冒険者実習 4
ブラッドピジョンの血は、不死の霊薬、エリクサーの材料になるらしい。
作る為にはあと材料が二つ必要で、高位竜の鱗と、フェニックスの尾羽。それを作れる高位の錬金術師。
ポーラもポーラのおばあちゃんも無理だって。もちろん私も無理。
わざわざ薬に頼らなくても回復魔法で回復しちゃうから、せっかく取ったスキルだけど、使えてない。
竜の鱗には、心当たりがあるけど、フェニックスは実際存在するかどうかも分かっていない。
もし知ってても材料を世に出す気はない。死なないなんて、人間辞めてるよね?
ブラッドピジョン自体は強い種族じゃないけど、滅多に見かけない上に、権力者の乱獲でその数を減らしているらしい。
ちょっと罪悪感。そのブラッドピジョンの肉を食べたマレサは、レベルが三つも上がったと喜んでいた。
レベル6になったって喜んでいたけど、むしろ今までレベル3だったのがちょっと…。
グリーンバイパーは少し残ったけど、先生に頼み込まれて持って行かれた。お酒のつまみに最高らしい。
「悪いな。代わりにこれやるから、朝食にでもしてくれ」
収納庫から出したのは、キルラビット。グリーンバイパーの残りも収納庫にしまった。
「先生!収納庫使えるじゃないですか!」
酷い。サイクロプスを仕舞ったのがなければ他の子に収納庫使える事がバレずに済んだのに。
「俺の収納庫はあんなデカブツしまえないんだよ。ギルドでウォーターバッファローを収納庫から出していたって聞いたからな」
「何でその事知っているんですか?」
「お前な、それを聞くか?この学校は国も噛んでいるが、元はギルドの事業の一環だから、先生はギルド職員でもある訳だ」
そういえば、そんな話は聞いた。
「でも、ギルド職員が個人情報漏らしていいんですか?というか、先生が知る必要ないですよね?」
「お前な…難しい言葉知ってたりとか変な所には気が回るくせに、自分の事には無頓着だな。ギルドではまだ子供のお前が凄腕のハンターだから、注目されてんの」
「Cランク相当の仕事しかしてませんけど」
「バカだな。サイクロプスはAランクのパーティーでも倒すのは難しい。アイツは頭は悪いが再生持ちだぞ?」
「再生持ちでも、脳の再生は難しいと思って」
「ま、そりゃそうだ」
今更だけど、湖の町でテストした時、もっと弱いふりすれば良かった。
「変な貴族に取り込まれたり、国に取り込まれたりしてくれるなよ?国家のパワーバランスを崩しかねん」
「私が戦争に加担するなんてあり得ませんから、大丈夫です。それに、たった一人で戦況が覆るなんてあり得ないし」
「分かってないな、お前」
「何が?」
「長い歴史の中には、一人の天才魔法使いの手によって国が滅びた事もある。加えて戦闘能力もあったら誰もお前を止められないじゃないか。まさに災害級」
「酷い。こんないたいけな子供捕まえて災害級とか」
しばくの決定。
「命知らずやな。先生」
「大丈夫。回復魔法も使えるから。それに元Bランクの先生が、そう簡単に死なないって」
「勘弁してくれ」
今日は三番目の見張りだから、早起きしなきゃならない。慣れない環境にいるから、みんなの顔に疲れが見える。
みんな早めに寝て、明日に備える。
夜中に肩を叩かれて、はっと目を覚ます。まだ時間じゃないけど、沢山の魔物の気配。
「マナ、悪いがあたしでは対処できない」
二番目見張りのジーナに言われる前に起きて、外に出る。
ゴースト!む…無理!お化けは苦手だよー!しかも沢山のゴーストに囲まれている?!
「わ、私…お化けは無理」
「お化け?それ所じゃない!頼む!ゴーストは回復魔法に弱いから」
あ、そうなんだ。試しにふわっと飛んできたゴーストの一匹に、キュアをかけたら消えてなくなった。
ならまとめてエリアハイキュア!…ってえ?どんだけいるの?!
魔力切れを起こす前に魔法を切った。念のために索敵するけど、もう大丈夫のようだ。
収納庫から昔作ったマジックポーションを出して飲むけど、不味い。青汁みたいな味がする。後でジャムでも混ぜてみよう。
ポーションよりも自動回復の力の方が強いみたいで、どんどん魔力が回復していくのが分かる。眠いけど、倒れたら心配かけちゃう。
それに今のでホーリーを覚えたみたいだ。やっとルードに追いついた。
「やはり凄いな、マナ。大丈夫か?ふらふらしているようだが」
「平気。眠いだけだから」
時間は…あと少しで交代か。寝る時間はないな。
うう…辛い。
「本当に大丈夫か?あれだけいたゴーストが綺麗さっぱりいなくなっているから、魔力を沢山使ったのか?」
「平気だよ。そろそろ交代だから、ジーナは寝て大丈夫だよ」
「分かった。無理はするなよ?」
こういう時は、小説を読もう!書く方はさっぱりだけど、読むのは大好きだ。
もし書けたとしても投稿は無理だろうな。確かこちらからは干渉できないんだよね。
あ、私の読んでいた小説が本になったんだ。買えないのは残念だけど、おめでとうございます。
そろそろ違うのも読んでみようかな?恋愛物は苦手だから、いつものファンタジー系で。
「ゴーストはお前が殺ってくれたのか?」
「うわ?!」
びっくりした。小説を読んでいると、まわりが見えなくなるんだよね。
「まさか寝てたのか?」
「お…起きてたもん。確かに私がエリア指定の回復魔法で倒しましたけど」
「おお…ならそのお陰か?先生の腰まで治してくれてサンキューな」
「ちっ…」
余計な事した。先生のせいで野生児は定着しちゃうし、強いのもばれた。
「ちって、お前な…女が舌打ちなんてするなよ。それはそうと、進級はしないつもりと聞いたが、家庭の事情か?」
「元々常識を学ぶ為に入ったので、これ以上は必要ないかと思いまして」
「せめて初等学校位は卒業しておいた方が何にしても有利だぞ?出来ればその先も行った方がいい。兄ちゃんAランクなんだから、学費は出せるだろう?」
学校も、最初ほどは嫌じゃなくなったけど、眷属達と過ごす時間が短くなるんだよね。
「あとのみんなは進学するんですか?」
「ソーニャは実家の商売が忙しいからまだどうなるかは分からん」
「そっか…どうしようかな」
みんなとは、学校終わったらきっと会う事もないだろうな。




