冒険者実習 1
誤字報告ありがとうございます。助かります。
実習は、東門を出て、岩場を抜けた広場にテントを張った。
岩場に潜んでいたロックリザードを下から土魔法を使ってひっくり返して、短刀でとどめを刺す。
鞘に収めると、パチンといい音がする。やっぱり日本刀はいいね。格好いい。背が伸びたら長い刀を買って、居合い切りとかやってみたい。それでまたつまらぬものを切ってしまったとか言ってみたい。
「早速昼食の食材ゲットだな」
先生が、見に来た。
私は構わずに近くの木に吊して血抜きをして、そのままお腹側から吊したまま解体した。
「やっぱりお前の班は放置でいいな」
「仕事して下さいよ。先生」
「野生児は一人で何でもできちまうが、他の奴らにも教えてやってくれ」
言われなくても。けど、ロックリザードは解体が難しい。背中側の鱗は、解体用のナイフでは刃が立たないのだ。
だからマナは、短刀で吊し切りにした。
マレサがテントを張るのを手伝っているけど、お嬢様は力も弱いらしい。…じゃなくて、レベルが低いのかな?
「マレサさん、肉に下味をつける方を手伝って」
「私、料理などやった事ありませんわ」
「揉み込めばいいんだよ」
肉に手をかける前にクリーンをかけてやる。
「何なんですの!私が光魔法を使えない事に対する当てつけですの?」
「ち、違う…気にさわったならごめんなさい」
仲良くしたかっただけなのに、上手くいかない。
「しかもいつも無詠唱で。そんなに魔法の才能をひけらかしたいんですの?」
「私は、正しい呪文なんて、学校で教わるまで知らなかった。呪文名を言うのだって、言う時間が惜しい位周りの魔物が強かったから」
「そういう物は、親や自慢のお兄様に教われば良いじゃありませんの」
ルードと知り合ったのは私が5歳になるちょっと前だし、そもそも魔物は呪文を唱えたりしない。
うちは特殊だからね。家族全員種族が違う。血が繋がっている訳じゃない。それ以上の絆があるけど。
「うちはみんな呪文唱えないし」
「あなたの家の事情なんてどうでもいいですわ」
まあ、そりゃそうだ。
他の班は、お昼は弁当を食べているようだ。うちの班は、ソーニャもポーラもジーナも、お弁当を持ってきていない。マレサはどうか分からないけど、みんなとロックリザードの串焼きを食べていた。
ロックリザードの串焼きは、見張りをしている冒険者にもあげた。二メートル近い大物なので、私達だけでは食べきれない。
夜の見張りは、今から決めておいた。ここから町までは少し離れているので、前回のように逃げ帰ったりは出来ないし、夜に一人になる方が危険だ。
私は初日の一番目と、三日目の三番目だ。うん。理想的な配置だ。じゃんけんで決めたから公平だし。
入学したての頃と違ってみんな、ゴブリンごときに恐れをなしたりしない。私から見ると危なっかしいけど、あえて手は出さない。
これ位倒せなきゃ、冒険者になれないもんね。
さて、夜ご飯は何の肉がいいかな?テントの見張りのポーラ以外で魔物を探す。
索敵で探すと近くにコッコがいる…けど、他の班に狩られてしまった。
キラーマンティスがいたけど、これは食べられない。こちらに気がついたので、短刀で首をはねてやった。
猿型魔物のエテルも群れていた。皮が素材だけど、今回は捨て置く。
ソーニャもジーナも戦っているけど、マレサは何もしない。分かってはいたけど、何も言わなかった。
ボアを見つけたので、それを狩って、近くに生えていたアオナとマッシュを採取する。これで今晩と明日の朝のスープ用は事足りるだろう。余ったら冒険者の人とか他の班に分けてもいいし。
索敵に大きな反応があったけど、距離も離れているし、放っておいても大丈夫だろう。この距離だと、魔の森の中だろうし。
「ポーラ、大丈夫だった?」
「うん。クローバードが残りの肉を狙ってきたけど、魔法が間に合ったから」
ポーラは常に詠唱待機していたようだ。
「おっきなボアだね。マナちゃんお手柄」
「何でマナの手柄と分かるんだ?」
「ジーナさんの剣だと、切り口はこうはならないし、ソーニャちゃんの槍とも違う。だからだよ?」
「凄いね。じゃあ解体は任せていい?」
鷹の目で周りを見たけど、危なそうな班は、先生も手伝っている。
「うちも手伝ったる」
「私は薪をもう少し見つけてくるね」
「あたしも行こう」
マレサは疲れた様子で座っている。…まあいいや。
途中、コボルトとの戦闘もあったが、マレサから借りたマジックバッグいっぱいに薪やハーブも見つけて、戻った。
一刻半用の砂時計をセットして、見張りにつく。
明日の朝用のスープを煮込んで、周りを見る。今日は曇りなので、月も星も見えない。
普通の人には光も見えないのは確認済みなので、なろうのサイトを開いた。
警戒はしているし、これ位はいいだろう。




