新学期は…
学校に戻ったらみんな心配してくれた。私が依頼をこなす為に休んでいたのが分かっていたからだ。
クラス変えが多少あったのか、顔ぶれが微妙に違うけど、寮のみんなは一緒だ。
良かった。ソーニャもいる。
「助かった、マナ」
「先生!学生に依頼するとかいいんですか!」
「そや!無事ゆうても姿見るまでは安心できひんわ」
「マナ位しか倒せそうな奴いなかったんだ。仕方ないだろう。兄ちゃんも強いしな」
「確かに、魔法が効かなかったので焦りました。倒せたのは家族のおかげです」
「そうなのか?悪かった。無事で何よりだ」
寮の部屋に荷物を出して、ルビー母さんの人形は、今回はどうしよう?ベッドの端だと、間に合わないんだよね。
それとも、亜空間だけは教えようかな?でも、眷属達とばったり会ったりとかありそう。
人形は、机の上に置く事にした。死角もあるけど、ドアなんかは見えるから、こっちの方がいいかも。
もう収納庫は知られているから、荷物も出す必要はないけど、普通の服は別に誰に見られてもいい。
武器の訓練だけど、いつの間にか片手剣のスキルが取れてたんだよね。小太刀は片手剣の部類に入るのかもしれない。振り方が独特だから、一般の片手剣とは違うし、やっぱり短剣かな。
人数奇数なので、私は先生とかな。
「マナ、俺と再戦してくれ」
アルト、まだ私をライバル視してるのかな。
「マナ、充分手加減しろよ」
「分かってるってば!」
そんなに言うなら、先生が相手してくれればいいのに。
「手加減なんて、しなくていいからな」
いや、死ぬから。
でも私も、随分手加減を覚えた。流石に怪我させるまではやらないのさ。
アルトの剣を弾いて飛ばして終了。
「くっ…。何でだよ!俺だって魔物と戦って強くなったのに!」
多分初期値が違うからかな?適当に決めた数値だけど、力とか素早さとか、動けるようになってから思ったけど、乳幼児の数値じゃないと思った。
ルビー母さんからの経験値も貰ってたから、ずるいとは思う。
「アルト、諦めろ。マナには先生だって敵わないんだ」
「話は聞いていたけど、本当に強いの?」
去年Bクラスだった子かな?
「俺はトム。Aクラスで強い子がいるって聞いて、気になっていたんだよね」
「うん…まあ」
トムは、長剣を構える。
「とてもそうは見えないけど、一度試合してよ」
「いいよ。いつでも」
長剣に加えて足払いもかけてくる。対人戦にも慣れた動きだ。
けど、惜しい。アルトよりも力も弱いし、素早さも足りてない。
アルトが対魔物の動きなら、トムは誰かに習った動きだ。
踏み込んだ足を踏んで伸びた腕を引っ張ってやると、トムはあっさりと転んだ。
「君もどこか道場通っているの?」
「ううん。対人の動きはお兄ちゃんに教わった。トムはレベルが足りてないんじゃないかな」
「なるほどね。確かにまだまだだね」
「そうだぞ。先生相手の時は本気で叩きのめしてくれるからな」
「ちゃんと手加減しましたよ」
「あれでか?」
「言ったじゃないですか。半殺しって。多少やりすぎた自覚はありますけど」
「多少かよ…」
ちゃんとアドバイスだってしたし、先生の為にはなったはずだ。
「いいな。強くて。俺と付き合ってよ」
「何?討伐依頼?」
「!お前、マナは、俺と付き合うんだぞ!」
「戦闘訓練に?」
「おまえらー、授業中だぞ!」
「無理そうな依頼は受けない方がいいよ?」
依頼の失敗はペナルティがつくんだから。
「マナちゃんは通常運転だね」
「トムはともかく、アルトの事も気がつかんとは、どんだけ鈍いんや」
「え?そういう事だったのか?」
「ジーナもかいな」
「何?なんの話?」
「マナはお子様っちゅう事やわ」
何それ。戦闘訓練と、子供がどう関係あるの?クラスメートには本気出すはずないじゃない。手加減しすぎた?
「さすがに怪我はさせたくないから仕方ないよ?」
「違うけど、マナちゃんはそれでいいんだよ」
ん?何か間違えた?
「二人とも、マナの相手は100年早いな」
「100年後にはみんな死んでると思うけど?」
そういえば、クラス長は、私が休んでいる間にアルトに決まった。副長はトムだ。
決めた時はまだ討伐報告は行ってなかったから決められなかったのだと思うけど、ちょっと嬉しい。
私に人をまとめるなんて無理なのさ。精々ピンチの時に動くので精一杯。




