プロローグ
プロスポーツはファンあってのものだ。そのファンの声援がプレイヤーを後押しし、劇的なプレーには大きな感動と名勝負を生む。その興奮は言葉では言い表せない。
私は競馬ファンである。競馬をこよなく愛す普通のサラリーマンだ。競馬はどちらかと言うとギャンブル色の強いスポーツだ。もちろん私自身も勝ち馬投票権に記入し、普通に馬券を購入する。そして馬券として勝つことを喜ぶ。
しかし、お金を増やすことだけが競馬ファンの目的ではない。
そう、その劇的な戦いを目の当たりにし、そして、勝利の喜びをわかちあう事こそ競馬ファンたる真の喜びなのだ。
競馬を愛すようになるには、好きな馬の存在が大事だ。その馬をこよなく愛すようになることで、競馬への熱い思いは強く変わってくる。自分の愛した馬がゴールを先頭で駆け抜けたとき。その興奮は絶頂に達する。血の気はひき、鳥肌がたち。そして、その全身の血がいっせいに体内を全速力でかけまわる。
2005年の競馬界に一頭の英雄が現れた。『ディープインパクト』。
この馬はこの年、三歳馬クラッシックの三部門、皐月賞、日本ダービー、菊花賞を無敗で制した。誰もがこの馬を愛した。そして、この馬の快進撃に釘付けになった。人はいつしか、この馬を「英雄」と呼ぶようになった。
かつては、「皇帝」が存在した。『シンボリルフドルフ』。
その子、『トウカイテイオー』は、その名のとおり「帝王」と呼ばれた。2頭の名馬はその輝かしい戦績とともに、今でもその勇姿は語り継がれている。
歴史の生き証人になるため。2005年、競馬を愛するほとんどの人がこの馬を注目した。そしてこの馬のレースに酔わされた。
ジョッキーは天才だった。天才『武豊』。
2009年現在、誰もが認める日本ナンバー1ジョッキーである。彼は英雄の走りをこう表現した。
「飛んでいる。チータみたいだ。」
この馬の走りは馬の走りではなかった。確かに飛んでいるような豪快な走り。一頭だけ違う空間を走っている。そんな馬だった。
私自身も2005年、もちろんこの馬を見てそして応援した。異次元の走りに酔いしれた。
菊花賞で三冠を達成した日。私は多くの競馬ファンと同様、歴史の生き証人になった。この馬をずっと応援した。そしてこの馬が勝つことだけを願った。ずっと、ずっと応援し続けた。菊花賞の日までは。
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