冒険者実習 3
今日は夜の見張りがないからゆっくり眠れる。
と、思ったら明け方に起こされた。何で私だけ?
…って、ゴブリン3匹だけじゃん。他の班は、見張りだけで対応しているし。
「マレサさんも戦って?」
「む…無理ですわ」
えー?無理って。まあいいや。
ファイヤーボール3連発。はい終了。
「あれ位は対処して欲しいな」
「私、魔物と戦った事なんてありませんもの」
は?魔法の才能はあるのに?
「一度も?」
「魔物と戦うのは、下々の役目ですもの」
「じゃあまさかレベル1?」
「何を言ってますの?肉は食べているじゃないの。まあ、給食のような低レベルな魔物肉では上がってはいませんが」
「えー?それって、ご飯食べるだけでレベルが上がるって事?」
「何を言ってますの?常識ですわ」
いや、そんな常識知りません。だとしても、そんなには上がらないよね?
じゃあ、その辺にいるバッタとか虫も殺した事ないの?
「私、あんまり常識知らないから」
私が一般常識知らないのは、結構みんな知っていると思ったけど。
ていうか、虫も殺した事ないなんて、お嬢様って凄い。
「魔物がでたら起こすのが私の役目ですし」
確かにそうだけど。
二度寝しようと思ったけど、もう朝か。
「薪が少なくなっているから、拾ってくるね。スープ温めなおしておいて」
「お待ちなさい。火を付けていきなさい」
「マレサさんも火魔法使えるよね?」
「魔力の無駄遣いはしませんわ」
いや、魔物と戦わないなら、これからご飯なんだから、回復するじゃん。
それに魔法は使わないと上手くならないし。
まあいいや。面倒くさい。
マナは視線だけで火をつけて、辺りを見る。
火魔法が使えない子は、火おこしの道具を使っている。
結構手間がかかるから、それではやりたくないのかもしれない。
薪拾いも、本当は三番目の当番の役目なのに。
薪を拾い終わる頃、やっとみんなが起きてきた。
「おはよう、何でマナちゃんが薪拾いしてるの?」
「甘やかすのは良くないな」
「…まあ、トイレも行きたかったし」
それに動こうともしなかったし。
「ふあ…何や、早起きやな」
「まあ、一応魔物も出たし」
スープもいい感じに煮えたし、食べよう。
他の子は昨日のオーク肉も焼いて食べてるけど、私は無理。お米なら食べられるんだけど、この国は、ていうかこの世界は肉が主食だから、栽培もあまりされていない。
さすがにあんな事件はそうそう起こらないので、今日は平和だ。
ソーニャ達がキルラビットを狩ってきたので、解体して下味を付けておく。
さて、肉になりそうな魔物はいるかな?
うーん。食べられないのしか出てこない。売れる素材だけ取って、燃やす。
木の上に気配を感じて見上げたら、グリーンバイパーがいた。
うん。夕ご飯には充分だな。装備を素早く槍に変えて突き刺す。
あ、倒し切れていない。下に落ちて暴れている。
「ヒッ!」
マレサが息を飲む。
こいつ意外としぶといんだ。じゃあ、そのままダークソードで。
「まさか、それが夕ご飯ですの?」
「そうだよ。マレサさん、薪も拾って?」
「うちが拾ってるから心配いらんて」
お嬢様には班行動は難しいのかな。後で困るのは自分だと思うけど。
「私、それは無理ですわ」
蛇が嫌いなのかな?美味しいと思うけど。
「だったら自分で狩ったらええねん」
「そ…それは」
ソーニャが言いたくなる気持ちも分かるけど、何にも出来ない人だから、仕方ない。
何もしなくても、ちゃんとついて来てる事は評価出来ると思う。
立場が逆だったら、私なら離れて薪拾いしてるだろうし。
森以外で索敵に引っかかったのは、ブラッドピジョン。上空を飛んでいる。
マナは投げナイフを出し、投げた。
見事に仕留めて、拾いに行く。
血が薬の素材になるので、小瓶に垂らした。
「え、まさかそれをマレサにやるつもりかいな?」
「蛇が苦手なら仕方ないし」
「売ったらめっさ高く売れるやん。マナが仕留めたんだし、収納庫使えるなら、売るべきや」
「別にいいよ。可食部少ないから、一人分しかないし」
「お金なら支払いますわ。ブラッドピジョンが美味でなかなか手に入らないのは分かっていますし」
「別にいいよ。偶然手に入っただけだし」
「いやいや、普通は飛んでる鳥をナイフで落とすなんて無理やわ。最低でも金貨5枚は下らんて」
「それは下取りの値段じゃないんじゃない?」
「けど、料理もしてやるつもりやろ?」
「料理出来ないみたいだし」
「どこまでお人好しなんや、マナは」
ソーニャは呆れているけど、お金はほとんど使わないからな。
むしろゲーム内の種を買うお金なら欲しい。




