偽装、バレちゃった
アルコール度数もそんなに高くないと思う。それか、薄めてあるのかな?
「これも収穫祭の楽しみや!普段は大人の飲み物やから、子供は祭りの時位にしか飲めへんのや。旨いやろ?」
ソーニャ、既に酔っぱらっている?
「でも、子供のうちから飲んだら身長伸びなくなったりしないよね?」
「それは大人の言い訳だ。むしろ飲んだ事がないから小さいのでは?」
それはない…と思いたい。元日本人だから、子供の飲酒は良くないと思っているけど。
「子供は収穫祭と新年位にしか飲めへんのやから、良く味わっとき」
クレープのような、薄く焼いた生地に肉を巻いたものをみんなで買った。
ソーニャの提案で、果実酒をもう一杯買って、食べながら飲んだ。
ふわふわとした酔った感覚は、状態異常無効を持っていてもあるようだ。
まあ、それがなくなったら、大人の楽しみが減るから、いいと思う。ただ、酔いすぎたりとか、二日酔いはないだろうな。
ソーニャが酔って訳分からない事を口走っている。
意外。強そうに見えるのに。ポーラはにこにこ笑ってソーニャの世話を焼いている。ジーナは、淡々とたしなんでいる。
突然、ジーナが私のマントのフードを被せた。
あっと思ったら、偽装が解けていた。
「今日なら仮装で通じるかも知れんが、あまり見せたくないのだろう?」
うわ。アルコールのせいかな?それにしても、知ってた?
「ええやん、隠さんでも。綺麗や」
「はいはい、ソーニャちゃんはお水飲もうね」
「あの…知ってた?」
「さすがに目の色までは知らなかったけど、マナちゃん、たまに寝言言ってて、気になって覗いてみたら…みんなで相談して、触れないようにしてたの」
「強い事にも触れてほしくなかったみたいだし、あたし達もマナとは良い友人でいたいから、敢えてな」
「これは、偽装のスキルで、…人と違うと、虐められると思って」
強く意識していると、アルコールが入っていても偽装は保てた。
「誰にも言えない事位あるよ」
「そやそや」
「あたしは…別にないが、全てを語っている訳ではないしな」
「ありがとう」
さすがに言えないな。本当の事は。
それにしても、寝言か…眷属達からは聞いた事ないけど、言ってたのかな?
恥ずかしい。
同室の子達がいい人達で良かった。これも運のお陰?
この世界の人達は、優しい人達が多い。眷属達も、元は怖い魔物だとは思えない。
「偽装というスキルは、サマルト様に似た姿を隠す為に覚えたのか?」
「うん。そういうの言われるの嫌だから。でも寝てる時いつも偽装解けてた?」
「いつもは覗いてないよ。ちょっと話しかけた時とか、カーテンの所にマナちゃんの人形が引っかかっているでしょ?偶々目に入っちゃう時もあるから」
「そうだな。たまに見えた時は、殆どが今の色だ」
いつも偽装解けてたら、大問題だよね。マレサさんと一緒の班で寝泊まりした時もあったんだから。
大丈夫だと思いたい。
水やジュースを多く飲んで、アルコールを薄める。
大人になってもお酒は人前では飲めないな。その頃には偽装も上手くなっているかも知れないけど。
そういえばこの町もこんな風にゆっくりと歩った事なかったな。
看板を見ながら歩いていたら、錬金術の店を見つけた。
「ここが家だよ」
そういえばポーラはこの町の子なんだよね。
「ええな。ポーラん家行ってみよか?」
「いきなりで迷惑じゃないのか?」
「両親はお祭りに行ってるけど、おばあちゃんならいる。けど平気」
そういえば、錬金術の店って初めて入るな。機材なんかも売っててホームセンターみたいだ。
私の場合は完全に我流だから、見ているだけで楽しい。
そういえば、勇気の出るブローチを貰ったっけ。雑貨に見えるこれも錬金術で作ったものかな?
魅力が上がるペンダントとか、記憶力が上がる羽根ペン。あ、こっちのコーナーは、冒険者用かな?
気配が薄くなる粉、素早さが上がるストラップに、力が上がる腕輪もある。そういえば、この腕輪をしている人ギルドで見たな。
錬金術といえば薬だと思っていたけど、色々あるんだな。
「こんにちは。ポーラと仲良くしてくれてありがとう」
「マナです。こちらこそ、仲良くしてくれて嬉しいです」
あれ?ソーニャとジーナは、顔見知りなのかな?
「うちは旅商人やから、ポーションは必須アイテムや。おばちゃん、いつも安くしてもろて感謝しとるで」
「マナちゃん、錬金術に興味あるの?熱心に見てたから」
「昔、自分でポーション作った事があって…不味くなったけど」
「マナは光魔法使えるから要らんやろが」
「マジックポーションもあるから、良かったら見てね」
すぐ回復しちゃうから、あんまり要らないけど…スカイとルビー母さんには必要かな?




