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七・心の叫び

 2004年4月18日。


私は親友のブルーと中山競馬場で劇的な再会を果たした。

2004年の2月から転勤のため茨城県のつくば市に私は転居していた。同じ寮で親友のブルーとは2ヶ月ぶりの再会であった。


 私はこの日が初の中山競馬場であった。つくばから中山競馬場までと、ブルーの住んでいる川崎市の寮からはちょうど時間的には中間の位置にあった。久々の再会は競馬好きの二人らしい競馬場であった。


 私は初の中山競馬場に興奮し、ブルーとの待ち合わせの時間より1時間も早く到着していた。


中山競馬場の印象は直線が短く、そして、スタンドと馬場までの距離間が近く、東京競馬場の迫力とはまた違う臨場感を感じた。


待ち合わせの時間が来るとブルーからメールが入った。


「どこにいる?」。


「ゴールのすぐ前」


との返信を打つと彼は馬場のちょうど真ん中の解放地帯にいるとのこと。私はゴールの先を見るが、どこにいるか全くわからない。かなりの数の来場者が二人の再会を困難にしていた。

 

(これだけ人がいたらわかんないな。)


そう思った瞬間ブルーらしい人間が遠目ごしに見えた気がした。数多くいる来場者の中、私は直感的にその人物がブルーではないかと感じたのだ。


「ひょっとしてあれ??」


私はすぐに電話をかけた。


「お〜い、わかったよ。ちょっと手を振ってみなよ。」


電話でそう言った私に、


「わかるわけないよ。これだけ人がいたら…。」


「とにかく手を振って。」


その瞬間、目の前、コースを挟んで丁度目の前に手を振っている人間がいるではないか?


「やっぱ、そうじゃん。」


(お〜〜い。ここだよ。ここだ。)


2人は心の中で叫んだ。「心の叫び」であった。こちらも手を振ると向こうも気づいたようだ。まさかこの恐ろしいぐらいの人ごみの中、一瞬でブルーを見つけることができるなんて…。

 

「まさか、こんなに早く見つかるとはね。」


「本当びっくりだよ。」


2ヶ月前、握手で分かれた二人はこうして中山競馬場のゴールを挟んで劇的な再会を果たしたのだった。まさか、その頃の2人は、丁度一年半後の有馬記念で自分の応援していた馬がこの中山競馬場のこのゴールを英雄より先に駆け抜けるとは考えていなかった。


英雄を負かしたゴール。誰もが考えなかった運命の結末。英雄が負けた日のゴール前。そう、そして、その私たちのヒーローはこの皐月賞に出走していた。


その名は


『ハーツクライ』。


文字どおり『心の叫び』であった。


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