ルードと黒竜
ジンギスカンを食べ損なったスカイの為に、ラム肉…じゃなくてパルタの町ダンジョンにモコモコを狩りに出掛けた。
こんなモコモコふわふわな従魔も欲しいけど、あんまり増やすのもどうかと思うので、やめておく。
というより、ダンジョンの魔物はテイム出来なかった。
不思議だけど、ダンジョンからして妖精が管理してるとか変だし、そういうシステムだと思う事にした。
今回は下に降りるつもりはない。ジンギスカンする分だけラム肉を採取したら、すぐにダンジョンから外に出た。
ツリーハウスに戻ったら、ルードがいなかった。
うーん。黒竜さんの所かな?
邪魔しても悪いので、夕ご飯前に帰らなかったら迎えに行く事にして、ゲーム内のダンジョンに入って鉱石採取した。
大きな山形のプレートを出して準備したのに、まだ帰らない。私がいる日に黒竜さんの所で修行してるなんて珍しいけど、夕ご飯の時は帰ってきて欲しいよね。
亜空間移動で黒竜さんの所に行くと、広場でルードがのびていた。かなり消耗しているみたいで、私に状態が伝わらなかったのが不思議な位だ。
(おや?パスの偽装が解けたのか?)
(夕ご飯の時間だから迎えに来たんですけど、ルードはそんな事までしてたんですか?)
大きな黒竜が人化して、私の方に歩いてくる。
「主を心配させない為でしょう。器用な子ですから」
ショックだ。そこまで無理して修行してるなんて。
そしてそれを全く見抜けなかった私。
「眷属の絆、切れるものなら切って頂きたいですね。世継ぎは生まれましたが、その姫が大人になるまであなたが生きているとは限らない」
「私だって、ルードには長生きして欲しいよ」
でも魂が繋がっている眷属は、契約が切れない。
(そんな事…嫌だ)
やっと喋る気力が出たのか、ひっくり返ったままでルードが念話する。
(マナがいなくなったら、生きていけない)
(それは眷属だから。逆に従魔に戻す事、出来ないかな?)
パスの種類そのものが違う感じなんだよね。薄くしようとしても無理っぽい。
(試そうとしないで!僕は嫌だ!マナの眷属じゃなくなるなんて!)
「本当に強情な子だ。神の娘とはいえ只の人族と共に死ぬなど」
ちょっと引っかかったので、こっそりステータスを見てみたら、まだ超人のままだった。サマルト様酷い。
とはいえ、それを言うなんて恥ずかしい事は出来ないし、何それとか言われそうだ。
(何と言われようと、僕はマナと共に生きますよ)
「それさえなければ、いい弟子なのだが」
黒竜は溜息をついてルードを追い払う仕草をする。
「嫌いなら、敬意なんて払わなくてもいいですよ?」
「サマルト様に対して不敬を働く訳にはいきませんからね」
サマルト様に対して、ね。
「師匠、また来ます」
さて、ツリーハウスでジンギスカンだ!
「ルード、パスを偽装するのはだめだよ。そんな事するなら、私だって偽装するからね?」
「それはだめだよ!マナが元気なのを確認してるから、安心して離れていられるのに!」
「それは私の台詞だよ!パスまで偽装されたら、私は何を信じればいいの?」
「ごめん…心配かけたくなかったから。でもあくまでも修行だから、心配はしないで」
「分かった。でも程々にして」
チートなルードには、何か対策が必要かもしれない。
鱗にもたれかかって寝転がると、ルードに舐められた。
(寿命とか気にしないで。本当に、マナと同じ時を生きたいんだから)
(うん…私も、ルードとの絆が消えるのは嫌だよ)
むしろ、よりもっと絆が深くなればいいのに。そうすれば偽装も出来ないかも?
こうやってくっついていると、絆が深まる気がする。どうせなら、みんなでくっつけば、眷属どうしでも能力のシェアが出来るかも?
後で試してみよう。今日は眠いし、明日は学校だから。




