恋の予感?
アルトとトムが喧嘩している。放課後だけど、誰も帰らないで、ハラハラしながら見ている。
私も勝手にライバル認定されているからアルトは苦手だけど、教室の設備を壊しかねない。
「ね、先生が来るよ?やめた方がいいよ」
「マナ!お前もこいつに言ってやれ!こいつは強い女子なら誰でもいいんだぞ!」
「何の事?」
「マナは乱暴なアルトよりも俺みたいな紳士がいいだろう?それに理由はアルトだって変わらない。パートナーなら、強くて高ランク依頼もこなせた方が、いい暮らしが出来る」
「変わる!それじゃ誰でもいいって事だろ?俺はマナがいいんだ!」
「冒険者のパーティーの事?私は卒業したら、家族とパーティー組むけど。というか今でも冒険者活動は家族としてるけど」
「でも、マナはCランクなんだろう?他の家族の人は知らないけど、Aランクのお兄さんとは組めないんじゃないかな?」
「そもそもそんな話ちゃうやろが。というかトム、あんたは男として失格や。誰でもいいなんて」
「けどマナが一番強い女子だし」
「強ければいいなら、他を当たるのだな。マナ、学校を遅らせてまで倒した熊は強かったか?」
「うーん、キラーグリズリーの5倍位かな?魔法は効かないし、力も強いし、素早いし」
キラーグリズリーって、Bランクパーティー以上推奨だろう?それより強かったのか。
「少し調べた。Aランク冒険者が敗れた相手らしいじゃないか」
「そうなの?まあ、唯一種っぽかったし、私も家族がいたから勝てたようなもんだし」
「それでマナ、10歳を過ぎたら何ランクになるんだ?」
「ええっ?!ジーナ、どこまで知っているの?」
「あたしの父は、スーレリアの騎士だからな。悪いとは思ったが、マナの強さは規格外に感じたから」
「ごめんね、マナちゃん。でも、ちゃんとマナちゃんの事を分かって対等じゃないと、これからも友達でいられないと思ったから」
「結局敵わへんけどな。だからって頼りきりは良くないやろ。…トム、あんた恥ずかしくないんか?女子の強さに頼って生活とか」
「それで…マナの本当のランクはいくつなんだ?」
アルトが聞く。
「Aランク。10歳までは規定でCランクだけど、強さはAランクって認められてる。だからこの前の魔熊の依頼も任された」
「何だよそれ…俺、絶対敵わないじゃないか」
「あの…だからライバル認定はやめてね?」
「は?ライバルってなんだよ。そりゃ、初めの頃はそう思ってたけど、今は…並べないと格好悪いから」
「アルト、マナにはそれじゃ分からんて。はっきり言いや」
「マナと、冒険者として世界中を旅してみたかった」
「ああ。ランク離れていると、同一パーティー組めないからね」
「マナちゃん、アルト君はパートナー。つまり恋人同士で冒険したいって事だよ」
…は?
「ええええっ!何がどうしてそうなってるの?まさかの恋愛イベント?!」
「イベントって…だからトムはあかん言う事やろ?それはマナでも分かるな?」
「トムも、そういう意味で?」
「というか、今まで気がついていない方が問題だな」
だって前世でも恋愛経験値ゼロだし!まだ8歳だし!
「ほんまおもろいわー。真っ赤になって夕日みたいや」
「か、考えた事もなかったし、私にそんな事が起きるなんて想定外!」
「想定外とか難しい言葉使うし、たまに大人な考え方もするけど、これがマナちゃんの持ち味だよね。可愛いし優しいし、もてない方がおかしいと思うな」
「でも俺じゃ…マナには釣り合わないな」
「そんな事言ってたら、マナは永遠に独身だな。そもそもマナより強い奴などいるのか?」
「お兄ちゃんは、強いよ?あとお母さんも。私は全然勝てないもん」
「何でそんなに強いんだよ!魔の森の近くの村出身て聞いてたけど、子供でも魔物と戦わないとならないのか?」
「小さい頃からお母さんと一緒に魔物と戦っていたよ。じゃないと生きていけなかったから」
「敵わない訳だ。多分レベルも全く違うだろうな」
「俺、頑張って強くなる。Aランクは無理でも、先生と同じBランクになって、…そうしたら、俺と、旅に…」
「何年かかるの?…そもそも私は、アルトの気持ちだって今知ったばかりだし、今まで怖いと思ってたから」
「そやな。今将来の約束をするなんて早すぎや。何年も経てばどっちも気持ちだってどうなるか分からんし」
「マナは可愛いから、これからももてるだろうな」
元の姿ならアニメキャラっぽくて可愛いけど、偽装した姿は、普通だと思うな。




