マナの姿
冒険者実習、今回は色々あったな。
ブラッドピジョンはきっと運の高さのせい。
サイクロプスは…うーん。まあ、素材は売れるし、いいか。
倒した方じゃなくて、食べた方に経験値が入るなんて不思議な魔物だ。
テントは学校の備品なので、丁寧に畳む。
「あら、収納庫が使えるのですから、マジックバッグは必要ないのではなくて?」
「そう、だね」
そうだけど、そんな言い方しなくても。
夕べ出たゴーストの話が出てからマレサの機嫌が悪い。
ゴーストには、物理攻撃は効かない。身体強化の魔法しか使えないジーナでは対処しきれなかった。
みんなはエリアヒールだと思っているけど、敢えて訂正はしない。光や闇の魔法は、属性魔法よりも習得が難しいとされている。それを極めないと聖魔法や暗黒魔法は習得できない。
それより難しいのが時空魔法で、脳筋先生が習得しているとは思わなかった。生まれ持った才能がないと、習得はできないのだ。先生も、他の魔法はさっぱりだっていうから、不思議な物だ。
キュア位ならヒールと勘違いしてくれるかな?でも、ダークソードは無理だよね。私の魔法習得速度、おかしいのかな?
因みにホーリーは、失われたとされている伝説級の魔法なので、人前では使えない。
ルードはぽんぽん使っているように見えて、人前ではけして使っていない。
魔法の資質は精神に直結している訳だけど、私はポイントで適当に割り振ったから初期値も分からないし、魔力を使えば精神も上がっていくから、余計に分からない。
生まれる前の事は覚えていないし、前にサマルト様が来た時は私、寝てたからな。
サマルト様が親?なのだから、才能は親譲り…んな訳ないか。作られた体に遺伝なんてないはずだし。
寮に戻って、今日はみんな早く寝るというので、私はこっそりと眷属達の所に戻った。
まだ一ヶ月位なのに、随分久しぶりに感じる。
ユキとスカイをもふもふして、ルビー母さんとおしゃべりして。
また抱っこしてこようとしたルードから逃げて。
「だからもう、抱っこは卒業なの!いつまでも小っちゃな子供じゃないんだから!」
「子供扱いじゃなくて、僕なりの愛情表現なんだけど」
「うー、ルードはもふもふじゃないしな。分かった。でも、子供扱いはしないでね!町を歩くのも、自分で歩くから」
「うーん。マナが反抗期だ」
「違うの!私だっていつまでも小っちゃな子供じゃないの!」
「僕がマナを抱っこしたいのに…あ、小さな子といえば、母様の卵が孵ったんだよ」
「本当?わー、小っちゃな竜、見てみたいな」
「もう少し待って。あと1年位したら、動けるようになるから」
「うん。男の子?女の子?」
「雌だよ。だから完全に母様の跡継ぎだね」
「そうなの?じゃあルードは?」
「雄は本当にただのつなぎだよ。まあ僕はマナを選んだから、何の役目もないけど。子竜が大人になれば、本当にお役御免」
「雄は卵を産めないから?」
「そうだよ」
「じゃあお父さんはどうなるの?」
「ん?ああ。竜族は、交尾が必要ないから」
凄い。なら雄の役目って、本当にないんだ。
「交尾の必要ない魔物はそれなりにいるよ?魔素から直接現れる魔物もいるし」
なるほど。伝説級の魔物だとそうなるのか。竜みたいな上位種は、数が少ないし。
「ねえ、ルードとばかり話してないで、母さんとも話しましょう?学校では上手くやれてるの?偽装は?」
「それは大丈夫。収納庫はバレちゃったけど、大丈夫そう。ていうかさ、石像のサマルト様と私、似てないと思うんだけど」
「マナ、最近ちゃんと鏡見てる?」
毎朝髪を結ぶのに見てるけど、偽装しているから、その状態では見てないかも。髪もルビー母さんが整えてくれるし。
マナは亜空間に入った。ちょっとびっくりした。透明感のある金の瞳は神秘的で、薄紫色の髪とよく合っていて、顔立ちも以前より女性らしくなっていて、驚いた。
偽装をかけるとどこにでもいる普通の子で、顔立ちもぱっとしないように見える。
これでは、素顔を晒せないな。恋愛経験値ゼロの私には、過ぎた姿だ。
不細工よりはいいけど、自分に似せて作るってどうなの?偽装をかけなきゃ絡まれると思う。
「驚いてる?」
「うん。目の色がまた変わった。何でかな?」
「さあ?でもその目はサマルト様と同じだよ。それでもマナは、僕達のものだからね?」
「そうよ。マナは私の娘なんだから」
そう。私と眷属達は運命共同体なんだから。




