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始まりは心臓の高鳴りと共に  作者: 後藤しいら
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第3話 ー村ー

勇馬は目の前で起きたことに、ただただ絶句した。

一瞬にして黒焦げになった大鬼は、体中から煙を出し、ピクリとも動かなくなっていた。


変わり果てていたのは大鬼だけではなかった。

大鬼が立っていた地面は深くえぐれ、そこから地割れを起こしていたのだ。


勇馬は、眼前の状況が人為的なものであるとは到底信じられず、天変地異が起きたのかと疑った。

しかし状況からして今の落雷は、あの莉々音(りりね)に瓜二つの女性の力だと考えるしかなかった。


勇馬が放心していると、女性はゆっくりと地上に降り立った。

見ると、女性は先程の戦いで腕や翼から血を流している。


すると先程の大男が、よろめきながら女性の元に寄っていった。


(ひぃ)様、お怪我を……。我らが付いていながら申し訳ございません……ゴホッゴホッ。」


大男は、大鬼の爆風を食らった影響かとても辛そうにしていた。


「よい。それよりも早くお前たちの体を癒さねば。」


そう言うと女性は大男から離れ、勇馬の元へ寄った。

背中の翼は、いつの間にか消えていた。


女性は先程から尻餅をついている勇馬を見下ろし、つぶやいた。


「お前……あの時……」


「え……?」


「いや、何でもない……」


「……。」


「お前も来い。傷の手当てをする。」


勇馬は女性が何を言いかけたのか不思議に思ったが、ひとまずその言葉に甘えることにした。

精神的な疲れも相まって、もう体は限界だった。


「ありがとう……莉々音。」


勇馬の言葉に女性の体がピクッと反応した。

数秒黙り込んだ後、女性は静かに言った。


「私は……『リーネ』だ。」


女性の瞳は、真っ直ぐ勇馬を見つめていた。

勇馬は女性に見つめられたのが少し気恥ずかしくなり、目を背けながらもう一度お礼を言い直した。


「ありがとう……リーネ。」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




彼らの村は大鬼のいた場所から30分ほど離れた森の中にあった。

この森は初めの森とは違って妖精はいなかったが、村の明かりによって温かく照らされ、また違った美しさを放っていた。


村の明かりが見え、ようやく手当てをしてもらえると勇馬は安堵した。

この30分の道のりで勇馬は何度も地面に倒れ込みそうになったが、強靭な精神力で必死に耐え続けた。

腕から血を流しながらも気丈に歩くリーネを見て、自分だけ倒れているわけにいかないと感じたためだった。


一行が村に近づくと、村の入り口に村人達が集まり始めた。


(ひめ)様……!!大丈夫ですか……!?」


20人程いるだうか、皆心配そうにリーネを見つめている。

しかしその表情とは裏腹に、村人達とリーネの間には微妙な距離感が保たれていた。


「あ!三盾士(さんじゅんし)様が……!」


村人の1人がそう言うと、村人達は皆()()()()()()()()()()後ろの3人に近寄った。

村人達は3人に肩を貸したり手を取ったりしていたが、リーネに手を貸す者は誰1人としていなかった。


「3人とも妖気に当てられた。すぐに『セリカ』の所に行きたい。」


リーネがそう言うと村人はすぐに答えた。


「承知しました。すぐにお連れいたします。それで、えっと……そちらは……?」


村人が勇馬を指さすと、勇馬は一斉に村人達の視線を浴びた。

村人達は勇馬を見て、何やらコソコソと話をしている。


「その……角がありませんが……」


村人は訝しげに勇馬を見ていた。

その瞳は少し勇馬を恐れているようにも見えた。


「こいつも連れていく。急げ。」


リーネの言葉を聞き、勇馬は肩を撫でおろした。


「承知しました。ではこちらへ。」


村人は素直にリーネの指示に従い、()()()()()()()()歩き始めた。

勇馬は少し戸惑いながらも、村人に連れられるまま再び歩き始める。


少し歩くと、川のほとりにある小さな家に辿り着いた。


「セリカ様!!セリカ様!!」


村人がその家の扉を叩くと、中からすらっとした長身の女性が現われた。

その女性は一同を見回し、最後にリーネに視線を向けた。


「あら、()()()……。待ってたわよ……」


女性の言葉にリーネはこくりと頷いた。

勇馬は、皆から『様』付けで呼ばれているリーネに対してこの女性は呼び捨てだったことに少し違和感を覚えた。


すると女性は扉を大きく開いて一同を招き入れた。


「どうぞ……」


リーネを先頭に他の者も次々と家に入っていく。

勇馬もそれに続いて家の中に足を踏み入れた。


女性の家の中に入ると、床や天井、壁一面にびっしりと文字が書かれていた。

しかしよく見ると、家の奥に1か所だけ文字が書かれていない場所があることに勇馬は気づいた。

そこには半径30cm程の円ができていた。


「ちょっと急いで書いて準備したものだから……うまくいくか自信がないわ……」


セリカと呼ばれる女性は少し微笑み、流し目で勇馬に視線を移した。


「ちょうどいいわ……彼で試してみましょう……。彼をここへ……」


すると勇馬は突然村人達につかまれ、文字の書かれていない床に座らされた。


「ちょ……ちょっと!?」


勇馬は慌てて立ち上がろうとしたが、先程の女性が勇馬の両肩に手を当て、それを阻んだ。


「すぐ終わるから……ね……?」


女性はゆっくりとしゃがみ、勇馬の頬を両手で撫でた。

女性の細い指が、勇馬の頬からゆっくりと首筋に降りていく。

勇馬は体がゾクッとするのを感じた。


女性の指が勇馬の胸元に降りてきた時、勇馬は女性の胸元が大きく開いていることに気付いた。

鼓動が早くなり、体が熱くなるのを感じる。

顔を真っ赤にしている勇馬を見て、女性はくすっと笑った。


その瞬間、女性の両掌から放たれた光に勇馬は目を眩ませた。

すると、まるで宇宙に投げ出されたかのような、体がふわっと浮かび上がるような感覚がして、勇馬は体中の痛みが消えていくのを感じた。


女性が勇馬に触れていた手を放す。


「成功…………ね?」


女性はふふっと微笑んだ。

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