鎖で何重にも縛られた扉が開けられる。酷い腐臭が辺り一体に振り撒かれ、思わず良は鼻を摘む。

そこで、アルの足は止まった。

「こ、ここ?」

「そうだ。ここだ。Eランク勇者は他の勇者と違い、生き延びる力や、戦闘能力といったものが極めて低い。だから、ここで生きる力を身につけてもらう。」

「で、でも、ここどう見ても人が生きていけるような環境じゃ......」

扉の奥の深淵を覗き、良は溢れる恐怖を必死に堪えていた。

「当然だろう。人が生きていけるような環境で生きるための訓練をしても意味が無い。やるなら徹底的にやらなければな。さあ、行け。大丈夫だ。ここにはEランク

奴らしかおらん」

良の呼吸が荒く短くなっていく。


「早く行け」

急かすようにアルは良の背中を押す。


「い、いや、だ......嫌だ!」

良は身を翻し、来た道を戻ろうと加速する。

「みんな!助け──」

が、その体は見えない何かによって強く拘束される。

ミシミシと骨が悲鳴をあげる。


「一人が嫌だと言ったのはお前だろ。」

「んー!んん、んーんー!」

「Eランクは他の勇者の邪魔にしかならない。それを理解してくれよ」

見えない何かは、良を掴んだまま、扉の中へと入っていく。

数秒後、眩い光が扉の奥から発せられた。

「俺は平等だ。価値ない物を葬る時はな」


アルの足音が、白い回廊に響き渡っていく。

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