それぞれの戦い
ウォーターバッファローの狩りを、また受けた。
ミノタウロスと比べると、和牛肉とオージービーフ位の差があるけど、どっちも美味しい。
また違った旨みもあるし、調理方法によっては赤身の方がいい時もある。前回も眷属達には好評だったし、機会があったらまた受けようと思っていた。
今回は、6匹狩れたので、半々にしよう。
ビッグアントが、群れている。この辺に巣なんてあったかな?
私は使わないけど、こいつらの持っている酸袋は鍛冶屋さんが剣を鍛える時に使う。
…あ、甲殻までスパッと切っちゃった。一応鎧の材料だけど、こんなにあっさり切れたら意味ないよね。小太刀が優秀だとも言えるけど。
最近全然使えていなかったミスリルの短剣も使おう。
でも、小太刀で慣れてしまったから、扱いにくいな。自分で作った剣だけど、要らない子になりそう。
要らない子といえば、槍も使えていない。短いリーチを補ってはくれるけど、ダークソードを長くすればいいだけなんだよね。
でも折角なので、槍を使ってビッグアントと戦う。
たくさん倒したから、解体が面倒。甲殻は無視して、酸袋だけとる。
小太刀で解体すると、どうしても傷物になってしまう。
解体してたらグリーンバイパーが来た。アリを食べに来たみたいだけど、あげない。サクッと首を落として、収納庫にしまった。眷属達はお酒を欲しがったりしないけど、ワインなら作れそうだから、後で聞いてみよう。これは普通に食べてもいいし、おつまみにも出来る。
アリのせいで時間をくってしまった。午後は眷属達と過ごそうと思っていたのに。
私が本気で走ると、大人顔負けのスピードで走れる。
ギルドまで超特急で行って納品を済ませた。
ツリーハウスに戻ったら、ルードが真っ先に抱っこしてきた。
要するにあれだ。外国人がハグするのと同じだと思えばいい。ただ私が小さいから、抱っこになっちゃうだけで。
「他のみんなは?」
「ルビーとユキは狩り。スカイはゴミ拾いかな?」
ゴミって…。スカイにとっては宝物なのに。
「他のみんなには曜日の感覚は無いからね。僕はちゃんとマナの休みの日は空けるようにしているんだ」
「いつも寝てるんじゃないの?」
「修行も付けて貰ってるよ?強くなりたいからね」
「うー、私も強くなりたい!」
「じゃあ、みんなが帰るまで付き合うよ」
悔しいけど、ルードには敵わない。素早く動いてもルードの方が速いし、まるでどう動くかが分かっている感じがする。
もしかして癖とか読まれているのかな?なら私も!
集中して、視線の動き一つ見落とさないようにする。
よし!右だ!
ひらりと避けて、カウンターキック。
『スキル 先読みを覚えました。魔眼に統一されます』
あ、スキルになった。ルードも持っていたのかもしれないな。
スキル化したから、さっきよりも容易に次の手が読める。
「何か覚えた?」
「うん。先読みだって。ね、黒竜さんとはどんな修行しているの?」
「そうだね。感覚を鋭くするために、視界を断つとか」
おお。達人っぽい。私もやってみよう。
バンダナを巻いて、魔力感知でルードを見る。ただ、ここは森の中なので地面が平らじゃない。そして地面の凸凹は、全く分からない。
これじゃあ怖くて動けない。
「マナ、急にやろうとしても、できないよ。まずは指でやってみるから、防御してみて」
目隠しをしたまま、ルードが指でつんつんとつつく。
「く、首はくすぐったい!脇腹もだめー!…こ、降参」
一旦休憩。笑い死ぬ。
(マナ!お帰り)
え!スカイ、怪我してるじゃん!
慌ててハイキュアをかける。抜けちゃった羽根は戻らないけど、傷は塞がった。
(何があったの?)
(僕も強くなりたくて、ワーウルフに戦いを挑んだ)
(ダメだよ!危ないよ!)
(ううん。炎鳥なら勝てるはず。だけど…威圧で怯んじゃったんだ)
スカイの状態異常耐性は、炎鳥になってから取れたものだから、耐性レベルが低いのかもしれない。
強くなりたいという気持ちは分かる。特にスカイは、いつも気持ちで負けちゃう。
(威圧に負けない練習から始めようか)
私が威圧を使うけど、効いていない。
「ダメだよ、マナ。主の威圧はどうしたって本気で威圧してるって思えないから。でも眷属どうしなら」
あ、スカイが落ちてピクピクしてる。
「今のは本気の威圧?」
「いや?七割位」
スカイにリフレッシュをかけてあげた。
あれで七割か。直接私に向けられた訳じゃないのに、肌がピリピリした。
「本気の威圧だったら、私に向けられたものだったら、私も気絶しちゃうかも」
元から強いルードの威圧は、恐ろしい。
「ルード、たまにスカイに気絶しない程度に威圧をかけてあげて?スカイもそれでいいよね?」
(怖いけど、頑張るよ)
ルビー母さんと、ユキも戻ってきたけど、人化したままだ。
「え、その姿で狩りに行ってたの?」
「どんな状態でも戦えるようにしておきたかったのよ」
「マニャが大きくなって旅に出た時、足手まといになるのは嫌にゃ」
「マナのあの時の怪我は、僕達眷属には忘れられない物だからね」
「うん…みんなで強くなろう」
みんな、私が学校に行ってる間に頑張っていたんだな。




